書 名 「育休刑事(デカ)」
著 者 似鳥 鶏
出 版 KADOKAWA 2022年8月
文 庫 336ページ
初 読 2022年9月7日
ISBN-10 4041115132
ISBN-13 978-4041115138
読書メーター https://bookmeter.com/books/20029203
著 者 似鳥 鶏
出 版 KADOKAWA 2022年8月
文 庫 336ページ
初 読 2022年9月7日
ISBN-10 4041115132
ISBN-13 978-4041115138
読書メーター https://bookmeter.com/books/20029203
県警本部捜査一課の刑事が、妻の代わりに育児休業を取る。本邦初(だかしらないけど)育メン刑事。これはもう、設定の勝利。
それに、欄外の細かい解説が面白い。最近の育児事情なども把握できて、ほう、世の中はここまで進んだか。とか思いながらニマニマ読めます。私の同年代の男性諸氏にもぜひ読んでいただきたいもの。私も声を大にして言いたいのは、世の母親たちはいとも軽そうに赤ちゃんを抱っこしてますが、あれ、本当は重いのよ!日々育っていく赤子を運搬するのは、毎日が筋トレ、日々、自分の気力・体力の限界に挑む作業なのだ。傍から見るぶんには、お母さんに抱っこされている赤子はまるで羽のように軽そうに見えるんだけどね。
さて、世の公務員・・・つうか男くさい警察機構の中で生きる男性と女性のために、最初の一石になるのだ、と覚悟を決めて一年間の育児休業を取得した主人公 秋月春風(はると)。この名前にうっとなる。キラキラネームだ!ついに小説の主人公までキラキラになってしまった!生後三ヶ月になるベイビーは蓮くん。お、これも名付け人気リスト上位のお名前だ。
そんな秋月春風(はると)刑事【育休中】が、お腹にゴキゲンな蓮くんをくくりつけ、秋風の中散歩に出たところが、姉(法医学者)と立ち寄った質屋で強盗事件に巻き込まれてしまう。
そして春風(はると)の迅速な通報のおかげで、最速でネズミ一匹逃がさぬ最適な包囲陣を敷いたにもかかわらず、犯人一味の一人が質屋の事務室で射殺され、もう一人の犯人がまんまと逃亡。そして行方が判らなくなってしまった。
これを取り逃したら県警本部の面子は丸つぶれどころか、当の捜査一課の課員が(男の)育休中で人手不足で・・・などと、マスコミにほじくられ、未来の後輩たちの為にも育休を取りやすい職場を作るのだ、という意気込みが裏目にでて、むこう10年は育休がとれない職場ができあがってしまう・・・・・。
そんな危機的状況を打開すべく、春風(はると)←しつこい? は、上司の石蕗係長の求めに応じて、「育休中」ながら、赤ちゃん連れで聞き込み調査を開始する・・・・・。
まあ、ここまで読んで、犯人とトリックが判ってしまったような気がするが、それは良い。警察手帳と拳銃の替わりに、世の中で最強のアイテム「赤ちゃん」を片手に、育休刑事が走る。まことにもって、今時の、最先端の、お仕事小説である。欄外の解説がとても面白い。
人の気持ちや受け止め方が変わってくるだけで、世の中少しづつ動いていくものだろうから、この本もきっとそういう世の中に向かって動く力になるだろう。それにしても、育休中に働いてはイカンな。赤子を連れているときには安全第一でお願いしたい。
そしてこの作品、短編連作なのだった。
1話目 「人質はねがえりをする」は、予想通りの展開でサクッと犯人逮捕。
2作目 「瞬間移動のはずがない」 まあ移動したのは車ではなくて、アレだろうなあ、との予想を裏切らない素直な展開。
3作目 「お外にでたらご挨拶」は、前2作のほのぼのムードと違って、ちょっとスリリング。ある捜査の失敗が原因で警視庁から飛ばされてきた、というキャリアの捜査一課長の命が狙われる。爆弾テロを追いかける分刻みの展開と、春風(はると)がなかなか格好良い。「管理職」である妻の「正体」がいつ明かされるのかな、と思っていたけど、なるほどねえ。
全体としては、オモシロさ及第点というところ。事件の発見も解決も姉の視力・観察力・行動力という“特殊能力”に依存しているのと、狂言回しとはいえ、この姉のパワーがなかったらストーリーすら転がっていかないだろ、というキャラ設定の都合の良さと妻の正体が、ちょっと出来すぎ感マシマシでしたが、まあ、気持ちよく読める軽いお仕事小説としてはなかなかの良作でした。
0 件のコメント:
コメントを投稿