著 者 十時(如月皐)
初 読 2024年3月読書メーター https://bookmeter.com/reviews/120502817 以下
十時さんの書く物語は、生真面目で切なくて優しく、きちんと愛情が報われて癒される。だから、たまにふと、思い出して、思い出すと繰り返し読みたくなる。何回も読みたくなる本て、かなり貴重だと思う。政治や政略や戦術の話はわりと稚拙で、ちょっと残念なところはあるのだけどそれを補ってあまり有るものが、ある。残念なのは、漢字の間違いが少なくない。同音異義語の間違いがほとんどなのだが、読んでいると、変換ミスというよりは素で間違えているような気がする。そんなで、最初、別のシリーズを読んだときには、「日本語がとても上手な韓国人作家さんなのか?」とも思った。(たぶん違うと思うけど。) 多少、残念な面はあれど、感性や素性が良い、というか、なんというか品の良さのある作品を書かれるので、かなり推してる。
いや、同じレベルであっても上手にファンタジーしている作品はたくさんあると思うのだ。
なんというか、中途半端に具体的なところがかえって作品を毀損してるっていうか、リアリティをもたせようとしたがためにかえって失敗しているのかもしれない。 あと、どうしても(個人的には)表紙が小っ恥ずかしい。しかし、こうして並べて見てみると、イラストはなかなか綺麗で、けっして嫌いではない。なので、ひょっとしてタイトルのフォントのせいか?という気がしてきた。
あれこれとレビューを書いているとどうしても辛口にはなってしまうんだが、十時さんの創作は基本的に好きだ。主人公の真面目さや、切なさや、登場人物の心の強さがとてもよい。以下各巻。
宰相補佐官として、日々政務に精励するシェリダン。
国王のアルフレッドは、後宮に50人もの側妃を入れるも、正妃を定めないことが国政の大きな負担になりつつあった。そこで、宰相の意見をいれて国につたわる秘儀「水晶の儀」で王の正妃を定めることに。そしてその儀式で水晶によって王の横に映し出されたのは男性であるシェリダンだった。
・・・てところから、拉致されるように王妃の部屋に軟禁され、強引に犯され、あれよあれよというまに王妃に仕立て上げれられてしまう。しかし、王アルフレッドの愛は真実で、だんだんシェリダンも自分の立場を受け入れていく。そして、次第にシェリダンの実家との確執や、シェリダンの心の傷も明らかになっていく。シェリダンがアルフレッドに絆されていく過程をうふふ、と楽しむべし。
側妃たちからの信頼も得て、正妃としての立場も固まったシェリダン。
ある日、新たに同盟を結んだサーヴェ公国から使者として公子と公女が来訪。しかし、公女はアルフレッドの正妃となることを目論見、公子はシェリダンを掠め取ろうと画策していた・・・って、シェリダン危機一髪ってのはストーリー的には良いのだが、さすがに大国の王/王妃に対して、弱小国の取れる行動じゃないし、手引きした閣僚が間抜けすぎるし、シェリダンのサーヴェ公国の公害についての分析も、いったいいつの時代を想定しているやら、でかなり微妙なのだ。
国内の地方視察に赴いたアルフレッドとシェリダン。その地方で精神を病むものが増えているとの事前情報に、視察の目を光らせる。中央に隠れて麻薬「サチュア」を栽培して私欲を肥やしていた州侯は、秘密をシェリダンに見破られるのをおそれてシェリダンに「サチュア」を盛る。シェリダンは中毒に陥って・・・・と、シェリダンの幼少時の心の傷と麻薬が見せる幻覚を絡ませるあたりは上出来なんだけど、中毒になりました→特効薬が開発されました→飲んだ途端に良くなりました、ってのが安直すぎやしないか、と。罪に問われた州侯の二人の異母姉妹(両方ともアルフレッドの側妃)へのシェリダンの対応なんかは、すごく良い。
0480 四作目 望むものはただひとつー狙われた佩玉ー
まあ、近隣の新興国から周辺の国々が狙われるわけだ。おびき出されて捉えられ、国王が幽閉されて、国を要求される。アルフレッドとその近隣友好国数カ国の王と王妃も騙されて捉えられ・・・て時点で、ありえん。のこのこ友好的ではない国に各国の王がぞろぞろと出向いて、むざむざととらわれるとか、本当に安全保障上ありえん。そして、国元でアルフレッドの帰りを待っていたシェリダンに、佩玉(王権の証?)を要求する使者がよこされ、シェリダンがアルフレッド奪還のために策を立てる・・・・についても、かなりざっくりと安直でいやいやいやいや、流石に・・・・無理じゃないかと。一方で、アルフレッドの兄で、病弱なために早々に政局からリタイアしていた大公が、薬効の甲斐あって政務に復活してきたり、その大公の二人の妻のうち第二夫人が後宮とシェリダンに波乱をもたらしたり、という小技も効いていて、なかなか面白いのだ。シェリダンとアルフレッドの睦みあいにも心癒されるので、それだけで及第ではある。
シリーズ最終話? 今作は大それた政変などはなく、いわばシェリダンの日常に潜む危機的な。 シェリダンの元に、過去のシェリダンに対する陰謀の咎で城を追われた兄とその妻が助けを求めてやってくる。救いの手を差し伸べたシェリダンに当然恩を仇で返す所業。シェリダンが自身の過去と傷つきにどうやって向き合い決別するのか、という話。陰謀もこの程度のスケールなら安心して読める。たがしかし、兄が愚かすぎてびっくりだ。まあ、近隣の新興国から周辺の国々が狙われるわけだ。おびき出されて捉えられ、国王が幽閉されて、国を要求される。アルフレッドとその近隣友好国数カ国の王と王妃も騙されて捉えられ・・・て時点で、ありえん。のこのこ友好的ではない国に各国の王がぞろぞろと出向いて、むざむざととらわれるとか、本当に安全保障上ありえん。そして、国元でアルフレッドの帰りを待っていたシェリダンに、佩玉(王権の証?)を要求する使者がよこされ、シェリダンがアルフレッド奪還のために策を立てる・・・・についても、かなりざっくりと安直でいやいやいやいや、流石に・・・・無理じゃないかと。一方で、アルフレッドの兄で、病弱なために早々に政局からリタイアしていた大公が、薬効の甲斐あって政務に復活してきたり、その大公の二人の妻のうち第二夫人が後宮とシェリダンに波乱をもたらしたり、という小技も効いていて、なかなか面白いのだ。シェリダンとアルフレッドの睦みあいにも心癒されるので、それだけで及第ではある。