著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2017年11月
文 庫 551ページ
初 読 2024年5月29日
ISBN-10 4198942145
ISBN-13 978-4198942762
読書メーター
セリフで遊びすぎていて読者の側に置いてきぼり感があるのはいつものことなのだが、なかなかストーリーに入り込めないところが難だ。
あと、女性の形容がステレオタイプでつまらんよ〜。なんだよ、熟女って、美魔女って。(~_~;)
それはせめてアラフィフの女性に使って欲しいよな、などと思いながら読んでいるからか、なかなか進まない。どうにもペースに乗れず、つい、軽く楽しく幸せに読める読書に関心が流れて流れて、読了までになかなか時間がかかってしまった。
甘粕製薬の御曹司の双子、1人は出来が良く、東大ストレート合格、もう1人がどっちかっていうと頭は悪いが行動力があるタイプ。悪くいえば粗暴。そして海外で1人が事故死、となればこれはもう、入れ替わりのフラグでしかない。
で、ネタバレであるが、「腹腹時計」である。ひょっとしてローは「狼」だろう? メッシは滅私だろうなあ、と思っていた。そのうちに話中でネタバレされるけど。
70年代の熱と、それ以降の暴力と殺人の狂気に興味関心はあれど、知識はまるでなかったので、いちいちwikiで調べながら読んでいるうちに、三菱重工爆破事件、法政大学、東アジア反日武装戦線、Lクラス・・・ と繋がって「腹腹時計」に辿りついてしまった。なるほど教科書は、爆弾作成の教本だったと。ハラハラ時計は時限爆弾。滅私が付く爆弾は自爆テロの指南だった。
70年安保から続く組織内の殺人とテロリズムをどのように「総括」するのか。彼らの「社会主義」とはいったいなんだったのか。それに対する意見は人それぞれだとは思うが、純也の言い放つ「ただの犯罪者」というのはまさにその通りだと思う。当時のあの昂りを同時代人は青春と思うか、暗黒史と考えるかは、それこそその人が生きた時間や場所や、たまたまその時に立った場所のほんの偶然、運命のイタズラにすぎない。しかし、もう若くないんだと長髪を切って七三に整え、有名企業に就職したり、官僚になったりして、若き情熱の日々を懐かしむようなことはやはり、勘弁して欲しいと思ってしまう。しかしそれよりも、いい歳になってもそこから抜け出せず「階級闘争」を続けているような人間は、もっと勘弁してほしい。そういう人間には、そうそうお目にかかれるものではないのだけど、もし会ったなら、つい、クシャクシャっと丸めてポイと捨てたくなってしまうだろう。 その点については、なんだか作者と同じ価値観を持っているような気がする。あのような時代に何かの象徴的な文字を当てるとしたら、「未熟」とするだろう。未熟の上に、より良い社会は建たない。人も社会も成熟しなければ。
で、もって、ローの正体については、流石に騙された。なるほどねえ。
そして、その事実を、純也は知り、飲み込み受け止めていくのか。
母の死の原因となったもの、自分のかつての小日向和臣の次男としての「まっとうな」人生を破壊したものの真実、そして、純也が殺害せざるを得なかった存在のこと。
この、底冷えするような冷徹が純也のキャラクターではあるけれど、この寄せ付けなさゆえに、この話にのめり込めないんだよなあ。と少し残念ではある。純也がほんの少しだけ、甘さを見せる造形だったら、多分私の嗜好にクリーンヒットしたので。
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