2年ほど前に義父が亡くなってから、某中部地方の大きな一戸建てで独居していた義母が、やはり一人では寂しいと都下の高齢者住宅に移り住んだのが先の冬。
住んでいたのは義母が50代に入ったころに、やはり独居となった義父の母(つまり義母からみたら姑)と同居するために移り住んだ義父の故郷。日々の買い物に行くも車が必要な地域で、80代になった義母が車の運転を続けているのも心配なことだった。サービスが良く、良いコミュニティを創っている高齢者住宅があることを義母が親戚の伝手で知り、そこならば、と私と夫も賛成して、転居の運びとなった。
ワンルームに持ち込める家財はごく限られており、家のサイズにふさわしく物持ちだった義母は思いきって身の回りのものだけ持って東京に移り住み、今のところ、日々楽しく充実しているとのことなので、良かったと思う。
のこる問題は、あとに丸々残してきた、家と家財である。
思い切りよく「全部任せる」と言っていただいたのはありがたい。
こちらの住まいも狭いので、引き継げるものにも限りがある。買い手・貰い手がつかないものは、すべて(廃棄業者にお金を払って)処分する、とはあらかじめ夫が決めてあり、見積もり合わせをして、処分業者もすでに決めてあった。
大画面のテレビや、ブルーレイレコーダー、大型の空気清浄機などは、ネットコミュニティ経由で地元で引き取り手が見つかった。
それにしても、だ。
義母はもともと多趣味なお人なので、お茶、お花、短歌、手鞠を始めとして手芸作品は、完成品から制作途中の半作品そして大量の道具と材料。とにかく、私が知っているありとあらゆる「手芸」のテキスト本と材料と作品が、それはそれは大量に、家のあちらこちらの物入れから出てくる。
和室にはお茶の炉が切ってあるし、お茶室の設えがあるということは、窯からなにから、茶道具は全て揃っている。華道教授の看板もある。掛け軸やら、花器やら、お茶やお花に付随ずるものもはたぶんすべてある。以前は盆暮れに一族が集まったのだろう、大きな盛り皿やら、漆器の銘々皿なんかも沢山。座敷の座卓も、それは立派で重いものが残されている。着物は、義父の両親の代のものから残っている。
託されたとはいえ、人の人生ぜんぶ丸々処分しなければならない気分になってしまって、閉口する。
せめて、螺鈿の細工の大きい立派な座卓と、着物、茶道具、花器、飾り額、本、民芸家具調の本棚、そしてモノを見て捨てがたくなったウールの中国段通の絨毯だけは何とかしたいと、このゴールデンウイーク中、文字通り我ながら奮闘した。
クロネコさんの家財便が3本。修理に出す家具の引き取りで1本。絨毯クリーニングの引き取りは佐川さん。その他、古本買い取りの集荷が2回、宅急便の送り出しが3回。古物や着物の出張買い取り業者さんが3件。
状態の良い本棚は一本を自宅に、一本を夫の仕事場に送り、合わせて夫、私が計8箱ほど自分用に本を抜き取った。それ以外でまだ多少の価値はあるのでは、と思えた残りの本やDVDセットはネット古書業者に合わせて15箱を買い取りに出した。(それでも、本は「少ない」と思えたのは、自分の自宅の本棚と、自分の実家にある本棚が尋常ではない物量だからだ。)
貴金属類はまるで査定の対象にならず、茶道具、花器、掛け軸その他、置物・飾りものの類は地元の古物商に一把ひとからげで、引き取ってもらった。二足三文だったことは判っているが、廃棄されるよりは、次の持ち手に引き継ぐ手間を取ってもらったと考えれば、良かったと思える。
今買ったら四、五十万はするのでは、と思えた中国段通の絨毯は、染みがあちこちにあったので専門クリーニングの業者に出し、クリーニングはとりあえず1年、保管してもらうことにする。次の置き場所は、1年のうちに考えよう、という「先送り」戦法。
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修理前 |
何よりも私が手元に残したかった、義父が使っていたというロッキングチェアは、座面に割れが生じていたので、メーカーに修理に出した。(夫は、これこそ真っ先に廃棄だ、と思っていたとのことで、私が大枚はたいて修理に出すというので驚いていた。実際、新品と遜色ない修理代がかかったが、木製家具の古色は金では買えない。)
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修理後 |
着物も出張買い取りの業者さんを呼んだが、買い取りしてもらえたのはほんの一部で、自宅の近くの着物リサイクルショップに持ち込めそうなモノを一箱自宅に送り、黒無地(喪服)一式と、正絹と、おそらくは夫の父方祖父が着用したと思しき紬のアンサンブルなどの着物何枚かは手元に残すことにした。この会ったこともない義理の祖父の着物は、他の着物が綺麗だったのに比して、白カビがびっしりと生えていた。おそらく、日常着として着用し、愛着のあったものだと想像する。(持ち帰ってから、カビ抜きクリーニングに出した。)しかし、これらを収納するためには、自分の箪笥の着物や浴衣をいくらか処分しなければならない。それ以外の、商品にはならない沢山の着物は、置いてきた。
家具類もほとんど、買い取り業者に引き取ってもらえなかったので、廃棄するしかない。
あとは、手放すに忍びなかった、漆器、お重箱、お茶碗、小ぶりの花瓶、日常使いの染付けの和食器とガラス器を少々、義母手編みのレースの大作のテーブルクロス数枚、セーター数枚などを自宅に向けて発送し、仏壇はお経を上げてもらって「仏壇仕舞い」をしてから、仏壇専門業者に引き取ってもらい、仏壇にあったご本尊、お位牌、遺灰は、さすがに宅急便では送れないので、丁重に梱包して、手で持ち帰り、これは後ほど義母の住まいに届ける予定。
頑張ってはみても、結構な惨状であることには間違いなく、自分の時には、こうならないようにしよう、と思う。
厳選したし、自宅に戻ってからリサイクルに出すものもあるとはいえ、夫の実家から自宅に発出した荷物は段ボールで20箱近くになる。きちんと家の中に収納するためには、まずは自分の持ち物の断捨離が必要だ。
とりあえず、和箪笥にスキマを作るため、あまり思い入れのない着物をいくらか処分し、食器、絵本、子供達の古い作品やランドセル、もう使うことはないだろう水槽なども、少しずつでも処分しよう。そうしよう。
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