2020年5月5日火曜日

0198  Brothers in Valor (Man of War Book 3)

書 名 「Brothers in Valor (Man of War Book 3)」
著 者 H. Paul Honsinger
出 版 47North    2015年6月

 前巻ラストで対クラーグのユニオン伝令艦の任を務めたカンバーランドは、案の定、帰路で使者の首級を上げようとするクラーグ艦隊に待ち伏せされる。今回の敵は巡航戦艦、巡航艦、駆逐艦 計11隻。完全に周囲を封鎖する布陣を取られ、ステルスで息を潜めるカンバーランドに対して、じわじわと包囲網を縮めるクラーグ艦隊。さすがのカンバーランドの艦内にも絶望感が漂い始める。どうするスワンプフォックス。作戦立案はしたが、まずは部下の絶望を戦意で上書きするところから戦闘開始。崇拝する艦長にコーヒー注ぎまくるヒューレット君が愛らしい。
 常々マックスの指揮艦には最低でも前部にミサイル発射管4本が必要だと思っていたが、ホーンマイヤーも同意見だったとみえ、今回、艦隊で改修を受けた際に最新型のミニ対艦ミサイル10発を連射できる高速回転式ミサイル発射装置『イコライザ』を実装。リボルバーのミサイル版みたいなものか? 与えられた装備も盗んだ?装備も存分に使いこなし、不利な状況をひっくり返そうと奮闘するマックス。
 私の愛する機関長“ヴェルナー”ヴォーン・ブラウンは極めて有能かつ常識的な男なので、マックスの非常識な戦法に顎が抜けるほど驚かされる。その会話がこれまた楽しい。
 “この戦術は三日前に二人で検討済みだ”としらっと答えるマックスに「だけど艦長!その議論のまえに二人でケンタッキーでヤンクが蒸留したウイスキーをしこたま飲んでたじゃないですか!正気の沙汰とは思えません!」 マックスの答えは「一言言っておくが、ケンタッキー出身者をヤンクと呼ぶな」。さてマックスが選択した狂気の戦術は?彼らは無事艦隊に戻れるのか?と、これが冒頭の戦闘で1~2章のみ。でもって、ここまでの戦闘はあくまで前菜。メインディッシュはここから始まるのだ。なんて贅沢な。

 このあと、ユニオン支配宙域の辺縁で補給艦と合流し、補給と修理を受け、ホーンマイヤー提督からの封緘命令書を受け取るマックス。彼のキッチンキャビネット(食事をしながら意見交換する幹部士官達)の面々と提督の命令書を吟味するが、不可解な点がある。独立した指揮官として、必要な情報は余さず知っていたいと考えるマックスは、当然マックスがそう考えるだろうとホーンマイヤーも考えるはずだ、と思い至り、カンバーランドに配属されている、ホーンマイヤーの懐刀の情報技術士官ベイルズを使い、ホーンマイヤーが隠した極秘命令(ビデオ)を発見する。ホーンマイヤーは動画の中でマックスに、極めて重大な極秘情報を伝え、マックスに大きな裁量を与える。そしてマックスに語りかける。“お前が身のうちに大きな痛みを抱えていることは知っているが、お前は極めて重要な手駒になっている。戦争を指揮することはつねに犠牲を出すことだが、自分は部下に無駄死にはさせない。必ず帰還せよ”(意訳)と。
 ホーンマイヤーの命令を履行すべくクラーグ宙域の奥深くに侵入するカンバーランドが、味方の補給艦を助けるためにクラーグ艦内で白兵戦になりクラフトが活躍、とか、カッターの名操縦士モーリの栄光とか、間奏のディナーシーンとか、カンバーランドの本来の建造目的であるところの電子偽装の性能を駆使した奇襲攻撃とか。そして、ついに来るべき時がくるのだ。クラーグのいわば“仮装商船戦法”の罠にはまるカンバーランド。致命的な損傷を受け、マックスは決断する。
  "Abandon ship"
 総員の退避状況を報告する副長はこう付け加える。
「巨大な太りすぎの黒猫も一匹シャトルに乗ってます」
 1巻では普通の黒猫、2巻目では太り気味の黒猫だったクルーゾーは「巨大な太り過ぎの黒猫」に進化。この間5ヶ月だ。ご馳走与え過ぎだ。
 カンバーランドは、その最後の務めを果たす。致命的な損傷を受けた亜光速ドライブを直接制御しているのは、重傷を負い、艦と、いや彼のエンジンと運命を共にする機関長ブラウン。そして、ひとつの伝説が終わり、次の伝説が始まる・・・・・はずなのだが、著者ホンジンガー氏の健康不安で、いまだ刊行されず。
お願いです神様。とりあえず、ホンジンガー氏をお助けください。


0 件のコメント:

コメントを投稿