原 題 「A Case of Possession」2017年
著 者 KJ.チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実
出 版 新書館 2023年1月
文 庫 380ページ
初 読 2023年6月26日
ISBN-10 4403560520
ISBN-13 978-4403560521
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/114550665
2巻目の表紙も、美しく、そして色気がある。
ただこの2人、本当は40cm近く身長差があるんですよ。たぶんスティーブンの頭の先が、クレーンの肩に届くくらいなのでは。絵的にはちょっと難しいかな? 話中で、体の大きなクレーンが、小柄でやせっぽちのスティーブンをすっぽり抱きすくめたり、ベッドの中で丸くなったスティーブンをクレーンが腕の中にかいこんで寝かしつけたりするのがめっぽう良いんですけどね。まあ、それはさておきましょう。
体のサイズはともかくも、一流の能力者として立派に自立しているスティーブンですが、彼自身は天涯孤独で、同じ能力者の間でも距離を置かれる存在であり、心を許せる数人の仲間の他は友と呼べる者もなく、仕事に誇りを持っているといいつつ、現実にはその仕事を失ったら生きて行く術がない、という不安定で寄る辺のない身の上。それが身に染みているからこそ、全てを持っていて、なにものも怖れないクレーンの愛を信じきることができない。そういうスティーブンの葛藤ごとまるっと包み込むクレーンの深くて真っ直ぐで強い愛情が素晴らしい。そしてその想いは抱いているだけではいけなくて、きちんと、「言葉」にして相手に率直に伝えなければならない。そんなクレーンの人間としての真っ当さ、ゆるぎなさが、この作品の芯です。
この巻ではこの2人、冒頭から恋人同士ですから、それはもう遠慮なく、愛し合ってます。私はまったく真っ当な感性の人間なので、なぜベッドの支柱に縛り付けて変態的にいたすこととが、彼の中でスティーブンを〈崇拝する〉ことにつながるのか、もうまったく理解できませんが!(ホントですよ) おまけにスティーブンはM寄りの気質があって、疲労や葛藤が深まると、恋人に乱暴に扱われたがるんですよ。本当は繊細に優しくしたいと願いながらも、そんなスティーブンの要求に激しく応えるクレーンが、それなのにとてつもなくよい男である、という点について私の脳は若干理解が追いつかない。ですけど、その倒錯っぷりを遺憾なく発揮しているクレーンが本当に紛れもない紳士なんですよ。
時は19世紀英国で、神に背く同性愛が法律上の犯罪として投獄の対象となる、彼ら性的異端者には生きにくい時代と土地柄。その英国で仕事をするスティーブンのために、自らも上海に戻らず英国に身を置き続けているクレーンを、脅迫しようとする輩が現れる。一方、ロンドンの下町、貧民街で巨大化したドブネズミが人々を襲って食い殺す事件が発生。スティーブンの能力者チームはこの事件を追っている。ドブネズミがクレーンの周辺の人物を襲うに至って、2人の関係が仲間にバレ、スティーブンはかなり恐慌状態に陥りますが、仲間達は暖かく2人を受け入れてくれて一安心。2人は協力して事件の解明に乗り出し、化けネズミを操っているのは殺されて正しく弔われずに死霊と化した上海のシャーマンであると判る。この死霊が、力の溢れるクレーンの体を欲して、乗っ取りを企み、そしてカササギ王の片割れたるスティーブンがそれを阻止する。
と、いう粗筋ですが、それよりもこれはもう全編、クレーンからスティーブンへの愛の告白です。メインはそれ。堂々たるラブロマンスでした。
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