2021年11月13日土曜日

0304 まだ見ぬ敵はそこにいる ロンドン警視庁麻薬取締独立捜査班 (ハーパーBOOKS) 

書 名 「まだ見ぬ敵はそこにいる ロンドン警視庁麻薬取締独立捜査班」 
原 題 「HIDDEN IN PLAIN SIGHT」2020年
著 者 ジェフリー・アーチャー 
翻訳者 戸田 裕之 
出 版 ハーパーコリンズ・ジャパン 2021年12月 
文 庫 464ページ 
初 読 2021年11月10日 
読書メーター    
ISBN-10 459601860X 
ISBN-13 978-4596018601
(たぶん)御年81歳のジェフリー・アーチャー御大『クリフトン年代記』の作中作からのスピン・アウト、満を辞して『ウィリアム・ウォーウィックシリーズ』第2弾。

 12月17日発売の先読みプルーフ版を申し込んだら、ハーパーコリンズ・ジャパンから送っていただきました。申し込み者は全員当選したとのこと、ハーパーコリンズは太っ腹です。
 お礼に、もちろん発売日に、買いますよ!だって、表紙が素敵ですから!
 というわけなのでレビューも先出しです。できるだけネタバレ無しでいきたいと思います。

 われらがウィリアムは、昇進の最初の一歩を決め、晴れて捜査巡査部長になっています。いわゆる「部長刑事」というやつです。そうそう、リーバスもシリーズスタートのころは部長刑事でした。ロンドン警視庁(スコットランドヤード)の階級組織については、デボラ・クロンビーの「キンケイド警視シリーズ」で紹介したので、そちらをご照覧ください。
 刑事部Criminal Investigation Department)所属の警察官は、階級名の前に”Detective”(=刑事)が付くので、それを生真面目に訳すと“捜査巡査部長”になります。英語だとDetective Sergeantで、だから略称「サージ」。ここから警視総監までは、あと9階級ほどもある。一冊につき1回昇進するとしたら、あと9作 もかかってしまう計算です。途中いくつか端折るにしても、御大、無事最後まで辿り着いてくれるだろうか?一読者としては、応援するしかない。なにしろ、ウォーウィックは「警視総監になる」とアナウンス済みなので、途中なにが起ころうが予定調和のうち。想定がつかないのは御大の寿命だけなのだ。さあ、次の巻も読ませてくださいな。と天に祈る、というか心から応援する。
 そんな訳だから、内容については、ね。どうせ面白いんでしょ、どーせ、ウィリアムがすくすくと成長するんでしょ、と、ちょっと斜に構えたレビューを書いてやろうと手ぐすね引いていたらば。
 
 なんと!一巻目よりもさらに面白くなってる?
 今回、ウィリアムは昇進の結果新たに麻薬特捜班に配属、、、、のはずなのだが、前回の美術骨董捜査班の看板を付け替えただけで、構成メンバーも替わらず、指揮官もホーク警視正がそのまま続投。ってところに一抹の安直さを感じないでもないけどさ。ま、それはいい。良いチームを解散するに及ばず、という警視総監の意見には、私も賛成だ。その上、今度は宿敵フォークナーを麻薬の線から追いつめることに。
 そして、読み終わって叫ぶよね。「だから、見えない敵はどこにいるんだぁ!!」と。

フェルメール『レースを編む女』
作者ヨハネス・フェルメール
製作年1669年 - 1670年頃
種類キャンバスに油彩
寸法24.5 cm × 21 cm (9.6 in × 8.3 in)
所蔵ルーヴル美術館パリ
 伏線と回収、どんでんにつぐどんでん返し。もう一人のどんでん作家のジェフリーほど手の込んだ大がかりなどんでん返しではないけど、細かく仕掛けてくる。そして英国の捜査ものらしい時間をかけた地道な捜査と逮捕劇、さらに弁護士一家の面目躍如の裁判劇。なのに、悪いやつは逮捕されてるのに何一つ解決していないではないか。見えない巨悪の影すらまだ見えない。次巻は来年の冬に刊行の予定、待ち遠しすぎる。
 次巻では、ウィリアムは警部補になっているらしいが、それよりもなによりも、この巻ラストの問題にどう落とし前を付けるのか、そこが気になって仕方ない。今後の展開にまったく予想がつかない。正座してまっていますので、よろしくお願いします。ハーパーBOOKS。
 なお、蛇足ながら、この巻では、仕事以外でもウィリアムは大きな人生の転機を2回(いや、3回かも?)を迎えます。それはもちろん、夫になること。そしてなんと双子のパパにまでなってしまう!
 美術とも縁がきれた訳ではなく、名画絡みの事件もまだまだ続きそう。
 一生に一度と思い定めたウィリアムの結婚式に、捨て身の嫌がらせをかますフォークナーとはもはや宿敵というより腐れ縁に近い様相を呈している。こちらもどうなって行くやら、目が離せません。



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