原 題 「Suspect」2014年
著 者 ロバート・クレイス
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 創元推理文庫 2014年9月
メスのジャーマン・シェパードの軍用犬マギーはハンドラーと共にアフガニスタンにいた。9.11の後、「テロとの戦い」のために米軍がアフガニスタンに侵攻し(アフガニスタン紛争)、タリバンによる自爆テロが増加してきたのが2006〜7年頃と何かで読んだ。
なので、この本の時期を推定2007年と仮定。
軍用犬マギーとハンドラーの別れのエピソードが切ない。戦死したハンドラーを守って味方の米兵にも牙をむくマギー。彼女もまた負傷していた。
一方、パトロール中の銃撃事件で相棒を失ったスコットも、銃創の後遺症で心身ともに満身創痍だった。復職後、警察犬隊を希望したスコットを厳しく見守る上司のリーランド。軍から払い下げられてきたマギーと、第一線から退いても現場にしがみつこうとしているスコット、一人と一頭は出会うべくして出会う。お互いにPTSD持ちだったが、スコットが同じくパートナーを失い戦闘で傷ついたマギーに寄り添い、労りながら信頼関係を深めていく過程は限りなく優しい。そして部下と犬、双方を見守る上司のリーランドがまた良い。事件の謎解きは、これ、ミステリなのかい?と思うほどのあっさりモードだが、でも良いのだ。クレイスは、謎解きを書きたいのではなくて、人を描きたいんだから。
最後の「たっぷり二か月近くうちに住んで愛玩犬になってたのは誰だ」というリーランドのセリフに、スコットの入院中めいいっぱいマギーを可愛がっていたリーランドの姿がうかんでニヤリとなる。
0 件のコメント:
コメントを投稿