4〜5月は、夫実家の片付け。終わってみればあっけない。小ぶりで思い出にもなるものを、すこしだけ我が家に持ち帰ったが、なんとはなしに「こんなに小さくなっちゃって」という、普通こういう場面では使わない常套句が脳裏を過る。
あと3箱、古本をクロネコさんに持ち出してもらえば、我が家の当面の片付けも終了する。
落ち込んでいた読書ペースも復活の兆し。6月も読書にいそしみたい。
読んだ本の数:8
読んだページ数:2708
ナイス数:805
線は、僕を描く (講談社文庫)の感想
探偵も警察も、拳銃も謎もスパイも犯人も出てこない小説を果たして自分は読み切れるのかと思ったが、ちゃんと読めた。良かった。著書は水墨画家でもあるとのことで、人間存在と命の本質に、水墨画を通じて刃の様に鋭く、深緑の湖水のように底知れず深く切り込んだ作品である。水墨画の奥深さに恐れ入る。一度真剣に、展覧会を見に行きたくなった。高校生で親と死別した主人公青山霜介が水墨画の巨匠である篠山湖山に出会い、半ば強引に内弟子にされる。霜介の空っぽになっていた心の中に、水に薄墨を流すように、水墨を通して万物が流れこみ始める。
読了日:05月29日 著者:砥上 裕將
ジャベリン・ゲーム サッチョウのカッコウ (ハルキ文庫 た 28-1)の感想
サクッと軽めのノリの和製エスピオナージ。日本の警察官僚が実はCIAのアセットで、密輸された盗難ジャベリンミサイルの行方を、日本の特捜のような顔しながら、実は米国の利害を背負って追いかける。しかし「母は強し」。主人公穣の母のベロニカがアッパレである。オペレータと名付けられたAIも凄い。最先端のAIがこんな感じなのだとしたら、やはりシンギュラリティは近いのかもしれない。きちんとクローハンマー作戦に落とし前がつくまで、シリーズ続いて欲しい。私の好みからするとちょっと軽すぎなのは否めないが面白かった。一気読み。
読了日:05月25日 著者:田村 和大
機捜235 (光文社文庫)の感想
《CNC - 犯罪小説クラブ(Crime Novels Club)》久しぶりの参加。初読みの今野敏さんの凸凹警察バディもの。機捜235は機動捜査隊の覆面パトのコールサイン。定年間際のロートルと突然組むことになった若手の高丸。はじめこそこんな年寄りに何ができる、と内心ぼやいていた高丸だが、見てくれこそパッとしない年長の相棒縞長(シマさん)が元「見当たり捜査官」だったと知り、その能力に感服するだけでなく、地道に動き、犯人逮捕一筋に面倒くさい組織の中を渡っていく姿に感化されていく。連作短編で読みやすく、面白い。
読了日:05月20日 著者:今野敏
スティグマータ (新潮文庫)の感想
チカのシリーズ4作目をやっと読了。ふたたびツール・ド・フランス。渡欧5年目、30歳になったチカはもうベテランの域。自分の力量と性格に合ったアシストという仕事にプライドも満足も持っているけど、自分自身の勝利を目指す伊庭やそのほかのトップたちへの羨望も心の中にはある。ツールは様々な思いや欲望が複雑に交錯する場。そこにドービングでかつて表舞台を去った墜ちたヒーローがなにがしかの思いを持って再登場してくる。選手としてもう若くはないチカの思索が中心に綴られるが、それも真っ白になるチカの真骨頂のダウンヒルが最高。
読了日:05月19日 著者:近藤 史恵
ペダリング・ハイ (小学館文庫)の感想
面白い。そして自転車が欲しくなる。とはいえド素人に本格ロードバイクは無理。せいぜい街乗り前提でクロスバイクか。いやその前に玄関放置のミニベロを整備せねば。大学進学で念願の東京一人暮らしを始めた主人公。叔父からもらったぼろ自転車の整備を頼もうと街の自転車屋に入ったのが運の尽き・・・ではなく運が付き!地元自転車レースチームの面々に取り囲まれ、あれよあれよという間に自転車レースの世界に引きずり込まれていく。自転車競技の基礎知識やら、知ってると面白くなる用語とか、戦法など満載。そして自転車を買いたくなるぞ!
読了日:05月14日 著者:高千穂 遙
悪しき正義をつかまえろ ロンドン警視庁内務監察特別捜査班 (ハーパーBOOKS)の感想
今作も隅から隅まで、エピソードがまるで英国菓子のクリスマスプディングのように混ぜ込まれてぎっしり詰め込まれている。色々と不満が無いわけじゃない。ある意味大味な作品でもあって、例えば脱獄した重犯罪人が海外逃亡して外国で死体になったら、死体の返還を求めないのだろうかとか、顔の現認ぐらいできるだろーが、とか。ヤードは退職した汚職警官から制服や通行証や身分証を返還させないのか?とか、囮捜査と隠密捜査がごっちゃになっていないかなど。そうは言っても面白いことは間違いない。
読了日:05月12日 著者:ジェフリー アーチャー
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