2024年3月15日金曜日

0472 サーベル警視庁 (ハルキ文庫)

書 名 「サーベル警視庁」
著 者 今野 敏 
出 版 角川春樹事務所 2018年8月
文 庫 375ページ
初 読 2024年3月14日
ISBN-10 4758441928
ISBN-13 978-4758441926
読書メータ— 
https://bookmeter.com/reviews/119528864

 自分が50歳を過ぎて、自分の人生が「半世紀」を超えたと意識したあたりから、やっと30年、50年という年月が自分の中の丈で測れるようになった。自分が小さかったころ、まだ家の電話は重い黒電話だったし、駅の改札には駅員さんがいて、改札ばさみをチャキチャキさせながら紙の切符に斬り込みを入れていた。子供のころ、終戦は遙か昔のことだと思っていたが、自分が生まれたころからたった二十数年前の事だった。
 明治維新(明治元年・1868年)鳥羽伏見の戦いから、翌年の函館までを国を分けて戦い、その後38年で日本は、そして東京はどれだけ変化したのか。それを目の当たりにした人々はどういう人たちだったのか。戦いに勝った側もいれば、負けた側もいる。そしてどちらもそれぞれの「戦後」を生きたのだ。そんなことを考えながらの読書となり、明治38年(1905年)の東京、警視庁を舞台とするこの話、正直ストーリーよりも、歴史的な興味の方が勝ってしまった。
 ちなみに、スマホアプリで「東京時層地図」というたいそう優れた代物がある。明治初期から現代まで、地図をミルクレープのように重ねたもの。その時代時代の東京の街の様子が、現代の位置感覚と合わせて観察できるので、明治〜戦前くらいの東京が舞台の小説など読むときには必携。
 藤田五郎(新撰組の斎藤一)のキャラクターなどは正直、どうだろう?あまりインパクトを感じなかったのだけど、かえって既読の新撰組本や、これまでは手を出していなかった斎藤一や永倉新八の本を読んでみたくなった。
 陸軍の中の長州閥や、警視庁の薩長閥、フランス派とドイツ派の対立、同じ長州閥の中でも主流派と反主流派が暗闘していたり、なるほどなあ、と思って読む。
 作中に登場した「黒猫先生」は言わずとしれた、吾輩の作家だが、そういえばあの猫は、実際には黒猫では無かったらしい。本の挿絵が黒猫だったので、黒猫説が広まったか? もっとも、三毛猫説も誤りらしいぞ。ペルシャの如き黄色混じりの淡灰色に漆黒の斑入りだとか。ちょっとイメージしづらいが、ひょっとしてサバトラ?いや、キジトラか?いや、もしかしたらサビ猫かも。

 

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