2024年12月28日土曜日

0528 飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ (祥伝社黄金文庫)

書 名 「飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ」
著 者 井村 和清         
出 版 祥伝社 2002年6月
文 庫 236ページ
初 読 1983年頃
ISBN-10 4396312946
ISBN-13 978-4396312947
読書メーター  
https://bookmeter.com/reviews/125026973

 初読は40数年前。学校の図書館本だった。この本の原稿を書かれた医師、井村和清さんが亡くなられたのが1979年。この本の後書きが書かれたのが昭和55年なので、1980年。
 この40年でおそらく医学は進歩し、昔は死の病だった癌や腫瘍も、当時の感覚からすると驚くほど「直る病気」になりつつあるのではないかと感じている。実際、この本が書かれた頃だったら決して直らなかったろう進行癌から生還した知り合いや同僚を何人も見てきている。

 それでも、人が死を免れない以上は、そして、生と死にまつわる哀しみや苦しみが耐えやすくなるものではない以上は、井村医師が書き残した一言ひとことは、決して色褪せることはないだろう。
 一人の医師が、ひたむきに向き合った患者さんの死。そして自分自身の死。その誠実さ、真摯さと残される人々に寄せる思いに、何度読んでも心を打たれる。

 この本は、前途ある若い優秀な医師であった著者が、膝にできた悪性腫瘍のために片足を切断し、必死にリハビリに取り組み職場復帰したのも束の間、ほどなく両肺に転移が見つかり、ごく短い間に亡くなるまでの間書き綴っられた手記である。最初は私家版で友人や親戚に配り、ほどなくして祥伝社から出版され、ベストセラーになった。私が最初に読んだのは、その最初に出版された新書版だった。その後、2002年に祥伝社から文庫で再版されたのが今回再読したこの本。また2005年には、「まだ見ぬ子」だった次女の清子さんの結婚を機に、奥様の手記を加えて単行本化されている。NHKドキュメンタリー、映画、そして2005年にはフジテレビのドラマ(稲垣吾郎主演)にもなっている。
 当時まだ幼かった長女の飛鳥さんと、妻のお腹の中に宿っていた清子さんに、そして妻に、両親に宛てて、一人のまだ若い医師が一心に書き綴った文章に再読した今も心打たれている。ドラマで知っているひとも多いのだろうと思うが、ぜひ、直接この本を読んで、井村医師の言葉に触れてほしいと願う。
   

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