著 者 田村 和大
出 版 角川春樹事務所 2023年2月
文 庫 317ページ
初 読 2023年5月25日
ISBN-10 4758445419
ISBN-13 978-4758445412
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/11395961
流石に17歳の高校生にいきなりCIA入局を迫るのは荒唐無稽ではないか?などど最初に思ってしまったのだが、ああ、でもジェントリーが犯罪を犯してCIAにスカウトされたのはそのくらいだったかも? 海外小説だと気にならないのに、日本の小説だと気になってしまうのは、やはり国内モノだと“常識”に捕らわれてしまうのだろうか。こういうところで蹴躓いているとせっかくの面白いストーリーに乗れないので、ここはグッとこらえよう。
大学教授だった父が首を縊られた異様な姿で息絶えているのを発見した17歳の穣は、両親がCIAのエージェントだったことを知る。この時から穣は、父の死を解明し仇を取るため、CIAのエージェントとして育成され、そののち日本の警察組織に潜入して、公安内のロシア諜報組織を追うことを運命づけられる。
というわけで、日米ハーフの警察官僚が実はCIAのアセットで、米軍で盗まれ、日本国内に持ち込まれ、ロシアに利用されようとしているジャベリンミサイルの行方を、警察の特別調査班の顔をしながら、実は米国大統領命を背負って追う。という和製エスピオナージ。主役の穣(じょう)が、有能な指揮官でユーモアもあり、悩める青年でもあり、で誰かに似ているなあ、と思ったのだが、私の大好きなマックス・ロビショー少佐(『栄光の旗のもとに』ハヤカワSF文庫)と似ているのだな。経験値のすくないデスクワークよりの警察官僚であるはずだが、サクサクと現場指揮をとり、ロシアスパイの陰謀を追いかける。手持ちの兵隊が少ないので、西条刑事がこき使われているのが若干気の毒であるが。銃撃戦あり、海(海上保安庁巡視船)もあり、カーチェイスがないのが不思議なくらいの盛り沢山を、さくっと軽いノリで描く。
ほんとにこの追跡劇をこの少人数でよいのか?という少数精鋭チームなのだが、最後のびっくり箱のような種明かしには参った。息子の本当のハンドラーは実はかーちゃんなのか?
そして、父の敵、のロシアスパイはこれからどうするんだ? 事件は一応の解決を見たが、本当のクローハンマー作戦の展開はこれから。今作は役者紹介に過ぎないようだ。私としては西条刑事の今後の不幸を見定めたいところ。ベロニカと美和が実は同級生、とか親友、みたいな展開を希望。
続刊を期待。
0 件のコメント:
コメントを投稿