2022年1月10日月曜日

0314ー15 ハイラム・ホリデーの大冒険(上・下)ソフトカバー単行本

書 名  「普及版 ハイラム・ホリデーの大冒険 上・下」
著 者 ポール ギャリコ  
翻訳者 東江 一紀  
出 版 復刊ドットコム 2014年4月 
文 庫 上巻/197ページ 下巻/225ページ        
ISBN-10 上巻/4835450515     下巻/4835450523  
ISBN-13 上巻/978-4835450513 下巻/978-4835450520
初 読 2022年1月10日 
読書メーター    
“人間は誰でも、程度の違いはあるが、二重の人生を営んでいる。自分の頭の中にある自分の人生と、友人や同僚の目にうつった自分の人生だ。”
 東江一紀さんの翻訳による児童書、ということで目を引いた作品。主人公は冴えない小太りの中年男でこの冒険譚!しかも1939年の出版でこの内容。よくぞ書いたり。

 東江さんによる「訳者あとがき」は必読。この作品が書かれた時代背景が簡略に述べられていますが、あの当時の情勢を、アメリカで創作活動をしていたポール・ギャリコが的確に捉えていたのはすごい慧眼だと思う。さすがは記者、というか、ギャリコの父はイタリア人、母はオーストリア人で、アメリカに移民したというから、父祖の地の当時の情勢に人一倍敏感だったのかもしれない。(このあたりの事情は下巻の解説に詳しく書いてあった。)
 見栄えもしない冴えない中年の米国人であるハイラム・ホリデー氏に連れられて、イギリス、フランス、チェコスロバキア・・・・(ここまでが上巻で、下巻ではドイツからオーストリアを経てイタリアに向かう。)とヨーロッパを股にかけた冒険を追いかけつつ、ハイラム氏とともに、ナチス・ドイツの暗雲がヨーロッパを覆い尽くすのをひしひしと感じる。その危機感を大西洋を挟んでまだまだ暢気な米国に伝えたようとしたのだろう。アメリカが参戦するのはここから3年後の1941年。日本による真珠湾攻撃を待つことになる。
 下巻は、いきなりハイラム・ホリデーの死刑宣告?! と刺激的な展開となる。ハイラムは、ベルリンに入った当日に“クリスタル・ナハト”を目撃する。目撃するだけでなく、ガマンしきれずに衝動的にSS(?)に殴り掛かり、居合わせた血に飢えた群衆になぶり殺しにされそうになる。そこに助けに割り込んだ絶世の美女。ハイラムは勢いにまかせて・・・・・大人の世界に突撃だ!(これ、児童書だったよな??)
 その後のオーストリア編では、これはサウンド・オブ・ミュージックの原型では?と思えるような、民謡を聴かせるレストランからの逃亡劇して教会の墓所へ身を隠し、決死のアルプス越え。いやすごい。重ねていうが、1939年の作品なのだ。
 そして、ローマ編。ハイラムは、彼の命を奪わんとするファシスト達の陰謀で、後に引くことのできぬ決闘に引き込まれる。。。。。

 下巻の解説を読めば、ハイラム・ホリデー氏が著者ポール・ギャリコの、かくあれかし、という夢の人格であることが判る。まさに冒頭の、“人間は誰でも、程度の違いはあるが、二重の人生を営んでいる。自分の頭の中にある自分の人生と、友人や同僚の目にうつった自分の人生だ。”という一文のとおり。


【第二次世界大戦 概略(アメリカ参戦まで)】
  1936年11月25日ドイツと日本帝国による防共協定
1937年7月7日日本が中国に侵攻(盧溝橋事件・日中戦争)
1938年3月13日アンシュルス(ドイツがオーストリアを併合)
9月29日ミュンヘン協定(ドイツ、イタリア、英国、フランス)。チェコスロバキア共和国の
スデーテン地方のドイツへの譲渡(※作中P.28の「ゴーデスベルグの会談」がこれ)
11月9日クリスタル・ナハト(水晶の夜)
1939年3月14日〜15日スロバキアは独立を宣言、スロバキア共和国を結成。ドイツはミュンヘン協定に反
してチェコの残りの領域を占領し、ボヘミア・モラビア保護領を結成
3月31日フランスと英国がポーランドの国境を保障
4月7日〜15日  イタリアによるアルバニアの侵攻および併合
8月23日独ソ不可侵協定および秘密議定書の調印。東ヨーロッパの分割
9月1日  ドイツのポーランド侵攻。ヨーロッパにおける第二次世界大戦が勃発
9月3日  英国とフランスがドイツに宣戦布告
9月17日ソ連が東からポーランドに侵攻
9月27日〜29日ワルシャワ降伏。ポーランド政府はルーマニアに亡命。ドイツとソ連は両国間で
ポーランドを分割
11月30日
〜翌3月12日
ソ連のフィンランド侵攻(冬戦争)。フィンランドは休戦を求め、ラゴダ湖北岸
と北極海沿いの海岸線地帯をソ連に譲渡
1940年4月9日
〜6月9日 
ドイツがデンマークとノルウェーに侵攻。デンマークは即日に降伏。ノルウェー
は6月9日まで抵抗
5月10日ドイツがフランスおよび中立の低地帯諸国を攻撃。ルクセンブルクを占領
5月14日オランダ降伏
5月28日ベルギー降伏
6月22日フランスが休戦協定に調印。これによりドイツはフランスの北半分と大西洋海岸
線地域全体を占領。ヴィシー政権樹立
6月10日イタリアが参戦。イタリアは6月21日に南フランスに侵攻
6月14日〜ソ連がバルト海沿岸諸国を占領、8月にはそれらの国をソ連に併合
9月13日イタリアがリビアから英国支配下にあるエジプトに侵攻
9月27日ドイツ、イタリア、日本が三国同盟に調印
10月28日イタリアがアルバニアからギリシャに侵攻
11月 スロバキア、ハンガリー、ルーマニアが枢軸国に加盟
1941年2月ドイツが北アフリカにアフリカ軍団を送り、イタリア軍を援護
3月1日ブルガリアが枢軸国に加盟
4月6日〜6月 ドイツ、イタリア、ハンガリー、ブルガリアによるユーゴスラビアの侵攻および
分割。4月17日ユーゴスラビア降伏。ドイツとブルガリアはイタリアを支持して
ギリシャに侵攻。ギリシャの抵抗が1941年6月初旬に終わる
6月22日〜11月 ドイツと枢軸国パートナー(ブルガリアを除く)がソ連侵攻。冬戦争の休戦での
領土喪失の救済を求めるフィンランドは、侵攻の直前に枢軸国に加盟。ドイツは、
バルト海沿岸諸国を制圧し、フィンランドと協力して、9月までにはレニングラー
ドを包囲。
12月6日ソ連の反撃によりモスクワ郊外からドイツ軍が撤退
12月7日真珠湾攻撃
12月8日米国が日本に対して宣戦布告し、第二次世界大戦に参戦。
太平洋地域の第二次世界大戦勃発

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