2023年5月30日火曜日

0427 線は、僕を描く (講談社文庫)

書 名 「線は、僕を描く」
著 者 砥上 裕將
出 版 講談社  単行本/2019年7月  文庫/2021年10月
文 庫 400ページ
初 読 2023年5月29日
ISBN-10 4065238323
ISBN-13 978-4065238325
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114024579
 凄く真面目に人間の存在に切り込んだ作品を読んだので、こちらも真面目にレビューを書いてみる。

 万物は生々流転する。

 命は一つのところに留まってはおらず、流れの中に、因果の中に存在する。その流れそのものが命の本質であって、存在の本質である・・・・・といったことを、四六時中考えていた頃もあったのだ。なんとこの私にも。この本は、そんな自分を思い出させる。そして、その頃の自分の得た境地は間違っていないと思わせてくれる。

 移ろいゆく生命の儚さが強さであり美であり、命のあり方を表現する過程そのものが水墨。画仙紙の上に残った水墨画はその生命の美の名残に過ぎないのかもしれない。しかし紙の上にのこった筆跡から、線から、その命の体験を追うことができるのは人間の精神性の高さ故なのだと思う。

 主人公の青山霜介は、2年前、高校生のときに突然の事故で両親を失った。

 大切なものをある日唐突に失ってしまった心は惑い、他者や世界との接点を失って自分の内側に引きこもった。しかし、人とのかかわり方を忘れ、心の動きが途絶えた中でも彼の中の生命は脈動することを請い望み、それに気づくことのできた人が、水墨画の巨匠であった篠山湖山先生だった。

著書の砥上裕將さんは、水墨画家であるとのことで、そうであればここに表現された水墨画の本質は、本当に本当なんだろう。読んでいても理解が及ばないと思ったところもあるが、ここに表現された水墨が本質とするところは、腑に落ちた気がする。それは、このレビューの冒頭にあるように、私自身が、生命や人間存在の本質について考え続けたことがあったからかもしれない。

 流れ、移ろい、変化していく時間の中で、個人という存在がどれだけ儚いものであるのか。ましてや一輪の花であれば、一瞬の瞬きにも満たないだろう。しかし、そこに美がある。美とは生命そのもの、それでは生命とは何なのか。それに何の価値があるのか。
 人の本質は関係性の中にある、とずっと考えてきたが、人だけではなく、命そのものの本質が関係性の中にあるのだ、とこの本を通じて思った。花の美しさが見る人の心に映る、花は現実のものとしては人の中には咲かないが、人の中に記憶を残す。その記憶が、時に人を動かし、人を変えることすらあるだろう。水墨が描く線は、そのような命の在り方を描いているのだろう。

 探偵も警察も、拳銃もミサイルも謎もスパイも犯人も出てこない小説を果たして自分は読み切れるのかと思ったが、ちゃんと読めた。良かった。

2023年5月26日金曜日

0426 ジャベリン・ゲーム サッチョウのカッコウ (ハルキ文庫)

書 名 「ジャベリン・ゲーム サッチョウのカッコウ
著 者 田村 和大    
出 版 角川春樹事務所  2023年2月
文 庫 317ページ
初 読 2023年5月25日
ISBN-10 4758445419
ISBN-13 978-4758445412
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/11395961  

 流石に17歳の高校生にいきなりCIA入局を迫るのは荒唐無稽ではないか?などど最初に思ってしまったのだが、ああ、でもジェントリーが犯罪を犯してCIAにスカウトされたのはそのくらいだったかも? 海外小説だと気にならないのに、日本の小説だと気になってしまうのは、やはり国内モノだと“常識”に捕らわれてしまうのだろうか。こういうところで蹴躓いているとせっかくの面白いストーリーに乗れないので、ここはグッとこらえよう。
 大学教授だった父が首を縊られた異様な姿で息絶えているのを発見した17歳の穣は、両親がCIAのエージェントだったことを知る。この時から穣は、父の死を解明し仇を取るため、CIAのエージェントとして育成され、そののち日本の警察組織に潜入して、公安内のロシア諜報組織を追うことを運命づけられる。 
 
 というわけで、日米ハーフの警察官僚が実はCIAのアセットで、米軍で盗まれ、日本国内に持ち込まれ、ロシアに利用されようとしているジャベリンミサイルの行方を、警察の特別調査班の顔をしながら、実は米国大統領命を背負って追う。という和製エスピオナージ。主役の穣(じょう)が、有能な指揮官でユーモアもあり、悩める青年でもあり、で誰かに似ているなあ、と思ったのだが、私の大好きなマックス・ロビショー少佐(『栄光の旗のもとに』ハヤカワSF文庫)と似ているのだな。経験値のすくないデスクワークよりの警察官僚であるはずだが、サクサクと現場指揮をとり、ロシアスパイの陰謀を追いかける。手持ちの兵隊が少ないので、西条刑事がこき使われているのが若干気の毒であるが。銃撃戦あり、海(海上保安庁巡視船)もあり、カーチェイスがないのが不思議なくらいの盛り沢山を、さくっと軽いノリで描く。
 ほんとにこの追跡劇をこの少人数でよいのか?という少数精鋭チームなのだが、最後のびっくり箱のような種明かしには参った。息子の本当のハンドラーは実はかーちゃんなのか?
 そして、父の敵、のロシアスパイはこれからどうするんだ? 事件は一応の解決を見たが、本当のクローハンマー作戦の展開はこれから。今作は役者紹介に過ぎないようだ。私としては西条刑事の今後の不幸を見定めたいところ。ベロニカと美和が実は同級生、とか親友、みたいな展開を希望。
続刊を期待。

2023年5月21日日曜日

0425 機捜235 (光文社文庫)

書 名 「機捜235」
著 者 今野 敏    
出 版 光文社 単行本 2019年3月/文庫2022年4月
文 庫 312ページ
初 読 2023年5月20日
ISBN-10 4334793401
ISBN-13 978-4334793401
読書メーター  
  
 今野敏さん初読み。すごく読みやすくて、一日で読了できてしまった。面白かった。
 「機捜」機動捜査隊。覆面パトカーで都内を巡回し、事件が起きれば駆けつけて初動捜査を担う。刑事の花形、捜査一課を目指す若手のエリートコースの一つなのだそうだ。『機層235』とは“俺”こと機捜隊員の高丸と、そのバディがのる覆面パトカーのコールサイン。無線で呼び合うときに名乗るやつ。
 所属は警視庁第二機動捜査隊。渋谷署内の分駐所に所属する。最初読んでいて分駐所とはなんぞや、と思ったが、この機捜は警視庁所属なので、所轄の渋谷署にいても渋谷署の所属ではなく、あくまで本庁の分駐所という立場なんだな、と理解する。
 高丸は将来は捜査一課にも行きたいと意欲を燃やす元気な若手。バディを組んでいた気心のしれた同期が、生憎と任務中に怪我をして一時戦線を離脱し、その間新たに高丸のパートナーとして着任してきたのが、なんと定年間際の白髪頭のおっさん。
 冴えない・目立たないしょぼくれた中年の縞長は、階級もまだ若い高丸と同じ「巡査部長」。一体何なんだ!といぶかしいやら腹立たしいやらで困惑する高丸だったが、このおっさんが実はタダ者ではなかった、という、ある意味安定のバディもの。

 最初はギクシャクする凸凹バディだが、この縞長が犯人を見分ける「見当たり捜査」のプロフェッショナル。巡回の車中から、町中の雑踏にまぎれる指名手配犯を一目で見分ける。さすがに犯人を追いかけての全力疾走はきつくても、犯人と相対したときの、柔道3段、合気道5段の逮捕術は逸品。このおっさん、機捜でのキャリアは長い高丸も目を見張る(地味な)活躍を見せるのだ。
 高丸は縞長の現場の捜査員としての心意気に、縞長は高丸の熱意にそれぞれ感化されながら、信頼を深めていく短編連作。サクサク読めて面白いです。続刊も読みたいけど、文庫本化待ちだな。

2023年5月19日金曜日

0424 スティグマータ (新潮文庫)

書 名 「スティグマータ」
著 者 近藤 史恵        
出 版 新潮社 単行本 2016年6月/文庫 2019年1月  
文 庫 402ページ
初 読 2023年5月19日
ISBN-10 4101312656
ISBN-13 978-4101312651
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/113841586

 ヨーロッパで日本人の先陣を切って走っているチカもすでに5年。30歳になり、すでにベテランの域に達している。ツールで総合優勝を飾ったこともあるミッコのアシストとして知っている人も多い。日本での相棒である伊庭も今年からヨーロッパのチームに移籍し、ツール・ド・フランスでのステージ優勝を虎視眈々と狙う。チカは新しいオランジェフランセというチームに加わり、ニコラのアシストを務める。
 少々陰鬱なところもある思索に耽りがちなチカの語りに付き合って、うっかりするとこちらも鬱々としてきそうだ。これ、体調が悪いときに読んだら本当に鬱るかも。それでもなお、走り続けるレーサーであり、スポーツである。自転車レース鑑賞の経験が乏しい私はつい、何回も観た『茄子ースーツケースの渡り鳥』と比較してしまうのだが、まあほぼ、テーマは同じなのかな、と思う。
 人生に起こりえた様々な出来事や幸福や安楽を辛く厳しいロードレースに捧げ、そのことに苦しみながらも、なお、走ることを止められない因果な選手達の物語だ。
 そんなせいで、このストーリーの核心にいるチーム・ラゾワルのメネンコが私の脳内で『茄子』に登場するチーム・ゴルチンコのザンコーニの絵になってしまうのも仕方がない。幸いにして、チカがぺぺの絵になることはない。絶対にない。
 
 前作を読んだ時にも書いたが、チカの闘い方は、日本人的だ、と思う。参謀に重きをなす。大将を支え続けるナンバー2。大石内蔵助、弁慶、土方歳三、オーベ・・・(違うか?ここはキルヒアイスか?)、主君に殉ずることを美徳と捉えることのできる日本人は、アシスト向きかもしれない。そのチカは、冷静な観察眼と、培った経験と人脈でレースの行方を自分なりに見切り、ニコラを支える。チカの価値に気づけないなら監督失格だろう、チカが来年の契約を獲得できて良かった。ついでにニコラがまた、相変わらず可愛い。
 チカが、3週間続くツール・ド・フランスを全力で駆け抜けながら、私も一緒にツールに連れて行ってくれる。僥倖である。

 大変余談であるが、職場にいく道中の坂道で、同じ職場の方と「この坂道がね〜」という話になり、ついうっかり、「この坂道を超えれば後は平坦だから!」と口走った私であった。

2023年5月13日土曜日

0423 ペダリング・ハイ (小学館文庫)

書 名 「ペダリング・ハイ」
著 者 高千穂 遙        
出 版 小学館  単行本2017年11月
         文庫 2019年12月
文 庫 381ページ
初 読 2023年5月15日
ISBN-10 4094067264
ISBN-13 978-4094067262
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/113752414


 読んだらとりあえず、自転車を買いたくなる、そして走りたくなること請け合い。スポーツ車を買いたいのはもちろんだが、素人には本格的なロードバイクは難易度が高い。自分はドロップハンドルはブレーキや変速機を使いこなせる自信がない。んなわけで、街乗り用のスポーティに「見えて」格好良くて、お手頃価格なのを探すことになる。あくまでも探すだけ。それよりも放置しているミニベロのタイヤ交換をせねば・・・・・
 このミニベロちゃんは、最愛のクロモリのミニベロを家の前から盗まれたあと、同型のものが見つからず涙を呑んで(?)購入した2代目で、1代目への憧憬捨てがたく、どうしても扱いがぞんざいになっている可哀想な子。それでも手元に来たときにブルホーンバーハンドルをフラットに付け替えたり、自分のこのみにあわせて多少はカスタマイズしたのだ・・・・・んなことは置いておいて、だ。
 大学進学で東京に念願の一人暮らしを始めた主人公こと日夏竜二。進学した大学は「八橋大学」なんなんだ八橋って? 二橋大学じゃだめだったのか?とかも置いておいて。家庭の事情とやらで調布市深大寺に居を定めたものの、普段の足に自転車が必要。多摩の若葉台に住む叔父から譲り受けた従兄弟のロードバイクはかなり老朽していて・・・・・
 必要に迫られて入った自転車屋で、その自転車屋を拠点にしている自転車レースチームの面々に取り囲まれ、その熱波に巻き込まれて、あれよあれよというまに競技に参加することになっていく主人公と、仲間達が、熱い! 近藤史恵氏の「サクリファイス」シリーズはトッププロの物語なだけに、さすがに自分で自転車乗ろうという気分にはならないのだが、この本は確実に、確実に自転車に乗りたくなる。私もこんな風に熱い青春を送りたかったわ〜と、なんとなく切なくもなるのはあくまでこちらの個人的事情であって、とにかく自転車競技の基礎や用語、チーム競技のノウハウなども満載され、これから、ツールやらの自転車競技の観戦も面白くなるに違いないオススメの一冊である。

0422 悪しき正義をつかまえろ ロンドン警視庁内務監察特別捜査班 (ハーパーBOOKS)

書 名 「悪しき正義をつかまえろ ロンドン警視庁内務監察特別捜査班」
原 題 「TURN A BLINF EYE」2021年
著 者 ジェフリー・アーチャー    
翻訳者 戸田 裕之    
出 版 ハーパーコリンズ・ジャパン 2022年10月
文 庫 528ページ
初 読 2023年5月12日
ISBN-10 4596754411
ISBN-13 978-4596754417
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/113712654 

 今作もずっしり重い。隅から隅まで、エピソードがまるで英国菓子のクリスマスプディングのように混ぜ込まれてぎっしり詰め込まれている。
 警察物、捜査物、裁判物として、いろいろと不満が無いわけじゃない。
 ある意味大味な作品でもあって、例えば脱獄した重犯罪人が海外逃亡した挙げ句に外国で死体になったら、死体の返還を求めないのだろうかとか、英国とスイスの捜査協定ってどうなってるんだ、とか、いくらなんでも顔の現認ぐらいできるだろーが、とか。スコットランドヤードは退職した汚職警官から制服や通行証や身分証を返還させないのか?(それあり得ないでしょ?)とか、囮捜査と隠密捜査がごっちゃになっていないか、とか、証拠品を押収する際に、それが置いてあった状況やら証拠品を写真撮影しないのだろうか、とか。もし、証拠写真があったら、裁判で開示された写真が現物ではないことが照明できないか?・・・・・などなど、引っかかるポイントは多々ある。しかしまあ、そうは言っても、この作品が面白いことには間違いない。

 クリスティーナもまだまだ何枚も化けの皮をかぶってそうだし、この狐と狸夫婦の今後の波乱も楽しみのひとつ。次は殺人班ということで、サクサク出世していく主人公、いちおう次作も楽しみにしている。



  

2023年5月7日日曜日

「家仕舞い」始末記

 2年ほど前に義父が亡くなってから、某中部地方の大きな一戸建てで独居していた義母が、やはり一人では寂しいと都下の高齢者住宅に移り住んだのが先の冬。
  住んでいたのは義母が50代に入ったころに、やはり独居となった義父の母(つまり義母からみたら姑)と同居するために移り住んだ義父の故郷。日々の買い物に行くも車が必要な地域で、80代になった義母が車の運転を続けているのも心配なことだった。サービスが良く、良いコミュニティを創っている高齢者住宅があることを義母が親戚の伝手で知り、そこならば、と私と夫も賛成して、転居の運びとなった。
 ワンルームに持ち込める家財はごく限られており、家のサイズにふさわしく物持ちだった義母は思いきって身の回りのものだけ持って東京に移り住み、今のところ、日々楽しく充実しているとのことなので、良かったと思う。

 のこる問題は、あとに丸々残してきた、家と家財である。
 
 思い切りよく「全部任せる」と言っていただいたのはありがたい。
 こちらの住まいも狭いので、引き継げるものにも限りがある。買い手・貰い手がつかないものは、すべて(廃棄業者にお金を払って)処分する、とはあらかじめ夫が決めてあり、見積もり合わせをして、処分業者もすでに決めてあった。
 大画面のテレビや、ブルーレイレコーダー、大型の空気清浄機などは、ネットコミュニティ経由で地元で引き取り手が見つかった。

 それにしても、だ。

 義母はもともと多趣味なお人なので、お茶、お花、短歌、手鞠を始めとして手芸作品は、完成品から制作途中の半作品そして大量の道具と材料。とにかく、私が知っているありとあらゆる「手芸」のテキスト本と材料と作品が、それはそれは大量に、家のあちらこちらの物入れから出てくる。
 和室にはお茶の炉が切ってあるし、お茶室の設えがあるということは、窯からなにから、茶道具は全て揃っている。華道教授の看板もある。掛け軸やら、花器やら、お茶やお花に付随ずるものもはたぶんすべてある。以前は盆暮れに一族が集まったのだろう、大きな盛り皿やら、漆器の銘々皿なんかも沢山。座敷の座卓も、それは立派で重いものが残されている。着物は、義父の両親の代のものから残っている。

 これを、全部ゴミにしなければならないのか?

 託されたとはいえ、人の人生ぜんぶ丸々処分しなければならない気分になってしまって、閉口する。
 せめて、螺鈿の細工の大きい立派な座卓と、着物、茶道具、花器、飾り額、本、民芸家具調の本棚、そしてモノを見て捨てがたくなったウールの中国段通の絨毯だけは何とかしたいと、このゴールデンウイーク中、文字通り我ながら奮闘した。
 クロネコさんの家財便が3本。修理に出す家具の引き取りで1本。絨毯クリーニングの引き取りは佐川さん。その他、古本買い取りの集荷が2回、宅急便の送り出しが3回。古物や着物の出張買い取り業者さんが3件。
 状態の良い本棚は一本を自宅に、一本を夫の仕事場に送り、合わせて夫、私が計8箱ほど自分用に本を抜き取った。それ以外でまだ多少の価値はあるのでは、と思えた残りの本やDVDセットはネット古書業者に合わせて15箱を買い取りに出した。(それでも、本は「少ない」と思えたのは、自分の自宅の本棚と、自分の実家にある本棚が尋常ではない物量だからだ。)

 貴金属類はまるで査定の対象にならず、茶道具、花器、掛け軸その他、置物・飾りものの類は地元の古物商に一把ひとからげで、引き取ってもらった。二足三文だったことは判っているが、廃棄されるよりは、次の持ち手に引き継ぐ手間を取ってもらったと考えれば、良かったと思える。
 今買ったら四、五十万はするのでは、と思えた中国段通の絨毯は、染みがあちこちにあったので専門クリーニングの業者に出し、クリーニングはとりあえず1年、保管してもらうことにする。次の置き場所は、1年のうちに考えよう、という「先送り」戦法。
修理前
 何よりも私が手元に残したかった、義父が使っていたというロッキングチェアは、座面に割れが生じていたので、メーカーに修理に出した。(夫は、これこそ真っ先に廃棄だ、と思っていたとのことで、私が大枚はたいて修理に出すというので驚いていた。実際、新品と遜色ない修理代がかかったが、木製家具の古色は金では買えない。)

修理後
 着物も出張買い取りの業者さんを呼んだが、買い取りしてもらえたのはほんの一部で、自宅の近くの着物リサイクルショップに持ち込めそうなモノを一箱自宅に送り、黒無地(喪服)一式と、正絹と、おそらくは夫の父方祖父が着用したと思しき紬のアンサンブルなどの着物何枚かは手元に残すことにした。この会ったこともない義理の祖父の着物は、他の着物が綺麗だったのに比して、白カビがびっしりと生えていた。おそらく、日常着として着用し、愛着のあったものだと想像する。(持ち帰ってから、カビ抜きクリーニングに出した。)しかし、これらを収納するためには、自分の箪笥の着物や浴衣をいくらか処分しなければならない。それ以外の、商品にはならない沢山の着物は、置いてきた。
 家具類もほとんど、買い取り業者に引き取ってもらえなかったので、廃棄するしかない。

 あとは、手放すに忍びなかった、漆器、お重箱、お茶碗、小ぶりの花瓶、日常使いの染付けの和食器とガラス器を少々、義母手編みのレースの大作のテーブルクロス数枚、セーター数枚などを自宅に向けて発送し、仏壇はお経を上げてもらって「仏壇仕舞い」をしてから、仏壇専門業者に引き取ってもらい、仏壇にあったご本尊、お位牌、遺灰は、さすがに宅急便では送れないので、丁重に梱包して、手で持ち帰り、これは後ほど義母の住まいに届ける予定。

 頑張ってはみても、結構な惨状であることには間違いなく、自分の時には、こうならないようにしよう、と思う。
 厳選したし、自宅に戻ってからリサイクルに出すものもあるとはいえ、夫の実家から自宅に発出した荷物は段ボールで20箱近くになる。きちんと家の中に収納するためには、まずは自分の持ち物の断捨離が必要だ。
 とりあえず、和箪笥にスキマを作るため、あまり思い入れのない着物をいくらか処分し、食器、絵本、子供達の古い作品やランドセル、もう使うことはないだろう水槽なども、少しずつでも処分しよう。そうしよう。

 この間の、読書メーターの「つぶやき」一覧です。
https://bookmeter.com/mutters/253219378・・・ロッキングチェア
https://bookmeter.com/mutters/253508916・・・中国の歴史(書籍)
https://bookmeter.com/mutters/253540142・・・『大東亜戦争写真全輯』第一巻 朝日新聞社 昭和17年
https://bookmeter.com/mutters/253540217・・・『大東亜戦争海軍作戦記録』朝日新聞社 昭和18年
https://bookmeter.com/mutters/253586722・・・薄川土手から、山脈を望む
https://bookmeter.com/mutters/253665004・・・アルプス遠景。槍の穂先が見える。手前は常念岳?
https://bookmeter.com/mutters/253602379・・・ビルマの軍票

https://bookmeter.com/mutters/253722645・・・マサムラのシュークリーム
https://bookmeter.com/mutters/253754903・・・手打ちそば処まつした
https://bookmeter.com/mutters/253759246・・・八十六温館(やとろおんかん)
 
 

2023年5月1日月曜日

2023年4月の読書メーター

あれ? 
今気づいたんだけど、2月、3月と、ブログにまとめをアップしていないね。忘れるほど忙しかったか。ううむそうかもしれない。

4月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:2509
ナイス数:623

警視の慟哭 (講談社文庫)警視の慟哭 (講談社文庫)感想
『警視の謀略』から3年待って待望の続刊。前巻ラストが「待て!次回」状態だったので、待つのが辛かったわ。内容はさらに3作前の『警視の挑戦』の未解決部分から引っ張っているので、関係者が大量な上、すでに人間関係がおぼろげになっていたのでやむを得ず人物リストを作成。巻頭の登場人物紹介じゃあ、足りない(笑)。シリーズが進むごとに登場人物が増えて、群像劇になっているのと、ジェマとキンケイドがそれぞれの事件にあたるスタイルなので、かなり細かくシーンを割っているのが読んでいてちょっと忙しなかったかな。
読了日:04月26日 著者:デボラ・クロンビー

ボレロ <矢代俊一シリーズ19>ボレロ <矢代俊一シリーズ19>感想
『毒を喰らわば皿まで企画』その19。俊一と父の父子コンサートの一部始終。実は、ものすごく楽しみにしていたこの巻『ボレロ』。だがしかし、期待値を上げすぎて敗北。正直なところ、いや、この巻はさ、たぶん最初から最後までコンサートだろうから、俊一の二股グダグダもあまりないだろうし、人格崩壊した透の出番もあまりないだろうし、音楽シーンだけなら結構読めるのが薫さんだから、久しぶりにいいもん読めるのではないかと、ほのかに(いや大いに)期待していたわけだ。だがしかし。
読了日:04月20日 著者:栗本薫

ホテル・メッツァペウラへようこそ 3巻 (ハルタコミックス)ホテル・メッツァペウラへようこそ 3巻 (ハルタコミックス)感想
背中に刺青をしょった訳あり日本人青年が、フィンランドの田舎町のホテルに住み込み修行を始めて3巻目。彼を見守る周囲の人々が少しずつ増えてくる。『北北西』もそうだけど、雑誌『ハルタ』の定番っぽい話ではあるよな。でも、暖炉の火のようにほのぼのと暖かいのは悪くない。今回はクリスマス。冬のフィンランドの屋外で編み物って、ありなのか?指凍えないのか?と思ったのは私だけ?コックのクスタと師匠の若かりしころの話も織り交ぜ、さりげなくバディ物っぽいのも好き。
読了日:04月16日 著者:福田 星良

ザ・ゲームスターズ(1) (モーニング KC)ザ・ゲームスターズ(1) (モーニング KC)感想
老成した渋い男達を描いたら逸品のオノ・ナツメさん。人には言えない手段で手にした金を元手に財を築いて、NYの高級マンションに暮らすグラントと、そのマンションの守衛兼コンシェルジュのハワード。それぞれに人の心に関する特殊な能力がある。ハワードはなにやら裏社会にもつながりがありそう。深入りしたくない、といいつつ、住人のトラブルに巻き込まれに行く二人。面白くなるのはこれから。やっぱ人間、格好よく年をとらねばね〜。と自省する。
読了日:04月16日 著者:オノ・ナツメ

BADON(7) (ビッグガンガンコミックス)BADON(7) (ビッグガンガンコミックス)感想
ハートが格好よいよね〜、ステキだよね〜。冷静な外見に、決して仲間を見捨てない熱いハートが内側にいる。ヤッカラから密航してきたギャング団の下っ端ティーンエイジャーのダニオ、それに情が動いたジャコモ、ハートの判断を穏やかに受け入れるプリミエラの面々。そして名前を忘れちゃったハチクマのオーナーの彼女。みんなしっかりと自分の足で立って、自分の頭で考えて、当たり前のように人を助ける。そんな当たり前で当たり前じゃあない優しさが今回も素敵だ。ハートの過去がいよいよ気になる。
読了日:04月09日 著者:オノ・ナツメ

幼女戦記 (27) (角川コミックス・エース)幼女戦記 (27) (角川コミックス・エース)感想
『吟遊詩人』撃墜の余波が津波のように、帝国軍各方面を揺るがす。一方のデグさんは、ロシア・・・じゃなくて、ルーシー連邦首都モスコーで暴虐の限りを尽くす。今回は副官ヴィーシャとのけしからんばかりの友情が眼福・・・・ってか、少女二人なら美しいが中身がおっさん・・・・なのは、もう忘れるとするか。
読了日:04月09日 著者:東條 チカ



ドント・ストップ・ザ・ダンス (講談社文庫)ドント・ストップ・ザ・ダンス (講談社文庫)感想
恐ろしく多忙でストレスフルだった2月からこっち、なんとか1ヶ月以上をかけて園長探偵ハナちゃんの最終話を読み切る。1日数ページという恐るべきスピードで。これで練ちゃんに繋がるシリーズは読み切ってしまった。あとはもはやネットでも読むことの叶わない『海は灰色』の刊行を願うばかりです。今年は柴田よしき氏の刊行ラッシュらしい。そのうちの一冊であることを切実に願っています。さて、感想だけど、ハナちゃんの優しさとタフネスに本当に癒される。事件はもっと殺伐とするかと思いきや、
読了日:04月07日 著者:柴田 よしき

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