2021年11月17日水曜日

0307-08 ハンターキラー 東京核攻撃 上・下 (ハヤカワ文庫NV)

書 名 「ハンターキラー東京核攻撃 上」 「ハンターキラー東京核攻撃 下」 
原 題 「Dangerous Grounds」2021年
著 者 ジョージ・ウォーレス/ドン・キース 
翻訳者 山中 朝晶 
出 版 早川書房 2021年10月 
文 庫 上巻352ページ/下巻352ページ  
初 読 2021年11月18日 
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/102625713  
ISBN-10 上巻4150414874  /下巻4150414882 
ISBN-13 上巻978-4150414870/下巻978-4150414887
 潜水艦の姿を表示したいがばかりに、シリーズ3作、表紙画像を貼り合わせた。
 遠景に、本作に登場するアーレイ・バーク級駆逐艦〈ヒギンズ〉の姿もあれば良かったのにな。
 
 で、ハンターキラー3作目です。今回は日本の横須賀が前線司令部として登場する。そして、今作ではワードの家族がそろって苦難に見舞われる。
 ワードの息子はアナポリスの海軍兵学校の4年生で、初めての潜水艦乗艦実習。乗り組むのはグアムを母港とするロサンゼルス級原子力潜水艦〈シティ・オブ・コーパスクリスティ〉、むろん実在する艦である。この長い名称の由来は、話中で副長が2人の少尉候補生(1人はワードの息子ジム)に語っている。さて、初の乗艦実習、将官を父に持つジムの苦労やいかに。
 子供が手を離れたワードの妻のエレンは大学で植物学の研究に戻り、野生の蘭の植生を調査するために学生を引率してタイの山奥に向かう。
 フィリピンではイスラム超過激派の武闘集団と宗教指導者が世界を核戦争に導く事を画策し、北朝鮮では老軍事指導者がイスラム過激派をペテンにかけ、自らも核戦争を仕組む。これにアジアの麻薬王の親子の確執が絡み、麻薬捜査官キンケイドも麻薬密売ルートの解明と摘発のためにフィリピンで隠密捜査中。
 数多の思惑がアジアの西から極東まで複雑に絡み合う。北朝鮮の内情とか、イスラム過激派の描写とかの敵側が陳腐なのはいつも通りではあるのだが、関係性が複雑になってスピード感と面白さは、前作よりはかなりアップしている。

 ロシアから盗まれて北朝鮮に密輸された旧ソ連の核魚雷の存在が米国の知るところとなり、捜索・破壊作戦が立案され、司令官にはジョン・ワード准将が任命される。副官はSEAL部隊長のビル・ビーマン。この2人が、SEAL北朝鮮潜入作戦の前線指揮を執ることに。お互いに相手を老兵呼ばわりして皮肉を言い合う老兵2人(笑)。司令部が置かれたのは横須賀米海軍基地。横須賀基地内にある旧大日本帝国海軍司令部だった洞窟が米軍の司令部に転用されている描写に心がざわめく。

 一方、ジョンの息子のジムは、心躍る潜水艦乗務なのに困難に見舞われる。海軍の高官を父にもつ候補生を快く思わないのか、かつて父のジョン・ワードとなにか因縁があったのかは知らないが、案の定、〈コーパス〉の艦長に露骨にいじめられる。が、そこにはちゃんと助けてくれる叩き上げの乗組員達もいて、若いころお父さんと同じ艦に乗り組んだ、という先任伍長が優しくも厳しい助けの手を差し伸べる。

 日本の近海で、訓練よろしく同盟国である米の原潜を追尾する日本の“ディーゼル潜水艦”が米原潜に鬱陶しがられているのも面白い。

 にわかに騒然とし始めた太平洋で、訓練航海だったはずの〈コーパス〉も騒乱に巻き込まれる。妻のエレンの方は、タイの山奥で寄宿したのがなんと麻薬王の邸宅、というこれまた突飛な巻き込まれよう。
 北朝鮮に渡った二発の核弾頭の行方はようとしてしれず、前線司令部に詰めるワードの元に、次々と悪い知らせが届く。息子ジムの乗り組んだ潜水艦〈コーパス〉が消息を絶った。そしてエレンは麻薬絡みの戦闘に巻き込まれてタイの山中で行方が分からなくなる。さらに、海賊にシージャックされて核魚雷を積み込まれ、東京に向かった可能性のある〈コーパス〉には、発見次第撃沈せよとの大統領命令が下されるのだ。

 ジョン・ワードには相当気の毒な展開だが、核弾頭を追ってサウジアラビアまで出張ったSEALの若きリーダー“カウボーイ”ウォーカーも、全編通して非常に憐れである。ウォーカーと同じチームになったダンコフスキー、カントレル、マルティネッリも一蓮托生。ああ、これまでがんばってきたのに(涙)。とくにマルティネッリは、映画『潜航せよ』ではSEALのルーキーとして登場し、負傷しつつもスナイパーとして抜群の技倆を見せたりして良い味だしていたのでまことに残念だ。

 後書きによれば、まだ翻訳出版されていない4作目では、ワードの息子ジムがSEAL隊員として登場するとのこと。ドルフィンマーク(潜水艦乗務員記章)も取得したジムだが、初めての乗務で乗員や同期の士官候補生を目の前で殺される、という経験が、彼を近接戦闘技術の獲得に向かわせたのだろうか。
 何はともあれ、はやく次巻を読みたい。早川書房様、次作の出版もぜひよろしくお願いします。簡単にシリーズ見捨てないでね!

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