原 題 「FairChance」2017年
著 者 ジョシュ・ラニヨン
翻 訳 者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 (モノクローム・ロマンス文庫) 2020年1月
文 庫 407ページ
初 読 2022年2月8日
ISBN-10 4403560407
ISBN-13 978-4403560408
「イエス?それって−−−−−−俺たち、同じことを話してるのか?」
エリオットは微笑んだ。
こういう選択肢が普通にある世の中っていいな、と思った。もちろん、ナチュラルにこういう世の中の考え方が生まれた訳ではなく、あの激しい社会の中で、長年闘って勝ち取ったものではあるのだろうけど。
それはさておき、エリオット&タッカーの3作目、M/Mロマ・サスである。
シリアルキラーの彫刻家(スカルプター)事件で、刑務所に収監されている犯人コーリアンは、犯行の一部始終について口を閉ざしたままだった。ところが、いまだエリオットに執着するコーリアンは、エリオットに面会を要求する。
黙秘をつづけるコーリアンがエリオットになら捜査に有力な情報を漏らすのではないか、と期待した捜査チームはエリオットに協力を求め、捜査チームのリーダーを務めるタッカーは、チームの意志を尊重しつつも複雑な気持ちを抱えながら、エリオットの心身の安全を気遣っている。夜中に事件の悪夢にうなされることもあるエリオットを知るのは、タッカーだけだ。
前作の父絡みの事件で逮捕されたノビーの減刑のための証言に協力するか否か、で父との関係はギクシャクしたまま。タッカーは母との週末を過ごす為に、不安を抱えつつもエリオットに励まされて送り出される。
不安感をそそる、小さな事件や、遭遇の積み重ね、そんな中でも二人の平穏な時間があり、もちろん熱い時間もあり、お互いを思う気持ちや理解も深まっている。
そして、母に会いにいったタッカーとの連絡が途絶えてしまう。
失踪したタッカーを探すエリオットの焦燥は深まるが、少々関係が悪くなっていた父の思わぬ理解と援助が温かい。それに、最初はというか1作目からとてつもなく態度が悪かったパイン刑事や、どうにも敵愾心が見え見えだったヤマグチ捜査官の親身の協力にも励まされる。エリオットの必至さと熱が周囲も溶かしていくようだ。
エリオットのFBIへの復職話、二人の結婚話、そしてコーリアン、と不吉な予感と新たな展開への期待が嫌が応にも高まる。
これ、3部作で終わりなの?
いや、4作目、読みたいよね!
と大いに期待感を膨らませつつも、大変満足度の高い一冊でした。
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