2026年10月17日土曜日

0568 アルファは飢えても主を摘まず 小話・番外編集(同人誌)

書 名 「アルファは飢えても主を摘まず 小話 番外編集」
著 者 佐伊
発行(サークル) The other side
同人誌 96ページ
初 読 2026年10月4日
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/138275170

 収録作品最初の4作は、Privetter+に投稿されていた小話など8作品。
1「気が回る侍従とは」  オメガの侍従リズロとサロヴァ公アゼルの会話〜ヴァルトルは怖いのか否か、の話。
2「手合わせ」  ヴァルトルがエイドに請われて手合わせする話。
3「気になる男」  ハリオがメソルトの仲良しバロスに嫉妬するも、その心境がとんと理解できない鈍感ヴァルトルの話。
4「弟子の門出」  ヴァルトルが騎士団に戻ることを拒否したことを聞いて,泣き崩れる聖騎士団幹部達の話。
5「彼の声と、我が声と」  ヴァルトルは弱い者、目下の者には声も話し方も優しくなり、目上に対しては、はっきり、厳しい口調になる。それは、なかば修道士としての修練の中で身についた癖だけど、部下の侍従達(オメガ含む)と優しく楽しく会話するヴァルトルと、それを聞いて心寂しくなるエイドの話。
6「眠る君」  「アルファは飢えても主を摘まず」上巻と下巻の狭間。エイドのベッドで迂闊にも寝落ちしたヴァルトルの寝顔を眺めるエイドの話。切ない(涙)
7「闇の光」  士官学校時代のハリオとイアン。そしてメソルトと再会してほどない時期の、メソルトとハリオの発情期。ハリオの恋情も切ない。  
8「冷たい熱」  メソルト家に引き取られたばかりのヴァルトルが熱を出し(多分はしか)、メソルトが辛くてぐずるヴァルトルを抱きしめる話。メソルトはほとんど育児をハリオに任せっきりだったけど、メソルトの愛情はちゃんとヴァルトルに伝わっていたんだよな。もちろんヴァルトルが聡いこともあるけれど、この親子の愛情は、ちょっといいかげんな言葉には変換できない。

 そして、そんなヴァルトルのあまり表にでてこない心の機微と、やはり複雑な生い立ちのミッシャの幼少時代と友情を描いた番外編が、「泣けるアルファが道を征く」

 「泣けるアルファ」はヴァルトルであり、ミッシャでもあるんだよな。
 読者みんながおそらく知りたかったであろう、ヴァルトルはいつからメソルトが母だと気付いていたのか、ヴァルトルとミッシャの子供時代、そして、ヴァルトル、ミッシャ、オルトン、カイルの四人組の友情など。読者の知りたいがここにぎゅ〜〜〜〜〜っと濃縮。はああ、読めてよかった。
 子供の人生なんて、ほんと本人の意思など及ばないところで決まってしまう。どこに住むのか、誰に育てられるのか、そして時には将来の在り方まで。そんな理不尽を受け入れるしかないのが、孤児院にいる子供たち。それでも、子供たちはそこで育っていくしかないし、しかしそこには、厳しくも優しくも、彼らを育てていくことを己の人生としている師がいて。なんなら、ネフレッドみたいな、ある意味性格破綻しているやつでも、ちゃんと自立できるように育てあげて。
 一方ヴァルトルもちょっと変わってる。瞬発的な行動力があって、リミッターが吹っ切れてる。裏表がなく、どっちかっていうと多動型。現代の小学校ならいわゆる「問題児」だけど、地頭が良いから、だんだん学習して社会に合わせることができるようになって、東大とかにいって学生起業したりするタイプだなあ。
 カイルが、おもいのほか「お兄さん」だったのも意外。確かに10代の4〜5歳の差って大きい。14歳前後のガキんちょ相手に、指導者として振る舞う青年騎士ぶりがとても格好よい。
 あと、オルトンの描かれ方も好き。社会的弱者になりがちな存在が、ミッシャやヴァルトルにさりげなく支えられて、長所も認められて、ちゃんと居場所を獲得していける、厳しい社会の中の一隅にある小さな優しい世界。世の中が、こんな優しいパーツのモザイクで出来上がっていたら良いのに、と思う。

 

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