原 題 「I HUNT KILLERS」2012年
著 者 バリー・ライガ
翻訳者 満園 真木
出 版 東京創元社 2015年5月
初 読 2021年8月2日
文 庫 414ページ
ISBN-10 4488208037
ISBN-13 978-4488208035
幼い時から殺人マニアの父に“その道”の英才教育を施され、望んでもいないのに殺人シーンのイメージや妄想が頭の中を駆け巡り、同時にいつか自分も父のようになるのでは、という不安に苛まれつつ、正しい人間であろうと努力し続ける悩める高校生が主人公。
小さな田舎町で逮捕された世紀の殺人鬼の一人息子のことを、町内で知らない者はない。父親の逮捕から4年たった今でも、鵜の目鷹の目でたかってくる地元の三流記者や、住民の好奇の目を避けながら祖母と2人でなんとか普通の生活をし、ときとして父親の犯罪の被害者家族に詰め寄られる。
彼の「保護者」である祖母は、シリアルキラーである父の実母。どこから見てもまともではない、偏執的な宗教観と人種差別主義に凝り固まった怒りっぽいアルツハイマー患者で、いよいよ手に負えなくなってきている。しかし、この「保護者」を失ったら児童養護施設に行かなければならないジャズは、祖母をお守りすることで自分のプライバシーを守っている。そんな危うい生活を、親友のハウイーや、最近出来た初めての彼女であるコニー、父を逮捕した保安官のG・ウィリアムに支えられて・・・・・・とまあ、よくも盛ったり、この設定。ただただ関心するばかり。
そんな彼の身辺で、再び連続殺人事件が始まる。
犯人「ものまね師」は、彼の父親ビリーの犯行を再現していた。
次々に発生する殺人事件を追い、犯人を捕まえることで、自分の身の潔白を証明し、自分の存在が“良いこと”の役に立つと証明したいと願うジャズ。
彼の17年の人生のどこをどう切っても悲惨でしかないのに、文のタッチは軽快で、どこかユーモアがある。
頭が良くて粘り強くて、心が折れそうになりながらも、前向きでありつづけようとする17歳男子がとにかくがんばるので、読んでるこちらも応援せざるを得ない、というかぐんぐん引き込まれてしまう。
いつ、どこで「異常」の方にぶれていってしまってもおかしくない。自分でも何が異常でどこからが正常な感覚なのか、常に自分の中の物事への反応を一つ一つ確かめながら、なんとか踏みとどまってまともな人間であろうとしつづけるジャズであるが、重くなりそうな内省も、17歳の少年らしいみずみずしさや軽やかさがあって、不思議な読み心地である。
かれが自暴自棄になったり、自殺したりしないでやっていける強さって、どこに根源があるのだろうと考えると、それがたとえ常軌を逸したソシオパスの歪んだ愛情だとしても父親の愛だったとしたら、悲劇なのか喜劇なのかと悩むところ。
父親であるシリアルキラー、ウィリアム(ビリー)・デントが、32回の終身刑で収監されていた刑務所からまんまと脱獄し、父とジャズの戦いは、これからどう転がっていくのか。一冊目ではまったく先が読めません。次行こう次!
なお、翻訳が相当良い、と思う。それに、邦訳タイトルも非常に良い。この翻訳者、満園真木氏も追いかけたい。
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