書 名 「世界記憶コンクール」
著 者 三木 笙子
出 版 東京創元社 2009年12月
文 庫 240ページ
初 読 2009年12月
ISBN-10 4488017584
ISBN-13 978-4488017583
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/123170646
《文庫》
出 版 東京創元社 2012年5月
文 庫 300ページ
ISBN-10 4488421121
ISBN-13 978-4488421120
著 者 三木 笙子
出 版 東京創元社 2009年12月
文 庫 240ページ
初 読 2009年12月
ISBN-10 4488017584
ISBN-13 978-4488017583
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/123170646
《文庫》
出 版 東京創元社 2012年5月
文 庫 300ページ
ISBN-10 4488421121
ISBN-13 978-4488421120
心優しい貧乏人の雑誌記者の里見高広(実は出自は良い)と、美人画を得意とする超売れっ子で当人も絶世の美男である絵師の有村礼(性格はワガママ)のコンビが織りなす時は明治の探偵絵巻。なかなか性格のよろしい高広の養父(里見基博司法大臣)もちょくちょく登場する準レギュラーでこれまた良い感じだ。ミステリー調ではあるが、主題は人の優しさと人の世の切なさ。キャラやストーリーもさることながら、描き出される当時の時代感がとても良い。様々な職業や市井の生活のありようなんかが、とても雰囲気よく描かれている。三木笙子さんは丁寧に考証されているのだろうと思う。
第1話 世界記憶コンクール
高広行きつけの質屋「兎屋」の息子はたぐいまれなる記憶力の持ち主だった。その息子のもとに父である質屋の店主が不思議なチラシを持ってくる。曰く記憶力の持ち主求む・・・・ 突飛な条件で人を集め、その裏で何が行われようとしているのか。高広のもとに持ち込まれた相談に、「さあ謎を解け!」と目をきらきら輝かせる礼。話を聞いていくと、その礼にも想起されるものがあった。『赤髪連盟』。礼が熱愛するシャーロック・ホームズの中の一話である。
第2話 氷のような女
高広の養父である、里見基博の若かりし頃の物語。妻のよし乃の出会いの物語。当時の氷売買の様子なんかが詳しい。あの時代に北海道から天然氷を輸送していたのを知って驚き。調べて見ると、そもそもは明治の初めは外国人居留地で氷の需要があり、米国から輸入していたという(通称「ボストン氷」)から更に驚く。このあたりは、この話に触発されて調べたらニチレイさんのHPのコラムに詳しかったのでご参照あれ。→https://www.nichirei.co.jp/koras/ice_history/001.html で、ストーリーの方は、なんとも生臭い、というか、悪人が悪人らしくてイヤだわ〜。基博が志高く政治家を目指しているのがとても気持ち良い一方で、ダメな奴はやはり、どこにでも、いつの世にもいるのだな。ラストで「誤解なんだ」とむくれる司法大臣の里見基博が、歳月を重ねてもラブラブなのが微笑ましい。
そして、もう一つ、史実として大いに驚きだったのが、基博が司法大臣となった話中の30年後、つまり明治40年代には、すでに機械製氷が主流となっていたとの記述。時代の流れの速さと技術革新のスピードを知り、改めて驚嘆した。その当たりの流れもニチレイさんのHPのコラムが詳しい→
あらためて、明治という時代のすごさを感じる。
第3話 黄金の日々
『人魚は空に還る』の中の一話『点灯人』の森恵(もりさとし)君主役の話。苦労人の恵も晴れて上野の美術学校の予科生になり、学友たちと切磋琢磨の日々を送っている。学生時代のキラキラとした輝きそのもののような日々はまさに《黄金の日々》。恵を応援する大人たち、礼と高広も恵の学生生活が嬉しそう。青春って麗しい。第4話 生人形の涙
生人形(いきにんぎょう)って、非常にリアルですごい。あれ、木彫りで作ってるんだろうか。それとも乾漆? 粘土? それとも紙と糊? 電気機械商の南金六町の先代で、からくり人形製作にハマっていたというのは、多分東芝の創業者のことだよね。 ラストの話の放り投げっぷり、というか余韻のある終わり方は、とても三木笙子さんらしい。この話が、高広と礼の出会いであるよう。
広重 名所江戸百景 竹河岸 |
第5話 月と竹の物語 ※文庫本とKindle版に収録
銀座の尾張一丁目の小間物屋・・・・といっても、珊瑚細工や金工品などの高級装飾品を扱う「なよ竹」が、店頭広告のために礼のかぐや姫の絵姿を描いてもらった。礼が高広に語るには、いつになく制作に力が入ったらしい。といっても、礼が心血を注いだのはかぐや姫ではなく、その背景の竹であるとのこと。隅田川の河岸にある竹問屋の「武豊」に通い詰め、何度も習作を重ねたようだ。
店頭のショーウィンドに飾られたかぐや姫の絵の足元には、物語によせた竹の切り株。その中にはなんと金塊が飾られた。
その礼の絵の前に居座りぼーっと絵に魅入る男が一人。
やがて、事件が起こる。
例によって、さあホームズ、解決するのだ!とばかりに迫られる高広(笑)・・・・何しろ、礼の絵もさることながら、本物の金塊を飾ったのかと、それが驚きだ!
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