ラベル 異世界 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 異世界 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2024年10月27日日曜日

0513〜14 Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない1,2 (アンダルシュノベルズ)

書 名 「Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない1」
著 者 仁茂田もに        
出 版 アルファポリス 2024年1月
単行本 336ページ
初 読 2024年6月02日
ISBN-10 4434333135
ISBN-13 978-4434333132
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/121069284

 アマゾンでオススメされて、結構長く試し読みできたもので、読んでしまったら先が気になって気になって、まんまとお買い上げ〜。しかも予備知識なしに読み始めたら、1巻最後まで読んだのに未完だったという罠。
 先が気になって仕方がない。
 続きはアルファポリスなるもので読めると知り、アプリをDLし、最後まで読みましたとも。まんまと掴まってしまった。仁茂田もにさん、面白いし、素敵だ。

 表紙のとおりオメガバース。普通に魔法が存在する王国、登場人物の名前は全てドイツ語風。主人公ユーリスはΩ♂。王太子の婚約者になったアデル、婚約破棄されたリリエル、すでに他国に嫁いだ第一王子ヴィルヘルムもすべてΩ♂。オメガバースBLだから仕方ないのだが、男女比が悪すぎる気がするが、そこに突っ込むところじゃないよな。一巻目(というか上巻)は謎も含みも満載。しかしそれよりも、拗れに拗れたユーリスとギルベルトの誤解がいつ解けるのかが気になりすぎた(汗)。描写が丁寧で、読みやすく、キャラが立っていてテンポもよい。

 自分に自信がなく体力に劣るユーリスだが、実は相当優秀。考えてみれば、かつての第一王子の侍従の中でも年長で筆頭格だったわけだし、跡取りの長子として教育され、長年王宮内に起居して奉公し、2回も王太子妃候補の教育係に任じられるのは伊達ではない。自分に向けられるやっかみや羨望に気づいていない箱入り純粋培養が不幸の元だ(笑)。でも箱に入れておきたいギルベルトの気持ちもわかるよな。

書 名 「Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない2」
著 者 仁茂田もに        
出 版 アルファポリス 2024年10月
単行本 352ページ
初 読 2024年6月02日
ISBN-10 4434346490
ISBN-13 978-4434346491
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123852190

 2巻(下巻)は、恋愛に関してはダメダメなアロイスとリリエルの恋模様も絡めて、クライマックスになだれ込んでいく。
 上巻がおもにユーリス視点で現在と過去をうまくミックスさせていたが、下巻はギルベルト視点で、上巻でユーリス視点で語られた過去の出来事が再演される。これまで、この手の創作小説で人物視点をコロコロ変える手法は、安直だなーと思っていた。だがしかし、ここまで丁寧に描き込めば、それが面白いと思える。そうだよね、他人の思惑なんて実際判らないし、人間関係って誤解だらけだよね。とすごく納得感がある。
 にしても、それぞれに生真面目で実直で有能なのに、こと恋愛に関しては超おくてで恥ずかしがりで怖がりのカップルが、なんとか恋愛成就してよかった。本当によかった。
 長年にわたり数多の求婚を仕える主に握り潰されていたせいで、自分では一つも結婚話が来ない魅力のないオメガだと思い込んでいたユーリスが憐れだよねえ。

 なお、上記の書誌情報は紙本のものですが、実際はKindle本で読了した。

 アルファポリスで公開されてる番外編もすごく良いので、必読!です。

2024年10月20日日曜日

0512 金木犀二十四区

書 名 「金木犀二十四区」
著 者 三木 笙子        
出 版 角川書店 2012年9月
単行本 265ページ
初 読 2012年9月
再 読 2024年10月20日
ISBN-10 4041102294
ISBN-13 978-4041102299
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123758258   

 『怪盗ロータス』を読み終わって、次はこの本、と手に取った朝、この秋はじめて、朝の空気にかすかに交じるキンモクセイの香りに気付いた。キンモクセイはこの家に住み始めたときに、敷地の角に植えたもので、樹齢は二十数年というところ。隣地境界故に強く剪定せざるをえず、枝をのびのび伸ばさせてやれないのが可哀想なのだが、毎年健気に花を付け、密やかに香りを届けてくれる。今年も花香る秋が来た。この本を読むのにこれ以上の時節はない。
 
 表紙、背表紙とも美男子が描かれているが、作中にはもう一人、佳い男が登場する。この表紙(主人公)と裏表紙(主人公の友人)ともう一人(友人の友人?同僚?)の3人がメインで話は進む。
 舞台となっているのは、現代の日本・東京のパラレルワールド的な都市『首都』。花の名を冠した二十三区の片隅に、地図上にはないが金木犀二十四区と人に称される、時の歩みから置き忘れられたような、古風ゆかしい地区がある。その地は樹齢千年を超える金木犀の大木をご神体とする神社を中心に人々がゆるりとした時の流れの中で生活していて。
 イメージとしては、平成の世の中で、その一角だけは昭和の中頃みたいな感じだろうか。
 『東都』(江戸)、『革命』(明治維新)、『大君』(将軍)など、世界を作り込んでいるのに、一方では「建武の新政」なんて言葉が素で出て来たりして、ちょっと世界観にぎこちなさを感じてしまうのが、少々引っかかってしまうところではある。そこに、隕石、天狗、森林化といういわばファンタジー要素が加わり、あれ、そっち方向に行くのかな、と思いきや、なんとなく失せ物ミステリー(首飾り事件)風味もあるし、でも実は、ちゃんと、人の孤独によりそう優しさの話である、という、なんというか、そう、三木笙子さんの世界そのもののような物語とでもいおうか。
 
 隕石と天狗の話に唐突感はあり、読み手としては、まあそういう設定でいくのならそれに付き合うしか有るまい、という感じはややある。だけど、辛い事があったとしても「毎日の生活に少しずつ溶かしこんで記憶を薄め、やり過ごしていくしかない」「目をつぶるでなく、傷口をさらすでなく、あったことはあったこととして受け止めていく」ことが、どれほど大変なことか。それを、文字通り淡々と行い、自分とも周囲とも向きあっていく主人公・秋の在り方そのものが、この物語なのだと思う。この芯が強いが嫋やかな、まさに野に有る和の花のように目をこらさないとそこにあるのにも気付かないようであるけれど、確かに誰かを勇気づける存在が、この物語に感じるちょっとした引っかかりなど凌駕する。

 ちなみに、舞台は武蔵野湧水地の・・・というからには、三宝寺池や、石神井あたり・・・もっと西に行けば国分寺崖線なんかも思い浮かぶが、地理的には23区の一番西より、練馬区の一角あたりなんだろうな、と思って読む。レモンイエローの電車は西武新宿線、延長されそうでされない地下鉄は丸の内線? 読みながらそう考えはしたけれど、この話にはそういう現実感は不要だな。

2024年9月15日日曜日

0503 青い鷹 〜私を創った本2〜

書 名 「青い鷹」
原 題 「The Blue Hawk」1976年
著 者 ピーター・ディキンソン    
翻訳者 小野 章    
出 版 偕成社  1982年12月
単行本 353ページ
初 読 1980年代のどこか
ISBN-10 4037262207
ISBN-13 978-4037262204
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/61065539


 中学校の図書館にあった本。
 古代エジプトの王と神官と神の化身である鷹の物語として記憶に残っていたが、実際は、古代エジプトに着想した、架空の神権国家で王政改革を試みる若い王と、鷹の神に捧げられた鷹(王の命の憑代?)を逃がしたことによって、王(若い王の父・先王)の復活を阻んだ神官見習いの少年の友情の物語。実はあまり詳細を覚えていないので、そのうち再読したら、記録を更新したい。
 中学にいるうちに、何回か再読し、ずっと心に残っていて、いつか読み直したいと思っていた。
 インターネットで古書の検索が容易にできるようになって、やっと入手することが叶った。
実は書籍にしては相当な大金をはたいた。それだけの価値はある一冊。

2024年6月15日土曜日

0488 レーエンデ国物語

書 名 「レーエンデ国物語」
著 者 多崎 礼 
出 版 講談社 2023年6月
文 庫 496ページ
初 読 2024年6月14日
ISBN-10 4065319463
ISBN-13 978-4065319468
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/121302449

  「革命の話をしよう」

 という序章で、この物語は始まる。
 「レーエンデ国物語」、と言いながら、この巻ではレーエンデという地方は登場しても「国」は存在しない。
 そのことからも、後世に登場する「レーエンデ国」の伝説若しくは年代記として、この本は語られるのだろうか、と予想する。
 序章によれば、この物語は「革命」の話であり、レーエンデの歩んだ苦難の道のりであり、物語の起点となる“レーエンデの聖女”と呼ばれたある女性の物語であると。
 そして終章、この巻の主人公の一人、宿痾に冒された弓兵トリスタンの、その銀呪に侵された死にゆく目に、壮大なレーエンデの未来が映る。そして、ここが終わりではなく、始まりなのだ、とトリスタンは知る。

 レーエンデの誇りのために戦う女がいた。(第二部 月と太陽)
 弾圧と粛清の渦中で希望を歌う男がいた。(第三部 喝采か沈黙か)
 夜明け前の暗闇に立ち向かう兄と妹がいた。(第四部 夜明け前)
 飛び交う銃弾の中、自由を求めて駆け抜ける若者達がいた。(第五部 未刊)

 これらの物語が、この後に続く巻で、語られていく。

 とても壮大で緻密な物語世界を構築している。まさに、ハイ・ファンタジー。
 そのことに疑いはないのだけど、物語の舞台には、冒頭からどことなく既視感を感じる。なんとなく『もののけ姫』の世界観との共通性を感じるからだろうか。時代的にも中世→近世といったところ。周囲はだんだん文明化しつつある。よそ者の侵入を嫌う異形の古代樹の森とか、宿痾を背負った青年(トリスタン/アシタカ)とか。作中に登場する泡虫は『もののけ姫』の「こだま」と同じような役回りを果たす。
 また、残念なことに、『指輪物語』のような大叙事詩的なスケールの大きさを感じさせる世界なのに、全体的に台詞回しが軽い。テンポの良い会話は面白くはあるのだけど、軽いノリや語彙が非常に現代っぽく、中世的な情景に相応する情感とは雰囲気が添わない。そのせいで登場人物の情緒もいまいちチグハグな印象を受ける。
 また、もう一つ違和感が拭えなかったのは、「革命」「自由」といった言葉がどうも上滑りしていること。(もっとも、後世に書かれた、という体裁であるから、描かれた時代(この巻の年代)にはない概念が「作品」に持ち込まれているのだ、と考えられなくもない。)
 「自由に生きる」「個人の幸福」「自分の人生を自分で選択する」といったテーマはとても近代的なものなので、太古の森で、ドレスを纏ったお姫様が、「自由意志による選択」について苦しむ、ということに時代的なミスマッチを感じてしまう。自我の獲得ともいうべきとても近/現代的なテーマは、あたかもとってつけたように感じられ、違和感があるのだ。16歳のユリアが、自分の父より高齢で好色な領主の後添えに嫁ぐことを伯父に強要される。そのことにユリアが嫌悪を示すのは良いし、苦悩するのも当然なのだが、その葛藤を「自由に生きる」という言葉に置き換えてしまうと、とたんに「なにか違う」ものになってしまう。

 また、「悪魔」という言葉は、どうしてもキリスト教的意味合いを強く感じるので、別の言葉を当ててくれるとよかったのにな、と思う。ローマ・カトリック教会に近い雰囲気を醸し出している「クラリエ教」の教義や伝承の中にこの言葉が出てくるのであればたぶんすんなりと馴染むが、クラリエ教に圧迫される側の少数民族の古くからの伝承の中に「悪魔」とか出てくると、違和感が強い。

 さらにどうしても気になってしまったのが、「木炭高炉に石炭が必須」というセリフ。
 木炭高炉で製鉄するなら、必要なのは木炭であって石炭ではないのでは?石炭で製鉄するにはさらに時代が下がってコークスの登場を待たねばならないし、そうなったらそれはすでに「木炭高炉」ではないのでは?

 いやほんと、お前は本を楽しむ気があるのか!と叱られそうなレビューで申し訳ないとは思いつつ、一応気になった点は記録しておく。しかし文句は多いが、十分に楽しんで読んだ。一巻目で感じた違和感のうちのいくつかは、後続の巻を読めば解消しそうな気もする。

 なにしろ、トリスタンが最後に悟ったように、これは「終わりではなく始まり」
 レーエンデは揺籠
 エールデは胚子
 誕生したまま、ついに登場しなかったエールデは、今後、物語の中でどのような役割を果たすのか。
 トリスタンが言ったように、トリスタンは霊魂となってエールデのそばに留まるのか。
 やはりユリアが言ったように、ユリアはリリスと、時代を経てなんらかの再会を果たすのか。
 始原の海とはなんなのか
 銀呪病の正体はなんなのか・・・・

これらの謎が明らかにされることを大いに期待して、続刊に臨みたい。

2024年5月21日火曜日

0486 海賊王子と初恋花嫁 (Ruby collection)

書 名 「海賊王子と初恋花嫁」
著 者 須王 あや   
出 版 KADOKAWA  2019年2月
単行本 400ページ
初 読 2024年5月20日
ISBN-10 4041076951
ISBN-13 978-4041076958
読書メーター  

 先日読んだ『五歳で竜の王弟殿下の・・・』の須王あやさんの商業デビュー作・・・だろうか?
 全編、海賊王子のカイが、ひたすらに初恋の相手で、幼馴染みのイシュルを口説いている。カイはいい男だし、イシュルはただただ健気で、儚げだが、儚いだけではなく、心の強さがあるし、柔軟で折れないのが良い。とにかくしあわせになりたい人と、幸せになりたい時に最適な読書。敢えて難癖つけるとしたら、ちょっと海が凪すぎてるのでは、と思ったが、そこは風の精やら海の乙女が守護してるので、荒れようもない。海洋冒険小説好きにしてみると、ありえないほど海が穏やかだ♪
 船については、帆船というよりは、帆付きのガレー船のイメージで読んだ。
 あと、砂漠の国の皇子様のイシュルの肌が白いので、とっても日焼けが心配で(笑)。日除けのベールとか被せてあげたくなります。

2024年4月30日火曜日

0477〜81 『望んだものはただ、ひとつ』シリーズ5作

書 名 「望んだものはただ、ひとつ」 シリーズ
著 者 十時(如月皐)     
初 読 2024年3月読書メーター https://bookmeter.com/reviews/120502817 以下 

 十時さんの書く物語は、生真面目で切なくて優しく、きちんと愛情が報われて癒される。だから、たまにふと、思い出して、思い出すと繰り返し読みたくなる。何回も読みたくなる本て、かなり貴重だと思う。政治や政略や戦術の話はわりと稚拙で、ちょっと残念なところはあるのだけどそれを補ってあまり有るものが、ある。残念なのは、漢字の間違いが少なくない。同音異義語の間違いがほとんどなのだが、読んでいると、変換ミスというよりは素で間違えているような気がする。そんなで、最初、別のシリーズを読んだときには、「日本語がとても上手な韓国人作家さんなのか?」とも思った。(たぶん違うと思うけど。) 多少、残念な面はあれど、感性や素性が良い、というか、なんというか品の良さのある作品を書かれるので、かなり推してる。
 いや、同じレベルであっても上手にファンタジーしている作品はたくさんあると思うのだ。
 なんというか、中途半端に具体的なところがかえって作品を毀損してるっていうか、リアリティをもたせようとしたがためにかえって失敗しているのかもしれない。 あと、どうしても(個人的には)表紙が小っ恥ずかしい。しかし、こうして並べて見てみると、イラストはなかなか綺麗で、けっして嫌いではない。なので、ひょっとしてタイトルのフォントのせいか?という気がしてきた。
 あれこれとレビューを書いているとどうしても辛口にはなってしまうんだが、十時さんの創作は基本的に好きだ。主人公の真面目さや、切なさや、登場人物の心の強さがとてもよい。以下各巻。

0477 一作目 望んだものはただ、ひとつー水晶に選ばれた王妃ー
 宰相補佐官として、日々政務に精励するシェリダン。
 国王のアルフレッドは、後宮に50人もの側妃を入れるも、正妃を定めないことが国政の大きな負担になりつつあった。そこで、宰相の意見をいれて国につたわる秘儀「水晶の儀」で王の正妃を定めることに。そしてその儀式で水晶によって王の横に映し出されたのは男性であるシェリダンだった。
 ・・・てところから、拉致されるように王妃の部屋に軟禁され、強引に犯され、あれよあれよというまに王妃に仕立て上げれられてしまう。しかし、王アルフレッドの愛は真実で、だんだんシェリダンも自分の立場を受け入れていく。そして、次第にシェリダンの実家との確執や、シェリダンの心の傷も明らかになっていく。シェリダンがアルフレッドに絆されていく過程をうふふ、と楽しむべし。

0478 二作目 臨んだものはただ一つー迫りくるサーヴェー
 側妃たちからの信頼も得て、正妃としての立場も固まったシェリダン。
 ある日、新たに同盟を結んだサーヴェ公国から使者として公子と公女が来訪。しかし、公女はアルフレッドの正妃となることを目論見、公子はシェリダンを掠め取ろうと画策していた・・・って、シェリダン危機一髪ってのはストーリー的には良いのだが、さすがに大国の王/王妃に対して、弱小国の取れる行動じゃないし、手引きした閣僚が間抜けすぎるし、シェリダンのサーヴェ公国の公害についての分析も、いったいいつの時代を想定しているやら、でかなり微妙なのだ。

0479 三作目 望むものはだたひとつーサチュアの罠ー
 国内の地方視察に赴いたアルフレッドとシェリダン。その地方で精神を病むものが増えているとの事前情報に、視察の目を光らせる。中央に隠れて麻薬「サチュア」を栽培して私欲を肥やしていた州侯は、秘密をシェリダンに見破られるのをおそれてシェリダンに「サチュア」を盛る。シェリダンは中毒に陥って・・・・と、シェリダンの幼少時の心の傷と麻薬が見せる幻覚を絡ませるあたりは上出来なんだけど、中毒になりました→特効薬が開発されました→飲んだ途端に良くなりました、ってのが安直すぎやしないか、と。罪に問われた州侯の二人の異母姉妹(両方ともアルフレッドの側妃)へのシェリダンの対応なんかは、すごく良い。

0480 四作目 望むものはただひとつー狙われた佩玉ー
 まあ、近隣の新興国から周辺の国々が狙われるわけだ。おびき出されて捉えられ、国王が幽閉されて、国を要求される。アルフレッドとその近隣友好国数カ国の王と王妃も騙されて捉えられ・・・て時点で、ありえん。のこのこ友好的ではない国に各国の王がぞろぞろと出向いて、むざむざととらわれるとか、本当に安全保障上ありえん。そして、国元でアルフレッドの帰りを待っていたシェリダンに、佩玉(王権の証?)を要求する使者がよこされ、シェリダンがアルフレッド奪還のために策を立てる・・・・についても、かなりざっくりと安直でいやいやいやいや、流石に・・・・無理じゃないかと。一方で、アルフレッドの兄で、病弱なために早々に政局からリタイアしていた大公が、薬効の甲斐あって政務に復活してきたり、その大公の二人の妻のうち第二夫人が後宮とシェリダンに波乱をもたらしたり、という小技も効いていて、なかなか面白いのだ。シェリダンとアルフレッドの睦みあいにも心癒されるので、それだけで及第ではある。

0481 五作目 望むものはただひとつーリーベスの崩城ー
 シリーズ最終話? 今作は大それた政変などはなく、いわばシェリダンの日常に潜む危機的な。 シェリダンの元に、過去のシェリダンに対する陰謀の咎で城を追われた兄とその妻が助けを求めてやってくる。救いの手を差し伸べたシェリダンに当然恩を仇で返す所業。シェリダンが自身の過去と傷つきにどうやって向き合い決別するのか、という話。陰謀もこの程度のスケールなら安心して読める。たがしかし、兄が愚かすぎてびっくりだ。
  

2023年6月30日金曜日

0436 カササギの飛翔〜カササギの魔法シリーズ3〜 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「カササギの魔法シリーズ(3)カササギの飛翔」
原 題 「Flight of Magpies」2014年
著 者 KJ.チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2023年2月
文 庫 352ページ
初 読 2023年6月28日
ISBN-10 4403560539
ISBN-13 978-4403560538
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114585655

 前巻では「紳士」なクレーンに感心し、惚れ込むことしきりだったのですが。2人の中も深まっただけ、クレーンの独占欲も支配欲も深まったのか、変態度も・・・・(^^ゞ
 実のところ、ベッドの中ではとことん支配されたいスティーヴンと、余すところなく支配欲を発揮したいクレーンはベストカップルなんですが。2人とも外面とのギャップが激しすぎでクラクラする。

 審犯機構を潰したい協議会の、陰湿なやり口で予算も宛てられず、欠員補充もされないまま、大ロンドンの能力者絡みの犯罪の捜査や取り締まりに忙殺されるスティーブン。自分にしか出来ない、と頑張りすぎてしまうスティーヴンに対して、変わりの利かない仕事はない、と力説するクレーンの台詞が、いや、合理的だし、耳が痛いわ。
 おまけに協議会の悪意の裏には、宿敵ブルートン夫人の暗躍があった。
 クレーンの血に潜む〈カササギ王〉のちからを渇望する能力者たち。
 今回は、スティーヴン、クレーンがそれぞれ捕らえられてしまい、危機一髪でした。

 ご先祖様の力も威光も振り払って自分自身であることを選ぶクレーンとスティーヴンに幸あれ。ついでに、メリックとセイントのカップルにも。
 おまけ短編の4人で迎えたクリスマスのお話もステキだし、エピローグの舞台が日本だなんて、どういうサービスよ! もう、日本で花を愛でながら、どうぞ幸せに暮らしてください。

2023年6月27日火曜日

0435 捕らわれの心〜カササギの魔法シリーズ2〜 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「カササギの魔法シリーズ(2)捕らわれの心」
原 題 「A Case of Possession」2017年
著 者 KJ.チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2023年1月
文 庫 380ページ
初 読 2023年6月26日
ISBN-10 4403560520
ISBN-13 978-4403560521
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114550665

 2巻目の表紙も、美しく、そして色気がある。
 ただこの2人、本当は40cm近く身長差があるんですよ。たぶんスティーブンの頭の先が、クレーンの肩に届くくらいなのでは。絵的にはちょっと難しいかな? 話中で、体の大きなクレーンが、小柄でやせっぽちのスティーブンをすっぽり抱きすくめたり、ベッドの中で丸くなったスティーブンをクレーンが腕の中にかいこんで寝かしつけたりするのがめっぽう良いんですけどね。まあ、それはさておきましょう。

 体のサイズはともかくも、一流の能力者として立派に自立しているスティーブンですが、彼自身は天涯孤独で、同じ能力者の間でも距離を置かれる存在であり、心を許せる数人の仲間の他は友と呼べる者もなく、仕事に誇りを持っているといいつつ、現実にはその仕事を失ったら生きて行く術がない、という不安定で寄る辺のない身の上。それが身に染みているからこそ、全てを持っていて、なにものも怖れないクレーンの愛を信じきることができない。そういうスティーブンの葛藤ごとまるっと包み込むクレーンの深くて真っ直ぐで強い愛情が素晴らしい。そしてその想いは抱いているだけではいけなくて、きちんと、「言葉」にして相手に率直に伝えなければならない。そんなクレーンの人間としての真っ当さ、ゆるぎなさが、この作品の芯です。

 この巻ではこの2人、冒頭から恋人同士ですから、それはもう遠慮なく、愛し合ってます。私はまったく真っ当な感性の人間なので、なぜベッドの支柱に縛り付けて変態的にいたすこととが、彼の中でスティーブンを〈崇拝する〉ことにつながるのか、もうまったく理解できませんが!(ホントですよ) おまけにスティーブンはM寄りの気質があって、疲労や葛藤が深まると、恋人に乱暴に扱われたがるんですよ。本当は繊細に優しくしたいと願いながらも、そんなスティーブンの要求に激しく応えるクレーンが、それなのにとてつもなくよい男である、という点について私の脳は若干理解が追いつかない。ですけど、その倒錯っぷりを遺憾なく発揮しているクレーンが本当に紛れもない紳士なんですよ。
 
 時は19世紀英国で、神に背く同性愛が法律上の犯罪として投獄の対象となる、彼ら性的異端者には生きにくい時代と土地柄。その英国で仕事をするスティーブンのために、自らも上海に戻らず英国に身を置き続けているクレーンを、脅迫しようとする輩が現れる。一方、ロンドンの下町、貧民街で巨大化したドブネズミが人々を襲って食い殺す事件が発生。スティーブンの能力者チームはこの事件を追っている。ドブネズミがクレーンの周辺の人物を襲うに至って、2人の関係が仲間にバレ、スティーブンはかなり恐慌状態に陥りますが、仲間達は暖かく2人を受け入れてくれて一安心。2人は協力して事件の解明に乗り出し、化けネズミを操っているのは殺されて正しく弔われずに死霊と化した上海のシャーマンであると判る。この死霊が、力の溢れるクレーンの体を欲して、乗っ取りを企み、そしてカササギ王の片割れたるスティーブンがそれを阻止する。
 と、いう粗筋ですが、それよりもこれはもう全編、クレーンからスティーブンへの愛の告白です。メインはそれ。堂々たるラブロマンスでした。
 

2023年6月25日日曜日

0434 カササギの王〜カササギの魔法シリーズ1〜 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「カササギの魔法シリーズ1 カササギの王」
原 題 「THE MAGPIE LORD」2017年
著 者 KJ・チャールズ    
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2022年12月
文 庫 290ページ
初 読 2023年6月24日

ISBN-10 4403560512
ISBN-13 978-4403560514
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114512453

   この本を読むなら、まずはかささぎの画像をググって、この鳥の姿形を目に焼き付けてから読み始めてほしい。羽根と尾を広げて飛んでいる姿が非常に美しい、黒と白と青の羽が極めて印象的な鳥です。飛んでいる姿をネットで探していたら、こちらのブログの写真が素晴らしかったので →「日本全国の山・川・海に生息している野鳥達に会えるサイト」

 ついでに、この本と同じ年に原作が上梓されてベストセラーとなっている『カササギ殺人事件』にも登場する“カササギの数え歌”も予備知識をもっているとなお良い。
「カササギの数え歌」は17世紀まで遡る伝承で、鳥の数を数えて吉兆をうらなう子供の遊びうたのようなものらしい。子供の頃に靴を前に蹴り投げて、裏になるか表になるかで明日の天気をうらなった遊びのようなものか? カササギは烏の一種の比較的大型の鳥で、日本にも広く生息しているが、ヨーロッパでも日本の鳩や烏並みに普通にいる野鳥らしい。翻訳としては、「一つ」よりは「一羽」のほうが良かったかも?
ストーリーのあちこちで、結構効果的にこの数え歌が使われている。
 この本の冒頭に載っている数え歌は以下を参照。

一つは哀しみのため
二つは歓びのため
三つは女の子のため
四つは男の子のため
五つは銀のため
六つは金のため
七つは明かしてはいけない秘密のため
八つは海の向こうへの手紙のため
九つはとても誠実な恋人のため 
KJ・チャールズ. カササギの魔法シリーズ(1)カササギの王 (モノクローム・ロマンス文庫) (p.10). Kindle 版. 

 さて、時は19世紀英国。17歳で英国から放逐されて以来、上海で生き抜き貿易商としてのし上がっていたルシアン・ヴォードリー(37歳)は、伯爵だった父と、跡継ぎの兄の相次ぐ自殺でクレーン伯爵の爵位と所領と財産を継承することになり、20年ぶりに英国に帰国した。しかし、冷血非道だった父と兄を殺したと思しき呪いがルシアンの身にも及ぶ。ルシアンは英国のシャーマンである「能力者(プラクティショナー)」を頼り、彼の元に派遣されて来たのが、痩せた小男のスティーブン・デイ。しかし、彼の両親はヴォードリーの父と兄によって非業の死を遂げており、スティーブンはヴォードリーの血筋を恨んでいた。図らずも親の敵であるヴォードリーの血縁者を助けねばならなくなったスティーブンの心中は穏やかではないが、それ以上に、ヴォードリーの血族に向けられた魔術による呪いは邪悪なもので、スティーブンは看過することができない。小柄だが印象的な琥珀色の瞳と力を秘めた手を持ったスティーブンは、英国の超常能力者を束ね、違法とされる魔力の行使を取り締まる「審犯機構」の「審犯者(ジャスティシアー)」だったからだ。
 という感じで、ルシアンとスティーブンが、反発しつつも惹かれあいつつ、ヴォードリーの屋敷とルシアン自身に幾重にも掛けられた呪いを解しながら源を辿っていく。
 読んでいて“審犯者”などの造語の座りが悪くて馴染めなかった、というのは傍に置いておいて。
 空気が濁って動かない、陰気で湿っぽい石造りの古い屋敷、座り心地の悪い馬車、陰湿な執事や召使い、淀んで力を失った呪われた土地、総じてゴシックロマン調というか、いかにも英国っぽい陰鬱な雰囲気の中で進行する黒魔術。
 ではあるのだけど、要所要所で地崩れするみたいにルシアンとスティーブンの2人がロマンス方向に雪崩れ込む(笑)。その唐突さで一瞬、目眩のようにくらっとして意外にもこれが面白い(笑)。
 魔力絡みの本筋は、ルシアンのご先祖初代クレーン伯爵が、能力者の律法を築いた“カササギ王”と呼ばれた稀代の能力者だったことが判明したあたりから、これはルシアンも能力に目覚めるのか、とか、いろいろな可能性がちらちらと頭を掠めて、焦点が定まらずにバタバタしている間にクライマックスになって、どたばたと片付いてしまった。個人的には、もっとドラマティックに盛り上げてもよかったのに、と少々物足りなかった気がする。しかし、あっちの方は途中散々お預けを食らったり、スティーブンの葛藤やルシアンの男振りも素晴らしく、ラストで大いに盛り上がる。カササギが飛び回るラストがとくに印象的。ストーリーとしては★三つくらい、キャラクターと恋愛に関しては★五つ。次作を期待して間違いなし。
 なお、カササギの刺青にまつわる掌編も読む価値大いにあり。最後のお楽しみに♪

2023年1月9日月曜日

0403〜07 『君に誓う』シリーズ5作

書 名 「君に誓う」 シリーズ
著 者 十時(如月皐)     
初 読 2023年1月3〜6日
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/111201726 以下
 pixivをさまよっていて偶然捕獲したBL本。全てKindleアンリミで読めました。シリーズ5作を正月一気読みってどうなん?っていうか、栗本薫『矢代俊一シリーズ』で締めて、BL本で明けてしまった2023年に、我ながら先が思いやられる。
 とはいえこの作品、細かい突っ込みどころ(明らかな誤字とか、熟語の間違いとか)は多々あれど、中学生の頃にコバルト文庫をワクワク読んだような気分で全5作8冊を楽しく読ませていただきました。この間、pixivを読み漁り、オメガバースやらDom/Subって世界があるのか!とか最近?の二次創作はずいぶん練れてるし、層が厚そうだな、とか、いまや同人界も紙本ではなくネットメインなんだな、とか諸々と勉強になった。この彷徨はまだしばらく続きそう。

 しかし、どの巻も表紙がけっこう個人的には恥ずかしい。こう、両手で顔を覆って、指の隙間からチラ見する感じの恥ずかしさ(笑)。(こちとら中年だし。)
 総評としては、自費・同人的な同好の士向けの“ぬるさ”が残る、商業ベースに乗っかった電子出版物。プロとしての厳しさには今一歩足りないか。語彙の足りなさとか、言葉遣いの甘さとか、貴族的社会を扱ってるのに尊敬語と謙譲語がきちんと書けていないような、とか、知らないんだろうな〜っていう四字熟語の間違いや、書き手さんが世間知らずなのかな、と察せられる感じなど散見されるとはいえ、作品に、頑張れーー!と応援できる素直な可愛さや品の良さがある。作風は読メでどなたかが言っていたが、ハーレクイン的なラブロマンス。こういう純情一途なラブストーリーは嫌いじゃない。

0403 第一作『君に誓う 上/下』
楓×朔眞(志摩大公夫妻)の馴れ初めから馴染むまで。大公達の“後宮”的な「サロン」を舞台にしたドタバタも。





0404 第二作『君に捕らわれる 上/下』
主人公は雪月花(ゆずか)×葎(りつ)(駿河大公夫妻)。『君に誓う』では落ち着いた姐御(いや、お兄さん?か?)の風格を漂わせていた雪月花が、こんなハチャメチャな花嫁だったとは!な、はっちゃけぶりです。



0405 第三作『君に恋う 上/下』
楓×朔眞(志摩大公夫妻)メイン。代替わり間近な、それぞれ名家の次期当主である冷泉国光と北大路泰都のお見合い騒動に巻き込まれるサロンと大公妃の面々。




0406 第四作『運命じゃないけれど・・・・』
どっちかってーとスピンオフっぽい感じもする四作目の主人公は、大公妃達ではなく、第3作お見合い大作戦で登場した桜宮彰人。3作目では濡れ衣を着せられて割を食っていた彰人であるけど、北大路家の跡取り泰都からのプロポーズを受け、無事ご成婚。心に傷を持つ彰人と泰都のすれ違いラブ。シリーズ中では彰人がヒロインとしては一番小粒。苦悩も小粒だけど、一生懸命で可愛いので良し。おまけの番外編、彰人の“巣作り”行動が可愛すぎる。

0407 第五作『人はそれを運命と呼ぶのだろう』
第3作目で番(つがい)相手を公表した冷泉国光とその思い人の和仁(かずひと)の濃厚ラブストーリー。登場人物の中では一番不幸といって過言ではない和仁が主人公。不憫すぎてちょっと泣ける。
シリーズ作品中では一番、波乱万丈かも。終盤登場するヤクザさんはちょっとステレオタイプすぎて笑いがくるのだけど、ここまで読まないと、第三作の国光の行動とか、第四作の泰都の行動とかの理由が分からないので、5作目まで読了してやっと物語全体が腑に落ちてすっきりする。

 結構辛口なレビューを入れながらも、このシリーズは面白いし、幸せな気持ちになれてほっこりする。実のところは何回も読みかえしているお気に入りです。

2022年1月29日土曜日

0319-20 テメレア戦記 1  気高き王家の翼  上・下 

書 名 「テメレア戦記 1 気高き王家の翼 上」 
原 題 「His Majesty's Dragon」2006年
著 者 ナオミ・ノヴィク    
翻訳者 那波 かおり
出 版 静山社 2021年12月(文庫版)
文 庫 272ページ
ISBN-10 4863896409
ISBN-13 978-4863896406
初 読 2022年1月29日

 時はナポレオン戦争の時代。海戦は戦列艦による艦隊戦。そんな世界にドラゴンがいたら、の架空戦記・ファンタジー。生まれてすぐに言葉を人語を交わし、名前を与えてくれた者を主(ハンドラー)とするドラゴンーーー聡明で巨大な生き物、と人間の愛と友情の物語です。これはもう、面白くない訳がない。

 生粋の海軍軍人ローレンスが率いる英国海軍フリゲート艦リライアント号が戦いの末フランスのフリゲート艦を拿捕してみたら、積み荷の中にあったのはドラゴンの卵。しかも博識な軍医によれば、孵化目前とみえる。ドラゴンは各国において極めて貴重な存在で、生まれた時に絆を結ぶ人間がいなければ野生化してしまう。だれかが竜の誕生に立ち合い、ハンドラーにならねばならないがそこは大西洋の洋上。居合わせたのは、すでに海で艦とともに生きると心を定めた海軍軍人たちしかいない。誰がこれまでとこれからの人生を捨てて、ドラゴンと生きる道を取るのか。ドラゴンのハンドラーとなるのは試練の道である。
 人間たちの困惑と思惑をよそに、孵化した幼竜が選んだのは、フリゲート艦リライアント号の艦長ローレンスだった。艦長は幼竜に一流の戦列艦テメレア(テメレール号)の名前を与えた。
 とにかく、テメレアが可愛い。その一言に尽きる。
 孵化直後から人語を解し、好奇心一杯。男の子の幼竜なのです。(しかし、肉食の大喰らいでもある。)
 ふふん。というのが口癖、というか、鼻で笑うような仕草。
 光り物が大好きで、ローレンスからプレゼントされた宝飾品をとても大切にしているのも可愛らしい。
 そして、そのハンドラーとなった、ローレンスがまたイイ男なのだ。成長譚は成長譚なのだが、少年期(12歳)から海軍で育ち、有能で人柄にも優れて部下からも慕われ、すでにフリゲート艦の艦長になっている英国海軍軍人たる主人公のローレンスが、偶然の重なりで竜のハンドラーになってしまい、そこから、人生の進路の変更を迫られ、新たな伴侶(竜)とともにさらに転進していく、というある意味、転職ストーリーなので、ファンタジーといえど、ちょっと渋くて十分大人の読書に耐える仕上がっている。 
 ドラゴンを愛する全ての人へ。読んで損はなし。 余談だが、リライアント号という艦の名前に心がうち震える。 



書 名 「テメレア戦記 1 気高き王家の翼 下」 
文 庫  312ページ
ISBN-10 4863896417
ISBN-13 978-4863896413
初 読 2022年1月30日

 図らずも大洋で生まれて、生後数ヶ月をそこで過ごしたテメレアは、泳ぐのが得意で大好きな竜に育っていた。陸育ちの竜達には水浴びの習慣がなかったようで、湖で泳いで体を清潔にするのを好むテメレアに感化されれた竜達が増えていく。戦闘シーンも面白いが、こういう訓練や戦闘の合間のくつろぎのシーンが楽しい。
 ハンドラーや、クルー、チームのメンバーに大切に世話されている竜達の中で、小型の伝令竜のレヴィタスが哀れ。自分の竜と心を交わさず、道具程度にしか思っていない愚昧で高慢なハンドラーに周囲は皆腹を立てているが、だからといってどうにもできないやるせなさや苦みは、現実に通じるものがあるなあ。開戦に向けた訓練、合間の水遊びや食事、救援、奇襲、スパイ、そして戦闘。ナポレオンとの戦争はまだまだ続く。以下続刊。