原 題 THE SECRET CASEBOOK OF SIMON FEXIMAL」2015年
著 者 KJ・チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実
出 版 新書館 2021年12月
文 庫 363ページ
初 読 2026年6月27日
ISBN-10 4403560482
ISBN-13 978-4403560484
読書メーター
19世紀末から20世紀初頭のイギリス(主にロンドン)を舞台にした、ゴシックロマン+M/M。霊能者のサイモン・フェキシマルとその相棒で著述家のロバートの物語。19世紀後半のオカルトに覚えがあれば、面白さはたぶん倍増する。当時の神秘主義の流行や、諸々の作品群へのオマージュに溢れてる。
耳なし芳一みたいに、躰の上を経文ならぬルーン文字の呪文がのたくっているサイモンと、自身の幽霊事件がきっかけで彼に出会って恋をした新聞記者のロバート。2人の出会いの物語から、かずかずのおどろおどろしい事件、2人の関係が恋愛の上でも、仕事の上でも、そして霊的な結びつきの上でも深まる。密やかに愛情深い関係を築き、しかし、第一次世界大戦が始まる。霊能者たちももれなく戦争の道具として利用され、遂に2人も行方不明となった由。しかし、2人のこれまで語られなかった冒険と、秘められ、大切に温められてきた愛を綴った、ロバートの手によるサイモンの事件簿の原稿を手にした、ロバートの長年の友人である編集者のヘンリーは、2人が密かに南欧あたりの人里離れたコテージに居を移し、満ち足りた愛の生活を営んでいることを夢想する。
同性愛即犯罪だった生きにくい時代と、戦争の世紀に突入した世相が、汚水の悪臭漂うロンドン下町の埃っぽく薄暗い汚さ、ゴシックロマンの濃厚な闇と交じりあって、2人の人生に苦難の色を添えている。その中にあって、不器用で実直で有能なサイモンと、直情で陽気で行動力のあるロバートのパートナーシップは最高。暗い世相の中でキラキラと光るような、2人の気持ちを愛おしく感じる。

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