2024年5月4日土曜日

0485 OBLIVION<矢代俊一シリーズ25>

読書メーター https://bookmeter.com/reviews/120522799   

Amazonより・・・「矢代俊一が渾身の力を込める新アルバムのレコーディング合宿が河口湖のスタジオで開始された。しかし、俊一の父は合宿所に何者かがいるといい始め、その夜にはさらに奇怪な現象が発生するが……明け方に目覚めた俊一は取り憑かれたように曲を書き始める。著者逝去により中断した表題作を収録した矢代俊一シリーズ最終の第25巻。栗本薫が生前に自分の作品をもっとも理解していると信頼していた円城寺忍による解説付き。」

 矢代俊一シリーズ最後の本である。
 薫サン2008年12月の筆。翌年の2009年5月に死去。1章から7章まで、未完。
 なにはともあれ、故人の冥福を祈る。 
 
 矢代俊一グループは、新しいアルバムの収録に富士河口湖畔のホテル兼スタジオを貸し切って臨む。収録にはコアメンバー5人(俊一、サミー、英二、晃市、木村)の他にピアニストの松本弓彦、和太鼓の社中なども参加し、純一の父も参加する予定になっている。新アルバムは『雨月物語』をテーマに、人間の業と救済を表現する。そしてそのホテルで心霊現象に遭遇・・・で、ここからというところで断筆。

 おそらくシリーズ中、もっとも読みやすい普通の文章。どうした薫サン、なにか憑き物でもおちたんだろうか、ってくらい普通の文だ。それが曲がりなりにも小説家に対する褒め言葉か、と思うとなんとも言えん気分になるが、事実だ。
 おそらく前巻でついに金井とキレて、変に俊一に絡みつく男どもがいなくなっているせい。透はついに良に捨てられ、いまや俊一への愛に生きているし。ひっそりと完璧に日陰の身を演じて、すくなくとも修羅場を演じて俊一をかき乱すことはしないし。透の変遷についても、言いたいことは山ほどあったような気もするけれど。これで決別である。

 ついでながら、透について言えば、個人的には、『嘘は罪』に2回ほど出てきたときの透ちゃんが、自分の中では一番だった。あそこが透の最高到達点。まあ、『ムーン・リヴァー』は別格として、こちら、矢代俊一シリーズに登場する透は、薫サンにおもちゃにされた哀れなキャラとしか思えない。今西良もしかり。まあ、外伝の方は読んでないのだけどね。
そんなこんなで、まあ。お疲れ様でした。

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