2022年8月11日木曜日

0380 猫に知られるなかれ (ハルキ文庫)

書 名 「猫に知られるなかれ」
著 者 深町 秋生       
出 版 角川春樹事務所  2016年10月
文 庫 365ページ
初 読 2022年8月9日
ISBN-10 4758440441
ISBN-13 978-4758440448
読書メーター  https://bookmeter.com/reviews/108223639
  
Cedant arma togae, concedar laurea laudi.
武具は市民服に従うべし。月桂冠は文民の誉れに譲るべし。「キケロー選集〈9〉哲学Ⅱ」

 戦後の日本の再生のために、旧日本陸軍諜報部将校らにより密かに結成された諜報機関CAT。その意は「武具は市民服に従うべし。」

第一章 蜂と蠍のゲーム
永倉一馬を藤江忠吾がCATにスカウト。永倉は抵抗しつつも巻き込まれ、GHQ将校を狙う旧陸軍残党との闘いに臨む。

第二章 竜は威徳をもって百獣を伏す
藤江忠吾、本名平塚三郎 長崎出身。陸軍中野学校出身の情報士官。敗戦後の引き上げてきた鹿児島港でMPに捕らえられ、東京に連行される。散々抵抗して血の気の多い米軍情報将校を煽り、願わくば(日本軍人として)銃殺されることを期待したが・・・・。

第三章 戦争の犬たちの夕暮れ
それぞれの敗戦。業火に巻かれて死んだ市民。命からがら日本で生き延びたもの。遠く大陸で死んだもの。なんとか復員できたもの。そして、さらに遠くの極寒の地で辛酸を舐め尽くしたもの。日本の焼け荒れ果てた姿を目の当たりにして願うのは、ただ、肉親の無事だった。
 
第四章 猫は時流に従わない
池袋界隈の闇市での再会。永倉の幼なじみであった元大尉が登場した時点で、イヤな予感しかしない。だがしかし、永倉が良い漢だ。いくらでも続編が書けそうな話ではあるが、続きは出ていないようだ。このくらいの余韻で終わっていたほうが良いのかも知れない。

【この本を読みながら、ついでに仕入れた雑学】
 敗戦直後の焼け野原の東京で、飢えながら必死に生き延びる日本人と、君臨する占領軍。米軍に接収されて通りの名前まで変わった丸の内界隈。(冒頭の丸の内の地図は必見。)代々木の旧陸軍練兵場は、米軍に接収されて中位の米軍将校のための住宅「ワシントン・ハウス」に。内側は日本政府の財政負担で立てられた日本製の米風住宅、外周を塀で閉ざされたこの地区は、サンフランシスコ平和条約後も都心近くの在日米軍住宅として残ったが、後に東京オリンピックの際に日本政府に返還され、米軍住宅はそのままオリンピック選手村として利用された。現在の代々木公園、国立代々木競技場、国立オリンピック記念青少年総合センター。朝鮮戦争当時、アメリカ合衆国大使館軍事援助顧問団(MAAG)の職員として来日し、ワシントン・ハウスに住んでいたジョン・ヒロム・キタガワが、日本人少年達をあつめた少年野球チーム「ジャニーズ少年野球団」を作り、ここから初代ジャニーズの4人が芸能界デビューし、喜多川はジャニーズ事務所を設立。東京のそこここに、今は目に見えない「敗戦後」の日本の記憶がある。まだ、戦争の記憶が新しかったはずの子どものころより、今のほうが、戦後の時間のつながりを濃く感じるのが不思議だ。

緒方竹虎(ウィキペディアより)(明治21(1888)年1月30日生—昭和31(1956)年1月28日没)
 日本のジャーナリスト、政治家。朝日新聞社副社長・主筆。自由党総裁、自由民主党総裁代行委員、国務大臣、情報局総裁、内閣官房長官、副総理など歴任。
 戦前は朝日新聞社の主筆、副社長を務め、2・26事件にも遭遇。戦中の1944年、国家の情報宣伝を行う情報局の総裁に就任。戦後は公職追放を受けたが、解除された後、衆院選に当選。第4次吉田内閣の内閣官房長官に就任し、保守本流の形成に尽くした。首相候補とも言われたが、56年に急死。

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