著 者 柴田 よしき
出 版 講談社 2003年8月
文 庫 544ページ
初 読 2022年8月31日
ISBN-10 4062738171
ISBN-13 978-4062738170
若頭だから「若」なんだろうけど、なんか、それだけで、愛というか思慕が溢れてるんだよ。
だけど、その男、心は他の辞め警のものなんだぜ? さらりと描いている脇のはずの斎藤の慕情が、なんとも切ないのだ。結局、保育園園長で凄腕探偵なハナちゃんが活躍するこの話は、美形で傷ついてて壊れてて、ケタケタと笑って平気で残酷な振る舞いをするあの男の物語、なんだな。だから、ここには登場しない麻生さんよ、つまらないプライドは捨ててさっさと練を抱いてやれよ、と。
そんな練に、今日も振り回されているハナちゃんのかいがいしい努力が涙ぐましい、ハナちゃんシリーズ2冊目なのです。今作はより一層グレードアップした難題がハナちゃんを襲う。
一回寝ただけの行きずりの男を捜してくれ、という無茶な依頼をしたのは、どこかタカビーな天然女。飛び込みで保育園を訪れた無茶な父親からやむを得ず預かった乳児が深夜の急変で救急車を呼ぶ騒ぎになり、その育児に無知な父親に罵倒され、最愛の恋人の理沙はなにか困った様子だったのだが、ハナちゃんには相談できないまま姿を消してしまい、その理沙の妹のトラブルが、理沙失踪の原因かと追いかければ、なんとまたしても殺人事件に巻き込まれる。
その上、極悪ヤクザの山内にはケタケタと笑いながら無理難題をふっかけられ、解決の為に与えられた時間は24時間しかないのに、マトリの捕り物に巻き込まれ! 全部が全部つながって円満解決したについては、さすがにできすぎ、というかやり過ぎだろ、と思ったがそれはまあ、よい。読んでほんわか幸せな気分になるための小説だしな。
胸の蝶の刺青で読者にちょっとどきっとさせるあたり、柴田センセは芸が細かいのお。あと、太宰治の「走れメロス」の真っクロ黒な洒落が洒落になってませんでした。今作もハナちゃんには同情しかありませんでした。頑張れ園長先生!
0 件のコメント:
コメントを投稿