原 題 「Fair Play」2014年
著 者 ジョシュ・ラニヨン
翻 訳 者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 (モノクローム・ロマンス文庫) 2016年12月
文 庫 401ページ
初 読 2022年2月8日
ISBN-10 440356030X
ISBN-13 978-4403560309
ううむ面白かった。 ミステリ・バディ物として十分イケる。ちなみに濡れ場込みなら読みどころたっぷりのM/Mロマ・サス。いろんな意味で実においしいシリーズの第2作です。
今回はかつて赤ん坊だったタッカーを棄てた母が登場し、タッカーの孤独の一端が明かされる。
母は、当時、麻薬に溺れていたらしいが、立派に(?)更生し、再婚した夫と一緒に登場。しかし、二人の様子はなにやら宗教的に凝り固まった印象で、どうもキリスト教原理主義系の新興宗教にはまっているイヤな予感がする。これ、ぜったいにタッカー巻き込まれるよね。「あなたの彼女に会いたいわ」という母に、エリオットを引き寄せて、自分はゲイでエリオットは親友というだけでなく、パートナーだ、と言い放つタッカー。あいかわらず真っ直ぐで男らしい。動揺や、困惑すら男らしい。(笑)
エリオットの方は、父の若かりし革命家時代の因縁に巻き込まれる。父の(エリオットにとっては子供時代の母との思い出も詰まった実家)が放火で全焼。エリオットの家に避難した父とエリオットが散歩しているところを今度はボウガンで狙撃される。父は回顧録の出版準備をしており、どうやらその本が世にでることを臨まない人間が多数いるらしい。父を守りたいエリオットは捜査を開始するが、昔の仲間との内輪の問題ととらえる父ローランドはエリオットの介入を好まず、行方をくらましてしまう。だからといって、すんなり気持ちが収まるエリオットであるわけがなく。獲物を加えたらブルドッグ並みに食らいついて離さない執念で、父の行方を追跡する。
エリオットを心配するタッカーと、FBI捜査官としてのタッカーの立場を慮るエリオット、お互いに嘘はいわないが、相手に手渡す情報をコントロールしようとして、「相手を信用していない」という命題に突き当たりジレンマから関係が拗れまくる。このあたり、あたまの中でとことん論理的に考え尽くし、相手と正面から議論しようとする二人に、日本との文化の差を感じたりもする。だがしかし、体の欲求は頭を裏切って・・・・・、というのはやはりソレ(笑)これは日米共通(笑)。でもこの二人の恋愛は良いね。エリオットに正面から敢然と向き合うタッカーに、エリオットならずとも心を奪われるよ。
人を信頼するとは、というシンプルな命題に頭でっかちにどろどろと取り組むエリオットには、とりあえず頑張れ!と応援する。
日本だと三親等くらいに犯罪者がいると警官になれないとかなかったっけ? 親が反政府活動家で革命家、別名元テロリストでも息子はFBIに入れるのか。小説だから?それとも自由の国だから? とはいえ、60−70年代はみんなが革命家だったのかもしれない。ベトナム反戦運動、ヒッピー文化、そんなアメリカの歴史的な流れを追う作品の空気感も雰囲気も良かった。
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