2021年3月27日土曜日
0263 過去からの密使 (ハーパーBOOKS)
2021年3月20日土曜日
0262 教皇のスパイ (ハーパーBOOKS)
【余談ながら】「これ、わたしが世界でいちばん好きなベンチかもしれない」キアラが言った。「あなたが意識をとりもどして、家に連れて帰ってほしいとわたしに頼んだ日に、あなたがすわっていたベンチよ。覚えてる、ガブリエル?ヴァチカンが攻撃を受けたあとのことだった」「どっちがひどかったのか、わたしにはわからない。ロケット推進式の手榴弾と自爆テロ犯か、それとも、きみの看護か」「自業自得でしょ、お馬鹿さん。もう一度会うことに同意しなければよかった」『教皇のスパイ』p.36-37ガブリエルが意識不明になるような惨事があったのかと気になって気になって(笑)、いろいろ探してしまったが、これ、状況としては多分こっちじゃないかな↓。「あなたが正気にかえって、よりを戻したいって私に懇願した日に、あなたが座っていたベンチよ。覚えてる?ガブリエル。ヴァチカンが攻撃された後の事だったわね。」「どちらが酷かったのか解らないな。ロケット推進の手榴弾や自爆テロ犯と、あの時のきみの私への態度と」さて、何があったのか。。。。(笑)ガブリエルとキアラは結婚の約束をして、ガブがエルサレムのナルキス通りのアパートを手に入れて、キアラは二人で暮らすために自分好みの内装までしたのだが、結局ガブリエルがリーアを見捨てられなかったため、キアラと破局する。そしてキアラがベネツィアに帰ってしまった、というのが『Prince of Fire』ラストのエピソード。その次の『The Messenger』で、ヴァチカンと教皇を狙った爆弾テロがあってガブが教皇を助けたのだが、その後、教皇がガブに「キアラがヴェネツィアで君が来るのを待っている」と嘘をいう。まさかガブリエルをキアラの元に行かせるために教皇が嘘をついた、とは思わないガブは素直にヴェネツィアを訪れ、キアラに冷たく「そこのベンチに座って待ってろ」と言われた挙げ句、「何しにきた」と怒られた、というのが、くだんの“惨事”であった。教皇パウロ7世。お茶目な人でした。きっとその後、ドナーティ相手に「神父さま、私は親しい友を欺きました」って告解している図まで目に浮かぶわ。白くて、小さくて、善良だったパウロ7世に合掌(←ダメか?)
2021年3月15日月曜日
これはやったもの勝ち
2021年3月14日日曜日
誤訳にもの思う(翻訳という仕事への敬意 改題)
2021年3月12日金曜日
0256 赤の女 上 (ハーパーBOOKS)
0261 赤の女 下 (ハーパーBOOKS)
2021年3月10日水曜日
「誤訳も芸のうち」と翻訳者は言った。山本光伸part4 論創社『さらば死都ウィーン』
2021年3月6日土曜日
0260 ねみみにみみず(作品社)
2021年3月5日金曜日
新明解さん賛歌 ねみみにみみず④
2021年3月4日木曜日
表現する技術と、表現したいと乞う魂と。 ねみみにみみず③
さらに続いています。「響かせるの巻」p.110より
2021年3月3日水曜日
しばし待たれよ ねみみにみみず その②
そして、続き。
で、「大先輩の高橋泰邦さんは、「文芸翻訳は、ひも付きの創作である」と言っておられる。これはつまり、純然たる創作ではもちろんないけれど、一方に技術翻訳とか実務翻訳とあいったものを対置してみると、われわれのやっている作業は、どうやら技術でも実務でもない、なにか隠微な、姑息な、いかがわしい要素を含むものらしいということの、韜晦を交えた表現ですね」p.64 と、東江さんがいう。
さて、このいわずとしれた大翻訳家の高橋泰邦さん、この方、その方面では有名なとある「事件」をやらかしている。ボライソーシリーズ24巻、主人公ボライソー提督が戦死するシーンで、延々何ページにも渡って創作加筆してしまった。20冊以上分厚い本を訳出してきて、主人公への思い入れもひとしおだったに違いない。原著者が実にあっさり、数行で彼を死なせてしまったので、納得がいかなかったのだろうか。翻訳者は創作者でもある、という自負が暴走したのか。
私は、といえば、まだこのシリーズ積読中なので、事細かに論評する資格はない。なぜにこの件を知っているかといえば、先達のブログやネット掲示板などで豊富に情報を拾えるから。
すでに絶版になっているため、Amazonマケプレでこのシリーズを入手した際、版までは確認できず、正直なところ、加筆部分削除修正済みの第2版以降が入手できたならば、このことは知らなかったことにしよう、と思っていたのだ。だがしかし、たまたま手元に届いたのが、加筆部分がばっちり載った初版であった。そこで、第2版以降を探して入手する必要に迫られ、その結果として新旧版を左右見比べる環境が出来上がってしまった。(ある意味、残念。)
やはり、一読者としては、誰かの二次創作ではなく、出来も不出来も原著に忠実な物語世界に遊びたい、と思う。
原著の宇宙にいると思っていたのに、いつの間にか二次創作のパラレルワールドに拉致されていた、というのは、やはり読者への裏切りだろう。読者だって延々24冊、主人公と付き合ってきたのだ。果たして今まで、自分は何を読まされてきたのだろう?と疑惑も頭を擡げただろう。これも騒ぎのもとは、翻訳を読んでいて文体に違和感が募り、原著と読み比べた人が出てきたから。
さて、そんなことを思い出しつつ、東江さんのエッセイにもどると、こんなことを言っている。
“芸人は「正しいけれど野暮」より、断然「まちがっていても粋」の方を取ってほしい”という中野翠さんの『ひょんな人びと』(文春文庫)からの一文を引きつつ、
「そう、そのとおりだと思いますね。強く、強く思う。で、そういう視線で文芸翻訳ってものを眺めたとき、われわれはやっぱり芸人じゃないという気がするんです。
原著者は、そりゃ、“まちがっても粋”の路線でだいじょうぶだろうけど、翻訳者のほうは、野暮でもなんでも、とにかく正しく訳さなくちゃ、商売になんないんだもの。
というより、原著者の“まちがっても”の部分を、そのとおりのまちがいかたで正しく写し取るという、野暮の骨頂みたいなことをわれわれは嬉々として、じゃなくても口元に微苦笑をうかべつつ、日常的にやっているわけです。」p.65
そう!そうなのよ、それでこそ名翻訳者!と、私が膝を打つそばからこんなことも書いてる。
翻訳家どうしは仲が良い。ぶつかり合わない、冷めている、引いている、抑えている。で、ひたすら和やか、なんだそうな。
「要するに、同業者が敵じゃないんでしょう。むしろ、原著者、編集者、書評家、読者などの外部の諸団体に対して、結束しているような感がある。・・・・・」p.66
翻訳業界の微温湯的同族感。
そうかあ、それじゃあ、お前あんなくそな翻訳世に出すんじゃねーよ!翻訳者の名折れだろうーが。業界全体がめーわくすんだよ!みたいな喧嘩は期待できないのだな。まあ、それが当然だよねえ。小さな業界なんだもの。それに私だって、それじゃ職場のウマが合わない同僚と、口角泡飛ばして喧嘩できるかっていわれたら出来ないもの。
そういえば、この本を読みつつあちこちネット上をうろうろしていて、一般社団法人日本翻訳協会という団体さんを見つけました。ここの団体の倫理綱領がちょっと面白かった。
→翻訳者の倫理綱領 4の同業者との関係、とか・・・・・・とっても微温湯的。個人的ににやにやしたのは、「汚い手段」とか「悪しざま」とかの言葉の使い方、文芸翻訳家っぽくて面白い。あと、4(2)の条文だけ、主語の書き方が違うのはなぜだ。
さて、私が、なぜにこんなに誤訳本に粘着しているのかと問われれば、人間の性で、そこでその時「何が起こったのか」を理解したいのだな。なんで、あんな翻訳がされて、編集のチェックも受けずに(いや、受けたのか?まさか?)、印刷されて、世に出てしまったのか。 自分で納得して、さもありなん、と思えないと気持ちが悪いのだ、きっと。でもこれもある意味傲慢な感覚ではある。理解できないものを批判する、という行為は、いじめ、とか、蔑視、とか、排斥、とか、暴力、とか、民族差別、とか、宗教差別、とか、ジェノサイド、につながる階段の最初の一段目かもしれんぞ。
と、風呂敷が収集つかないレベルまで大きくなったところで、我に返って最初に戻って修正。
つまり、
・不良品を、他人に売りつけてはなりません。
・自分の仕事は、誠実に行うべきです。
・なぜなら、あなたの仕事を待っている人がいるからです。
ほっ。小学生の道徳レベルまで引き戻せた。ダメなものはダメなのです。
それにしても、微温湯のなかをふわふわと漂うような文章ながら、羽毛枕に鈍器を仕込んだようなやわらかさで某氏のことを批判していると読めるのは、気のせいじゃないよねえ? でも、ここで気付いた。某ライソーシリーズ24巻目よりも、このエッセイの方が先に世に出ている。やっぱり私の気のせいだろうか。。。。
2021年3月2日火曜日
しばしの休息 ねみみにみみず その①
2021年3月1日月曜日
2021年2月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1798
ナイス数:935
さらば死都ウィーン―美術修復師ガブリエル・アロンシリーズの感想
やーーーっと読了。シリーズ中ではとても大切な巻なのに、例によって翻訳がまずいです。→https://koko-yori-mybooks.blogspot.com/2021/02/part.html これまでガブリエルの生い立ちが気になっていたが、この巻でだいぶ亡き母との関係が判明した。そして、シャムロンの強引さに振り回されていた感のあるガブリエルと師との関係にも変化の兆しが? ガブリエルがシャムロンに、人殺しはしたくない、とはっきり口にしたのは大きい。だからといってそれが許容されるわけではないのだが。
読了日:02月28日 著者:ダニエル シルヴァ
報復という名の芸術―美術修復師ガブリエル・アロンの感想
ガブリエル・アロンシリーズ記念すべき1冊目。だがしかし、翻訳が酷い。詳細はこちら→https://koko-yori-mybooks.blogspot.com/2021/02/blog-post_6.html ひっそり絶版しているには訳があったのか? しかしともあれ、ハーパーブックスの方のシリーズに繋がる最初の一冊。ガブリエルの過去の事件や、両親のことなど、シリーズを読む上での情報満載。ウージとの初対面や、CIAのエイドリアンも登場。シャムロンが矍鑠としている。翻訳を改めてハーパーから再版希望。
読了日:02月17日 著者:ダニエル シルヴァ
夜と霧 新版の感想
強制収容所に収容されたユダヤ人心理学者、という特異な視点から、その様な環境におかれた人間の心理をつとめて客観的・普遍的な視点から記述しようとしたもの。古典的名著であるが、これは1977年版を底本とした新版である。穏やかで慎み深い翻訳となっている。旧版が1947年、解放直後に記されたものであり、イスラエル建国の時期とも重なり、アンネの日記同様、様々なプロパガンダにも利用されたことを、著者は苦しく思っていたとのこと。学術的・普遍的な視点に立ち戻り、改稿されている。著者が語っているように「個人的」で内的な体験として語られていること、そしてここでは敢えて語られていないことにも意識を向けながら読まなければならない。当時ヨーロッパで暮らしていた1,100万人のうち600万人が組織的に、きわめて「効率よく」殺害されたこと。生き残った人々にも様々な困難が残されたこと、など。
読了日:02月10日 著者:ヴィクトール・E・フランクル
告解―美術修復師ガブリエル・アロンシリーズの感想
ガブリエル・アロンシリーズ3作目。ナチス3部作2作目。ホロコーストに協力しナチスの戦争犯罪者の逃亡を助けた法王庁、ローマ・カトリック教会に対する告発と、ユダヤ迫害を肯定し、ローマ・カトリックの権威と権益を守ろうとする法王庁内の秘密組織との暗闘。1942年のある重大な事件の調査を手掛けたためにガブリエルの旧友が抹殺された。彼が殺された理由とその資料を追ううちにガブリエルも命を狙われ、ユダヤ人との和解を目指していた新教皇もまた、暗殺の危機に。ガブリエルは教皇を守り、秘密組織に対抗しようとするが。
読了日:02月05日 著者:ダニエル シルヴァ
赤の女 上 (ハーパーBOOKS)の感想
2017年1月頃〜 前作の爆弾テロによる負傷の後遺症で痛む腰をさすりながらガブリエル登場。おかげでガブリエルもだいぶ歳相応に見えてきた。良い記憶のない冬のウィーンでの作戦指揮。例によって陣頭指揮を執っていたが、亡命させる予定だったロシアのスパイが目の前で殺害されてしまう。その上その場にガブリエルが居合わせたことをマスコミにリークされて窮地に立たされる。怒り心頭のガブリエルは怒濤の諜報戦に突入するが、判明したのは、宿敵ロシアの策謀が二重三重に張り巡らされていたこと、そしてある伝説の二重スパイの存在だった。
読了日:02月04日 著者:ダニエル シルヴァ