原 題 「LUCKY DAY」
著 者 バリー・ライガ
翻訳者 満園 真木
出 版 東京創元社 2016年12月
文 庫 237ページ
初 読 2021年8月8日
ISBN-10 4488208061
ISBN-13 978-4488208066
ハウリー、ジャズ、コニーの短編と、ジャズとビリーの運命の日、G・ウィリアムのビリー逮捕のいきさつ。
キャリア・デイ
日本の中高生も最近はカリキュラムになっているらしい「キャリア教育」・・・・自分の好きなことは、得意なことは、夢は、希望は————って、何の経験も、自己認知もまだまだなティーンにステレオタイプな自己イメージの確立を促したら、将来自分のなりたい職業に就けるのか?って話だ。それよりも、労働の意味とか、人は何をもって報われるのか、とか、自力で食っていくことの重要さを教えてほしい。
自分の好きなことを仕事にできている人間が、はたして世の中の何%いるのやら、学校の先生には自分の胸に手をあてて考えてもらいたいもの。人のやりたがらない仕事であっても、社会的に必要な仕事がある、とりたてて自分の得意分野でなくても、他人や社会との関わりそのものが目的となりうる・・・・・というのは、この本にはまったく関係ない。
卒業して社会に出ている先輩たちの話を聞いて、将来の自分の姿を考える、という、まあいずこも同じカリキュラム〈キャリア・デイ〉の授業を受けるジャスパー16歳。自分の適性、親の仕事、、、、教師の問いかけに、ただただ困惑。可哀想に。結局授業後のアンケートに書いた答えは「安全になりたい」、でも同時に、親に与えられた名前「ジャスパー」ではなく、「ジャズ」を選ぶ。これが彼の自己の確立の第一歩だったのかも。
ハロウィン・パーティー
なんとか女の子を引っかけて童貞を喪失したいハウリーが、田舎町の悪名高い有名人ジャズとその彼女コニーを引き連れ、ちょっと離れたよその町のハロウィンパーティーに紛れ込む。
本当の気持ちは、いつも周囲の好奇の目にさらされている親友を、周りに誰も知っている者がいない、普通の人にとって普通な場所に連れ出したかったから。そしてもちろん、自分の冒険も。ハウイー、良い奴。
仮面
ジャズと演劇クラブ。ぜったいに人目に立つことなんかしたくないはずのジャズが、なぜ演劇部? もちろんコニーに引っ張りこまれたに決まっているが、自分も他人もコントロールする術を叩きこまれてるジャズは、なるほど、演劇と相性がよかった。それにしても白い仮面のパントマイムは怖すぎ。嫌がりながらも、自分ひとりで一生懸命考えて(たぶん練習もして?)きただろうジャズが真面目で愛おしい。
運のいい日
平和な田舎町で起こった殺人事件。それを追う老齢に差し掛かった保安官。犯人はまさかの町の住民だった。踏み込んで拳銃を突きだした先には、13歳の少年ジャスパー。手には父の宝物の数々。言われたとおり、手に持ったボストンバッグを床におとし、手を上げる少年。この日、ジャスパーの狂った世界は、正しい世界にむけて崩壊した。
0 件のコメント:
コメントを投稿