著 者 もちぎ
出 版 KADOKAWA 2019年8月
単行本(ソフトカバー) 176ページ
初 読 2023年1月28日
ISBN-10 4047357421
ISBN-13 978-4047357426
読書メーター
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職場のひとに紹介されたのが、『ゲイバーのもちぎさん』。すごく勉強になる、と。で、大人買いしたのが上記。これまで引っかかっていたセクシュアリティにまつわるあれこれに、当事者からの率直かつ直球な意見。あぁ〜そうなんだ。と腑に落ちることが多々ある。体の性、心の性、性指向。そして一人ひとりの自分と、他人への向き合い方。いろいろな人がいて、一生懸命だったり、がむしゃらだったり、無防備だったり、計算高かったり、思慮深かったり、浅はかだったりしながらも、生きている。生きて行くってことに関しては平等で対等でありたいし、いろんな在り方に臆さず向き合い、認めたり、認められたりしたいと思う。みんな違ってみんないい、と思いたいし、みんなにそう思ってもらいたい。できることなら、もっといろんなことが平等であればいいと思う。たとえば経済的なこと、親の愛情、一人ひとりの能力や健康、でもそれは絵空事で、不平等なのが本当だから。だけど、何十年か前はおおっぴらに語られることの少なかったLGBTQが、今は普通に語られるようになっている。だから今から何十年後かには、きっと今よりもっと変わって、生きやすくなっているひとが沢山いるだろうし、きっと数年先だってそうであってほしいと思う。
0409 ゲイ風俗のもちぎさん 1
「人生賛歌」というもちぎさん。すごいな。
もちぎさんはサバイバーだ。父が精神疾患で自殺して、メンタルを病んだ母に虐待されて育った。働かない母が子供のもちぎさんにお金をせびるから、男相手に買春して稼いで家にお金を入れた。そうしないと、大学進学のお金も、家を出るためのお金も貯められなかった。それなのに母にそのことを責められて高3の卒業前に家を飛び出し東京に来た。きちんと稼げるゲイ風俗(ウリセン)で働いて、いろいろな経験をしながら、大学にも進んだ。言われてみればそりゃそのとーりだよな、と思うセクシャルマイノリティの生態だって、こうやって改めてもちぎさんに教えてもらわなけりゃ、意識に登ってこないことがたくさんある。ウリセンにはウリセンの仁義や矜持があるし、そこでしか生きていく術のない人達が必死で守っている場所でもある。性を鬻ぐことを被害・加害という視点だけで語ることにはできないと思う一方で、そこで身ぐるみ搾取される子がいるのもまた事実だと知っている。むしろ売る方も買う方も同類なゲイ風俗の方が、普通(?)の女の子たちの風俗よりも暖かくて生きやすい場所なのかもな、とも思った。
ずーっと謎だった、「本物のゲイは、BLをどう見ているんだろう」という疑問に、もちぎさんからかなり明快な答えが。BLを読む本職さんもいるんだ!(少数派ではあるらしいが)アレ気持ち悪いんじゃないかと思ってたよ。だって、男性向けの〈男×女〉のエロコンテンツ(女性がエロエロになるやつ)って、はっきりいって自分からみたら気持ち悪いもの。それにハーレクインみたいな女性向け〈男×女〉のポルノ小説に出てくる男性キャラって、生身の男からみたらありえね〜!ってならない? 所詮ファンタジーだし、ファンタジーだと頭のどこかで思っているから無邪気に楽しめるものでもある。
「ほら ゲイからしたらBLってファンタジーじゃん。ほぐしなしに洗浄なしの挿入行為とか 二丁目以外の街でイチャつくとか、コミュニティに属することもなくノンケ社会で出会いがあるとかさぁ」
・・・・そうか、街でイチャつくのも、そこらで出会いがあるのも、実際にはないのか。そうだよね。たしかに、見ない・・・かも。
当たり前だと思うけど「嫌だっていうゲイもいる」
それに対してもてぎさんは名言だと思う。
「慣れてないのかもね」「男が性的なコンテンツになって異性に楽しまれることに」
「テレビや雑誌で水着になるのも女性が多いし、エロ本としてコンビニにおかれているのも女性のグラビアだけ」「女性の性欲をまるでなかったことにして男性だけが性的コンテンツを楽しんでると思っちゃってるのかも」
なるほどねえ、と思ったよ。女性が性的に消費されるコンテンツとして扱われることが嬉しいとはおもわないけど、温泉娘騒動みたいに、そういうコンテンツを駆逐せよ!とは思わない。そう言ってる当人がピンクをイメージカラーにしていて、どうにも牛の前で赤い布振ってるようにしか見えんしな。・・・・・とこれは脱線。男にも女にも性欲はあって、ある程度ファンタジーで補われている部分は必ずある。必要なのは、敬意なんだと思う。
もてぎさん曰く「性産業に勤める人間を卑下しちゃダメ」「あたいらも含めて人間のカラダの価値の話だから」
もちろんこの話だけではなく、ゲイ風俗で働くひとりひとりのエピソードは、こんな風にお手軽に感想をかくのも憚られる思いがする。どうか沢山の人に読んでもらって、そこでわいた思いは胸に畳んで、自分とは違う人に対して優しい人になれるように、自分の一部にしてほしいなあと願う。
でも、一番胸に染みたのは、昔の恩師の先生に会うために地元に行った話だ。この本を読んで「勉強」しようなんて、おこがましいよな。もちぎさんが今、幸せだといいな、と願う。とりあえず“もっと幸せになりますように”と念を送る。
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