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2026年6月20日土曜日

0595 狼の見る夢は (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「狼の見る夢は」
原 題 「With Abandon」2011年
著 者 J.L.ラングレー    
翻訳者 冬斗 亜紀    
出 版 新書館 2015年6月
文 庫 481ページ
初 読 2026年6月14日
ISBN-10 4403560229
ISBN-13 978-4403560224
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/136022876

 『狼の遠い目覚め』で登場した、ジェイクの探偵事務所の事務員バイトのマットと、キートンの兄オーブリー。
 マットがジョージア州立大学に入学して、オーブリーの自宅のゲストルームに居候することになる。マットとオーブリーは初対面で“メイト”であることを悟るけど、オーブリーはゲイであることが許されない超保守的な南部で一族代々のホテルチェーンを経営し、代々続く家系や財産や、群れの“アルファ”までも継承しなければならない身で。“跡取り”は必須、いずれ結婚して子どもを作って、家を継ぐことが自分の務めと信じている。当然、ゲイだなんて、親にも打ち明けられないし、母親には結婚して子供を作ることを求められるし。
 メイトとの熱く手放しがたい恋、だけどとてもじゃないがカミングアウトなんてできない長男の責任感と苦悩。所詮、オーブリーの独り相撲って言ってしまったら身もフタもない話なんだけど、オーブリーの悩みは真剣。そこはお気楽な次男(キートン)がさっさとカミングアウトして、家を出てしまったりしたものだから、いっそう雁字搦めになってしまっていて。
 もちろんM/Mなだけに、あっちこっちSEXまみれ(笑)なんだけど、自分の生き方に悩む、しごく真面目なゲイ小説であった。

 マットについては、ヘンテコな色使いの服を着る天然、って感じの初出だったが、実は赤緑色盲で、マットなりに悩んでいたり、ちょっとヌケた感じだと思っていたのが、純真無垢で、努力家で家族思いの長男だったりと、相当イメージアップした。
 あとは、無理やり人狼化させられちゃったカーソンがかなり憐れではある。これからどうなるのかは相当気になるものの、カーソンとボスキーの恋物語を読みたいとは思えない(笑)。さすがにボスキーは強引すぎるだろ。この件に関しては、終始一貫してカーソンがかわいそう。
 マットの兄弟たちはこれからも苦労が多いだろうけど、長兄マットや次兄のローガンがしっかりしているし、ジェイク以下、群れの大人達も頼りになるし。レミ贔屓の私は、一番下のエディとダレンは、レミとジェイクが養子にして育てたらいいんじゃないか、と密かに思っているのだけど。(レミとエディの組み合わせサイコー!)

2026年6月14日日曜日

0594 狼の遠き目覚め (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「狼の遠き目覚め」
原 題 「With Caution」2008年
著 者 J.L.ラングレー
翻訳者 冬斗 亜紀    
出 版 新書館 2014年5月
文 庫 436ページ
初 読 2026年6月12日
ISBN-10 4403560172
ISBN-13 978-4403560170
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/135897720

 「狼を狩る法則」ではかなり嫌みな登場の仕方をしたあげくに、人狼に襲われて死にかけて、ジェイクとチェイの血によって人狼となったレミは、実は、16歳年の離れた弟のスターリングを父親の暴力から守り、父親代わりになって育ててきた良い奴だった。天真爛漫に育ったスターリングを見れば、傷を負ったレミが、どれだけ努力奮闘してスターリングを守ってきたか、分かろうというもの。とにかくレミが健気すぎて心が痛い。心からスターリングを愛してきたレミは、子供の遊び相手も上手で、読んでいる途中から、だんだんレミの印象が性別を超越してきた(笑)。同性愛嫌悪のように見えた言動も、父親から自分と弟を守るために創り上げた鎧のようなもの。メイトであるジェイクが側にいることで感じる安心感で、少しづつレミが安らいでいく様子に絆される。

 そのレミが、群の集会で他の“アルファタイプ”の狼たちに襲われそうになったことで、“オメガ”であることが判明、メイトがオメガであることが分かったジェイクは、これまでの群から独立して、新たな群を率いることになる。

 レミとジェイクがパートナーとして親密さを増して高まっていくこと、アルファに従属的で闘争力は弱いが、その共感力で群の連帯を強めるオメガとして、レミの能力が開花していくのと、レミが虐待親と対決し過去の傷を乗り越えていくという、レミの成長三本立てのストーリーである。

 アルファ気質で支配欲のあるジェイクがSMの性癖があるとか、ちょっとうへぇ、と思わないでもなかったけど、SMといっても、父親から惨い身体的虐待を受けてきたレミに対しては、ジェイクもそんなに大胆なことはできず、描写はごくソフトでした。

 結局、レミとスターリングは両親を喪うことにはなるのだけど、そもそも機能不全家族だったし、レミとスターリングには、群という新たな家族ができ、おまけにスターリングが、ジェイクの副官(ベータ)のリースのメイトなのが分かったり、その上、スターリング三形態の人狼ってことは、優秀で力のある個体であることは間違いなさそうなので、幸せな将来の予感がたっぷりでよかったです。

0593 狼を狩る法則 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「狼を狩る法則」
原 題 「Without Reservations」2006年
著 者 J.L.ラングレー
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2013年10月
文 庫 414ページ
初 読 2026年6月13日
ISBN-10 4403560148
ISBN-13 978-4403560149
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/135915673

 最初に「遠い目覚め」の方を読了してしまったのだが、こちらが1巻目。米国発M/M小説。冬斗亜紀さん翻訳(好き)。
 日本でいうBLカテゴリで、表紙イラストもそんな感じであるが、(いつもつい書いてしまうのだが、ボーイズラブってよりも、ゲイ・ラブロマンス。私の感覚が古いんだろうが、BLっていうとどうしても「少年愛」寄りな語感を感じてしまって。M/Mはもっとオス臭いっていうか、ガチムチ寄りっていうか、大人の恋愛寄り(当社比)。) そして、人狼(ワーウルフ)物でもある。
 人狼の群れを統率する概念として、アルファ、ベータ、オメガが出てくるが、これは狼の群れのヒエラルキーの話。いわゆるオメガバースはこちらが本家。アルファが群れのボス。ベータは副官。オメガは群れの調和者で、集団の維持の要になる、という設定。

 もっとも、この狼のヒエラルキーは、かつて人工での集団飼育下で観察されたもので、現在では、自然界における狼の群れは家族単位で構成されており、父(リーダー)、母、子供達で構成され、それほど厳格なヒエラルキーはないことが分かっているそう。この作品における「オメガ」の設定は、かつての狼ヒエラルキー概念における「最弱者」(集団のガス抜き役)と、現在の狼の群れの概念の「母親」(母性)がミックスされたような感じかと。 「人狼もの」の設定はいろいろあるらしくて、読み比べてみると楽しそうな気がする。

 さて、作品の舞台はニューメキシコ。
 ネイティブアメリカン(アパッチ)の居留地に程近いエリアに住む獣医のチェイことチェイトン・ウィンストン(ネイティブアメリカン)の元に、怪我をした白狼が運び込まれるところから。チェイは人狼で、このエリアの人狼の群れに属している。(おもにネイティブアメリカンで構成されているよう。そこに運び込まれた白人で白狼のキートン。
 チェイは、この白狼が自分の“メイト”(=伴侶。運命の恋人)であることを直感するのだが。
 なんとこの白狼が雄だった。自分はストレートだと確信していたチェイは大混乱。そしてストレートだった恋人に手酷く裏切られた過去のある生粋のゲイのキートンも、チェイを誤解して、断固拒絶・・・・・からの、急接近。運命には逆らえない♥️
 ほぼ最初から最後まで、全編ゲイSEX描写が全開だけど、とにかく明るく、前向きで健康な大人の恋愛って感じであるので、思うほどイヤラシくない。

 まあ、男女の恋愛ものだと、どうしてもジェンダーを感じて、自分的に陰にこもった感じになっちゃうので、男/男のほうが、他者的に(あるいみ無責任に)楽しめる、という個人的な感覚の問題もある。
 
 キートンが命を狙われたり、最初はホントに嫌なヤツだったレミが、瀕死の重傷を負って人狼の仲間になったり、とか物語の起伏も面白いし、人間だと、チビでやせっぽちで童顔のキートンが、狼としては最強だったりとか、登場人物もキャラ立ちしていて良き。読んでいて楽しかった。

 子供の頃、最初に買ってもらった本格的な読み物としての本が『おおかみ王ロボ』と『名犬ラッシー』(ポプラ社)で、依頼、オオカミの物語には特別な憧憬を感じる。人狼ものってなんだか特別なロマンがあるわ。そこに人種や同性愛、虐待、差別なんかの人間としての葛藤も加わって、物語としても面白い。