2025年2月16日日曜日

0540 影との戦い ゲド戦記1

書 名 「影との戦い ゲド戦記1」
原 題 「A Wizard of Earthsea」1968年
著 者 アーシュラ・K.ル=グウィン
翻訳者 清水 真砂子
出 版 岩波書店
 【岩波少年文庫版】
少年文庫版 320ページ 2009年1月発行
ISBN-10 400114588X
ISBN-13 978-4001145885
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/126083295   
 【ハードカバー版(初版)】
単行本 278ページ 1976年9月発行
初 読 1982年〜83年頃?
ISBN-10 4001106841
ISBN-13 978-4001106848

 ここしばらく、乾石智子氏の《オーリエラント》のシリーズを読み込んできたので、ちょっと小休止して、原点回帰。
 
 初読は小学生の頃だったはず。でも良く考えて見ると、この本が収蔵されていた図書室のあった地域の施設がオープンしたのが、小6の夏だったか、秋だったか? それ以前にミヒャエルエンデの『果てしない物語』や『モモ』なども読んでいた気がするが、しかし『はてしない物語』の国内初版って1982年だった?なんだか微妙に記憶と合わない気がしてきた。
 
 まあ、それはともかくとして、とにかくハイ=ファンタジーと呼ばれているジャンルの本を読んだ、最初の一冊だったのだ。それ以来、自分の中でのファンタジーの基準軸になっている作品なのだ。これまでに何回も再読しているけど、ここ20年位は通しでは読んでいないし、シリーズ外伝や『アースシーの風』はまったく読んでいなかったので、改めて手にとる次第である。なお、子供の頃は、ル=グウィンを児童文学作家だと思い込んでいた。むしろ、『闇の左手』などを書いているSF作家なんだと、かなり遅くに知った時には大いに驚いた。だいたい、日本で『児童文学」として紹介されている海外小説って、実際のところ児童向けに書かれたのかは非常にアヤシイと気付いたのも、大人になってから。この『ゲド戦記』は清水真砂子さんの翻訳であまりにも定着しているけど、もう少し大人向けに翻訳されたらどんな本になるのかな、と興味があったりもする。ってか、そういう翻訳があったらぜひ読んで見たい。(いや、それよりも原著で読んでみろって・・・・・?)で、それもさておき。

 ゲドと師匠のオジオンとの関係はすごく好きだ。ゲドのイチイの木の杖はオジオンが手作りしたものだったのか。影についての考察は、すでにいろいろな識者がされているので、私がアレコレいうのもなんだけど、形而上ではあるものの、本来は個人と強固に結びついていなければならないはずの無意識下の集合意識が、個人から切り離されて世間を彷徨うようになってしまったら、あのような存在になるのだろうか。そしてそれは、神や聖霊のように光り輝く高次のものではなくて、やはり暗黒に近い存在なのだろうか。
 人の生は死によって完成する。むしろ、人の生は、長い長い死の瞬間なのかもしれない。その死を恐怖の対象とし、生を否定するものとしてとらえることは、人の生そのものを否定することに他ならない。そのような生は、どうしてもいびつになってしまうだろう。

 影から逃げるのを止めて影に向き合いはじめたとき、影にも変化が現れて、形のない黒いもやもやだったものが、ゲドの姿を取り始める。向き合うことで、だんだん恐怖の対象だったものが理解の対象になってくることの現れだろうか。

 影と向き合おうとしているゲドは19歳。その若さに慄く。でも18歳や19歳というのは、現実社会においても、まだ世間を知らず、己を知らず、未熟な上に未熟なのにもかかわらず、一人で世間に出ていって、その運次第で、良きものにも悪いものにも出会う年齢なのだ。
 自分がこの本を最初に読んだの10代初めに、自分が何をこの本から受け止めたのかは、もはや記憶の彼方だけれど、この本がその時から生涯の愛読書になったことは事実だ。

「生を全うするためにのみ己の生を生き、破滅や苦しみ、憎しみや暗黒なるものに、もはやその生を差し出すことはないだろう。」

 でも、初読の時も今回も、一番好きなシーンは、エスタリオルとゲドの再会のシーンと、
 そして、エスタリオルの妹、ノコギリソウと彼女の小さな竜と、竈でパンを焼きながらの語らいのシーン。
 ハレキ(竜)がパンを一個盗み、ゲドもかまどから熱々のパンをつまみ食い。それにノコギリソウもご相伴。

「ーーーさてと、じゃあ、わたしも兄の分を一つ減らしておきましょうかね。兄もひもじさにおつきあいできるように。」「均衡とは、こうして保たれるんだな。」


 

2025年2月10日月曜日

0539 沈黙の書 (創元推理文庫)

書 名 「沈黙の書」
著 者 乾石 智子    
出 版 東京創元社 2017年7月
文 庫 373ページ
初 読 2025年2月15日
ISBN-10 4488525075
ISBN-13 978-4488525071
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/125941006

 きっと私の心が荒んでいるからに違いない。なんというか、最後のほうまで、物語が自分の中にしっくり馴染まなかった、ような気がする。
 寓話的・神話的な部分と、生々しい人間の欲望や戦乱の部分、これがどうしても、一本の綱のように寄りあわないまま終章まで。そもそも物語の中に沢山の「星」が出てくるんだけど、自分の中のイメージがまんま黄色い「🌟彡」になってしまって、自分のイメージ力の貧困さに泣く。八つの星を支えている竜のエピソードなどは特にイメージがメルヘンで、脳内の絵柄が童話絵本みたいになっちゃって、それなのに、全般的に語られるのはそれはそれは赤黒い人間というよりは動物的な残虐さだったりして、読んでいる最中から頭の中がしっちゃかめっちゃかだ(絶望)

 オーリエラントの始まりの書。人々を繋ぐもの、平和の礎となるのものは言葉である、という確固たる思いが伝わる一方で、言葉が相容れない相手は蹂躙するのか、自分の平和を守る為であれば、異民族を駆逐するのは良しとするのか、(攻め込んで来たのは相手方だとしても)そこに流れる血はやむを得ないもの・当然のものとするのか、という別のメッセージも受け取ってしまう物語だった。それが著者が意図したものかどうかはともかくとして。「北の蛮族」とはなんなのだろう? 私にとってはそれが不可解なものとしてわだかまってしまう物語だった。
 たとえば、ジーン・アウルの「大地の子エイラ」シリーズでは、音声言語を持たないネアンデルタール人の氏族の豊かな精神文明が描かれていたのが、いまだに印象に残っている。この物語が寓話的に描かれてはいても、「北の蛮族」にも実りの少ない北の大陸に大きな人口を成せるだけの文化があるはずでは、とか、そもそも他の作品からして北の大地は白夜のツンドラのはずで、そこに農耕が成立しているのか、とかいろいろな疑問が頭を離れなかった。
 (意思疎通できる)言葉を有することが協力や思いやりや平和を築く礎とするならば、「言葉を持たない」ことが異民族を駆逐する理由ともなり、大抵の民族間・部族間闘争は合理化できてしまうのではないか?
 例えば、『沈黙の書』が聖書だったとしたら? というイメージが沸いてしまうのだ。あまねく言葉(=聖書)が布教された「平和な」世界。言葉が通じない異民族は排斥する、っていう一神教的な世界観につながるものを、作品から言外に感じてしまう。物語が喚起する神話的イメージとは別に、勝手に自分の中に想起されるイメージがそんな感じなので、いろいろと折り合いがつかず、だいぶ消化不良気味な読書になったのだった。

 なお、例の黒いヤツはこの本にも登場した。
 ゲルダの館(砦)の情景は、なんとなく邪馬台国を連想。一国の女王だった巫女の館はこんな女の砦だったのかもね、と思ったり。
 なるほど、陸橋や海峡が海になったのはそういう伝承となるのか。巨人、デカいな。小石のくせに(笑)

 で、このオーリエラントのシリーズにはそれぞれ巻頭に地図が付されているのだけど、ついつい、その地形が気になってしまって、やってしまった。こういうの、やり過ぎないほうが良いとは思ってはいるのだが、ガマンできなかった。。。。
 この沈黙の書と、『夜の魔導師』その他の地図の比較。オレンジでマークした地名が同じ「テクド島」や、北の大陸との陸橋、海峡、大きな湾、墜神の湖を指標にして重ねてみたさ。
ちなみに、《沈黙の書》時代の地図は縦横比を少し変えて横に伸ばし、強引に地図を重ねた。

 たとえば、『沈黙の書』の時代が氷河期の直後ぐらいで、海水面が上がったとしたら、こんな感じだろうか。いや、あまり厳密に考えちゃだめだとは思うけど。といいつつ、それだとフォトとかエズキウムの当たりは隆起したことになるので、ううむ。ナランナ海は内陸に入り込んできているから、沈降・・・?まあ、魔導師が落っこちて火山を作ったりもしてるしな。・・・魔導で地殻変動が・・・?  あと、ヒーバは海水面が上がって島になってヒバル島になったのかな?とか想像すると少し楽しい。べつに測量した地図があるわけでもなし、大陸を俯瞰できるのはそれこそ風の魔導師くらいのものだし。細かいところを突き詰めるのは御法度として、とりあえずやってみて、気分的には満足した。
 
 










2025年2月5日水曜日

0538 オーリエラントの魔導師たち

書 名 「オーリエラントの魔道師たち(単行本)」
著 者 乾石 智子         
出 版 東京創元社 単行本2013年6月
単行本 246ページ
初 読 2025年02月04日
ISBN-10 4488027156
ISBN-13 978-4488027155
【収録作品】
◆紐結びの魔導師
◆闇を抱く
◆黒蓮華
◆魔導写本師 

書 名 「オーリエラントの魔道師たち(創元推理文庫)」 2016年6月        
単行本 267ページ
初 読 2025年02月04日
ISBN-10 4488525059
ISBN-13  978-4488525057
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/125856221
【収録作品】
◆陶工魔導師
◆闇を抱く
◆黒蓮華
◆魔導写本師 

 どちらの表紙も美しい。やっぱり単行本の表紙も眺めたい。というのと、単行本と文庫本で収録作品が違っているので、それもご紹介。
 単行本に収録されていた短編の『紐結びの魔導師』は、文庫本化されるときにこの本からは除かれて、リクエンシスを主人公とした短編連作として、『紐結びの魔導師』を本のタイトルとして別途文庫本化された。文庫本の『オーリエラントの魔導師』にはあらたに「陶工魔導師」が収録されている。
 「紐結びの魔導師」はこのあと3部作シリーズ化(赤銅、白銀、青炎)されているのでそちらも大いに楽しみにしている。

◆陶工魔導師
 コンスル帝国歴800年代。「にゃんこを蹴飛ばすなんて人間じゃねえ」とはウィダチスの魔導師ギャラゼの台詞。それに対して陶工魔導師ヴィクトゥルスは「猫を蹴飛ばすのは人間だけだ」。いずれにせよ、にゃんこを蹴飛ばした奴には相応以上の罰があたる、という話。

◆闇を抱く

 女たちが自衛のために身に付けたイスリルの古い魔法。アルアンテス。アルタと呼ばれるリーダーを頂点に、全体を統括するカサン、実際に魔力を行使するカシヤナ、魔法による助力を必要とする女性をカシヤナに引き合わせる仕事をするカスク、というメンバーで構成される地下の魔女組織。彼女たちの密やかな抵抗。

◆黒蓮華
 村をコンスル兵に襲撃されて親兄弟、村人を皆殺しにされた少年は魔導師となり、孤独と憎しみに胸の中に黒い華を咲かせながら、おのずと身についたプアダンの魔術でコンスル人に仕返しを重ねる。
 黒々としたストーリなのに、清々しく、美しくも感じるのはなぜだろう。

◆魔導写本師
 「夜の写本師」カリュドウの師であるイスルイールの比較的若い頃のお話。写本師の魔導のありようが良くわかる。そして、やっぱりイスルイールは魅力的だ。

2025年2月2日日曜日

0537 紐結びの魔道師 (創元推理文庫)

書 名 「紐結びの魔道師」
著 者 乾石 智子         
出 版 東京創元社 文庫版2016年11月
文 庫 267ページ
初 読 2025年1月31日
ISBN-10 4488525067
ISBN-13 978-4488525064
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/125766907

 紐結びの魔導師リクエンシスの短編連作です。情景を語るのがものすごく上手い作家さんだけど、この本は、とりわけ、気候や季節感を感じる。冬の匂いがする。
 にしても、こんなに安心して読める本は何冊ぶりのことか? それもひとえにエンスの人柄ゆえ。とはいえ、長命故に気鬱になったり、長じるにつれ、いろいろな物事にも心が動かなくなってきて。ケルシュとの偶然の邂逅にまた元気付けられもして。まあ、ケルシュ=キルアスも、相当に明るい人格ではあるが。 魔導師が長命であることはこの物語世界の基本設定だけど、この本は、そこに焦点を当てている。掌編の『形見』がとてもよいと思う。『夜の写本師』に登場する指なしカッシが指を失う経緯がこんなに間抜けで可愛いお話だったとは。
この物語世界で銀戦士の存在感が思いのほか大きいのがなんとなくイヤ(笑)。あの教祖に教団を背負って立つのは無理なんじゃないかと。。。(苦笑)

オーリエラント世界の登場人物たち(ネタバレあり・自分用忘備)

《夜の写本師》コンスル歴1800年代 コンスル帝国滅亡後
*基準点(いちおう)
カリュドウ夜の写本師 
エイリャカリュドウの育ての親の女魔道師  。アンジストに殺害される。
フィンカリュドウの幼なじみの少女 。アンジストに殺害される。
アンジスト エズキウムの魔道師長 
セントン魔導師。エズキウムの副魔道師長。四大魔道師 
カッシ魔導師。エズキウムの副魔道師長。四大魔道師 
グルース魔導師。エズキウムの副魔道師長。四大魔道師 
ケルシュ 魔導師。エズキウムの副魔道師長。四大魔道師 。1000年前のキアルスの転生。
セフィヤ ガエルクの弟子 。カリュドウの魔導の失敗で死に、カリュドウに大きな教訓を残す。
ラームガエルクの弟子 
ティモナガエルクの弟子 
イスルイール パドゥキアの写本工房を仕切る親方 。〈夜の写本師〉
ハールイエズキウムの写本工房の元締 
ガースエズキウムの写本師の親方 
ワイバン ガース親方の弟子 
ジグエスガース親方の弟子 
ヴェルネガース親方の弟子 
ルッセオ ガース写本工房の雑用係の少年 。写本師見習いの卵
*100年前
ルッカード パドゥキアの少女。ガエルクの弟子。 
アンジスト エズキウムの魔道師長 
ケルシュ 魔導師。キアルスの転生。
ガエルク パドゥキアの魔道師 。シルヴァインの兄ブリュエの転生。
*500年前
エムジスト エズキウムの魔道師長 アンジストの五百年前の名前
イルーシア マードラ国一の魔道師 
*1000年前
アムサイスト コンスル帝国から来た魔道師 アンジストの千年前の名前 
シルヴァインオイル領主の娘 
ブリュエ シルヴァインの兄 
キアルス シルヴァインとブリュエの友人。祐筆 
「写本魔導師」《オーリエラントの魔導師たち》コンスル帝国歴1800年代
「闇を抱く」《オーリエラントの魔導師たち》コンスル帝国歴1800年代
「魔導師の憂鬱」《紐結びの魔導師》 コンスル帝国歴1788年頃  
ニーナエンスの恋人。
ケルシュエズキウムの魔導師。
「子孫」《紐結びの魔導師》 コンスル帝国歴1785年
リクエンシスエンス 紐結びの魔導師
ニーナエンスの恋人
「形見」《紐結びの魔導師》 コンスル帝国歴1703年 早春
リクエンシスエンス 紐結びの魔導師
《太陽の石》 コンスル帝国歴1699年 コンスル帝国末期
デイス   主人公。十六歳の少年 
ネアリイ  デイスの姉。門前に捨てられていた赤子のデイスを拾った。
ビュリアン デイスの幼なじみ。喧嘩友達。悪友。親友
ザナザ   イスリルの魔道師。300年前のイスリル大戦の際、敵方でイザーカト兄弟と戦った。
【イザーカト兄弟】※デイスやネアリイの時代より300年前〜
ゲイル   長男。大地と火の魔道師。若干ぼんくら風味だが、真面目で公正で面倒見がよい。
テシア   長女。大地と火の魔道師。
ナハティ  次女。大地と火の魔道師。魔力は兄弟の仲でも抜きん出ているが、兄弟の仲でつねに疎外感を
味わっており、僻みと恨みが黒い奴と親和した。
カサンドラ 三女。水の魔道師。リンターと年子で特に仲がよかった。リンターはカサンドラを崇拝してい
たが、それがナハティの恨みを招いた。ナハティに惨殺された。
リンター  次男。大地と火の魔道師 300年前、ナハティと最後の死闘を繰り広げ、その結果火山の下
で長らく休眠することになった。
ミルディ  四女。水と土と風の魔道師 イスリル大戦での9人兄弟の唯一の戦死者。ザナザの火球に打た
れて死ぬ。兄弟崩壊のきっかけとなる。
ヤエリ   五女。雷と稲妻の魔道師  美しいものが大好きで、潔癖症。かなり軽薄。ナハティ側につい
て、漁夫の利を得る。
イリア   三男。風と水と嵐の魔道師  300年前の兄弟喧嘩の後、潜伏していた。
デイサンダー 末っ子。植物と生命の魔道師  300年前の兄弟喧嘩の際、ナハティに消滅させられそう
だったが、赤ん坊返りにとどまり、どうにかして300年後にネアリイに拾われる。
「水分」《紐結びの魔導師》 コンスル帝国歴1500年頃? 
リクエンシスエンス 紐結びの魔導師
リコ(グラーコ)80歳過ぎ
「紐結びの魔導師」《紐結びの魔導師》 コンスル帝国歴1457年
リクエンシスエンス 紐結びの魔導師
リコ(グラーコ)エンスの相棒。同居人。エンスの魔法をせっせと記録している。
カッシ貴石占術師。エンスの魔法にひっかかって指を二本失う。
「冬の孤島」《紐結びの魔導師》 帝国歴1448年
リクエンシスエンス 紐結びの魔導師
神が峰の神官戦士団設立される 帝国歴1383年
※1300年代ごろ、イザーカト9兄弟の兄弟喧嘩はこのあたり。
《魔導師の月》コンスル帝国歴857年〜(シルヴァインが殺されて3ヶ月後〜)
キアルス魔導師。ギデスディン魔法(書物を使った魔法)の創始者。
レイサンダーコンスル帝国皇帝の甥ガウザス付きの魔導師。(地の魔法)
カーランキアルスが一時身を寄せたイラネス神殿の管理官。
ハルルカーランのチョウゲンボウ
ジアトルスキアルスガ雇った写本師兼雑用係
エブンキアルスが買い取った奴隷の少年
テューブレンコンスル帝国の皇帝。華美を嫌い、ヒバル島に隠棲しながら帝国を支配。
ガウザスコンスル帝国皇帝の甥。皇位継承者。
コリウスレイサンダーの親友で軍人。ガウザス配下
ムラカン近衛副隊長
コンパルクスムラカンの部下
トリエウスムラカンの部下
ソール皇帝付きの魔導師。石の魔導師。
*さらに400年前 帝国歴450年頃
テイバドールティル、テイバルとも。〈グリルの民〉の少年。タージの歌謡集の収集者。星読み
タゼン星読み。テイバドールの師匠
コノークルコノル。 グリルの族長の息子
ルネルカンドルードとも。コノルの配下
ファイドールテイバドールの父。グリルの族長。故人。ヒダルの民との部族闘争で落命した。
アーチェテイバドールの姉。部族間闘争で攫われる。
セイランセールアーチェの息子。
ネフルテイバドールの次姉
ユーロウテイバドールの犬
オルクレキルナダの大地の魔導師
イスランオルクレの長女。大地の魔導師。強い。
リルルオルクレ次女。大地の魔導師。強い。
アレギウスコンスル帝国第七軍団の司令官。
ホリエウスアレギウスの副官。テイバドールに竪琴を習い、師と敬う。
「陶工魔導師」《オーリエラントの魔導師たち》コンスル帝国歴800年代の始め頃
ヴィクトゥルス陶工魔導師。
ギャラゼウィダチスの魔導師。黒猫姿で登場。
ロウヴィクトゥルスの弟子
クリアルヴィクトゥルスの弟子
「闇を抱く」《オーリエラントの魔導師たち》コンスル帝国歴?年代
オルシア織工見習いの少女。
ロタヤ・クピヤ・マンダ フェデルの名家の奥方
リアンカ織物工房の女主人
カリナアルアンテスの魔術の使い手(カシヤナ)
「黒蓮華」《オーリエラントの魔導師たち》コンスル帝国歴397年
〈耳男〉〈白花〉はロウイと呼びかけた。アブリウスの奴隷
〈白花〉ファーリ。奴隷の女。
〈煙男〉アブリウスの使用人
〈暑がり〉アブリウスの使用人

オーリエラント世界の魔術(ネタバレあり・自分用忘備)


■ウィダチスの魔法 
 動物を使役したり、動物に変身したりする。 『夜の写本師』カリュドウの師であり、育ての親であるエイリャが得意とした魔術。

ギデスディン魔法
 書物を使い魔法を発動させる。ケルシュの前世、キアルスが始祖。『魔導師の月』でキルアスがずっと書き綴っている「ギデスディンの魔法書」は、時代が下がって、カリュドウは諳んじるほど写本した。

貴石占術
 石が持つ大地の力を利用する魔術。指なしカッシは貴石占術の使い手。  

ガンディール呪法
 人形と人体の一部を使い操る魔法。 呪いの藁人形的な呪術。パドゥキアで盛ん。ガエルクはガンディール魔法の使い手で、カリュドウの師となった。

マードラ呪法 
 マードラ国で使われる魔術。死人を利用した暗黒の魔道。イルーシアはマードラ呪法の使い手で、エンジストの求めにより、死者の怨嗟を利用してエズキウムの城塞を築き上げ、自身もエンジストによって生きたまま城塞に埋め込まれた。

ブアダン
 動物や死骸の一部分を使い呪い殺す。 

エクサリアナの呪法
 相手の魔導師からその能力を奪い、己のものとする邪法.相手は殺される。アムサイストが編み出した。

夜の写本師 
 写本の技術によって魔術を用いる、魔導師ではない魔術の使い手。カリュドウ。イスルイールがカリュドウの師。

大地の魔法 
 大地にかかわるものを使う。主に土、水、火、植物、風をあやつる。 ライサンダーの家族、子孫たちイザーカトの一族はよく大地の魔法を操る。

 テイクオク(紐結びの魔術)
 紐をさまざまな方法で結びながら、呪文を織り込むことで、魔術を発動させる。人や物事を結び付けたり、祝福したりすることが得意で、攻撃にはあまりむかないよう。紐の魔導師リクエンシス。エンスの操る紐の魔法は、生活魔法的なのも多くてほのぼのする。

フォアサイオンの魔術 
 世界にある〈気〉の流れをさまざまな道具によって操作する魔法。風水っぽいものらしい。作品世界が違うが佐藤さくら氏の『魔導の矜持』に登場するデュナンはフォアサイオンっぽいな、と思った。

■ヴィクトゥルスの魔法
 『オーリエラントの魔導師達』収録「陶工魔導師」のヴィクトゥルスが編み出した魔法。製作する陶器に魔術を練り込む。

■アルアンテス(イスリル語で「古き力」の意)の魔術
 女たちが使う古い魔法。「闇を抱く」(『オーリエラントの魔導師たち』)に詳しく書かれている。


2025年2月1日土曜日

2025年1月の読書メーター

 昨年末から創元ファンタジイを次々に読み、その勢いで乾石智子のファンタジーに突撃。そして没入。もう、帰ってきたくない(笑)。ずっとこの世界に遊んでいたい。3月には『竜の医師団』3巻が発行になるし、それまではファンタジー祭り続行だな。それにしても、羽住都氏の装画が美しい。

1月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:3775
ナイス数:686

太陽の石 (創元推理文庫)太陽の石 (創元推理文庫)感想
著者氏はどこかの後書きで「魔導合戦も書いて見たい」とおしゃってたか。とにかく壮大な兄弟喧嘩。「魔導師の月」で闇を飲み込んだライサンダーの子孫たち。時代がさがること数百年後のコンスル帝国、イザーカト兄弟は魔導師の9人兄弟。末っ子がデイサンダー。ライサンダーのフィブラは、遺言で「9番目の末子」に伝えられた。真ん中のお兄ちゃんリンターがとても素敵で、思わず惚れた。ナハティは、兄弟が多いとどうしても貧乏くじを引く僻みっぽいのが生まれてしまう悲劇である。そんなナハティがデイスのために黙々と刺繍するシーンが切ない。
読了日:01月29日 著者:乾石 智子

魔法使いの嫁 1 (BLADEコミックス)魔法使いの嫁 1 (BLADEコミックス)感想
以前からちょこっと興味があったのだけど、ご縁があったので大人買い(笑)しかし、フォントサイズがあちこちバラバラ。小さい字は読みにくい。老眼がああああっ。こないだ読書用近近眼鏡を新調したのに! ついに密林でペンダントルーペをポチった。っていうのはさておき、主人公は人ならぬものが見えるが故に家族に疎まれた日本人の女の子。競売で彼女を競り落としたのはねじれ角・骨頭の「本物の魔法使い」曰く、彼女を弟子にする。しかも嫁にもする? せっかくの男前の変身を「うさんくさい」と言ってしまう(笑)チセの旅の始まりはここから。
読了日:01月26日 著者:ヤマザキコレ

滅びの鐘 (創元推理文庫)滅びの鐘 (創元推理文庫)感想
何かに追われるようにして一気に読了。まだ1月だけど年ベス確定。鐘の残響に浸るような時間をしばし揺蕩う。乾石智子は書物の魔導師だろう。いきなり物語世界に引きずり込まれて、主人公と一緒に動乱と苦悩の中を引き回される。悲惨な民族浄化ともいえる虐殺の中にも、生活の喜びや出会いや愛があり、一方で憎しみの連鎖があり、思惑の交差があらゆる悲劇をもたらす。静かなイリアン。ロベランの無残。絶望の中でも諧謔味がある大魔導師デリン、老雪ツバメの老いらくの恋まで。この物語の後、平和で三民族が融和した国が出来るのだろうか。
読了日:01月24日 著者:乾石 智子

魔道師の月 (創元推理文庫)魔道師の月 (創元推理文庫)感想
『夜の写本師』でシルヴァインが惨殺されたすぐ後のキアルス。苦しみ悶えながら酒に逃げ、酔った勢いで貴重な『タージの歌謡集』を燃やしてしまう。以降、タージの歌謡集の復元が彼の使命になる。一方、太古の闇〈暗樹〉が時の権力者の手に渡るところに居合わせてしまったレイサンダー。キアルスが復元を試みる本が実は〈暗樹〉を封じる方法を記した本だと分かり、二人は協力して暗樹に対抗する。キアルスとレイサンダーの性格の対比と二人の友情、軍人ムラカンの正義と潔さ、緻密な世界観と幻視の情景。どんどん引き込まれ一気に読了。面白かった!
読了日:01月20日 著者:乾石 智子

夜の写本師 (創元推理文庫)夜の写本師 (創元推理文庫)感想
千年の呪いと転生の復讐譚。表現が映像的で、シリアスな絵柄の漫画のコマが脳裏に挟まるような感覚で読了。死闘に次ぐ死闘で何回も主人公が殺され、中には気が重くなるような醜悪な魔術も登場する。しかし最後にカリュドウが辿りついたのは全き愛。悪を悪で終わらせず、母を慕い魂を引き裂かれた少年の孤独な魂と結び付ける終盤は、とても日本的だと感じた。アンジストの為した悪の帳尻あわせとしては、殺された人間が割にあわない気がしないでもない。カリュドウやケルシュが魅力的で、こののちカリュドウが育てて行く少女の行く末も気になりつつ。
読了日:01月16日 著者:乾石 智子

少女の鏡 (千蔵呪物目録1) (創元推理文庫)少女の鏡 (千蔵呪物目録1) (創元推理文庫)感想
著者のこれまでの想いや苦悩がとことん反映されているんだろうな、と感じる登場人物たち。現代日本と大正・昭和初期を行き来しながら、呪物を探しつづける朱鷺とその兄(犬姿)が、高校生の美弥が巻き込まれた呪いを読み解き、昇華させる。全体のストーリーがさらりとしているのに反比例して、個人個人の内面の想念は重苦しい。朱鷺が完全にノンデリさんなのがそこはかとなくおかしい。いちおうファンタジー括りだけど、ホラーでも通じそう。著者の言いたいこと、描きたいことは判る。だけど共感には一歩足らず。ただ朱鷺の行く末がとても気になる。
読了日:01月14日 著者:佐藤さくら

魔導の黎明 (創元推理文庫)魔導の黎明 (創元推理文庫)感想
1〜3巻で情勢と個人の内面は深化し、この4巻ではそれらが全て一つの潮流となって、新たな夜明けを迎える。レオンはずいぶん落ち着いて、自分の道を見いだしている・・・と思いきや、やっぱりぐらぐらしていて。今作では、レオンの亡き師であるセレスが残した禁術を巡り、レオンが巻き込まれ、ゼクスが追いかける。レオンは具体的な成果はなにも上げない感じなのに、しっかりと大きな事態を動かしている。歴史が大きく動いて、ひとつの節目を迎える。実際にそこに一つの世界があるかのような濃密な世界観がすごい。書き上げた著者に拍手。
読了日:01月12日 著者:佐藤 さくら

改訂版 プレミアムカラー国語便覧改訂版 プレミアムカラー国語便覧感想
ざっと全ページをめくって、細かく調べたいときのためにだいたい何が収録されているか確認。それにしてもカラー、写真、イラストたっぷりでめくっていて楽しい。文学史どころか日本史の復習にも。
読了日:01月10日 著者:足立直子,二宮美那子,本廣陽子



幼女戦記 (31) (角川コミックス・エース)幼女戦記 (31) (角川コミックス・エース)感想
前半は、軍部が全力でデグさんを擁護する査問会@茶番劇。それを受けてのデグさんがついに真っ正面から奪取にいった「後方勤務」それにおののくレルゲンさんとゼー閣下。デグさんと閣下のド緊迫した応酬と一人胃痛なレルゲンさん。やっぱりいいひとだ。そんなに頑張って獲得したかに思えた後方勤務は時限、しかもたったの2ヶ月。ここから帝国は泥沼の『国家総力戦』へ。今巻も読み応えありました。
読了日:01月10日 著者:東條 チカ

魔導の矜持 (創元推理文庫)魔導の矜持 (創元推理文庫)感想
弱い者の側に立って戦う、というのは人としての矜持。タイトルは「魔道の矜持」だけれど、自分の中の芯となるものを求め続けて、ついにこの矜持を持つに至ったのは魔道士ではないノエでありガンドでもある。魔道士対普通の人々の対立や差別を描いてきたこの作品は、この巻で、人間性の対立を描き出した。良書である。王道冒険ファンタジーとしても、とても面白いです。
読了日:01月08日 著者:佐藤 さくら

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