2020年11月29日日曜日

デボラ・クロンビー キンケイド警視シリーズ


 ひとまず、イギリス警察の役職名メモ。イギリス警察機構の仕組みはおいおい気が向いたら整理しよう。


 Criminal Investigation Department(刑事部)所属の刑事は、階級名の前に”Detective”(=刑事)が付く。 警視正から上の階級には付かない。警視長より上は長官及び部門長で警察幹部。日本の警察の階級組織と横並びではないので、作品ごとに訳語に少々ゆらぎがあるのは否めない。リーバスの「部長刑事」は巡査部長のこと。日本語だと「部長」はずいぶんえらそうな響きがある。日本の警察の巡査部長さんがどのくらい偉いのかも、実はよく知らないのだけど、やっぱり「係長」か「主任」くらいなイメージだろうか。

 警視になりたてのダンカンがようやく取ることのできた休暇で、従兄弟に譲ってもらった田舎のホテルに滞在。なのにそこで殺人事件に遭遇してしまう。ダンカン30代半ば、バツイチ独身。美人に目がない。ちょっとやんちゃな雰囲気も。 

 ダンカンの自宅の階下に住む女性が亡くなった。ダンカンは彼女と親しくしていた。第一発見者は訪問看護師と、仕事帰りに偶然居合わせたダンカン。彼女は末期ガンで自宅で緩和ケアを受けていた。当初、死因は病死と思われたが、自殺の可能性が浮上。そして、ダンカンの勘になにかが引っかかる。 
 上司である警視監の指示で、テムズの上流に位置するテムズ・ヴァリー署管内で発見された変死体の捜査に赴くダンカン。 絞殺の跡のある水死体。地元の名家である著名な音楽家夫婦の娘は気鋭の画家であり、死んだのはその夫。ジェマも後から駆けつけて、一緒に捜査。ジェマは新しい家に転居し、気持ちもあらたに仕事に臨んでいる。そんな新生活の場に入り込むことを許されたダンカンは、ジェマと距離が縮まって嬉しそうではあるのだが。
 スコットランドヤードの警視長が自宅で撲殺された。ダンカンに急遽、捜査の指令が下るが、今、彼は大きな問題を抱えていた。ジェマとの一夜から5日。彼女に避けられている。急に休暇を取って雲隠れしてしまった彼女と連絡が取れないのだ。このままではパートナー無しで難しい捜査に出向かなければならない。やっと現れたジェマに手痛く拒絶されて、ダンカンは困惑するばかり。
 ジェマとダンカンの交際も軌道に乗ったかに見える夜半。ダンカンの部屋のソファの片側にはジェマが、反対側にはダンカンが寛ぎつつも事件の報告書を作成している。二人の間には黒猫のシド。どうやらへそ天半眼で寝ているらしい。ダンカンより先に報告書を書き終えたジェマがシドの腹をもふっている。そんなまったりとした夜に、突然の電話。電話をかけてきたのはダンカンの元妻、ヴィクトリアだった。ヴィクとの再会、彼女の死、ダンカンの息子キット(クリストファー)の存在が明かになり、シリーズは大きな転換点を迎える。

6 警視の接吻(2001年6月) Kissed a Sad Goodbye(1999年)  
7 警視の予感(2003年11月)  A Finer End(2001年)  
8 警視の不信(2005年9月) And Justice There is None(2002年)  
9 警視の週末(2007年7月) Now May You Weep(2003年)  
10  警視の孤独(2010年2月) In a Dark House(2005年)  
11  警視の覚悟(2010年10月)  Water Like a Stone(2007年)  
12  警視の偽装(2012年12月)  Where Memories Lie(2008年)  
13  警視の因縁(2015年6月) Necessary as Blood(2009年)  

 ジェマとダンカンは遂に結婚式を挙げた。それも3回も!日本流でいえば、結婚式+職場・友人向け披露宴と、親族向け披露宴ってところか。(そう考えると、珍しくもない気もする。)とにかくジェマの気の済むようにしてあげよう、というダンカンの配慮とおおらかさが感じられる。シャーロットを養子に迎えジェマが育休中であるが、すでに職場が恋しくなっている模様。ジェマ復帰後はダンカンが育休を取る予定。事件はテムズ川で起こる。ヤードの女性警部で、ボート競技の選手であるレベッカがテムズで水死する。舞台は再びヘンリー・オブ・テムズからハンブルデン・ロック(「警視の秘密」)。警察幹部による隠蔽された犯罪。ダンカンに加わる警察内部の圧力。 
  復職したジェマに替わってわって、育休中のダンカン。愛娘となったシャーロットのバギーを押してランニングし、近所のママ友グループににこやかに加わり、料理の腕も上げまくっている。その上こっそり、妻の応援。ジェマは、ダンカンとは因縁のモーラ・ベル警部補とすっかり意気投合。そしてダンカンはママ友と意気投合。いいのか?

16  警視の謀略(2020年6月) To Dwell in Darkness(2014年 )
  ダンカン警視、突然ヤードの殺人課からホルボーン署の刑事課に異動。この左遷にはどんな意味があるのか。懇意だった元上司の警視正とは連絡が取れず、不安が募る。新しい部下には「ボス」と呼んでもらえず、異動先に馴染めないフラストレーションが溜まる。慰めは子供達と心温まる家庭。二人の息子もだんだんと成長し、3歳のシャーロットはとにかく愛らしい。かつて事件を通じて知り合った人々も友人としてダンカン家を支えてくれており、そこに、猫の母子まで保護されてきて、家の中はとにかく賑やかで温かい。 そんな中、所轄のセント・パンクラス駅の構内で、爆発炎上事件が発生。当初はテロも疑われたが・・・。 なにやら、得体の知れない陰謀の気配が感じられる。ラストに衝撃の事態発生で、次巻が待たれる。最初の「休暇」刊行から20年。「休暇」では、ダンカンは自動車電話を使っていた。「謀略」ではスマホの時代。この間現実社会では20年、作中では4年。ミステリーだねえ(笑)
 
 ライアン・マーシュが殺害された光景が頭を離れず、不安が募るダンカン。そんなおり、現上司のフェイス警視正から、チャイルズ警視正が仕事に戻ってると聞かされる。ヤードにチャイルズを尋ねるも会うことができなかったが、ダンカンの携帯に見知らぬナンバーから謎のメッセージが送られてくる。
 メッセージに従ったダンカンはチャイルズと再会。チャイルズは、自分が病気で秘密裏に治療が必要だったこと、自分には敵がいて、自身がヤードを不在にする間ダンカンを守る為に、チャイルズがダンカンを見限ったように見えるように偽装したのだと明かす。チャイルズがダンカンを託したフェイス警視正はチャイルズの親友でもあった。そして、その再会の夜、チャイルズは何者かに襲われ、意識不明の重体となる。妻のジェマも、ノッティングヒルで起こった殺人事件の捜査に当たるなか、警察の暗部、誰が味方で誰が敵か判らない中で、秘密をジェマと分かち合うこともできず、ダンカンは苦悩する。

18 A Bitter Feast(2019/10) 予想タイトル「警視の午餐」 

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