2021年5月18日火曜日

0271 燃える男(新潮文庫)

書 名 「燃える男」 
原 題 「MAN ON FIRE」1980年
著 者 A.J.クィネル
翻訳者 大熊 栄
出 版 新潮文庫 1994年12月 
初 読 2021年5月18日 
文 庫 472ページ 
ISBN-10 410220508X 
ISBN-13 978-4102205082
新潮文庫版
 とにかく冒頭、クリーシィがボディーガードを始めるまでが長くて、耐えどころである。グィドーの過去、クリーシィの来歴、エットレの事情・・・・一向にストーリーが始まらないので、自分が何を読んでいるのか解らなくなる。しつこく細かく、耐える100P(笑)。それもこれも、クリーシィが少女と出会うまでの辛抱だ。
 そして(小さい声で言うが、)この冒頭部分については、ちょっと翻訳が硬いかなあ。直訳調というか。日本製碧緑天然真珠ってなんだろう・・・・もしかして青瑪瑙か翡翠のことか?それともブルーパールだろうか?・・・・・気になってしまって、ついつい調べてしまった。string of natural aquamarine pearls from Japan. ひょっとしてこれは、天然アクアマリンとパールのネックレス、かな。ところどころ、翻訳がすとんと自分の中に入ってこないのは、相性の問題かもしれないけど、この世に存在しない物質を創造してしまうのはいただけない。まあ、武器の詳述についてはまったく危なげないので、不得意分野ってことで深く突っ込まないことにしよう。そして、少女ピンタとクリーシィが出会えばもう!犬は正義、に継ぐ鉄板である。グレイマンとクレア、レオンとマチルダ、そしてクリーシィとピンタ!
 
こちらは集英社文庫版。中身は一緒。
やや文字が大きく読みやすい。

戦闘に明け暮れ、ついに燃え尽きてしまった傭兵が請け負った、お飾りのボディーガード。しかし、少女は賢く、生き生きとした好奇心と愛情をクリーシィに向ける。始めは子どもを扱いあぐねていた無骨なクリーシィもやがて少女に絆されて、両親が留守がちな少女のために、話相手や運動のコーチを務めるようになり、ついには運動会の付き添いまで。そして、だ。悲劇がやってくる。

 ピンタが誘拐の標的となる。身代金交渉が上手くいかず、身柄引き渡しが長引いた挙げ句に彼女は死んでしまう。
 銃撃戦で瀕死の重傷を負ったクリーシィは、復讐を誓い、衰えた体を鍛え直し、武器を手配し、マフィアに復讐をする。それも徹底的に。

 それだけなら、ただのバイオレンス小説だが、なにしろ脇を固める男達がこれまた素敵なのだ。万全のサポート体制を組んで支援する親友のグィドー、身分・容姿・財産・知性・性格と5拍子もそろったカラビニエリ大佐のサッタ(しかも料理上手の甘党)、ほとんど登場しないフランス軍将官のクリーシィのもと上官まで、なんともいえない男の世界(ロマン)である。
 完全に完璧な世界が構築されていて、私の妄想なんて入る余地がないのはやや残念ではあるのだが、それはそれとして、見事に上出来な小説世界である。
 いや、クリーシィも良い男なんだけどね。グィドーとサッタ推しです。さすがイタリア男。色男にもほどがある。
 
ちなみに、過去2回映画化されています。
1987年 エリ・ラシュギ監督 主演スコット・グレン。舞台は原作通りのイタリア。
スコット・グレンのクリーシーは、かなり格好良いです。細身の優男風で、原作の無骨な熊男クリーシィとはほぼ別人ですが。とくに前半のやさぐれたもとCIA特殊部隊員(ジョン・レノンぽい長髪、髭、眼鏡)から、追跡を開始した時の、短髪ひげなし、の変貌がカッコ良すぎる。ストーリーはシリアス度マシマシ。ラスト、お互いに生き残って少女がどれだけ心に傷を負っているのか、とか傷ついた二人がどう寄り添っていくのか、とか余韻が良い。そして、イタリアの病院が古い・汚い、でびっくりだ。


もう一本は2004年の、邦題「マイ・ボディーガード」。
主演デンゼル・ワシントン、少女役がダコタ・ファニング。こちらは、舞台を中南米に移している。結末も違う。どちらが良いかは見る人の好みで。私はこのラストは納得いかねーぜ。てか、この人質交換で許してもらえるのだろうか?
 正直、カメラワークが難ありです。変に芸術っぽく、薄暗い細切れカットやスローモーションが入り乱れて、見ていてかなり疲れました。

 

2 件のコメント:

  1. これぞ冒険小説!何十年も前に読んでクィネルをしばらく全部読んでいました、主人公の漢気が凄いという印象、また読んでみたいです~(^o^)丿(猿吉君)

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  2. 猿吉君さま、ようこそ!私はこれから初読で読める、という幸せ♪ 

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