2017年3月28日火曜日

0032 星を継ぐもの

書 名 「星を継ぐもの」 
著 者 ジェイムズ・P・ホーガン 
翻訳者  池 央耿
出 版 早川書房 1980年5月 
 
 世界戦争の危機は去り人類の情熱は宇宙に向かっている。明るい人類の未来が今となってはうらやましくも感じる1970年代による近未来描写である。
 話中の時点は2027〜9年だから、今からちょうど10年後。
 読んでいて今の現代を生きていることが悔しくなる程の未来の科学技術の描写。最先端の科学者達を駆使してのSF的謎解きはまるで鑑識物の推理小説を読んでいる様だが、圧巻はハントがガニメデで木星と対峙する情景だった。まるで自分がそこにいるような厳粛な気分にさせられた。SFの醍醐味を感じた瞬間でもあった。
 冒頭コリエルが巨人と形容されていることを読者は知っているが、話中の人々はもちろん知らない。どう回収するんだ!とやきもきしながら、途中の伏線も一向に回収される気配のないまま舞台は地球、月、木星へと移る。
 謎そのものは、日記が解読されたあたりでだいたい見当がついた。でもどのように伏線が絡んでくるのか?どこに「巨人」が絡んでくるのか?興味は尽きずに終盤へいったと思ったら、あれま、回収しなかったよ。これは続巻を読む必要があるのね。
 それにしても、作者ホーガンのこの知識量と想像力。敬服する。
 余談だが、最後まで読んで、佐藤史生の「夢みる惑星」を思い出した。「星船」で地上に降り立った人びととコリエルが重なる。

【2018.1.1 追記】
 私が伏線だと思っていた冒頭の「巨人」については、日本語翻訳上の偶然の出来事だと詩 音像(utaotozo)さんがご指摘されてました。
詩さんのレビューはこちら→ https://bookmeter.com/reviews/64237196 
こういうことは、一人で読んでいてはなかなか気づけません。読み友の皆様に感謝してます。

2017年3月22日水曜日

0031 夏への扉

書 名 「夏への扉」 
著 者 ロバート・A・ハインライン 
翻訳者 福島正実
出 版 早川書房 2010年1月

 言わずとしれたSFの名作だけど、実はまったく読んだことなかった。おまけに、この詩的な表紙と詩的なタイトルから、初期の萩尾望都や竹宮恵子の作品みたいな、みずみずしい10代の多感な少年が主人公に違いない、と勝手に思い込んでた(笑)。「ウは宇宙船のウ」とか「トーマの心臓」みたいな。いや〜全然違った!頭だけは良いけどさえないおっさんが猫入りボストンバック片手に右往左往するお話だった。
 タイムトラベルもの、といえばその通りだけど、タイムマシンはあくまで脇役で、緻密なストーリーを完成する為に徹している。始め、冗長な描写に若干うんざりしたけど、後半3分の2を過ぎたあたりから、まさにジェットコースターのような怒濤の展開。なんというかSFを読んだ後の読後感ではなく、ジャンル云々でなく上等な小説。始めは冗長だと思っていたあたりも、後半から伏線だと分かってシンプルだけど複雑に絡んだ一本の線に収束していった。いや、予想外に面白かったです。さすが名作の誉れ高き作品。

2017年3月16日木曜日

0029-30 老人と宇宙(そら)3、4

書 名 「老人と宇宙(そら)3 最後の星戦」
    「老人と宇宙(そら)4 ゾーイの物語」 
著 者 ジョン・スコルジー
翻訳者 内田昌之
出 版 早川書房 2009年6月/2010年9月

〈最後の星戦〉
 ペリー再び。もう、絶対うまいこと行きそうな安心感である。
 ゾーイは素敵な娘さんに成長してるし、ジェーンは相変わらずクールで登場からシビれる。ペリーの円熟かつユーモアがあって、引っ越し前の自宅の居間では湿っぽくなれるくらいに人間味溢れる人柄が本当にいい。こういう人だからオトナコドモなジェーンも安心して側にいれるんだよなあ。それにしてもペリー提督が200年間鎖国を余儀なくされていた国に船団率いて到来し、開国させる話だったとは。主人公の名前すら伏線。シリーズ締めくくりとして大満足な一冊でした。
 そしてラスト一行が良い! 

〈ゾーイの物語〉
 思春期の頭の良い女の子が、自分の数奇な運命に抵抗しつつも、家族や大切な仲間のために奮闘する。『最後の星戦』をゾーイ視点から描いた物語である。
 ジェーンはよく頑張ってゾーイを育てたなあ。自分も大きな変化の中で大変な時期だったろうになあ。−ほかの養子がどうなのかは知らないけど、ジョンとジェーンと過ごしてきたあいだ、愛されていないとか、ふたりの子じゃないとか感じたとことは一度もなかった。−というゾーイの言葉が3人の年月の何よりの証拠。終盤のオービン族を前にしての演説は感動的。よく頑張った!と褒めてあげたい。エンゾの最後の詩には泣けた。

2017年3月4日土曜日

0028 老人と宇宙(そら)2 遠すぎた星

書 名 「遠すぎた星」 
著 者 ジョン・スコルジー 
翻訳者 内田昌之 
出 版 早川書房 2008年6月

 CDFの徴兵システムやら、技術やらダサすぎるブレインパルという名称にまで、自分的に微妙に引っかかっていたあれこれに、読み始めて早々にオチがついた(笑)。でも、遺伝子のままに脳を再現したって、経験を元に成長する脳伝達回路の再現はできないんじゃないか?脳マッピングでそれが解決するのか?という疑問はもやっと残る。
 それに宇宙種族同士の存続をかけた戦いの割に事が単純に進みすぎる気もする。とくにエネーシャ族を襲撃するあたり。それはおくとして、ジェレドは選択をし、ジェーンもまた未来を選ぶ。意思とか魂とかはいったいその肉体の
どこに宿るのだろう?切ないけど面白い話ではあった。