2022年5月6日金曜日

0344 キャバレー (角川文庫)

書   名 「キャバレー」
著   者 栗本 薫    
出   版 角川書店 1984年12月(文庫初版)
           2000年  6月(文庫改版)
文   庫 309ページ
初   読 1985年?
再   読    2022年5月5日
ISBN-10 4894567040
ISBN-13 978-4894567047

 初読は、たぶん初版だと思われる。
 ほぼ、40年近く前じゃないか。年はとりたくないもんだ。
今にして読むと、矢代が青いったら。。。若いったら。。。ああ、若いってのは恥ずかしいものだ。
 
 「いいとこ」の坊ちゃんで、有名私立大(多分、作者と同じ早大かな。)に入り、ジャズ研でプレイするには飽き足らず、才能はあるが、ただ、流れにのってプロになるのも満足できず、大学を飛び出し場末のキャバレーで人生とジャズを修行中のサックス奏者・矢代と、強面のヤクザの代貸・滝川の束の間の邂逅。
 きらめく才能と、若さ故の向こう見ずを、まるで壊れやすい宝物のように守ろうとする滝川。場末が場末らしく、ヤクザがヤクザらしかった時代と、生の音楽。キャラクターのセリフ回しや盛り場の雰囲気なんかは、今となってはさすがに時代がかって感じるものの、矢沢の優しい息のようなフルートの音色や、震えるアルトサックスの音だけは今もって生々しい。いや、この年になって読むと、さすがに矢代の内心のポエムはかなり恥ずかしいものがあるが。

 才能を持つもの。それを開花させる力があるもの。
 小説の中でしかあり得ない出会いと、交わされる言葉。溢れ、踊り、絡む音楽。
 それを、小説として紡ぐ才能。自分が中学生くらいの頃、夢中になって読んでいた栗本薫氏の才能を、今ごろになって、惜しんでいる。

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