2023年2月21日火曜日

0417 MORE THAN YOU KNOW <矢代俊一シリーズ18>


読書メーター https://bookmeter.com/books/20867375   

Amazonより・・・「クラシック音楽界の重鎮である父との父子リサイタルを控えて俊一の焦慮は募るばかりだった。さらに金井恭平との密会や渥美兄弟との会食でさらに彼の運命は行き詰まっていくのだったが……2日間はピアノに触れてはならないと父に厳命された俊一は英二と横浜へ小旅行に行く。そして英二の生まれ育った貧民街を訪れたり、アマチュアのセッションに参加するのだったが、そこで彼は行き場のない運命への光明を見いだすのだった。矢代俊一シリーズ第18巻。」

 相変わらず、amazonのリードが素晴らしい。基本、上記でしっかり要約されています。それ以外の事といえば・・・恭平にヒイヒイ言わされたり、透にあんあん言わされたり、ですかね?
 さて、奇数月の月末に発行されているこのシリーズですが、やや遅れての刊行でした。間に外伝がざくざく発行されているせいかな。外伝は「BL桃色図書室」というレーベルから出ていますが、同人誌価格なのか量が少なくて高いし、内容が晃一視点や渥美センセ視点の本編焼き直しなんで、ほとんど興味が持てないです。(電子書籍の無料お試しページだけ読んでるけど。)
 我ながら、レビューが酷くなってきているのは自覚しているんですが、いちおう、隔月で楽しみにはしてるんですよ。音楽演奏のシーンはそれでもけっこう良いので。特に次巻『ボレロ』は楽しみですね。父との二人リサイタルの巻ですから。さぞかしや聴かせてくれると期待しています。
 
 で、本作、読み始めて最初に目がついてしまったのが「なかなか」、という言葉。「なかなか」というの言葉が全編で31箇所!使われていますよ。薫サンのクセかね。
 なかなか楽しい、なかなか卑猥、なかなかけっこう、なかなかいろいろ、なかなか珍しい・・・・etc.
 べつに良いんですが、さすがに最初の数ページで1ページ一回の割で出てくると、目についてしまって、つい、数えてしまいました。こういうところ、電子媒体ってイヤですよね。すぐ検索出来ちゃうから。
 内容はもう、だらだら・だらだら、ひたすら夏バテででろんとした俊一が恭平のこと、英二のことを引き合いに“自分のこと”を考えつづけます。ここがポイント。結局自分の事なのよ。悲しいのも苦しいのも、全部自分です。愛だの、情だの、文字数だけは沢山、語ってますが、そもそもの出所(薫サン)が浅薄なんで、それ以上に内容を湛えたものになんぞ、なるわけがない。
 もはやこれ小説ではないよね、というのが率直な感想。かろうじて読むに耐えるのは、音楽シーンだけです。

 父とのリサイタルのプレッシャーで精神的に煮詰まった俊一は、ついに父にピアノ練習を禁止されて、気分転換に英二と横浜の一泊旅行に向かいます。英二の育ったスラムを歩き、英二の過去を思い、老舗ライブハウスで若手登龍ライブに飛び入りして、音楽を思い出し、また、英二の音楽性を再確認する。その夜はホテルで二人で過ごして・・・。という部分はそこそこ面白い。だけど、全体的にはホントダメ。

 そういえば、風間さんがついにニューオリ(俊一のプロダクション)に入社して、アシスタント・プロデューサーの名刺を持つようになって、俊一のそばに自分の居場所を発見(!)してなんだか幸せそうになっちゃってるし、透は良と喧嘩して、俊一にエロくちょっかいだししてるし、なんだかなあ、という感じが満載です。
 おまけに「良って結城修二のお稚児さんで有名だったんだよ」と透から驚きの暴露。ここにいたって設定後出し?って、これ『真夜天』の方の話だよね。
 まあ、どっちだろうが、薫サンにとってはどうでもいいことなんだろうと思う。浅薄な人がくどくどと愛を語ったところで所詮は薄っぺらいままだし、“愛を知らなかった自分がついに愛を知った”、とか書いたとしても、結局は薫さんの理解の範疇でしかない。
 それでも、一瞬、俊一に投影してついに自分に気づいたか?と考えたけれど、やっぱり薫サンは薫サンのままだったのだろうな。この辺りの本は、薫サン没後の発表作のはずです。生前いつ頃に書き溜めた原稿なのかは知らないのですが、文体劣化は病気が原因?いや、劣化はもう、随分前に始まっていたのだし。考えても意味ないし、その価値もないかな。ほんとに、『嘘は罪』とか14作目くらいの透ちゃんで止まってくれてればよかったのに。というか、ここまでくると『朝日のあたる家Ⅴ』が、もはや名作に思えてくるからね。自分のレビューを見直してびっくりだよ。

2023年2月18日土曜日

番外 10DANCE(1)〜(7) (ヤングマガジンコミックス)

★書誌情報は7巻(最新巻)のものです。
書 名 「10DANCE(1)〜(7)」
著 者 井上佐藤        
出 版 講談社(ヤングマガジンコミックス)
コミック 176ページ
初 読 2023年2月11日
ISBN-10 4065300657
ISBN-13 978-4065300657

読書メーター  
 こういう感じの、がっつり骨格が正確に描き込まれた肉体と絵柄がたいへん好みです。ダンス、バレエ、フラメンコ、フィギュアスケートなんかも大好き。競技ダンス、スタンダードの「帝王」杉木信也が目指すのはテンダンス。ラテンの師として、そしてライバルとして選んだのはラテンの日本チャンピオンの鈴木信也。漢字も仮名も一字違い。唯我独尊な杉木に振り回される鈴木だが、杉木の孤高の魂と、鈴木の原初の生命力は、これからどう交わっていくのか。

 スタンダードとラテン、まったくタイプの違う二種類のダンスがある競技ダンスの世界で、スタンダード5種とラテン5種両方とも踊って競う「10ダンス」。ダンス競技のトライアスロン。世界のスタンダード界で、「帝王」といわれながらも常に二位を強いられている杉木はこの10ダンスに挑む。その為のラテンダンスの師として、また競技のライバルとして選んだのは日本でこそラテン・チャンピオンだが、世界ではまったく無名の鈴木。かつて、鈴木のダンスを見て魂を奪われた杉木は、鈴木に10ダンスを教え合うことを申し込む。
 と、至って生真面目なストーリーなんだが、なんといっても最高に面白いのは、ワルツのリードを鈴木に教えるために、杉木がリーダー(男)、鈴木がフォロー(女役)でワルツを踊るシーン♥️
杉:「相手が雌猿でも僕ならプリンセスにできます」「さ、ホールドしてご覧なさい」「プリンセスに変身するのは今からです」
鈴:「なんかバラ見えてきましたあっ💗」
杉:「そうですか 白鳥とお城が見えてきたらまた教えてください(キリッ」
これ大真面目だから。大好きだ♪
 まだまだ、1巻では相思相愛にはほど遠い感じですが、そちらもおいおいかと。
 番外編『紳士はラティーノがお好き』も大変おもしろいです。日本人ダンサーの杉木サンが、ペンギンの群れかカルガモの親みたいに英国紳士をぞろぞろ引き連れているところが、何気にシュール。
 追伸)カバー下。・・・房子さん。アンタ、日本語の不自由な杉木センセイに一体何をおしえとんのや。

 杉木が出場するワールド・チャンピオンシップ(英国・ブラックプール)観戦で、鈴木は、杉木選りすぐりの人々のテーブルに招待される。スタンダード、ラテンのそれぞれの元チャンピオン、現在は振付師、デザイナーetc。これは杉木による、鈴木の世界デビューのための布石。そして、鈴木は決して一位になれない杉木の孤高の闘いを垣間見る。
 世界一位のジュリオと、二位の杉木の因縁もなかなかのものだが、前しか見ない杉木の潔さが武士っぽくて格好よいです。
 深夜、一人で教室から帰る杉木を追いかけた鈴木は、終電後の深夜の都心の公園で、一人でベーシックを踊る杉木を目撃する。「一緒に踊る?」この次のコマの杉木の笑顔が最高です!
 ついでだが、おまけページ。ラテンのフリフリの衣装に真顔で執着する杉木が・・・・・
 あと追伸)カバー下。お母さん。それは誤解です。

 鈴木&田島のスタンダードの方はなんとか様になってきたようだ。しかし杉木のラテンがどうにもきまらない!? いちおう出来ているようなのに、どうにもラテンぽくない。ワルく「ニヤッ」と本人笑ったつもりでも、王子様の微笑みになってしまうみたい。そこで、アキが考え出したのが「演劇方式」。踊りにエロエロのワルい男のセリフを載せてみよう! それでもどうしても杉木がうまく役にはまらない。ついに鈴木が杉木相手にラテン的ワルい男を実演。男役はとことんワルいし、女役はとことんセクシーな鈴木センセイすごいです。それにつられて杉木センセイもワルい男がついに開眼。 かつての黒いドレスの矢上房子。房子が記憶にのこしていないそのステージの暗い思い出を杉木と共有した鈴木は、ついに深夜の地下鉄で熱いキスを交わした。


 勢いでキスしてしまったものの、どちらも心の準備は出来ていない。思い出して悶絶?する鈴木は、自分は真剣&激情一途だけど、杉木はパブリックスクール出身で男同士のキスなんて珍しくもない、向こうにとってはちょっとしたおふざけなんじゃないか・・・と悩むし、杉木の方は、ああ見えて男性性の権化みたいな鈴木に、自分の思いが受け入れられるわけない、と(精神的に)逃げ回る。これって、いわゆる相片思いってやつ。
 ついにあの杉木が「僕はあなたが欲しい」・・・と告白し、お互いにキスを交わすも、そこからがまた難易度が高い。ここまでは良いとして、お前は男と寝れるのか?と。やっぱり男同士は無理なのか。二人の関係は甚だ危うい。そんなとき、ラテン王者アルベルトと知り合い、アルベルトは鈴木に頂上が遙か上にあることを示す。

 鈴木の父は、日本ラテンダンス界の大物で大会運営側。大枚はたいて世界一位のアルベルト、二位のガブリエルを招聘してのジャパンオープンに出場する鈴木が求められているのは「三位」。しかし、父の立場を裏切り世界に切り込む覚悟の鈴木は、ついに全力で大会に臨む。覚醒したとも言える鈴木は、まさに舞踏神そのもの。かつて杉木が見いだし、世界に導きたいと思わせたその姿が、ついに会衆に晒される。突然の雷雨、そして会場建物への落雷で停電し、真っ暗になった建物の中で、観客は鈴木の体から流れ出るリズムと音楽を聴く。
 杉木と鈴木の極めて精神性の強い恋愛と、男同士のままならなさがとことん切ない。


 杉木の膝の痛みがちょっと不穏だ。二週間休息を取るはずが、杉木はつい、鈴木とのレッスンをいれてしまう。
 ラテンの元王者ルーカス・ガルボの紹介で、アメリカの大富豪マックス・マルダーが鈴木の元に(杉木のへ、か?)襲来!
 マックスは杉木を手に入れる代わりに、鈴木のパトロンとなる契約をする。ついに鈴木はスーパーセレブのパトロンを手にし、金にいとめなく、ダンスに邁進することができる環境を手に入れる。
 また、杉木は、鈴木を元スタンダード王者のノーマン・オーウェンに手渡し、自分は手を引く。これからはダンスを教え合う仲ではなく、10ダンスのライバルになる。別離を前にした二人の夜明けのダンスは、透明で美しい。

 鈴木をノーマンに託した杉木は、自らのラテンのレッスンをガブリエルに依頼。ガブリエルは杉木を鈴木に勝たせるために、鈴木の分析に乗り出す。これに協力したのは、偶然にもパブリックスクール時代の杉木の元ルームメイトのマーニー。二人によって解き明かされる鈴木の脅威のダンス。
 杉木を諦めようとしている鈴木と、妹が結婚してしまい喪失感を持て余すノーマンがお互いで喪失を埋めるために、ついに鈴木があっちの世界に。
 杉木のほうは、鈴木を手放した痛手を、マックスに振り回されることで紛らわす。そんな二人が、日本で開催された国際大会でついに再会して・・・・・!いやあ、ここで、次巻は2024年とか、どんな放置プレイよ。連載はヤンマガWEBです。もう、連載おいかけますよ! 続きは1年後とかないわ〜

2023年2月11日土曜日

0416 姑の遺品整理は、迷惑です (双葉文庫) 

書 名 「姑の遺品整理は、迷惑です (双葉文庫)」
著 者 垣谷 美雨    
出 版 双葉社  2022年4月
文 庫 280ページ
初 読 2023年2月11日
ISBN-10 4575525626
ISBN-13 978-4575525625
読書メーター    

     ※あくまでも、私の中では「実用書」の扱いです(笑)
 仕事が忙し過ぎて、心身ともにボロボロ、がっつりした翻訳モノなんかは、脳が疲れてて手が出せないので、とりあえず、こいつを読んでしまおうと思った。
 次のゴールデンウイークには多めに休みを取って、旦那実家の片付けに取り組む覚悟の身としては、何かの参考になるかもしれない。うちの義母はいささか遠方の家を残してこちらの高齢者住宅にこの冬に転居した。独居だったし、さすがに自動車の運転を諦めてほしいお年頃で、いろいろと心配もあり、一人暮らしは無理になりつつあったところ。いろんな意味で良い選択だったし、なによりも本人が満足できているのがとても良い。
 残るはほぼ2世代分のアレコレが収納されている家。(豪邸ではないのだが、ちょっと地方なだけあって、家は広い。)
 ちょっと前に亡くなった義父の形見の意味もこめて、私が持ち出したいのは書斎家具の2点のみ。義母の思いの入ったモノもまだ残っているし、粗略にはしたくないが、きっちり処分はしないといけない。ううむ。何日コースになるのだろうか・・・・
 本のタイトルに恐れを感じるので念のため補足するが、ウチの義母はご健在だし、迷惑だと思ってる訳じゃない。←コレ重要! それにしても、「家じまい」の経験をお持ちの方のお知恵を拝借したいものである。

 で、それにしても、だ。

 読み初めると、主人公の性格にげんなりとする。隣人の生活保護を受けている女性をひと目見て“愛くるしい顔立ちだからか、デブといった感じはなく”、とかいうものの、他人に対してデブという形容がするりと出てくる人なわけだよ、この人は。太った人ではなく、肥満体型の女性でもなく、初対面の女性をデブと脳内で思っちゃう。そして、夕食の支度で野菜をフライパンに“ぶち込む”。もっと綺麗な日本語はたくさんあるのに。

 主人公は、金沢の旧家の裕福な家庭の育ちで、上品に育っているはずなのだ。だけれども、どうにも品がない。そして、そこそこの広さの3Kのアパート一室をまるまる残して急逝した姑を、先に亡くなった実家の母と引き比べ、心の中でぐちぐち、ぐちぐちと文句を言い続けるので、読んでいて辟易した。そのくせ自分のことは“純粋”なんて形容されてまんざらでもない。自分でもそう思っていたりする。あああ、なんというか、自分と同じ世代の中年女性が、世間しらずで幅も奥行きもない、狭い自分だけの世界から、周囲を覗いて自分の尺度でああでもない、こうでもないと、やっていて、本当につまらなかったのだ。
 やがて、姑の遺品を片付けながら、だらしないとおもっていた姑が実は良い人だったことが判ったり、完璧だと思っていた実母は、実は嫁にとっては厳しい姑だったことがわかったりしても、それで、この人の世界が広がるわけではない。うーん、上手くいえないんだけど、凄く身勝手で、尊大というには大げさだけど、最後まで、そこはかとなくイヤな感じがして、抜けなかったのよ。ああ、まあ一言でいって、この作品は私には合わなかった。ということだ。

0415 夜が明けるなら ヘル・オア・ハイウォーター3 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「夜が明けるなら  ヘル オア ハイウォーター (3)」
原 題 「Hell or High Water Book 3 Daylight Again」2014年
著 者 S.E.ジェイクス    
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2017年7月
文 庫 380ページ
初 読 2023年2月9日
ISBN-10 4403560318
ISBN-13 978-4403560316
読書メーター 

 やっと彼らの設定を生かして、アクション小説っぽくなってきた・・・かもしれない。プロフェットの因縁に、トムも手に手を取って躍り込む。
 プロフェットの仲間たち、シールズ時代のチームのメンバー、キリアン、ゲイリーと役者もそろい踏み。そしてランシング、ジョン、サディーク、と敵の顔ぶれもだいたい揃ってきたか、というところ。(ランシングは小物だったけど。)しかし3巻はまだ風呂敷を広げきった、というところ。事態が動くのはこれから。

 そしてなんと、マルとキリアンが“出来ている”。
 また、プロフィットが抱える最大の悪夢がトムに明らかになる。遺伝性の先天性疾患でやがて失明する運命であること、そしてすでに視力の低下が始まっていること。
 喪失の予感がプロフを頑なにし、トムを信じ切れず、また信じるからこそ、トムが自らの意志で自分に縛られることになるのが耐えがたく、とはいえ、一人で暗闇に中に生きることになるのはさらに耐えがたいプロフィット。乗り越えるべき試練はトムの側にも、プロフの側にもある。しかし、それを乗り越えた二人は、これまでより強い絆で結ばれるように。
 キリアンの組織のSB−20ってのが良く判らないが、とにかくキリアンは自らの組織を脱して、プロフを監視し必要があれば殺す側から、プロフを守る側に立つことを選ぶ。なぜなら、事が済んだら自分も口封じに殺されることを察したから。そしてなにより、プロフの人間性に惹かれたから? ついでに、マルに恋したからかも。

 そして、ジョンの裏切りの輪郭が明らかに。この刊は、起承転結でいえば「転」。ことが大きく動くのは次巻だな。トム側の人材資源にキリアン側の手駒と協力が加わって、いよいよジョンを追いつめる計画が動き出す。

 ストーリー的には不満もあるし、消化不良だし、欲求不満もある。
 アクション巨編っぽい打ち出しなのに、やっぱり主眼はロマンスなので、作戦行動やら、航空機や銃器の扱いやら、近接戦闘やらの扱いがちょっとアレレな感じがするし、いくら米国とはいえCIAのエージェントに“弁護士”をぶつけてなにか面白いことが起こるんだろうか、と思ったし。
 マルとキリアンがいきなりアレはなかろう。と思ったし、ワタシが鈍感なのかもしれないけれど、いまいち思わせぶりな会話が理解しきれてなかったりもする。
たとえば、マルはサドなのか?それともマゾなのか?
 マルがサドで、トムがマゾってことなのか?よくわからーん!いや、マルとトムが両方ともマゾなのか。
 でもまあ、このさき、どのように作戦行動して、話を畳むのかは興味があるし、トムとリア(プロフ)が全ての重荷をおろして幸せになる姿も見たいので、第4巻の翻訳発行を待ってます。

2023年2月4日土曜日

0414 不在の痕 ヘル オア ハイウォーター (2) (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「不在の痕  ヘル オア ハイウォーター (2)」
原 題 「Hell or High Water Book 2 LONG TIME GONE」2013年
著 者 S.E.ジェイクス    
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2016年9月
文 庫 421ページ
初 読 2023年2月3日
ISBN-10 4403560288
ISBN-13 978-4403560286
読書メーター 
https://bookmeter.com/books/11105019
 読書メーターではめでたいキリ番1000冊目、基本、過去読了本とマンガは登録しないこちらのブログでは414冊目はこの本にした。
 で、最初にまずワタシは開眼したよ。この本は、シリアスだと思って読んじゃいけなかったんだ!
 冒頭数ページにわたるトムのラブレターは、きゃーっと本を投げるレベルで恥ずかしい。日記を書くことも手紙を書くことも恥ずかしすぎてできないワタシには、これを読むのはもはや羞恥プレイに近い。36のいいオトコが女子高生みたいなメールをイラスト入りで毎日一通、122日! それに絆されるプロフェットもどうかと思うがな! ロマンチストで甘々な二人なのだ。お互いのうなじをなでる描写だけで、もう、とろけるように愛が溢れてる。
 元シールズやら、元海兵隊やら、CIAやらFBIやら、民間軍事会社の傭兵やら、イスラム国家の核開発っぽいお膳立てなんて実にAAっぽいのに。
 ストーリーはミステリー基調なのに。
 中身は、あつあつべたべたのゲイ・ロマンス以外のなにでもなく。
 それなのに、舞台はハリケーン吹き荒れる魔境ルイジアナ(笑)
 バイユーで育ったんだというトムに、某別シリーズのおかげで爆笑の予感しかしないのはどうしてくれようか。

 カトリーヌ以来最大のハリケーン直撃を前に、故郷のルイジアナで避難を拒んで頑なに自宅に居続ける叔母を案ずる思いを、トムはどこにいるかも知れぬプロフ宛てのメールに書き綴る。
 そしてプロフは、来れないはずのトムの代わりに、勝手にルイジアナのトムの叔母宅に手伝いに乗り込むという、謎の行動力を発揮。
 デラ叔母さんの家には70代のロジャーとデイブというゲイカップルが下宿していて、お互いに手を繋いでプロフェットの前に登場。
(トムとプロフの出会い頭の熱々SEXを悠々と鑑賞するロジャーとデイブの会話は実に楽しい。バイユーには老人がよく似合うな。)
 トムとプロフはお互いに相手を近寄らせまいと牽制しつつ、だけど求め求められ、激情にかられたそのSEX描写がとてもきれいだ。

 にしても、ルイジアナで、バイユーで、傭兵で、ゲイで、ガチムチで甘々の肉弾戦だよ。なんともまあ、濃い。濃厚とんこつ背脂多めで、お腹いっぱいでもう二度と頼まなくていいや、と思ったのになぜか一週間後にまた食べたくなってるラーメンみたいだ。

 今作では、ルイジアナのトムの故郷で鉢合わせした二人が、トムの過去にとことん向き合う。虐待され、疎外され、差別されて傷ついたトムが過去に向き合うのをとことん支援するプロフェットは神々しいほど。一方のトムはプロフェットにアリゲーターを素手で捕縛する技を披露し、プロフェットドン引き(笑)。
 トムの生まれ故郷への帰還がもたらした危機は、あまりにもあっさりと終わったけど、まあ、ミステリーメインの作品じゃあないから仕方ない。
 登場人物が、グレイマン級だったり、ザック並みだったりするんで、思わずAA方面の展開を期待しそうになるのをすかっと肩透かしされたりもするけれど。
 とにかく、これはロマンス作品なんだと自分に言い聞かせて読み切る。
 今作は、とにかくプロフェットの優しさが際立ってます。それに、なんとも素敵なプロフの本名や、彼の秘められた仕事や過去が、ついにトムに明かされる。これだけの大風呂敷ってことは、ここまでが序章。あとはいくらでも、何冊でも引っ張れそう。

 ついでに書いておくと、こいつらアメリカ人は緊縛プレイするときもダクトテープだ。
 ダクトテープ万能。

2023年2月2日木曜日

0409 幽霊狩り ヘル・オア・ハイウォーター(1) (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「幽霊狩り ヘル・オア・ハイウォーター(1)
原 題 「Hell or High Water Book 1 CATCH A GHOST」2013年
著 者 S.E.ジェイクス    
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2015年12月
文 庫 425ページ
初 読 2023年1月30日
ISBN-10 4403560245
ISBN-13 978-4403560248
読書メーター 
https://bookmeter.com/books/9944171   
  最初、文体?翻訳?それともストーリー?に馴染めず、目が滑って滑って読書のペースが上がらず困った。どうしてだろう?この手のは苦手なはずはないのに。
 さて、何と言いますか、本場(かどうかはしらんけど)ガチムチの筋肉ゲイが男臭くぶつかり合うM/Mです。うまく言えないけど、若いマスチフとドーベルマンが、牙むき出してじゃれてる(怖い)感じというか。
 本邦のBL系だと、タチ(攻め)とネコ(受け)が固定していたり、なんとなく受け側は女性的に表現されていたり全体的に柔和な感じのするものが多いような気がするのだけど、これはそんなこたあない。
 EE(エクストリーム・エスケープ)社ー民間軍事会社に所属する二人の傭兵、プロフェットとトム・ブードロウ(表紙の向かって左の金髪がプロフ、刺青黒髪がトム)
 片や元Navy SEALs、片や貧困底辺からのし上がった元FBI。最初はエキセントリックなプロフと冷静なトムの組み合わせなのかと思ったが、どちらかというと逆か。プロフの方が冷静。トムの方が頭に血が上りやすい。とはいえ、どっちもどっちで、脛に傷があって、なにやら過去にデカい痛みがあって、口が悪く、協調性がなく、めちゃくちゃ戦闘能力が高くて沸点が低い。似たもの同士。それが上司のフィルの方針で無理矢理バディを組まされて、七転八倒、組んずほぐれつ。思わせぶりな地の文に二人分の悪口雑言で読みにくくてしかたなかったが、二人の関係がややほぐれてきてからはどうにか多少は読みやすくなってくれた。
 とはいえ、少々、文に難があるような気がする。まず、“こんなシーン”でよく出てくるような形容が、前後の脈絡なく安直に使われる。おかげで、人物の印象がちぐはぐで、人物像がうまく固まらない。これは翻訳ではなくて、元の文の問題じゃないかなあ。(良く分からないけど)

 トムが36歳でいい加減落ち着いていてもイイお年頃だけど、はっきり言って若いプロフェットに手の上で転がされてる。
 また、プロフェットと同じ建物に住む謎の諜報員キリアンが、まだどこの誰だか不明だが、イイ感じだ。
 身ごなしや英語の使い方から、おそらくSAS(英国陸軍特殊空挺部隊)出身。どこかのスパイ。同じ建物の上階にプロフが住み、階下にキリアンが住んでいる。面識はないが、お互いがお互いのことを調べ尽くし、相手込みで住んでるビルごと防衛したほうが身辺が安全だとの結論に達したのか、不思議な共生関係が成立している。お互いの留守中に部屋の安全に目配りしたり、こっそり忍び込んでいたずらを仕掛けたり。命を削る銃撃戦の最中にチャットでたのしく会話したりも。
 そんなキリアンが、プロフェットとトムの危機に、救出に乗り出してくる。いやいや、格好よいこと。キリアンの身元が明かされるのが楽しみだ。
 トムについては、まあ幼少時に虐待されていたんだろうな、というところまでしか判らない。コイツの隠れ設定も今後を待つ。
 まあ、いまいち読みにくい作品ではあったものの、とりあえず、邦訳残りの2冊は読むし、4冊目も翻訳されたら読むだろう。

2023年2月1日水曜日

2023年1月の読書メーター

 読んだ冊数はそこそこだけど、中身は惨憺たるもの。半分はコミックです。
 おまけに、なかなかBL沼から抜け出せず。沼にハマりついでに、もちぎさんの著書で現実も探る。今月中に読了できるかと思っていた『BLの教科書』は、アンダーラインを引き引き、現在も読み進め中。とりあえず『BLの教科書』を読み終わるまでは、この路線を継続する予定。あと、昨年12月以降、pixivも引き続き散策中です。現実の仕事の方は、えらいことになってるのでここでは書けないけど、いつか笑って話したい。

1月の読書メーター
読んだ本の数:19
読んだページ数:3304
ナイス数:887

幽霊狩り~ヘル・オア・ハイウォーター1~ (モノクローム・ロマンス文庫)幽霊狩り~ヘル・オア・ハイウォーター1~ (モノクローム・ロマンス文庫)感想
“こういう時"に使いそうな形容を前後の脈絡なく並べてるせいで人物の印象が散漫になってしまい、めっぽう入り込みにくい。キャラは魅力的だし、なにしろ傷だらけのいい男どもだし、謎も半分くらいは見えてきてるし、面白いと思える要素は満載なんだけど、どうにも印象が散漫になる。とりあえず、トム<プロフ<キリアンの順で好み。それでも既刊のあと2冊は読むし、4巻目も翻訳されたら読む。次巻以降、キリアンの正体が知りたい。
読了日:01月31日 著者:S.E.ジェイクス

ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。感想
いろいろと勉強になりました。身につまされる部分もあり。(これは本の内容とは離れるけど)LGBTQという用語が一般的になり、今度はそれに「括られる」ことが差別だと感じる人もでてきたりして、セクシャリティの問題は多分人の数だけあって、絶対の正解というものもない。世の多数を占めるヘテロの男女だって、いわゆるジェンダーに苦しめられる当事者でもあるわけで。BLだけでは推し量れないリアルな世界を教えてくれるもちぎさんに感謝。
読了日:01月29日 著者:もちぎ

フラジャイル(24) (アフタヌーンKC)感想
JS1治験。創薬の世界と厳しい癌治療の現場の葛藤。極寒の厳しさだけど、ガンガンに熱い。いや、久しぶりにボロボロ泣けた。しかし次巻予告に「まだ山があるのか?!」と。
読了日:01月29日 著者:恵 三朗

モーメント 永遠の一瞬 18 (マーガレットコミックス)モーメント 永遠の一瞬 18 (マーガレットコミックス)感想
恋愛やトラウマ絡みのゴタゴタは一端終了?ちょっとすっきりとしてスポーツ漫画にやや戻ってきたか。それにしてもこの雪がまだ16歳?17歳?くらいなの?(良く分からない)ってのが驚きだ。まあ、槇村さんの絵が20代のOLも、この雪ちゃんも同じ絵柄だっていうせいもあるけど・・・・ 今回、更にうつくしキビシイコーチが出現。さらに雪の演技に磨きがかかるが、一方で表にでにくい女性アスリートへの指導者による性的ハラスメントの問題にも切り込む。
読了日:01月28日 著者:槇村 さとる

スモークブルーの雨のち晴れ 2 (フルールコミックス)スモークブルーの雨のち晴れ 2 (フルールコミックス)感想
2巻目。父と住んでいた家を失いそうだったり、もっと深刻な話になるのかと思っていたが、きちんと前を向いて順当に整理していけそうな伏線もあって、なんというかすごく「普通」なのがすごく良い。一つ一つのエピソードが大げさでなくて、地に足がついてる感じがじんわり心地よい。
読了日:01月28日 著者:波真田かもめ

スモークブルーの雨のち晴れ 1 (フルールコミックス)スモークブルーの雨のち晴れ 1 (フルールコミックス)感想
ちょと前に翻訳家の越前敏弥さんがTwitterで紹介されていたコミック。なんとBLだったんで驚いてAmazonの買い物カゴに放り込んであった。元製薬会社MRが生業に選んだのは医療翻訳。そこにかつての同僚も登場。章末に挿入されている「翻訳小言」が深い。主人公①久慈の父(英文学者・翻訳家)が素敵です♪ 「とにかく良く調べろよ。調べものの怠慢は、読者に対して失礼だからな。」こんな翻訳家さんが好きだ。尊敬する。それぞれにすこし傷と鬱屈のあるアラフォー男二人が、頭寄せ合って翻訳してSEXも恋もする。そんな話です。
読了日:01月28日 著者:波真田かもめ

ドント・ルックバック (モノクローム・ロマンス文庫)ドント・ルックバック (モノクローム・ロマンス文庫)感想
読書停滞期ですが、久しぶりのジョシュ・ラニヨンです。薄め軽めのミステリー風M/M。グリフィンかっけー♪ジョシュ・ラニヨンの本は読むとなんとも暖かくて、思い合う心が健康で、すごく癒やされます。乾いたワタシにぴったりだわ。
読了日:01月27日 著者:ジョシュ・ラニヨン
トラ雄パパとその家族の場合 (コミックエッセイ)感想
黒猫話4缶目。いや違う。4缶目をつい勢いで読んでしまった。イカン。明日も仕事なのに。お仕事癒やし本で睡眠を圧迫してどうする私!
読了日:01月26日 著者:清水 めりぃ
ハチ谷くんと時々モフ田くんの場合 (コミックエッセイ)感想
黒猫話(ブラック社員が・・・猫に・・・話)3冊目。今日も一冊癒やしていただきました。今作は、サバ猫のもふ田さんを離れてハチワレのハチ谷さん。(はちやさんなのか、はちたにさんなのか、判然としない)ちょっとお話がキレイ過ぎ〜?って感じもしないではないが、基本モフらせてくれないウチの猫の代わりにエアもふさせていただきました。
読了日:01月26日 著者:清水 めりぃ
モフ田くんの場合 (コミックエッセイ)感想
引き続き、2巻目を本日読みました。巨大猫化した社畜が日本のサラリーマンを平和にする話。職場の先輩(猫飼い)からのオススメ本なり。
読了日:01月24日 著者:清水 めりぃ
モフ田くんの場合 (コミックエッセイ)感想
Kindle Unlimitedで。職場の先輩からオススメされて。いやあ癒される〜。最近業務で大量の活字を追っていて、とてもとても読書はムリ〜。゚(゚´Д`゚)゚。な感じなので心の休憩のために。
読了日:01月23日 著者:清水 めりぃ
惣領冬美のエッセンスをタダで読めた!そしてハマった♥️ 今更・・・・・!!!
読了日:01月14日 著者:惣領冬実

君に誓う 後編 (ボーイズラブ(BL))君に誓う 後編 (ボーイズラブ(BL))
読了日:01月07日 著者:十時
君に誓う 前編 (ボーイズラブ(BL))君に誓う 前編 (ボーイズラブ(BL))感想
pixivをさまよっていて偶然捕獲したBL本。Kindleアンリミで読めました。シリーズ5作を正月一気読みってどうなん?とかはおいといて。細かい突っ込みどころ(明らかな誤字とか、熟語の間違いとか)は多々あれど、中学ん頃にコバルト文庫をワクワク読んだような気分で全5作8冊を楽しく読みました。この間、オメガバースとかDom/Subって世界もあるのね、とか最近?の動向も勉強になっちゃったわ〜♪この彷徨はまだしばらく続きそう。そのうち『BLの教科書』で〆る予定。
読了日:01月07日 著者:十時

君に捕らわれる 後編 君に誓う (ボーイズラブ(BL))君に捕らわれる 後編 君に誓う (ボーイズラブ(BL))
読了日:01月06日 著者:十時
君に捕らわれる 前編 君に誓う (ボーイズラブ(BL))君に捕らわれる 前編 君に誓う (ボーイズラブ(BL))感想
『君に誓う』続刊。主人公は雪月花(ゆずか)×葎(りつ)(駿河大公夫妻)。『君に誓う』では落ち着いた姐御(いや、お兄さん?か?)の風格を漂わせていた雪月花が、こんなハチャメチャな花嫁だったとは!な第二作。
読了日:01月06日 著者:十時

君に恋う 統合版【電子書籍特典小話付き】 (ボーイズラブ(BL))君に恋う 統合版【電子書籍特典小話付き】 (ボーイズラブ(BL))感想
読んだのは上下分冊のほうだけど、見つけられなかったのでこちらで登録を。『君に誓う』の続刊、第3作目。楓×朔眞(志摩大公夫妻)メイン。冷泉国光と北大路泰都のお見合い騒動に巻き込まれる後宮(ではなくて、〝サロン〟)
読了日:01月06日 著者:十時

運命じゃないけれど…… 【電子書籍特典小話付き】 君に誓う (BL(ボーイズラブ))運命じゃないけれど…… 【電子書籍特典小話付き】 君に誓う (BL(ボーイズラブ))感想
『君に誓う』シリーズ第四作目。どっちかってーとスピンオフっぽい感じもする。第3作でお見合い大作戦をした冷泉と北大路のうち、北大路泰都とそのプロポーズ相手の桜宮彰人のすれ違いラブ。シリーズ中では彰人がヒロインとしては一番小粒。苦悩も小粒な気がするが、まあ、一生懸命で良し。
読了日:01月04日 著者:十時

人はそれを運命と呼ぶのだろう 君に誓う (ボーイズラブ(BL))人はそれを運命と呼ぶのだろう 君に誓う (ボーイズラブ(BL))感想
第3作目で番相手を公表した冷泉国光とその思い人の和仁(かずひと)の波乱万丈濃厚ラブストーリー。シリーズ中一番不憫な和仁が主人公。不憫すぎてちょっと泣ける。
読了日:01月03日 著者:十時

読書メーター

0410—13 ゲイ風俗のもちぎさん1〜4(とりあえず1〜2)

書 名 「ゲイ風俗のもちぎさん」 1巻〜4巻 (書誌情報は1巻のものです)
著 者 もちぎ        
出 版 KADOKAWA  2019年8月
単行本(ソフトカバー) 176ページ
初 読 2023年1月28日
ISBN-10 4047357421
ISBN-13 978-4047357426
読書メーター   
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 職場のひとに紹介されたのが、『ゲイバーのもちぎさん』。すごく勉強になる、と。で、大人買いしたのが上記。これまで引っかかっていたセクシュアリティにまつわるあれこれに、当事者からの率直かつ直球な意見。あぁ〜そうなんだ。と腑に落ちることが多々ある。体の性、心の性、性指向。そして一人ひとりの自分と、他人への向き合い方。いろいろな人がいて、一生懸命だったり、がむしゃらだったり、無防備だったり、計算高かったり、思慮深かったり、浅はかだったりしながらも、生きている。生きて行くってことに関しては平等で対等でありたいし、いろんな在り方に臆さず向き合い、認めたり、認められたりしたいと思う。みんな違ってみんないい、と思いたいし、みんなにそう思ってもらいたい。できることなら、もっといろんなことが平等であればいいと思う。たとえば経済的なこと、親の愛情、一人ひとりの能力や健康、でもそれは絵空事で、不平等なのが本当だから。だけど、何十年か前はおおっぴらに語られることの少なかったLGBTQが、今は普通に語られるようになっている。だから今から何十年後かには、きっと今よりもっと変わって、生きやすくなっているひとが沢山いるだろうし、きっと数年先だってそうであってほしいと思う。

0409 ゲイ風俗のもちぎさん 1
 「人生賛歌」というもちぎさん。すごいな。
 もちぎさんはサバイバーだ。父が精神疾患で自殺して、メンタルを病んだ母に虐待されて育った。働かない母が子供のもちぎさんにお金をせびるから、男相手に買春して稼いで家にお金を入れた。そうしないと、大学進学のお金も、家を出るためのお金も貯められなかった。それなのに母にそのことを責められて高3の卒業前に家を飛び出し東京に来た。きちんと稼げるゲイ風俗(ウリセン)で働いて、いろいろな経験をしながら、大学にも進んだ。言われてみればそりゃそのとーりだよな、と思うセクシャルマイノリティの生態だって、こうやって改めてもちぎさんに教えてもらわなけりゃ、意識に登ってこないことがたくさんある。ウリセンにはウリセンの仁義や矜持があるし、そこでしか生きていく術のない人達が必死で守っている場所でもある。性を鬻ぐことを被害・加害という視点だけで語ることにはできないと思う一方で、そこで身ぐるみ搾取される子がいるのもまた事実だと知っている。むしろ売る方も買う方も同類なゲイ風俗の方が、普通(?)の女の子たちの風俗よりも暖かくて生きやすい場所なのかもな、とも思った。

0410 ゲイ風俗のもちぎさん 2
 ずーっと謎だった、「本物のゲイは、BLをどう見ているんだろう」という疑問に、もちぎさんからかなり明快な答えが。BLを読む本職さんもいるんだ!(少数派ではあるらしいが)アレ気持ち悪いんじゃないかと思ってたよ。だって、男性向けの〈男×女〉のエロコンテンツ(女性がエロエロになるやつ)って、はっきりいって自分からみたら気持ち悪いもの。それにハーレクインみたいな女性向け〈男×女〉のポルノ小説に出てくる男性キャラって、生身の男からみたらありえね〜!ってならない? 所詮ファンタジーだし、ファンタジーだと頭のどこかで思っているから無邪気に楽しめるものでもある。
「ほら ゲイからしたらBLってファンタジーじゃん。ほぐしなしに洗浄なしの挿入行為とか 二丁目以外の街でイチャつくとか、コミュニティに属することもなくノンケ社会で出会いがあるとかさぁ」
・・・・そうか、街でイチャつくのも、そこらで出会いがあるのも、実際にはないのか。そうだよね。たしかに、見ない・・・かも。
 当たり前だと思うけど「嫌だっていうゲイもいる」
それに対してもてぎさんは名言だと思う。
「慣れてないのかもね」「男が性的なコンテンツになって異性に楽しまれることに」
「テレビや雑誌で水着になるのも女性が多いし、エロ本としてコンビニにおかれているのも女性のグラビアだけ」「女性の性欲をまるでなかったことにして男性だけが性的コンテンツを楽しんでると思っちゃってるのかも」
 なるほどねえ、と思ったよ。女性が性的に消費されるコンテンツとして扱われることが嬉しいとはおもわないけど、温泉娘騒動みたいに、そういうコンテンツを駆逐せよ!とは思わない。そう言ってる当人がピンクをイメージカラーにしていて、どうにも牛の前で赤い布振ってるようにしか見えんしな。・・・・・とこれは脱線。男にも女にも性欲はあって、ある程度ファンタジーで補われている部分は必ずある。必要なのは、敬意なんだと思う。
 もてぎさん曰く「性産業に勤める人間を卑下しちゃダメ」「あたいらも含めて人間のカラダの価値の話だから」
 もちろんこの話だけではなく、ゲイ風俗で働くひとりひとりのエピソードは、こんな風にお手軽に感想をかくのも憚られる思いがする。どうか沢山の人に読んでもらって、そこでわいた思いは胸に畳んで、自分とは違う人に対して優しい人になれるように、自分の一部にしてほしいなあと願う。
 でも、一番胸に染みたのは、昔の恩師の先生に会うために地元に行った話だ。この本を読んで「勉強」しようなんて、おこがましいよな。もちぎさんが今、幸せだといいな、と願う。とりあえず“もっと幸せになりますように”と念を送る。