2024年2月26日月曜日

0464 去就—隠蔽捜査6 —(新潮文庫)

書 名 「去就―隠蔽捜査6―」
著 者 今野 敏    
出 版 新潮社 単行本初版2016年7月
        文庫本初版2018年11月

初 読 2024年2月25日
ISBN-10 4101321620
ISBN-13 978-4101321622
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/119199610

 テーマはストーカー。そして竜崎の娘、美紀の彼氏もストーカー化疑惑? 美紀ちゃんは父親ににてサバサバしてるから、ウエット気味な彼氏は鬱陶しく感じてしまうのか?
 
 桶川ストーカー殺人、三鷹ストーカー殺人などの苦い経験を踏まえ、ストーカー規制法やDV防止法も制定され、警察は現在では、この手の案件には比較的迅速に対応してくれているとは思うが、この方面は日々刻々と現場の状況も変わっているのかもしれない。ストーリーは2016年時点。

 さて、冒頭より、警察庁主導のストーカー対策チームの結成に絡み、第二方面本部長が大森署に向かって不穏な圧を発している。その窓口は、損な役回りが定着している野間崎管理官。そして時を同じくして管内にストーカーによると思われる殺人および誘拐事件が発生した。犯人は猟銃と散弾を所持しているとの情報が寄せられ、大森署の指揮本部は緊迫するが、現場から上げられる一つ一つの印象が、事件の大筋とちぐはぐで。だいたいこの辺りで、ああこれは被害者側の狂言で、目的は今彼の殺害、元カレはスケープゴートだなとピンとくる。それを更に裏書きするどんでんがあるかないか、が個人的には焦眉の関心になったのだが。
 
 だがこのシリーズの肝はむしろそういったミステリー要素ではなく、あくまでも組織論と変人竜崎の正論がどこまで通用するか?にある。

 現場大好き伊丹はともかく、第二方面本部長の弓削と野真崎までやってきて、指揮本部で余計な圧を発している。どうも、現場の主導権を伊丹もしくは竜崎から奪おうとしている模様だが、竜崎が歯牙にもひっかけないあしらいで、それがかえってプライドを傷つけたものか、本格的に竜崎の追い落としにかかってくる。しかし、いかんせん、小物に過ぎる。

 弓削がイヤな奴丸出しになったおかげで、相対的に野間崎管理官が浮上したようで、なによりである。

「今回の事案に関して、何か不手際はありませんでしたか?」・・・と尋ねる副署長はいよいよ心配性の執事のようだ(笑)

「損をするぞ」と戸高をたしなめる竜崎に「それ、署長にいわれたくないですね」と返す戸高。よく言った(笑笑)

◆ 上司は選べない、という野間崎に「弓削もあれで、いいところもあるはずだ。根回しなどが必要な場合には役に立つだろう」と竜崎。それ、それくらいしか役に立たない、と行っているのと同じ・・・・いや、その根回しに失敗したの知ってるだろうに(笑笑笑)

◆ 公務員である以上、どこに異動しても力をつくすだけだ、という竜崎に対して、「おまえも署長が気に入っているんじゃないのか」「俺はどこに行ってもおなじだ」「いや間違いなく気に入っているはずだ」と伊丹。なんだかんだで性格を読んでいる。あんたたちは良い同期だ。(笑笑笑笑)

 今作、一番のお気に入りは、第二方面本部長の弓削の目の前で、野間崎に直接指示だしする竜崎(笑)。いちいち本部長にお伺いをたてなくても、君は動けるだろう?と投げかけて、

「やってみましょう。おまかせください」

 と、野間崎に言わせる竜崎は人たらしだねえ。ともかく、シリーズで初めて、野間崎管理官が格好良く見えた瞬間であった。

0 件のコメント:

コメントを投稿