2021年12月4日土曜日

0310 米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方

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書 名 「米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方」 
原 題 「Turn the Ship Around!」2012年
著 者 L・デビッド・マルケ 
翻訳者 花塚 恵 
出 版 東洋経済新報社 2014年6月 
単行本 285ページ 
初 読 2021年12月15日    
ISBN-10 4492045325 
ISBN-13 978-4492045329 
読書メーター   https://bookmeter.com/reviews/102854935
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 自分が仕事ができていると感じているときの充足感、自分がきちんと業務にひいては社会にコミットしている、と思えたときの健全な満足感は、人が仕事をして、それによって長い人生を生きていく上でとても大切で、必要なものだ。

 この本は、組織を構成する一人ひとりがそのような状態になることを、リーダーとしてどうやって意識的に作っていくことができるかを、潜水艦というある意味特殊で閉鎖された環境のなかで実践したことの、記録、というか報告のようなもの。
 潜水艦で、という環境が面白い。
 原子力潜水艦は、一度出航したら何ヶ月も母港に戻らず、浮上すらしないまま長時間の航海が可能で、100名程度の乗員は、狭い艦内で、極めて緊密な関係のなかで缶詰になる。
そのため、組織運営に不確定な要素をもたらす外的な刺激はかなり単純化されていると思える。
・業務は高度に組織化されていて、出来・不出来は一目瞭然。
・ついでにいうと、そのような環境で長時間能力を維持することを求められる乗員は、海軍でも「エリート」に属し、精神的にも安定して強靱で、他者との協調性が高く、意欲的な人物が選抜されているとみてよい。

 そのようなエリート集団であっても、軍組織という上意下達、上官には絶対服従、しかも艦内(艦長の権限は極めて強大)という環境で、専制的でダメなトップのもとでは腐ってしまうのだ。自分の仕事が評価されない。自分が組織の中で役に立っていると思えない。自分が十分に能力を発揮できていない、という思いは、簡単に人間を腐らせ、本来の能力まで奪ってしまう。
 この本は、そのような状態に陥っていた米攻撃型原子力潜水艦〈サンタフェ〉(ロサンゼルス級)の艦長に任じられた著者のマルケ(当時大佐)が、部下に権限を委譲するなかで、部下一人ひとりの責任と判断を尊重し、部下のやる気と充足感を高め、その結果一隻の潜水艦の能力を飛躍的に向上させた実践を簡潔にまとめたものである。
 組織のメンバーが有機的に結びつき、エネルギーが正しく流れるときの無駄のない業務の進行と、それに関わるメンバーの健全な人間関係は、ひとことで言ってしまえばとても“気持ちの良い”ものだ。それを、自分の部下に味あわせることは、いわば組織の上に立つものの責務ではないだろうか。今の自分にそれができているだろうか。という反省も浮かんでくるが、これもまた、健全な反省であるべきだ。
 この本(最強組織の方)を、単に読み物として楽しむもよし、我が身にあてはめて、工夫のヒントとするもよし、何回でも手にとって楽しめそうな、珍しくも有用なハウツー本、ビジネス本だと思う。

 ちょっと脱線するが、H・ポール・ホンジンガーの『栄光の旗のもとに』は、まさに〈サンタフェ〉と同じ状況で新艦長に引き継がれた駆逐艦〈カンバーランド〉を、新任艦長が乗員の自信を回復して最優秀艦に育てる話でもある。この「最強組織」が2012年刊、「栄光の」が2012年に書かれ、2013年に刊行されたのは偶然かな? 真っ黒な円筒型のステルス宇宙艦は、駆逐艦とはいえど、ほぼ潜水艦のようなもの。全長、艦内の構造、乗員数も原潜と似たりよったりだ。リーダーシップを試行して、結果を確認するのに丁度良い規模と環境である、とも言える。


 これは余談。表紙の写真は、ロサンゼルス級原潜〈サンタフェ〉ではない。S112ってどこの艦だろう?国旗はギリシャに見えるけど。せめて米原潜の写真が使えればよかったのにねえ。
 さらに余談。各見開きページの左上のイラスト表示の潜水艦の艦影が第二次世界大戦の頃の姿だ。現代の潜水艦はもっと丸い。
 このあたりのビジュアルにもっと凝ってくれたらよかったのに。。。。。(ちょっと残念。)

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