2022年1月29日土曜日

0319-20 テメレア戦記 1  気高き王家の翼  上・下 

書 名 「テメレア戦記 1 気高き王家の翼 上」 
原 題 「His Majesty's Dragon」2006年
著 者 ナオミ・ノヴィク    
翻訳者 那波 かおり
出 版 静山社 2021年12月(文庫版)
文 庫 272ページ
ISBN-10 4863896409
ISBN-13 978-4863896406
初 読 2022年1月29日

 時はナポレオン戦争の時代。海戦は戦列艦による艦隊戦。そんな世界にドラゴンがいたら、の架空戦記・ファンタジー。生まれてすぐに言葉を人語を交わし、名前を与えてくれた者を主(ハンドラー)とするドラゴンーーー聡明で巨大な生き物、と人間の愛と友情の物語です。これはもう、面白くない訳がない。

 生粋の海軍軍人ローレンスが率いる英国海軍フリゲート艦リライアント号が戦いの末フランスのフリゲート艦を拿捕してみたら、積み荷の中にあったのはドラゴンの卵。しかも博識な軍医によれば、孵化目前とみえる。ドラゴンは各国において極めて貴重な存在で、生まれた時に絆を結ぶ人間がいなければ野生化してしまう。だれかが竜の誕生に立ち合い、ハンドラーにならねばならないがそこは大西洋の洋上。居合わせたのは、すでに海で艦とともに生きると心を定めた海軍軍人たちしかいない。誰がこれまでとこれからの人生を捨てて、ドラゴンと生きる道を取るのか。ドラゴンのハンドラーとなるのは試練の道である。
 人間たちの困惑と思惑をよそに、孵化した幼竜が選んだのは、フリゲート艦リライアント号の艦長ローレンスだった。艦長は幼竜に一流の戦列艦テメレア(テメレール号)の名前を与えた。
 とにかく、テメレアが可愛い。その一言に尽きる。
 孵化直後から人語を解し、好奇心一杯。男の子の幼竜なのです。(しかし、肉食の大喰らいでもある。)
 ふふん。というのが口癖、というか、鼻で笑うような仕草。
 光り物が大好きで、ローレンスからプレゼントされた宝飾品をとても大切にしているのも可愛らしい。
 そして、そのハンドラーとなった、ローレンスがまたイイ男なのだ。成長譚は成長譚なのだが、少年期(12歳)から海軍で育ち、有能で人柄にも優れて部下からも慕われ、すでにフリゲート艦の艦長になっている英国海軍軍人たる主人公のローレンスが、偶然の重なりで竜のハンドラーになってしまい、そこから、人生の進路の変更を迫られ、新たな伴侶(竜)とともにさらに転進していく、というある意味、転職ストーリーなので、ファンタジーといえど、ちょっと渋くて十分大人の読書に耐える仕上がっている。 
 ドラゴンを愛する全ての人へ。読んで損はなし。 余談だが、リライアント号という艦の名前に心がうち震える。 



書 名 「テメレア戦記 1 気高き王家の翼 下」 
文 庫  312ページ
ISBN-10 4863896417
ISBN-13 978-4863896413
初 読 2022年1月30日

 図らずも大洋で生まれて、生後数ヶ月をそこで過ごしたテメレアは、泳ぐのが得意で大好きな竜に育っていた。陸育ちの竜達には水浴びの習慣がなかったようで、湖で泳いで体を清潔にするのを好むテメレアに感化されれた竜達が増えていく。戦闘シーンも面白いが、こういう訓練や戦闘の合間のくつろぎのシーンが楽しい。
 ハンドラーや、クルー、チームのメンバーに大切に世話されている竜達の中で、小型の伝令竜のレヴィタスが哀れ。自分の竜と心を交わさず、道具程度にしか思っていない愚昧で高慢なハンドラーに周囲は皆腹を立てているが、だからといってどうにもできないやるせなさや苦みは、現実に通じるものがあるなあ。開戦に向けた訓練、合間の水遊びや食事、救援、奇襲、スパイ、そして戦闘。ナポレオンとの戦争はまだまだ続く。以下続刊。

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