2024年11月10日日曜日

0520 あなたの糧になりたい (ディアプラス文庫)

書 名 「あなたの糧になりたい」
著 者 仁茂田 もに      
出 版 新書館 2024年11月
文 庫 240ページ
初 読 2024年11月10日
ISBN-10 4403526136
ISBN-13 978-4403526138
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/124161855

 比較的最近になってBLを読み出してから、作品を求めてpixivなども読み漁り、オメガバースとかDOM/SUBなんて世界観があることをも知った。最初はこういった枠組みに結構違和感を感じたんだけど、考えて見れば、架空の生き物であるドラゴンのいるファンタジー世界なんかも、大勢の創作者や読者で世界観を共有して、素晴らしいファンタジー作品からどうでもいい駄作や、はたまた二次創作まで展開されているわけだから、BLというジャンルでそういう架空の世界観を共有したって良いわけだ。
 最初は、♂と♂がSEXするためのただの装置じゃないか、と眇で眺めていたのだが、いったんそういう世界観が構築されると、そこにジェンダーが生まれ、それ故の悩みや葛藤や悲劇も生まれ、つまりは物語が生まれる。物語あるところに、良い小説もまたある。
 仁茂田もにさんは、そういった良い小説を生み出す作家さんの一人だと思う。たまたまAmazonで偶然作品を知り、もにさんの作品を求めてアルファポリスにも読みに行った。どれもすごくいいんだよ。BLってところは共通項だが、それ以外ではキャラクターや時代や設定もさまざまで、それぞれに面白く、読ませる。気持ちが動く。
 で、この作品『あなたの糧になりたい』は、つい最近までアルファポリスで公開されていたので、そちらで一度読了している。
 このお話もオメガバースBLとしてはちょっと異色。
 尽くすオメガに溺愛アルファって書けばありがちに聞こえるかもしれないが、アルファが売れない画家で、オメガのヒモ(言葉が悪いね。スマン)ってところがすごい新鮮。
 喪失の絶望すら絵の糧になることを願う主人公の律の我の強さも異色っちゃあ異色。運命の番を歯牙にもかけないし。
 絵を通してしかコミュニケート出来ていなかった人間関係が不得手の二人が、お互いを失った長い時間を経て、やっと愛を知り、お互いに向き合うことを学んだ。・・・そして二人は幸せになりました。リアルなようで童話のような。普通の恋愛小説と何がちがうっていったら、そりゃ、SEX描写ががっつり入っていることだけど、それはなんか、私にとってはそれほど大きな事じゃないような気がするんだよね。リアルな愛が描けているかどうか。そこがポイントなんだと思う。何はともあれ、仁茂田もにさん。良いです。



2024年11月4日月曜日

0518〜19 アルフォンス・ミュシャ展(府中市美術館)で収穫



 文化の日だから、というわけではなく、魂の洗濯の必要性に迫られたので、府中市美術館で開催中の「アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界」展にいって来ました。 
 先日『かわいい江戸絵画』という図録を購入したときに、思ったのですよ。府中市美術館、優れているな、と。きっと、すごく良い、キュレーターさんがいるのだと思う。
 今回のミュシャ展にも、すごく熱量があって、なおかつすっきりと読みやすい、素晴らしい解説が表示されていました。分量的にも丁度良いかな。これ以上のボリュームだと、疲れて集中できなくなりそう。
 知らなかったミュシャの人生についてや、表現のアレコレについてもすこし知識を増やして帰ってきました。
 ミュッシャ後年の大作、スラブ叙事詩はどこに? と思って調べてみたら、2026年にプラハに『スラブ叙事詩』を恒久展示するための施設が建設されるそうです。美術館、というよりも複合施設っぽいデザインのようですが、いつかぜひ見に行けたら、と思います。
 
 かねてから入手したいと思っていた画集2冊も購入。

0518 ミュシャ作品集 増補改訂
書 名 「ミュシャ作品集 増補改訂版」
出 版 東京美術  2022年4月
大型本  21.1 x 1.5 x 29.7 cm 224ページ
初 読 2024年11月4日
ISBN-10  4808712350
ISBN-13  978-4808712358
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/123267240


 とにかく美しいの一言に尽きる。フランスで才能を発揮し、祖国チェコの独立を支持し、チェコスロヴァキア独立後は、祖国で制作活動に従事したミュシャ。展覧会では観ること叶わなかった壮大なスラブ叙事詩も収録されている。






0519 ミュシャ装飾デザイン集 増補改訂版
書 名 「ミュシャ装飾デザイン集 増補改訂版」
出 版 東京美術  2021年12月
大型本  21.1 x 1.5 x 29.7 cm 191ページ
初 読 2024年11月4日
ISBN-10  4808712342
ISBN-13  978-4808712341
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/124052008

 ミュシャは何冊かのデザイン教本も作成しており、それらも収録されている。デフォルメされた植物モチーフのボーダーやフレームも、繊細かつ正確なデッサンから生み出されているのだ、と納得。


0517 赤レンガの御庭番(エージェント)

書 名 「赤レンガの御庭番」
著 者 三木 笙子         
出 版 講談社 2019年2月
文 庫 256ページ
初 読 2024年11月2日
ISBN-10 4065147050
ISBN-13 978-4065147054
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123992103

 9月からこっち、ずっと読んできた三木笙子さんの本は実は既読本だったのだけど、これは初読。とても面白かったです。
 舞台は帝都探偵絵巻と同じころかな?と思える明治後期。
 徳川吉宗の代から続く御庭番の家系出身の義母がいる家に引き取られて育った入江明彦は、アメリカに留学し、勉強はそっちのけで本場の探偵術を身に付けて帰国。血のつながりはないとはいえ子供の頃から可愛がってくれた叔父が税関長を務める横濱で探偵事務所を開く。
 開港以来発展を続ける港湾都市横濱の異国情緒ある風情と、港湾労働者は威勢良く、町に暮らす人々にはすこし首都から離れたのんびりとした港町の気風が漂う空気感が何やら懐かしい。しかし、繁栄あるところには陰もある。港町の裏に跋扈する犯罪組織と、陰のある美しい女もとい青年。そして明彦に従卒のごとくかしづく文弥少年、逗留先のホテルオーナーでお喋りで世話好きな夫人。
 主人公の明彦の性格がとても良い。その育ちからして決して明るいだけではないのだが、どこか突き抜けているところが、これまでに読んだ三木さんの本の主人公達とはひと味違う。軽妙洒脱ながら情に深いが、流されない。明彦と文弥、これまた陰を背負わずにはいられない生い立ちのミツの会話もテンポが良くて楽しい。私が横浜びいきだというのもあるかもしれないが、これまでの作品とはちょっと味わいが違って、楽しく読書した。

第一話 不老不死の霊薬 
 横浜に不老不死の薬を売る者がいる。無論本物であるわけがない。犯罪の気配がするが、その「不老不死薬」の顧客がやんごとなき御婦人方であるらしく、警察沙汰にしたくない。そこで叔父から明彦に仕事が回ってくる。西洋美顔術と横浜で顔と名前の知られた西洋人医師、そして謎の「美女」ミツもからむ。鏡のエピソードなんかはちょっと生煮え感があるような気もしたが、なかなか展開が読めなくておもしろかった。

第二話 皇太子の切手 
 「ブルー・モーリシャス」と言われるコレクター垂涎の稀少切手が貼られた手紙を所持していた外国人夫妻の家が火事になり、「ぶるー・モーリシャス」もろとも失われる。失意の夫妻だが、実は保険金詐欺?
 その裏に見え隠れする、犯罪指南役の結社「灯台」。明かされるミツの出生。切手にまつわる犯罪はわりあい、筋が読みやすかった。ミツとの距離もすこし縮まったかな。

第三話 港の青年 
 「港の青年」と銘打った演劇が横濱の女性達のハートと捉える。今で言う「推し」というか。そこに、演劇のモデルとなった男を捜して横濱にやってきた男の妹が登場。港町は彼女の兄を探す手伝いをしようと、騒然となる。だがしかし、実は演劇の台本は、完全なる創作だった。陰に見え隠れするのは「灯台」の存在。派手な「兄捜し」の真の目的はなにか?

第四話 My Heart Will Go On
 今や「灯台」潰しの尖兵であることが明白になっている明彦の周りが物騒になってくる。文弥は階段から転落して大怪我。ミツも税関長である叔父も、身動きがとれなくなる。ついに「灯台」の首領との一騎打ちを覚悟した明彦であるが、その首領は意外なところにいた・・・・。ここで終わってしまうのは勿体ないキャラ立て、舞台立てだが、こういうところ、三木さんて惜しげがないというか、思い切りがいいというか。

 ここから、キャラクターの関係性を深めていって欲しい、とつい思ってしまうが、そこを余韻にして話が終わるのは、三木笙子さんらしくもある。なんにせよ、私はこのお話、とても好きだった。

2024年11月2日土曜日

2024年10月の読書メーター

 ここに読了登録した本の他に、仁茂田もにさんのKindle本数冊と、アルファポリスで公開されているBL小説を読み漁りました。
 仁茂田もにさん、好きだわ。それぞれの作品毎にキャラが立っていて、ストーリーテラーの才がある。文章が上手い。ネット小説なので、誤字脱字はご愛敬かな。書籍化されるあかつきにはきちんと校正するといいんじゃないかな。これからも追いかけよう。


10月の読書メーター
読んだ本の数:26
読んだページ数:4533
ナイス数:999

水の都 黄金の国水の都 黄金の国感想
舞台は明治期のヴェネツィア。異国情緒溢れる街に住む日本人とその友の、どこか不思議な雰囲気もあるバディもの。三木笙子さんのお話はどれもブロマンスってほど濃くはない。しかし真情に溢れてる。ヴェネツィアという街の成り立ち、ヴェネツィア出身の冒険家マルコポーロが残した伝説。そういったものを絡めながら、真面目に真っ直ぐに、人のために生きてヴェネツィアで死んだ青年清人と、その友人の誠次郎、イタリア人青年ルカの友情をベースに、物語が進む。事件そのものよりも、それに絡む人の心の物語だ。そして著者の思いも零れる。
読了日:10月28日 著者:三木 笙子

金木犀二十四区金木犀二十四区感想
金木犀二十四区、隕石、天狗、山伏そして『靡』(なびき)。不思議ですこし不穏な世界観の中で紡がれるのは、人の優しさや切なさや、静かでたおやかな強さ。金木犀の香りが漂い始めた朝に読み始め、散る前に読み終えることが出来た。読む人によって好みは分かれるかもしれないが、三木笙子さんらしくて、私は好きな一冊。
読了日:10月19日 著者:三木 笙子


怪盗ロータス綺譚怪盗ロータス綺譚感想
手玉に取られる者の側の視点がなかなかに面白い。一番良かったのは、「埋める者 暴く者」。状況をコントロールしているつもりがいつの間にかコントロールされ、のっぴきならない状況に追い込まれるのは、『注文の多い料理店』を読んでいるみたいな面白さだった。そのほかの話もそれぞれに面白い。なにより、省吾が元気で過ごしているのが良い。彼のことは心配してたんだよ。若干の不安や鬱屈はありそうだけど、私の想像以上に蓮とともに、うまくやっているようで安心した。
読了日:10月13日 著者:三木 笙子

Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない2 (アンダルシュノベルズ)
Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない2 (アンダルシュノベルズ)感想
2巻は、アロイスとリリエルの恋模様も絡めつつクライマックスになだれ込んでいく。上巻はユーリス視点だったが、下巻はギルベルト視点で、上巻でユーリス視点で語られた過去の出来事が再演される。この手の創作小説で人物視点をコロコロ変える手法は、安直だなーと思っていたが、ここまで丁寧に描き込むとそれも面白いと思えるんだな、発見した。そうだよね、他人の思惑なんて実際判らないし、人間関係って誤解だらけだよね。となんだか納得感がある。一つも結婚話が来ないのは自分に魅力がないからと思い込んでいたユーリスが絶対に一番の被害者。
読了日:10月25日 著者:仁茂田もに

とびはち作品集 にこげのつどいとびはち作品集 にこげのつどい感想
そしてこれが現代の「カワイイ」だ!ってのは冗談としても、「かわいい江戸絵画」につながるものがあるよな、と思いながら頁をめくる。も、『足軽雀』が最っ高にかわいい。昔、自分も絵を描いていた頃があったので、いまだにこういう素敵な絵を見ると、いいな〜。私も描きたいな〜。とほんの少し思う。今更ではあるが、人生の中でどういう選択枝を選んできたらこういう道に到達できたんだろうかなあ、と、ほんのちょっとうらやましい。まあ、今は鑑賞専門よ!そのうちもう少し時間ができたら、絵の具箱を開けようぞ。
読了日:10月26日 著者:とびはち

かわいい江戸絵画かわいい江戸絵画感想
こんな表紙の本がビニールカバーの中に入ってたら、中が見たくなるじゃないか!世界に誇る日本のKAWAIIの源流は江戸にあり?もともと気恥ずかしい、面はゆいといった意味だった「かわゆし」が現代にも通じる「かわいい」の意になったのは江戸時代頃からとのこと。本の中身は、真面目な日本画と文化史。府中市美術館の特別展で人気を博し売り切れた図録が書籍化されたとのこと。波津彬子さんの「雨柳堂夢噺」に登場する子犬はデフォルメされすぎだよな、と思っていたが、円山応挙が本家なのね!
読了日:10月26日 著者:

配色事典―大正・昭和の色彩ノート (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)配色事典―大正・昭和の色彩ノート (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)感想
昭和8〜9年に刊行された『配色總鑑』が新装・改訂版として復刻されたもの。手軽な文庫本サイズなのに、色彩の組み合わせや色見本がぎっしり。色の和名が美しい。大正・昭和の色彩となっているけど、もちろん現代に通用する。明暗、補色の組み合わせ。大きな面で組み合わせる(例えばセーターとスカート)のも、小物合わせの参考にも。4色配色は、着物、帯、半襟、帯締め、帯揚げの組み合わせにも、大いに参考になる。なにより楽しい!
読了日:10月26日 著者:和田 三造

エドワード・ホッパー作品集エドワード・ホッパー作品集感想
翻訳ミステリー読みなら外せないエドワード・ホッパー。ボッシュの家に、そして殺し屋ケラーさんの家に、飾ってあるのが『夜更かしの人々』ナイトホークス。やっぱり良い。女連れの男に移入するか、少し離れた所に座る独りの男に人生を重ねて観るのか。ケラーさんなら後者、ボッシュはどっちだろう。
読了日:10月18日 著者:江崎聡子

ヴィルヘルム・ハマスホイ 静寂の詩人 (ToBi selection)ヴィルヘルム・ハマスホイ 静寂の詩人 (ToBi selection)感想
ワイエスの画集をAmazonで探していたら、ハマスホイも一緒に紹介されました。確かに白と明暗が基調の作風は似ているかも。しかし、空気感は全然違う。静寂の詩人、とはなるほど、と思うが、しかし、厳しくはない。ほのかな温かみのある室内の空気感。ワイエスよりもむしろ、ハマスホイの方が人間的な温かみを感じる気がするのは、たぶん、ハマスホイの人や物事を見る視線が穏やかで優しいからだろう。ワイエスがそうでないとは言わないけど、ワイエスには独特の厳しさがあるので。
読了日:10月10日 著者:萬屋 健司

アンドリュー・ワイエス作品集アンドリュー・ワイエス作品集感想
前から気になっていたワイエス。モノトーンの風景画の人だと勝手に思っていたが、作品集には自画像を含め人物画が多かった。
読了日:10月08日 著者:高橋 秀治



入江明日香作品集 風のゆくえ 生命の真影入江明日香作品集 風のゆくえ 生命の真影感想
入江明日香さんの一冊目の作品集。先に見た新しいほうの作品集「雷鳴と花」よりもややシンプルな作品が多い。子供をモチーフにした作品多数。すごく全体的にファンタスティックなのにリアル。なのに何故か猫がまんまるで可愛い。いろいろなものを内包して混沌としながら清楚で美しい。
読了日:10月06日 著者:入江 明日香

神業の風景画 ホキ美術館コレクション神業の風景画 ホキ美術館コレクション感想
千葉県にある写実絵画専門のホキ美術館の収蔵品の作品集。写実絵画って本当に写真のように精密・精巧だが、あまりにも写真そのものだと、あえて絵で描く必要があるんだろうか・なんて考えてしまう。なので、私は全体的に「絵」の気配が少し残っている(筆のタッチとか、写真ではあり得ない水流の線とか)が有る方が、安心して鑑賞できるし、観ていて心が落ち着くと思った。
読了日:10月06日 著者:芸術新聞社

吉田博 全木版画集 増補新版 YOSHIDA Hiroshi The Complete Woodblock Prints吉田博 全木版画集 増補新版 YOSHIDA Hiroshi The Complete Woodblock Prints感想
川瀬巴水と同時代の新版画。世界を旅して描かれた雄大な風景にため息がでる。聞けばダイアナ妃もこの作品を愛していたとか。そのうち、現物の展示を見たい。
読了日:10月03日 著者:吉田 博



入江明日香作品集 雷鳴と花入江明日香作品集 雷鳴と花感想
あまりにも美しく、あまりにも婉容、あまりにも繊細。ああ、こんな絵を自分で描くことができたなら。 黒の表紙カバーに手汗が付いてしまったら、と緊張する。今日の仕事のご褒美に。
読了日:10月03日 著者:入江明日香






火の神さまの掃除人ですが、いつの間にか花嫁として溺愛されています(2) (やわらかスピリッツ女子部)火の神さまの掃除人ですが、いつの間にか花嫁として溺愛されています(2) (やわらかスピリッツ女子部)感想
本がなにやら睦みあって、本の子が大量に産出されるってのが(笑) なんとなくバタバタと飛んでいる本の群れに、かつてのMacの伝説のスクリーンセーバー「フライングトースター」を思い出す(笑)
読了日:10月23日 著者:


火の神さまの掃除人ですが、いつの間にか花嫁として溺愛されています(1) (やわらかスピリッツ女子部)火の神さまの掃除人ですが、いつの間にか花嫁として溺愛されています(1) (やわらかスピリッツ女子部)感想
巫(かんなぎ)、継母&連れ子の継子イジメ、捨てられて異界に売り飛ばされて、神だか物の怪だかに食われるつもりが、火の神様にお輿入れ。だがしかし、その火の神様にはなにやら呪いが掛けられていて。和洋折衷、ラノベにありがちなギミックは全部ぶっこんであるし、とっちらかりそうなストーリーを画力で力業でまとめてる♪ 絵が綺麗でテンポもよく、よくある継子イジメネタもそれほど陰惨にはならず、なにしろ火の神のキャラが良い。新宿ブックファーストのPR映像を見て、Amazonを確認したら一巻目は期間限定無料だったので、
読了日:10月23日 著者:

花よりも花の如く 23 (花とゆめコミックス)花よりも花の如く 23 (花とゆめコミックス)感想
(作者も同じこと言っているが)年1回の刊行ペースで、23巻です。息子が成人するのと同じくらいの年月を掛けて、じりじりとケントも成長してきたのか、していないのか!前巻で葉月との破局やら、隆生先生の逝去やら、おおきな動きがありましたが、ついにここまで。やっと道成寺のお舞台の幕が開く。お面の初出だって、一体いつだったか? だが、あのお面を使えるまでにケントもなったってことで。どのような舞台を見せてくれるのでしょうか。楽屋に隆生先生が交じっているのがご愛敬。
読了日:10月15日 著者:成田 美名子

花よりも花の如く 22 (花とゆめコミックス)花よりも花の如く 22 (花とゆめコミックス)感想
いい加減、話が間延びしていたのと、ケントの優柔不断にウンザリしていたので、この巻読むのを飛ばしていた。23巻と会わせて入手したら、隆生先生が!理想的な人生の終いではあるけれど、そりゃ、ケントはショックを受けて当然。話は前後するが、葉月との破局もそりゃ当然。だけど、ずっとはっきりしなかったのは葉月も同じだったんじゃ?と思わないでもない。なにしろ、年1冊の刊行なので、この2人がいつから恋仲だったのかも、ハテ。記憶が・・・・・?
読了日:10月15日 著者:成田 美名子

ヴィンランド・サガ(28) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(28) (アフタヌーンKC)感想
新大陸の先住民の間にいきなり出現した黒死病(ペスト)おそらく、トルフィンの船から集落に入りこんだネズミが持ち込んだのだろう。歴史上の史実とはいえ、辛い現実だ。戦闘に明け暮れた少年の時代を経て、償いを決意したトルフィンの航路の到着地点で、この現実に直面するのは辛い。また、トルフィンが絶対に望まなかったとはいえ、鉄の武器が大陸の先住民にもたらされ、持ち込んだ当人は因果方法の目に遭う。これからどうなるのか、そしてトルフィンはどうするのか。
読了日:10月13日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(27) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(27) (アフタヌーンKC)感想
ネズミって伏線だったのか!フィンランドを出港するときからちょろちょろしていた彼ら。新大陸と旧大陸の出会いでもたらされたものは、新しい食物と伝染病。これらはコロンブス以降の話だと思っていたけど、当然人と物が交われば起こる話。友好したい者と、自分の身を守りたいもの。トルフィンの選ぶ手段はつねに「最初の手段」出港する前にもっと参加者を厳選したほうがよかったのかも・・・・
読了日:10月13日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(26) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(26) (アフタヌーンKC)感想
現地先住民との交流は続くが、先見の力を持つシャーマンは不吉な予感を手放せない。秘術を使って観た未来は、自然破壊、戦争、伝染病、先住民の衰退・・・・一方トルフィン達は初めての麦の収穫を迎え、ヒルドの設計した脱穀機が、仲間達の度肝を抜く。そして、村で初めて収穫した小麦で焼いたパンを手にして感無量なトルフィンに、ついにヒルドは赦しを与えた。
読了日:10月06日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(25) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(25) (アフタヌーンKC)感想
アレコレあって、ギョロもヴィンランド行きに追加。あれこれあって、ついに彼の地(現カナダ沿岸)に到達。ヒルダさん頭良いったって、天動説にひとり辿り付いているとはね。先住民との争いを避けて広い手つかずの土地を求めてさらにカナダ沿岸を南下。どうやらサン・ピエール・ミクロン島と本土の間を抜けて、日本人にもおなじみのかの島に到達。そして、先住民(ネイティブ・アメリカン)との出会いが。
読了日:10月06日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(24) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(24) (アフタヌーンKC)感想
故郷で、ヴィンランドへの移住の準備にかかるトルフィン。新しい土地に決して鉄の武器を持ち込むまいと考えるトルフィンと、武器を手放すことができない男達。そして鉄剣はひそかに持ち込まれる。あの戦争が大好きな大男にそっくりな奴隷、しかも「男の娘」だ。いろいろとブチ込んでくるなあ(笑)。そして、民会で移住団への参加を呼びかけ、だんだん準備が整ってくる。そしてあのシグやんがえらくカラっとした良い漢になって子連れで帰還。
読了日:10月06日 著者:幸村 誠

囀る鳥は羽ばたかない 9 (H&C Comics)囀る鳥は羽ばたかない 9 (H&C Comics)感想
気持ちが沿わないまま、ひたすら矢代の体をむさぼる百目鬼。お前はいったい、どうなりたいんだ〜〜〜!矢代は矢代でどうにも投げやりな感じだし。目も悪くなってるし、もう、いいかげんいろいろなものを投げてしまっていそうで、幸せな終わり方が想像できない。これからどうなっていくことやら。目が離せません。
読了日:10月06日 著者:ヨネダコウ


読書メーター

2024年10月31日木曜日

0516 水の都 黄金の国

書 名 「水の都 黄金の国 」
著 者 三木 笙子        
出 版 講談社 2016年7月
単行本 229ページ
初 読 2016年8月
再 読 2024年10月28日
ISBN-10 4062201518
ISBN-13 978-4062201513
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123818050

舞台は明治期のヴェネツィア。どこか不思議な雰囲気が漂う異国舞台のバディもの。三木笙子さんのお話はどれもブロマンスってほど濃くはない。どこかほんのりしているけど、しかし、真情に溢れてる。
 東北の小藩の、下級武士の家の生まれの誠次郎は、跡取りでもないため、自分の身は自分で立てないとならない立場。時は明治で、学問をして何とか自分の身の立て方を考えようとまずは東京に出る。今身に付けるは語学、と自らの才覚と対人スキルで独学でイタリア語をものにし、ついでにイタリアでの語学教師の職に就く。その仕事は誠次郎より早く世に出て、官費でフランスとイタリアに留学し、ヴェネツィアで病を得て早逝した親友の清人の仕事を引き継ぐものだった。
 誠次郎の親友清人は、ヴェネツィアの人々に信頼され、強い印象を残していた。なかでも、誠次郎の下宿先の青年ルカは「キヨ」に心酔し、亡くなった清人をずっと偲んでいる。
 そんなルカと誠次郎の友情を横軸に、誠次郎のもとに持ち込まれる事件を縦軸に、そして今はなき清人の存在が通奏低音のように響くストーリー。

 なにしろ、誠次郎の性格が良い。もの凄く出来るってわけではないがちゃんと冴えていて、それなりに苦労もしてきて、おごらず、昂ぶらず、周囲の人のことをきちんと考える。地に足のついた誠実さ。ルカは、日本人が想像するイタリア人ぽくなくて(笑)、暗めで寡黙、ちょっと辛辣。今は亡き「キヨ先生」に心酔していて、亡くなった清人の記憶がだんだん遠くなっていくことを悼んでいる。一つ一つの事件は、そんなに大事件ではないが独りで抱えるには重たくて、それを受け止め、受け流していくには、やはり友が必要なのだ。

第1話 黄金の国
 偽金作りの悪党が、金貨の精巧な金型を手に入れて、金貨を作らせるために腕の良い鍛冶屋に目を付けた。しかし、そこで思わぬ事態が起こる。
第2話 水の都の怪人
 ヴェネツィアの町に、金貨をばらまく怪人が出現。街の人々はだんだん、熱狂が高まって行く。ルカと誠次郎が下宿する酒場(バーガロ)の主が大切にする絵に隠された謎。
 ヴェネツィアは何もない潟の上に人間が創った街である。そのためには沢山の杭を海に打ち込み、その上に建物を建てる必要があった。それが清人の心を捉えた。と誠次郎が言う。
「俺はそこに、人間の意志を感じるんだよ。海の上に美しい街を作りあげようとする人の意志を」
 私は、そこに、三木笙子さんの意志を感じる。何もないところに、美しい物語を創ろうとしている人の意志が伝わってくるように思うのだ。
第3話 錬金術師の夢
 小説家が創ろうとしたもの。それは物語ではなく・・・・・
第4話 新地動説
 夫婦でヴェネツィアを訪れていたアメリカ人夫婦。その夫がかき消すように失踪してしまった。・・・・ところからの、誠次郎の推理。
エピローグ
 もし夢が叶わなくても。在りし日の清人。夢が叶わなくとも不幸ではない。その夢はヴェネツィアの一部になるのだから。

2024年10月27日日曜日

0515 配色事典―大正・昭和の色彩ノート (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)

書 名 「配色事典―大正・昭和の色彩ノート (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)」
著 者 和田 三造     
出 版 青幻舎 2010年7月
文 庫 281ページ
初 読 2024年10月26日
ISBN-10 4861522471
ISBN-13 978-4861522475


裏表紙より引用
『本書の原本となる『配色總鑑』(全六巻)は、昭和八〜九年に掛けて刊行されました。
 編纂された昭和初期は、戦前戦後の混乱期である反面、西洋文化の影響を受け、新しい気風に満ちた時代でした。
 本書には、そのようなモダンで多様化する色彩の時代に、色の重要性にいち早く着目し、現在の色彩研究の礎をつくた和田三造(1883〜1967)によって公安された、348の配色が収められています。
 「配色」という概念が一般に認識されていなかった当時において、具体的な配色パターンが掲載された配色見本集はきわめて珍しいもので『配色總鑑』はそのさきがけとなるものです。
 ・・・・・』
 本の内容については、上記の引用に勝るものなし。後半に色の索引、切り離して活用も可能な色票が付属しているのも、とても実用的で、文庫本サイズで持ち運びが容易なことも合わせ、単なる復刻版でないところが良いと思う。
 たとえば、デザインや印刷関係の営業さんのポケットから使い込んだコレが出て来たら格好良いと思った。

 本の中は、2色、3色、4色の色彩の組み合わせがぎっしり。色見本に記載されている色の和名が美しい。
 大正・昭和の色彩となっているけど、もちろん現代に通用する。明暗、補色の組み合わせ。たとえばファッションだとしたら、大きな面で組み合わせる(例えばセーターとスカート)のも、小物合わせの参考にもなるし、柄の配色の参考にもなりそう。4色配色は、着物、帯、半襟、帯締め、帯揚げの組み合わせにも、大いに参考になる。なにより楽しい!
 洋服は同色系でまとめがちだけど、着物は小物(特に帯締め)は補色で選ぶことが多い。小物以外にも、八掛の色合わせも同色系にするか、補色系にするかですごく印象が変わる。歩いたときにチラチラと見える裾裏に凝るのは、着物の醍醐味。袖口、袂からほんの少し覗く長襦袢の色も、そりゃあ白やごく淡色が定番ではあるが、小紋なんかを着るときには遊び心を覗かせることもできる。だが、これを全部やったら多分NGだろうな。過ぎたるは及ばざるがごとし。娘の七五三以来、着物を着ていないけど、また着たくなった。
 

0513〜14 Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない1,2 (アンダルシュノベルズ)

書 名 「Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない1」
著 者 仁茂田もに        
出 版 アルファポリス 2024年1月
単行本 336ページ
初 読 2024年6月02日
ISBN-10 4434333135
ISBN-13 978-4434333132
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/121069284

 アマゾンでオススメされて、結構長く試し読みできたもので、読んでしまったら先が気になって気になって、まんまとお買い上げ〜。しかも予備知識なしに読み始めたら、1巻最後まで読んだのに未完だったという罠。
 先が気になって仕方がない。
 続きはアルファポリスなるもので読めると知り、アプリをDLし、最後まで読みましたとも。まんまと掴まってしまった。仁茂田もにさん、面白いし、素敵だ。

 表紙のとおりオメガバース。普通に魔法が存在する王国、登場人物の名前は全てドイツ語風。主人公ユーリスはΩ♂。王太子の婚約者になったアデル、婚約破棄されたリリエル、すでに他国に嫁いだ第一王子ヴィルヘルムもすべてΩ♂。オメガバースBLだから仕方ないのだが、男女比が悪すぎる気がするが、そこに突っ込んでも仕方ない。一巻目(というか上巻)は謎も含みも満載。しかしそれよりも、拗れに拗れたユーリスとギルベルトの誤解がいつ解けるのかが気になりすぎた(汗)。描写が丁寧で、読みやすく、キャラが立っていてテンポもよい。

 自分に自信がなく体力に劣るユーリスだが、実は相当優秀。考えてみれば、かつての第一王子の侍従の中でも年長で筆頭格だったわけだし、跡取りの長子として教育され、長年王宮内に起居して奉公し、2回も王太子妃候補の教育係に任じられるのは伊達ではない。自分に向けられるやっかみや羨望に気づいていない箱入り純粋培養は不幸の元だ(笑)。でも箱に入れておきたいギルベルトの気持ちもわからではない。

書 名 「Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない1」
著 者 仁茂田もに        
出 版 アルファポリス 2024年10月
単行本 352ページ
初 読 2024年6月02日
ISBN-10 4434346490
ISBN-13 978-4434346491
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123852190

 2巻(下巻)は、恋愛に関してはダメダメなアロイスとリリエルの恋模様も絡めて、クライマックスになだれ込んでいく。
 上巻がおもにユーリス視点で現在と過去をうまくミックスさせていたが、下巻はギルベルト視点で、上巻でユーリス視点で語られた過去の出来事が再演される。これまで、この手の創作小説で人物視点をコロコロ変える手法は、安直だなーと思っていた。だがしかし、ここまで丁寧に描き込めば、それも面白いと思える。そうだよね、他人の思惑なんて実際判らないし、人間関係って誤解だらけだよね。とすごく納得感がある。
 にしても、それぞれに生真面目で実直で有能なのに、こと恋愛に関しては超おくてで恥ずかしがりで怖がりのカップルが、なんとか恋愛成就してよかった。
 長年にわたり数多の求婚を仕える主に握り潰されていたせいで、自分では一つも結婚話が来ない魅力のないオメガだと思い込んでいたユーリスが憐れだよねえ。

 なお、上記の書誌情報は紙本のものですが、実際はKindle本で読了した。

 アルファポリスで公開されてる番外編もすごく良いので、必読!です。

2024年10月20日日曜日

0512 金木犀二十四区

書 名 「金木犀二十四区」
著 者 三木 笙子        
出 版 角川書店 2012年9月
単行本 265ページ
初 読 2012年9月
再 読 2024年10月20日
ISBN-10 4041102294
ISBN-13 978-4041102299
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123758258   

 『怪盗ロータス』を読み終わって、次はこの本、と手に取った朝、この秋はじめて、朝の空気にかすかに交じるキンモクセイの香りに気付いた。キンモクセイはこの家に住み始めたときに、敷地の角に植えたもので、樹齢は二十数年というところ。隣地境界故に強く剪定せざるをえず、枝をのびのび伸ばさせてやれないのが可哀想なのだが、毎年健気に花を付け、密やかに香りを届けてくれる。今年も花香る秋が来た。この本を読むのにこれ以上の時節はない。
 
 表紙、背表紙とも美男子が描かれているが、作中にはもう一人、佳い男が登場する。この表紙(主人公)と裏表紙(主人公の友人)ともう一人(友人の友人?同僚?)の3人がメインで話は進む。
 舞台となっているのは、現代の日本・東京のパラレルワールド的な都市『首都』。花の名を冠した二十三区の片隅に、地図上にはないが金木犀二十四区と人に称される、時の歩みから置き忘れられたような、古風ゆかしい地区がある。その地は樹齢千年を超える金木犀の大木をご神体とする神社を中心に人々がゆるりとした時の流れの中で生活していて。
 イメージとしては、平成の世の中で、その一角だけは昭和の中頃みたいな感じだろうか。
 『東都』(江戸)、『革命』(明治維新)、『大君』(将軍)など、世界を作り込んでいるのに、一方では「建武の新政」なんて言葉が素で出て来たりして、ちょっと世界観にぎこちなさを感じてしまうのが、少々引っかかってしまうところではある。そこに、隕石、天狗、森林化といういわばファンタジー要素が加わり、あれ、そっち方向に行くのかな、と思いきや、なんとなく失せ物ミステリー(首飾り事件)風味もあるし、でも実は、ちゃんと、人の孤独によりそう優しさの話である、という、なんというか、そう、三木笙子さんの世界そのもののような物語とでもいおうか。
 
 隕石と天狗の話に唐突感はあり、読み手としては、まあそういう設定でいくのならそれに付き合うしか有るまい、という感じはややある。だけど、辛い事があったとしても「毎日の生活に少しずつ溶かしこんで記憶を薄め、やり過ごしていくしかない」「目をつぶるでなく、傷口をさらすでなく、あったことはあったこととして受け止めていく」ことが、どれほど大変なことか。それを、文字通り淡々と行い、自分とも周囲とも向きあっていく主人公・秋の在り方そのものが、この物語なのだと思う。この芯が強いが嫋やかな、まさに野に有る和の花のように目をこらさないとそこにあるのにも気付かないようであるけれど、確かに誰かを勇気づける存在が、この物語に感じるちょっとした引っかかりなど凌駕する。

 ちなみに、舞台は武蔵野湧水地の・・・というからには、三宝寺池や、石神井あたり・・・もっと西に行けば国分寺崖線なんかも思い浮かぶが、地理的には23区の一番西より、練馬区の一角あたりなんだろうな、と思って読む。レモンイエローの電車は西武新宿線、延長されそうでされない地下鉄は丸の内線? 読みながらそう考えはしたけれど、この話にはそういう現実感は不要だな。

2024年 残り2ヶ月と12日 ※特に意味はない。

今年中に読んでしまいたい本。

だいぶ追い詰まって来た。多分、コレ全部は無理だとおもうけど、とりあえず書きだしておく。

本当はもっと、読んでない新刊が沢山あるし、もっと読みたいけど。

多分、これも全部は無理だと思うので、せめて。


🔸三木笙子さんの残り

  1. 金木犀二十四区(読了)
  2. 水の都黄金の国(読了)
  3. 竜の雨降る探偵社
  4. 百年の記憶
  5. クラーク巴里探偵録
  6. 露西亜の時間旅行者
  7. 月世界紳士録
  8. 赤レンガの御庭番(読了
🔸ワニ町
 9.嵐にも負けず

 10.町の悪魔を捕まえろ


🔸マーダーボット・ダイアリー)

 11.システム・クラッシュ


🔸マーク・グルーニー

 12.13.暗殺者の屈辱 上・下

 14.15.暗殺者の回想 上・下

 追加   暗殺者の矜持 上・下

 16.17.アーマード 生還不能 上 ・下


🔸ダグラス・リーマン残り

 18.緋色の勇者

 19.黄土の血戦  栄光の海兵隊 2

 20.紅の軍旗: 栄光の海兵隊3

 21.特攻艇基地を撃破せよ: 栄光の海兵隊

 22.原潜救出

 23.キール港の白い大砲


ちなみに、来年こそは、ボッシュシリーズの未読を読み進めたい。

あと、ドラゴンシリーズ(西洋竜が出てくる本を勝手に命名)とか、とにかくいろいろと読みたいのだ。まあ、自分の「なになにしたい」ほど当てにならないものはないと知っているので、あくまでも今のところなんだが。

2024年10月15日火曜日

0511 怪盗ロータス綺譚

書 名 「怪盗ロータス綺譚」
著 者 三木 笙子        
出 版 東京創元社 2022年11月
単行本 304ページ
初 読 2024年9月30日
ISBN-10 4488028799
ISBN-13  978-4488028794
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/123627668


 表紙がとても素敵です。
 大好きなyokoさんの装画。色もシックで、なんとなく浮世絵の色使いなんかも思わせる和色。
 『怪盗の伴走者』で、ついにロータスこと蓮と行動を共にすることを選択した省吾。2人でしばらく欧州で奇術師とそのマネージャーとして活動していたようですが、このたびしばしの休息のため、日本に帰国し、帝国ホテルに逗留中。とはいえ変装しているので、蓮はともかく省吾はどうも落ち着かない。けっして騒ぎを起こすな、と念を押す省吾に、二つ返事な蓮であるが、しかしこういう男のところには、自分で面倒をおこさなくても、向こうから転がり込んでくるものなのだ。ため息をつきながら現状を容認するしかない省吾である。・・・てか、省吾がきちんと幸せそうに・・・しているな。蓮と一緒にいることがまんざらでもなさそうで、自然体でよろしい。私は君が元気でいてくれたらそれでいいんだ。

グランドホテルの黄金消失 
 日本に帰国して、2人が逗留していたのは帝国ホテル。そこに、金塊を載せた暴走馬車が駆け込んでくる。馬車が壊れて、その日のうちの横浜マルマル銀行東京支店の金庫への持ち込みを断念した持ち主は、目の前のグランドホテルに一晩金塊を持ち込むことに。そしてその翌朝、金塊が消失?!
 困った支配人が、顔なじみの蓮のところに、相談にやってくる。

特等席 
 蓮と省吾が周到に罠と仕掛けを張り巡らして、大がかりな詐欺を企てる話。何が起こるのだろう、と思いながら読んでいて、途中でこれは手玉に取られている方か、と思い至る。騙される側に移入するっていうのは、ちょっと新鮮な体験だった。途中からは誰が蓮で誰が省吾だ?と考えながら読む。それも面白い。

埋める者 暴く者 
 箱根にのんびり温泉に浸かりに行ったはずが、やっぱり事件の解決を持ち込まれる蓮、そして省吾。状況をコントロールしているはずが、だんだん相手に手玉に取られて、だんだんのっぴきならない状況に陥る様子が、『注文の多い料理店』みたいでワクワクする。最初と最後を切なく締めるのも粋。男は最愛の女の墓所を護り続けていたのだな。

すべて当たり籤
 駄菓子屋で子供が喜ぶくじ引きに事件あり。駄菓子屋の店主がトラブルに巻き込まれた、そして現在進行形で何かが狙われている・・・・というところは前話のごとく、先の展開の予想が付かず、推理小説を読むみたいに(ってか、これ推理小説だったか。)みたいにわくわく。だがしかし、そう来たか! それは意外だった。お兄さんはどうしたのよ? 簡単に騙される私は、つくづく推理小説読みじゃあないんだよなあ。と実感。
 
光と影のおむすびころりん
 これはすこし分かりにくかったかな。おむすびころりんの童話のごとく、どんどん縁と偶然がつながって最後にはすごいものに辿り付いたけど。舞台が「縁切り寺」っていうのも逆説的で面白い。

 さて、結論として、省吾は一抹の不安を抱えながらも、蓮とうまくやっているし、とりあえず後悔もしていないよう。もうちょっとだけ、蓮の弱みを観てみたい気がするので、そこは続編があればお願いしたい。



 

2024年10月13日日曜日

川瀬巴水 0509〜0510

書 名 「川瀬巴水 木版画集」
出 版 阿部出版  2017年3月第2版
大型本  27.4 x 22 x 2 cm 208ページ
初 読 2024年9月23日
ISBN-10 4872424484
ISBN-13 978-4872424485
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123267240

浮世絵の手法から、版元と共同で創作する「新版画」を世に送り出した第一人者である、川瀬巴水の画集。恥ずかしながら、今回国立東京博物館を訪れて、初めて巴水の作品を目にした。その素晴らしさに心を打たれ、絶対に忘れたくなくて勢いで画集を買ってしまった。後半の資料ページに木版画の重ね刷りの手法が解説されている。やはり、東京博物館に展示されていた、東京十二題が好きだ。あと、もう一冊の表紙にも使われている『清洲橋』の青が素晴らしい。多分、一番好きなのは『松島双子島』。もちろんいろいろな色使いで表現されてるのではあるが、『小樽の波止場』『大森海岸』『馬込の月』など、青や藍の濃淡で表現される夜の表情や月夜の情景が本当に美しい。

書 名 「川瀬巴水 木版画集」
出 版 河出書房新  2024年3月
大型本  19.2 x 1.5 x 25.7 cm 128ページ
初 読 2024年9月23日
ISBN-10 4309257445
ISBN-13 978-4309257440
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123266823

表紙の絵は昭和6年の清澄橋。この本は「コデックス装」という糸綴りの想定で、完全に平らにページを開くことができるので、見開き一杯の絵を堪能できる。誠に恐縮ながら、絵に添えられた林望氏のエッセイはほとんど読んでいない。今は川瀬巴水の絵を視覚で堪能することで胸がいっぱい。他人がこの数々の絵に何を思うとしても、そちらは正直、どうでも良い感じです。
 「コデックス装」といえば、同じく林望氏の『謹訳源氏物語』などのシリーズもこの装丁で、大変読みやすいのです。もっと広まってほしいです。

松嶋双子嶋 ※画像は国立国会図書館NDLイメージバンクから戴きました。


川瀬 巴水(かわせ はすい) 1883年(明治16年)5月18日- 1957年(昭和32年) 11月27日)
  ※以下は、ウィキペディアの「川瀬巴水」の項を参照したまとめ。
  • 日本の大正・昭和期の木版画家。近代風景版画の第一人者。明治に入り衰退した浮世絵版画から、版元の渡邊庄三郎とともに新しい浮世絵版画である「新版画」を確立した。
経 歴
  • 1883年(明治16年)  東京府芝区露月町(現・港区新橋五丁目)に糸屋兼糸組物(組紐)職人の家の長男として生まれる。本名は文治郎。10代から画家を志し、14歳から川端玉章門下の青柳墨川に日本画を学んだ。次いで19歳の時には荒木寛友にも日本画を学ぶが、両親の反対に遭い断念。父親の家業を継ぐが画家になる夢を諦めきれず、家業が傾いた折に妹夫婦に商売を任せ、1908年(明治41年)25歳の時に、顔馴染であった日本画家・鏑木清方に入門を志す。しかし、鏑木清方には遅い始まりに難色を示され洋画家の道を勧められた。当時、洋画家の集まりとして知られた白馬会葵橋洋画研究所に入り洋画を学ぶ。
  • 1910年(明治43年)   27歳。一度は入門を断られた清方に改めて入門。約2年の修行を経て「巴水」の画号を与えられ日本画家となる。
  • 1912年(明治45年)   初めて巽画会に「うぐいすきく二娘」を出品。その後も烏合会や郷土会の展覧会に作品を出品し、また賞を獲得した。1913年(大正2年)頃からは小説挿絵や銀座の白牡丹で図案の仕事を始める。
  • 1916年(大正5年)頃より京橋の画廊画博堂で風景画、美人画、風俗画などの肉筆画の頒布会を開催。
  • 1917年(大正6年)   吉川ムメ(後に梅代)と結婚。
  • 1918年(大正7年)の郷土会第四回展に出品された同門・伊東深水の渡辺版画店木版画「近江八景」に感銘を受けて版画作成に興味を持つ。当時浮世絵版画は衰退の一途を辿っていたが、幼い頃によく滞在した栃木県塩原を描いた風景版画「塩原おかね路」、「塩原畑下り」、「塩原しほがま」の3点を試作し、渡辺版画店により出版される。
  • 渡辺版画店は、数々の作品を後に新版画と呼ばれる浮世絵風の版画制作に力を入れていた。巴水の木版画デビュー作となった「塩原三部作」は好評を博し、渡辺版画店の渡辺庄三郎は巴水に新版画の風景画を委ねるようになる。以降の巴水は版画作成を主体とするようになり、終生、夜、雪などといった詩情的な風景版画を製作した。
  • 1920年(大正9年)   各地を取材した最初の連作となる「旅みやげ第一集」を完成する。これにより版画家としての地位を確立させた。同年には木版画集「三菱深川別邸の図」(現、清澄庭園)を制作、三菱財閥から国内外の関係者や得意先へ贈呈され巴水の名が世界的に伝わった。
  • 1921年(大正10年)  「東京十二題」、「旅みやげ第二集」。
  • 1923年(大正12年)   関東大震災。写生帖188冊などの多くのスケッチを焼失。同年10月22日から翌1924年(大正13年)2月上旬にかけて西日本への写生旅行。
  • 1929年(昭和4年)  「旅みやげ第三集」完成。
  • 1930年(昭和5年)3月   アメリカ合衆国オハイオ州にあるトレド美術館主催の現代日本版画展に92図を出品する。同年に震災からの復興中途の東京を主題とした「東京二十景」が完成。
  • 1931年(昭和6年)  「東海道風景選集」の制作に取り掛かる。
  • 1932年(昭和7年)   東北地方・北海道方面に旅行、第3回現代創作版画展に97図を 近代浮世絵版画展に74図を出品する。また、鉄道省国際観光局日本観光宣伝用ポスターを深水と伴に制作し各1万枚が庄三郎から出版された。
  • 1933年(昭和8年)  「日本風景集東北篇」完成。
  • 1936年(昭和11年)   トレド美術館主催の第2回現代日本版画展へ出品、同年「日本風景集東日本編」を完成。「新東京百景」は6図を制作したのみで未完。
  • 1936年から1941年頃   不調に陥る。
  • 1937年(昭和12年)   銅版画「妙見の楠(香川県豊浜)」を制作。巴水の不調対策とされている。
  • 1939年(昭和14年)6月1日から7月4日   朝鮮に旅行。同年に「朝鮮八景」を 翌1940年(昭和15年)に「続朝鮮八景」を制作。「朝鮮八景」では震災後作品にみられた巧緻な描写と震災前作品にみられた大胆で広大な配置を取り戻し、戦後の作品へ続く新生面を開いたとされる。
  • 1943年(昭和18年)  「日本風景集Ⅱ 関西篇」が完成。
  • 1944年(昭和19年)   戦災の悪化に伴い栃木県塩原市に夫婦で疎開。
  • 1947年(昭和22年)  「東海道風景選集」を完成。
  • 1948年(昭和23年)   東京都大田区池上に引越す。同年、日本橋三越本店において巴水肉筆展を開催した。
  • 1952年(昭和27年)   文部省において伝統的木版技術記録を作成して永久保存することが決定され、伝統的木版技術保持者として巴水と深水が絵師として選ばれる。
  • 1953年(昭和28年)   渡邊木版画店により制作された巴水の無形文化財技術保存記録木版画「増上寺の雪」が完成。
  • 1957年(昭和32年)11月   東京都大田区池上町(現・大田区上池台)の自宅において胃癌のため死去。74歳。絶筆「平泉金色堂」の本摺りは巴水の没後に完成し、百ヶ日の法要の場で友人や知人に配られた。

2024年10月2日水曜日

2024年9月の読書メーター

 三木笙子さんの小説を読んで、日本の近世〜近代の文物や文化をおさらいしたくなったので、遅い夏休みの最終日、突然秋の空になった日に、上野の国立東京博物館の常設展示を見に行った。で、川瀬巴水の新版画に魅せられた。
もちろん、「竹河岸」や「大根河岸」や夜の倉の風景なんかがもう、三木さんの世界観にドはまりしたからなのは言うまでもないのだけど、とにかく青の表現が美しい。思わず、画集を2冊も購入してしまった。毎日眺めているけど、飽きない。
 あとは、ヴィンランド・サガの一気読みとか。三木笙子さんの本とヴィンランド・サガの交互読みは精神的なアクロバットに近い。そして仕事は相変わらず忙しい。読書三昧の日々を夢見る読書の秋の始まり。

9月の読書メーター
読んだ本の数:36
読んだページ数:8033
ナイス数:1385

川瀬巴水木版画集川瀬巴水木版画集感想
浮世絵の手法から「新版画」を産んだ川瀬巴水の画集です。恥ずかしながら、今日初めて巴水の作品を目にしました。絶対に忘れたくなくて勢いで画集を買ってしまった。後半の資料ページに木版画の重ね刷りの手法が解説されています。やはり、最初に心惹かれた東京十二題が好きだ。あと、もう一冊の表紙にも使われている『清洲橋』の青が素晴らしい。『松島双子島』や『小樽の波止場』『大森海岸』『馬込の月』など、夜の表現や月夜の情景が本当に美しいと思いました。もちろんいろいろな色使いで表現されてるんですが。本当に青が美しいです。
読了日:09月23日 著者:川瀬巴水

新装版 巴水の日本憧憬新装版 巴水の日本憧憬感想
表紙の絵だけみると写真の様にも見えるが、木版画です。川瀬巴水は大正〜昭和の浮世絵、木版画家。本日遅い夏休みの最終日だったので、せめて魂の洗濯と思って上野の国立東京博物館に行ってきた。黒田清隆の油彩とこの巴水の浮世絵『東京十二題』が特に素晴らしかったので、ミュージアムショップで巴水の画集を探して、二冊入手しました。この本は、完全に平らにページが開くので、見開きで鑑賞しやすくて良い。今読んでいる三木笙子さんのお話にぴったりな情景もあり、そもそも上野の森の上の秋の空も絵のように素晴らしかった。
読了日:09月23日 著者:林 望

帝都一の下宿屋帝都一の下宿屋感想
穏やかで優しい視線で、明治の街並みや空気感を映し出す。ミステリであるが、誰も死なないし、凶悪だったり、悪辣に過ぎる犯人も出てこない。人の心を温めるために丁寧に書かれたほんのりと人肌の物語達。三木笙子さんの作品も、私の心の包帯系。明治の東京の下宿屋静修館の大家は料理上手の働き者で、一癖も二癖もある下宿人たちはがっちり胃袋を掴まれている。そんな下宿人の一人である小説家の湧水のもとには、なぜか謎解きが持ち込まれ、大家の桃介も自ずと事件の解決にひと噛みする。帝都探偵絵巻に併走する心優しい物語。装画はyokoさん。
読了日:09月12日 著者:三木 笙子

怪盗の伴走者 (ミステリ・フロンティア)怪盗の伴走者 (ミステリ・フロンティア)感想
これで本当に良かったのかのか? 安西の行く末が案じられてならない。ロータス=蓮の情熱的で活動的なエネルギーに巻き込まれて安西は連れて行かれてしまった。この本は丸々一冊、安西省吾と蓮の出会いから始まり安西が地道に努力して築き上げてきた人生をロータスに持ってかれてしまう話。ブロマンスだが仄暗く、先行きの幸福が見えないことが不安だ。安西の心情を思いやる高広の真っ当な強い心が何よりも尊い。安西は心強くはなかった。そしてそれを利用されてしまった。人の心を操作することが何よりもダメなんだよ!蓮。
読了日:09月27日 著者:三木 笙子

怪盗の伴走者 (創元推理文庫)怪盗の伴走者 (創元推理文庫)感想
単行本、Kindle版も併用で読了。怪盗ロータスの手法は「人の心を操作する」こと。それが、泥棒のためで、大衆や警察相手であるならまだよいのだけど。ベタだけど、人の心を盗むために、それをやってはいけないと思うのよ。そうやって今回盗まれたものは、安西省吾その人だった。蓮と省吾の2人がこれから、本当に幸せな人生を送れるのかどうかは、今後の話にかかってる。ただ、「検事」という省吾の職業と人生は、母の呪縛そのものとも言えなくもない。省吾はこれから、本当に自由な自分の生き方を得ることができるのだろうか。
読了日:09月27日 著者:三木 笙子

人形遣いの影盗み (ミステリ・フロンティア)人形遣いの影盗み (ミステリ・フロンティア)感想
明治40年代を映しとった短編連作「帝都探偵絵巻」の3冊目。このシリーズの初読は10年以上前(新刊だった頃)なのだけど、そのときよりも、再読した今のほうが素敵に感じる。ミステリータッチではあるが、謎解きよりも人々の優しさや、良かれと思った気持ちがすれちがう切なさ・哀しさや、それを埋めよう、癒やそうとする人間模様が美しい。なにより、人は誠実に、真摯に生きるべきなのだというメッセージがある。著者の三木笙子さんの生真面目な心ぶりが感じられるのが良い。
読了日:09月22日 著者:三木 笙子

人形遣いの影盗み (創元推理文庫)人形遣いの影盗み (創元推理文庫)感想
先の2冊と同じく、文庫本のみ収録の終章、「美術祭異聞」目当てで入手。森恵(さとし)と友人の唐沢が、礼と高広のところに事件を持ち込む。だしにされた女性には気の毒であったけど、ちょっと拗れた友情の物語だった。
読了日:09月23日 著者:三木 笙子


世界記憶コンクール (ミステリ・フロンティア) (ミステリ・フロンティア 58)世界記憶コンクール (ミステリ・フロンティア) (ミステリ・フロンティア 58)感想
心優しい貧乏人の雑誌記者の里見高広(実は出自は良い)と、美人画を得意とする超売れっ子で当人も絶世の美男である絵師の有村礼(性格はワガママ)のコンビが織りなす明治の探偵絵巻。なかなか性格のよろしい高広の養父(司法大臣)もちょくちょく登場する準レギュラー。ミステリー調ではあるが、主題は人の優しさと人の世の切なさ。キャラやストーリーもさることながら、描き出される当時の時代感が良い。様々な職業や市井の生活のありようなんかが、とても雰囲気よく描かれている。三木笙子さんは丁寧に考証されていると感心する。
読了日:09月19日 著者:三木 笙子

世界記憶コンクール (創元推理文庫)世界記憶コンクール (創元推理文庫)感想
こちらも、終章の「月と竹の物語」は文庫本のみの収録。むろん文庫本も入手したとも。この話はとても好きだ。当時の竹河岸の様子なども想像しながら、楽しんで読んだ。にしても、ガラスのショーウィンドーに金塊を展示するとは、大胆な。礼の絵と金塊、どちらが高値だかわからん。しかし、割れたガラスで礼の絵に傷でもついていたら、高広は腰が立たなくなったろうから、絵が無事でよろしかった。
読了日:09月23日 著者:三木 笙子

人魚は空に還る (ミステリ・フロンティア 47)人魚は空に還る (ミステリ・フロンティア 47)感想
久しぶりの再読です。明治40年代の東京を舞台に、心優しい雑誌記者である里見高広と、若干正確に難ありの画家有村礼が出会う謎と事件。描くそばから高値で売れる売れっ子画家で本人も超絶美形の礼は、性格にはやや難がある。その礼に絵を描いてもらうため、そして礼の求めに応じて英国から輸入のストランドマガジンに掲載されているシャーロック・ホームズを翻訳して語り聞かせるために、高広は礼の住処に足を運ぶ。人の世の美と誠意と優しさを希求する作品は、おだやかで心優しく、すこし切ない。なお、高広は帝都一の下宿屋の住人の一人である。
読了日:09月16日 著者:三木 笙子

人魚は空に還る (創元推理文庫)人魚は空に還る (創元推理文庫)感想
最後の章の、「何故、何故」は文庫本のみ収録。礼の大伯父歌川秀芳、その名の通りの浮世絵師の住まいに、2人が訪れる。大川端の家からは大川の眺めが望めたはずだったが、無粋な水練場が建てられており。その川の向かいの質屋で起こった事件を、礼と共に大伯父宅にお邪魔していた高広が解く。事件の謎解きも良いが、もとの武家長屋であった住まい佇まいや、絵双紙など、江戸から明治にかけての風物の描写に想像が搔き立てられた。
読了日:09月23日 著者:三木 笙子

五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました4五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました4感想
愛しいレティシアと美しい王弟殿下の歳の差ラブラブほのぼのファンタジー4巻目。私の心の絆創膏。今作は、なんとフェリスの目をかすめてレティシアが誘拐?!の危機一髪ですが、とにかくフェリスが圧倒的力量なんでさっさと事態は収束。リリア神が登場人物に加わり人界も神界もなんだかゴタゴタしそうですね。これからどういう風に展開するんでしょうね? ふんわりラブラブで結婚式まで行くのか、大事件が起こって竜王陛下も顕現してスペクタクルー!って感じになるのも楽しそうですが。続きが楽しみです。
読了日:09月06日 著者:須王あや

五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました3五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました3感想
4巻がさくさくと発売。3巻も確かに登録したはずなのに、と思ったらKindleの方で登録してありました。ちょっとシャクなので、こっちも登録しておきます。私の心の絆創膏。とても優しい本です。今作はレティシアの幸福を阻まんとする悪い策謀に対して、フェリス様の怒りが爆発。レティシアの前では優しい猫をかぶってるフェリスの黒い面も堪能。白フェリス?と黒フェリスの塩梅が絶妙です。男前?な王太后様も最高です。コミカライズも始まっていますが、あちらの絵柄はちょっと重くて好みではない。なんかキャラの表情が重めで・・・・
読了日:09月01日 著者:須王あや

ニンゲンの飼い方ニンゲンの飼い方感想
発売直後に、知人に「面白い」と進められて読んだ。人間がモンスターに飼われる話。でもこのモンスター、柔な人間を傷つけないように自分のトゲトゲを切ったり、とにかく一生懸命に世話をしてくれる。その気持ちが当のニンゲンにはいまいち伝わらないんだけど・・・。人間飼育グッズや、ニンゲンを診察する「獣医さん」的なお医者がいたり、ニンゲンを狙う別のモンスターがいたり。
読了日:09月29日 著者:ぴえ太

【全1-6セット】転生竜騎士は初恋を捧ぐ【イラスト付】 (ブルームーンノベルズ)【全1-6セット】転生竜騎士は初恋を捧ぐ【イラスト付】 (ブルームーンノベルズ)感想
とりあえず、ドラゴン本。れっきとした(?)BLですが。仁茂田もにさんの文章はかなり好きです。キャラクターの性格が割と好み。この作品には、漆黒の4枚羽のドラゴンが出て来ます。舞台的にはテメレア戦記と同じくらいの、架空のヨーロッパ近世で、竜がいて、竜騎士による飛行戦隊があって、そのための竜師がいて、戦争があって、というファンタジー。竜は脇役ではありますが、好きです。
読了日:09月12日 著者:仁茂田もに

シャープさんとタニタくんRT (クロフネコミックス)シャープさんとタニタくんRT (クロフネコミックス)感想
勢いで2巻も読む。
読了日:09月09日 著者:仁茂田 あい




シャープさんとタニタくん@ (クロフネコミックス)シャープさんとタニタくん@ (クロフネコミックス)感想
実は青い鳥が黒い感じになってからはあまり見ていないんだけど、シャープさんのツイートは好きだった。(過去形スマン)。小説の方の「仁茂田もに」さんを検索していたら「仁茂田あい」さんが引っかかって、この本の存在を知る。なんか面白かったです。虚構新聞→シャーフさん→TANITA゜さん、の話がすごくSNSぽくって好き♪ こういう遊び心に癒やされる〜
読了日:09月09日 著者:仁茂田 あい

ヴィンランド・サガ(23) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(23) (アフタヌーンKC)感想
シグルド一足先に帰郷。そして父子の語らい(ウソ)。2年おくれて、トルフィン一行が帰郷。なんとか、第二部大団円。トルフィンが商売のために行ったミクラガルドとは、コンスタンティノープルの古ノルド語名。最初はてっきり大西洋→地中海ルートなのかと思い込んでいたが、フィンランドからドニエプル川沿いにキエフ(現キーウ)を経由して黒海に抜けるルートがあるとは。ずっと川伝いに行けるのか。ヨーロッパは海洋の視点からみると違う世界に見えるが、川伝いも侮れないな。
読了日:09月29日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(22) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(22) (アフタヌーンKC)感想
ヨムスボルグ地獄の闇鍋編(勝手に命名)了。相変わらず、トルケルが良いところをもって行くな。いったんはシグルドと戻ると言ったグズリーズだけど、ほぼなし崩しにトルフィンに告白。そしてそれを目撃するシグルド。さて。
読了日:09月29日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(21) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(21) (アフタヌーンKC)感想
シグルド・・・能力も戦闘力も高いのに、あの性格のせいで立派な狂言回しに・・・(T-T)。シグやんの本当の望みはなに?グズリーズじゃないよね?と友の貴重な助言だが、そこで言うのか?時と場所を考えてやれよ。引き続きヨムスボルグの砦・決戦編。ガルムが砦に侵入。髭三つ編みのアスゲートさんも私好みの数寄者キャラ。うまくトルケルに仕えている。ヨムスボルグの砦という地獄の闇鍋がぐつぐつぐらぐら。力任せに引っかき回して、さあ誰が鍋をヒックリ返すか、ってところで次巻へ。
読了日:09月29日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(20) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(20) (アフタヌーンKC)感想
クヌート陛下登場。やっぱりお得意の陰謀ですね。さて、ヨーム戦士団の本拠地ヨムスボルグの砦に、トルフィン、ヒルド、捕虜になったグズリーズ達、トルケル、フローキ、シグルド、あと死にたがりの変な奴まで集まって、もはや地獄の闇鍋状態。トルフィンのいとこにあたるフローキの孫息子がとっても良い子なんだが、孫に甘いフローキ、そりゃないだろう、というおじいちゃんぶり。それにしても、どーすんだ、と迫られるトルフィン、どんな策があるのだか? たぶん真心だけだと足りないと思う。
読了日:09月29日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(19) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(19) (アフタヌーンKC)感想
さくさくとギリシャまでは行けないもんだ。イッカクの荷を積んだレイフの船が失われていないことが奇跡みたい。孫を推すフローキと、フローキを排除したいヴァグン、ヨーム戦士団の内紛。しかしこれ、クヌートの影が見えるな。たぶん軍縮したいクヌートが共食いさせてる・・・。シグルドも巻き込まれて奴隷になってるし、かつてのトルフィンに似てるような気もする変なやつも登場。トルケルも交じって様相はぐちゃぐちゃ。まるで竜や蛇や熊の巣窟みたいなヨーム戦士団の本拠地、バルト海をそう簡単には抜け出せなかったトルフィン。
読了日:09月29日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(18) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(18) (アフタヌーンKC)感想
過去の罪が追いかけてきた(17巻。ヒルド)の次には、トルフィンの血筋が追いかけてくる。(ヨーム戦士団) 四角頭のフローキが未だ健在なのが何気に赦し難し。こいつは早く殺っちまいたい、と思うのは、物語の主題に反するか?(^^ゞ とにかく11巻くらいまではひたすらに血生臭くて読むのが辛かったが、第二部は気心の知れた仲間に囲まれ、暖かい。そして、人の恨みを買わず、ずっとトルフィンを探し続け、旅と商売を続け、真心が大事だというレイフさんが実は一番すごい人だと思う。
読了日:09月29日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(17) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(17) (アフタヌーンKC)感想
家族を殺されたヒルドの恨みと憎しみが、かつてのトルフィンと重なる。ヒルドはトルフィンの命を奪うのをひとまず思いとどまり、トルフィンの行動を監視するために、一行と行動を共にすることになる。トルフィンが過去を清算する行為は、ヒルドの傷を癒やすことになるのか、
読了日:09月29日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(16) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(16) (アフタヌーンKC)感想
グズリーズの逃亡を助けるトルフィン。女も船に乗りたい。海に出たい。世界を知りたい。自分のことを自分で決めたい。実際には、男だって自分のことを自分で決められているわけではない。男と同じ世界に出たい彼女と、戦争で殺し合うのが当然のヴァイキングのありように違う生き方を対置したいトルフィンが出会う。ついでに赤ん坊まで拾って大わらわなところに、トルフィンの過去がヒルダという形で矢を向ける。
読了日:09月28日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(15) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(15) (アフタヌーンKC)感想
一冊まるまる、グズリーズちゃんの話。ついでにシグルド。こいつも良い漢なんだけどね。ちょっとメンドクサイ系だ。紙面から血と汚物の匂いが漂ってきそうな重ーい話から、すこし明るくコメディタッチも入ってきて、肩の力が抜ける。 やっぱり笑顔がいいし、女が幸せなのが良いよ。
読了日:09月25日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(14) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(14) (アフタヌーンKC)感想
クヌート軍との闘いでケティルは重傷を負い意識不明。ここでダメ息子のオルマル覚醒。オルマルは不戦の道を選択する。レイフの船で逃げるはずだったトルフィンは農場を見捨てることができず、クヌートと直談判に及ぶ。クヌートもまた、血まみれの修羅に沈みそうだったが、トルフィンとやりあってなにかが浄化されたもよう。表情が少し、少年の頃に戻った。クヌートとトルフィン、ともに地上の楽園を作るために、それぞれに違う道を歩む。クヌートの施策の転換がイングランド人に受け入れられたとの記述が嬉しい。そしてついにトルフィンが帰郷する!
読了日:09月25日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(13) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(13) (アフタヌーンKC)感想
クヌートに狙われて、ケティルは人が変わってしまった。夫だったガルザルを匿ったことをケティルに知られたアイネイズは、ケティルに撲殺される。そしてクヌート軍が迫り、ケティルの農場が戦場になってしまう。そして一方で、アイネイズの死によって、トルフィンの目的が明確になる。ヴィンランドに戦争も奴隷もない平和な国を作るのだと。
読了日:09月25日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(12) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(12) (アフタヌーンKC)感想
農場主の奴隷アルネイズの夫もまた、戦争で負けて奴隷として飼われていた。そして、主人一家を惨殺して逃亡。アルネイズを探しに来る。争いと闘いを忌避しようとするトルフィンの目前で、殺し合いは続く。
読了日:09月23日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(11) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(11) (アフタヌーンKC)感想
3年がかりで森を開墾したトルフィンとエイナル。トルフィンは良く笑うようになった。そして、漠然ながら、目標が見え始める。「世の中から戦争と奴隷をなくすことはできないのか」。クヌートは兄を密かに毒殺し、王権を強化しようとしていた。その道はすでに血塗られている。クヌートは財政収入を確保するため、富農の農場を接収することを計画。トルフィンのいるケティルの農場が狙われ、ケティルが陥れられる。この浮き沈みが心臓に悪いよ。
読了日:09月23日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(10) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(10) (アフタヌーンKC)感想
大旦那の手ほどきで、トルフィンは農民としての生活のノウハウを身につけつつある。生まれも育ちも農民のエイナルと麦を撒き、やっと芽が出た畑を荒らされ、怒りから手が出てしまったトルフィンの夢に父とアシェラッドが出てくる。アシェラッドはトルフィンが見た地獄の夢の中で、トルフィンに「本物の戦士になれ」と命じる。地獄の描写はなんとなく日本的だなと感じるし、怒りの表情は仁王のようだ。
読了日:09月21日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(9) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(9) (アフタヌーンKC)感想
友人に恵まれ、少しトルフィンの目に生気が戻ってきた。5、6歳から戦場にいたと語るトルフィン。今幾つなんだ?
読了日:09月21日 著者:幸村 誠


ヴィンランド・サガ(8) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(8) (アフタヌーンKC)感想
アシェラッドの死によって、トルフィンの生きる目的は喪失する。これで第一部完といったところ。経緯不明だが、クヌートはトルフィンを奴隷身分に落として売ったよう。奴隷仲間のエイナルと出会い、これからどうなっていくのか。
読了日:09月20日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(7) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(7) (アフタヌーンKC)感想
キリストの神は慈愛の存在なのか。なぜ、この血生臭い人の世を放置するのか、神は信ずるに足るのか。クヌートの確信は神は人を救わぬ。人を救うのは自分だ、と。神がせぬなら、自分がこの世、この地に地上の楽園を創る。クヌートが父王の元に帰還し、血生臭い陰謀は次の局面に。
読了日:09月17日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(6) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(6) (アフタヌーンKC)感想
アシェラッドの命を巡り、トルケルとトルフィンが決闘。クヌート王子が覚醒して、トルケルとアシェラッドを従える。トルフィンはアシェラッドの金魚のふんなんで、そのままクヌートに従うことに。とにかく血生臭い。
読了日:09月17日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(5) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(5) (アフタヌーンKC)感想
雪中行軍の中、王子を擁したアシェラッド達が潜伏したマーシア領内の寒村にトルケル軍が迫る。アシェラッドが王子の従者のラグナルを暗殺。とにかく全編血生臭い。
読了日:09月17日 著者:幸村 誠