2022年8月7日日曜日

0379 警官の道(単行本)

書 名 「警官の道」 
著 者 呉 勝浩, 下村 敦史, 長浦 京, 中山 七里, 葉真中 顕,
    深町 秋生, 柚月裕子 
出 版  KADOKAWA 2021年12月
単行本 328ページ
初 読 2022年8月7日
ISBN-10 4041120764
ISBN-13 978-4041120767
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/108130197   

1葉真中顕 「上級国民」
 N県警本部警備部警備一課、「公安」に所属する渡会。「ばっかじゃねえのか!」と吐き捨てた仕事の中身は、「上級国民」が起こした交通事故の後始末。だがしかし「下級国民」のしたたかさ、しぶとさと、そうでなければ生き残れないとでも言いたげな切なさに唸る。そして、ラストのちゃぶ台返しに驚愕。上級でも下級でもない、中級としか言いようのないしがないノンキャリ公務員の主人公がいささかあわれだ。

2中山七里 「許されざる者」 
なんと、2020(実は2021)東京オリンピック。閉会式の演出家が、開会式当日に撲殺死体で発見される。とてもいい人だった、と口々に関係者から聞かされるが、やがて、「いい人」なのは上半身のみ。下半身は別物、と分かってくる。と同時に、学生時代のイジメの主犯だったことも。
 にしても、コロナ禍でいろいろなところで、仕事のやり方が変わったとは思うが、まさか容疑者の取り調べがリモートで?マジか?ホント?コロナ後も全然かわらぬ“お役所仕事”の方こそ経験した身としては、さすがに冗談としか。

3呉勝浩 「Vに捧げる行進」
・・・・レミング? よくわからないや。こういう不条理もの(?)は苦手だ。べつに、主人公が警官である必要もなさそうで。コロナ、閉塞感、不安。耐えろよ。耐えようよ。耐えられないと、レミング化して集団自殺してしまう・・・みたいな? 

4深町秋生 「クローゼット」
 上野署の刑事2人。バディを組む相棒に心寄せる刑事荻野は「クローゼット」の中にいる。観光地化した新宿二丁目よりコアな、ゲイの街という顔を持つ東上野界隈で起きた、男性暴行事件の捜査に、自らも秘密を持つ荻野の気持ちが揺れ動く。ラストの思い切りの良さに、思わず荻野のこれからを全力で応援したくなる。願わくば、彼の恋が成就しますように。

5下村敦史 「見えない刃」
 最初に、東堂が怪しいと思って、最後の最後まで東堂が怪しいのでは、と思い続けた私って、ひょっとして性格に問題でもあるんだろうか。それともスレすぎてる、とか・・・? テーマはセカンドレイプなんだけど。なんだか表層的っていうか、教科書的っていうか、東堂がおキレイすぎちゃって、アヤシい、と。で、上手く言えないんだけど、小学校の道徳の時間に、教科書を音読させられたようなそこはかとない不快感を感じるんだよね。この作品。

6長浦京 「シスター・レイ」
 もう、めっちゃ面白い。こういうのは大好き。でも、あまり警官関係ないかも・・・・。いや、憲兵隊の対テロ特殊部隊だって、警察機構っちゃあそうなんだけど。

7柚月裕子 「聖」 
 これぞ、警官の道。トリにふさわしい。そして「下級」は「下級」のままだ、と言い切った一話目に対置して、底辺からでも上を目指すことができる、根性さえあれば。と刑事が諭す。なんかキレイにまとまった感があるけど、観音コンビの結成を見てみたい。警官になった聖の姿をみて、嬉し泣く母の姿もね。 
聖、がんばれよ。

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