Amazonより・・・「クラシック音楽界の重鎮である父との父子リサイタルを控えて俊一の焦慮は募るばかりだった。さらに金井恭平との密会や渥美兄弟との会食でさらに彼の運命は行き詰まっていくのだったが……2日間はピアノに触れてはならないと父に厳命された俊一は英二と横浜へ小旅行に行く。そして英二の生まれ育った貧民街を訪れたり、アマチュアのセッションに参加するのだったが、そこで彼は行き場のない運命への光明を見いだすのだった。矢代俊一シリーズ第18巻。」
相変わらず、amazonのリードが素晴らしい。基本、上記でしっかり要約されています。それ以外の事といえば・・・恭平にヒイヒイ言わされたり、透にあんあん言わされたり、ですかね?
さて、奇数月の月末に発行されているこのシリーズですが、やや遅れての刊行でした。間に外伝がざくざく発行されているせいかな。外伝は「BL桃色図書室」というレーベルから出ていますが、同人誌価格なのか量が少なくて高いし、内容が晃一視点や渥美センセ視点の本編焼き直しなんで、ほとんど興味が持てないです。(電子書籍の無料お試しページだけ読んでるけど。)
我ながら、レビューが酷くなってきているのは自覚しているんですが、いちおう、隔月で楽しみにはしてるんですよ。音楽演奏のシーンはそれでもけっこう良いので。特に次巻『ボレロ』は楽しみですね。父との二人リサイタルの巻ですから。さぞかしや聴かせてくれると期待しています。
で、本作、読み始めて最初に目がついてしまったのが「なかなか」、という言葉。「なかなか」というの言葉が全編で31箇所!使われていますよ。薫サンのクセかね。
なかなか楽しい、なかなか卑猥、なかなかけっこう、なかなかいろいろ、なかなか珍しい・・・・etc.
べつに良いんですが、さすがに最初の数ページで1ページ一回の割で出てくると、目についてしまって、つい、数えてしまいました。こういうところ、電子媒体ってイヤですよね。すぐ検索出来ちゃうから。
内容はもう、だらだら・だらだら、ひたすら夏バテででろんとした俊一が恭平のこと、英二のことを引き合いに“自分のこと”を考えつづけます。ここがポイント。結局自分の事なのよ。悲しいのも苦しいのも、全部自分です。愛だの、情だの、文字数だけは沢山、語ってますが、そもそもの出所(薫サン)が浅薄なんで、それ以上に内容を湛えたものになんぞ、なるわけがない。
もはやこれ小説ではないよね、というのが率直な感想。かろうじて読むに耐えるのは、音楽シーンだけです。
もはやこれ小説ではないよね、というのが率直な感想。かろうじて読むに耐えるのは、音楽シーンだけです。
父とのリサイタルのプレッシャーで精神的に煮詰まった俊一は、ついに父にピアノ練習を禁止されて、気分転換に英二と横浜の一泊旅行に向かいます。英二の育ったスラムを歩き、英二の過去を思い、老舗ライブハウスで若手登龍ライブに飛び入りして、音楽を思い出し、また、英二の音楽性を再確認する。その夜はホテルで二人で過ごして・・・。という部分はそこそこ面白い。だけど、全体的にはホントダメ。
そういえば、風間さんがついにニューオリ(俊一のプロダクション)に入社して、アシスタント・プロデューサーの名刺を持つようになって、俊一のそばに自分の居場所を発見(!)してなんだか幸せそうになっちゃってるし、透は良と喧嘩して、俊一にエロくちょっかいだししてるし、なんだかなあ、という感じが満載です。
おまけに「良って結城修二のお稚児さんで有名だったんだよ」と透から驚きの暴露。ここにいたって設定後出し?って、これ『真夜天』の方の話だよね。
まあ、どっちだろうが、薫サンにとってはどうでもいいことなんだろうと思う。浅薄な人がくどくどと愛を語ったところで所詮は薄っぺらいままだし、“愛を知らなかった自分がついに愛を知った”、とか書いたとしても、結局は薫さんの理解の範疇でしかない。
それでも、一瞬、俊一に投影してついに自分に気づいたか?と考えたけれど、やっぱり薫サンは薫サンのままだったのだろうな。この辺りの本は、薫サン没後の発表作のはずです。生前いつ頃に書き溜めた原稿なのかは知らないのですが、文体劣化は病気が原因?いや、劣化はもう、随分前に始まっていたのだし。考えても意味ないし、その価値もないかな。ほんとに、『嘘は罪』とか14作目くらいの透ちゃんで止まってくれてればよかったのに。というか、ここまでくると『朝日のあたる家Ⅴ』が、もはや名作に思えてくるからね。自分のレビューを見直してびっくりだよ。
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