著 者 グレッグ・ルッカ
翻訳者 飯干 京子
出 版 講談社 (2010/8/12)
初 読 2019/04/27
アリーナが携帯で「アティカス」と呼びかけて思わず驚いた。そうだこいつ、アティカスだったっけ!
それくらいの変貌ぶり。
複数の偽造パスポートを使いこなし、黒海を中心にグルジア、トルコ、ドバイ、ロシアと駆け回り、次の日にはアメリカに飛びその次はアイルランド。
もはや世界を股にかける裏世界の住人となったアティカス。でも「守る」という信念だけは変わらない。鉄板のいい人であることも。
恋人の妊娠中絶から始まった彼の物語は大きならせんを描き原点に回帰する。
アリーナが身ごもり、人身売買の犠牲となったグルジアで隣家に済んでいた少女を助けだし、アティカスの守るべき家族は3人となる。安息の地をカナダに求め、本当にこれから、家族を守って平穏に暮らしていけるか心底心配。こんなに先行きが心配になる主人公も珍しい。
回帰、といえば、シリーズ一冊目では「守るべき者を守りきれなかった」守護者は、今作ではついに、味方に一人の死者を出すことも無く、少女の奪還を果たした。無傷で、とはいえず、これからも守り続けなくてはならないとはいえ。
祖国への回帰、出発点への回帰、守護者への回帰と、邦題限定とはいえ、良いタイトルを選んでいる。これでアティカスとお別れなのが寂しい。こんな大河ドラマになるとは、最初の一冊では思いもよらなかった。いやあ、堪能した。