著 者 佐藤 さくら
出 版 東京創元社 2018年6月
文 庫 400ページ
初 読 2025年1月12日
ISBN-10 4488537057
ISBN-13 978-4488537050
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/125359050
1作目から3作目は、ラバルタ、エルミーヌそれぞれの情勢が変化するとともに、個人の内面も深化していく、それぞれの思索の過程も描かれていた。そして、この4巻ではそれらが全て一つとなって、新たな展開を迎える。
レオンは40代、ゼクスも30代となり、ずいぶん落ち着いて、エルミーヌで自分の道を見いだしている・・・・と思いきや、レオンはやっぱりぐらぐらしている。これが、著者のいう「ダメな大人」か。(笑)
しかし、生活力がないのは相変わらずだが、周りはやきもきしていても、レオン本人はマイペースで、それほど気にしていない・・・様に見えるのに、やっぱりちょっとズレたところで、自分のダメさを気にしてたりする。そんなレオンは、この巻でもあまり具体的な成果は上げない感じなのに、しっかりと大きな事態を動かしている。あいかわらず不思議で、魅力的な人物だ。ついでに、またもゼクスは師匠の行方を追いかけている。
ラバルタは、先王(アスターの父王)が死に、長兄であったオルフィリアが王となったものの病に倒れ、アスターの次兄のカイリエが実権を持っているが、カイリエはアスター憎し、魔道士憎しで戦に先走り、先も周囲も見えていない。
長引く内戦と魔道士迫害で、ラバルタの切り札でもあった『鉄の砦』は弱体化している。
長らく激しい弾圧に晒されていた魔道士は、魔道士の解放と抵抗を説くいわゆる反政府武装勢力的な新機軸『暁の光』に終結しつつある。
そのような情勢の中で、『暁の光』に所属するレオンの弟弟子のグレイは、レオンの亡き師であるセレスが研究していた禁術を最終兵器(?)として利用しようとする。
レオンはそれを阻止するために、あえてグレイと同行して姿を消し、その行方をゼクスが追い・・・・
一方のラバルタ側にも、その危険性に気付きそれを止めようとする勢力がいて。
レオン、ゼクス、アシェッド、ガトー、イーディス、ローゼルなどの動きや事態がエアレッドとマーハ砦に集約されていく流れは、一つ一つは偶然の要素が強くて、それぞれ画結び突いていく様はちょっと出来すぎな感はあるのだが、この筆者にはあまりそれを感じさせない筆力がある。むしろ、歴史はそのような偶然の集大成なのかも、と思わせられてしまう。
ある世界の、ある歴史の一部をこうして読むことができたが、本を閉じた後もそこには確かに生きている人々がいて、生活を紡いでいると思えるような。こういう読書体験はなかなかできるものではない。ただ、「面白かった」というよりはもうすこし、上質ななにかに触れた様な気のする読書だった。この物語を書き上げた佐藤さくら氏に拍手を送りたい。
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