2022年6月11日土曜日

0352 朝日のあたる家 Ⅳ(角川ルビー文庫)

書   名 「朝日のあたる家 Ⅳ」
著   者 栗本 薫    
出   版 角川書店   1999年10月(単行本初版)/20032月(文庫初版)
文   庫 340ページ
初   読 2022年6月8日
ISBN-10 4044124205
ISBN-13 978-4044124205

 良を諦めることができない風間の狂気と、正体不明(ってか読者には分かってるけど、透が鈍すぎ)の脅迫、マスコミの悪意、良(ジョニー)の周辺の者達の敵意にだんだん追いつめられる透ちゃんが、必至で頑張る四巻目です。
 何とか話合いで乗り切ろうっていう透が甘いっちゃあ甘いが、透ちゃんは凄惨な経験を沢山してきているわりに、人間の善意を信じているっていうか、悪意の存在を信じきれていないようなところがあるので・・・・・・ってか、それが“透”っていう存在で、その存在がなければ『東京サーガ』も存在しないわけだが。

 そんな彼自身の甘さが災いして、やることなす事裏目にでるのが常な透が、本当なら島津の部屋のサボテンよろしく、ひっそりちんまりじっとしている方がよほど似合っているわれらが透ちゃんが、もう無理!オレには無理!と内心悲鳴をあげながら、可愛い良のために、しゃかりきにがんばる、だけど力及ばない。しかし、普段はめっぽう非力なのに、良に対してはリードしたり、ヤれる男ぶったり、社会常識をちらつかせたり、となんだか一生懸命さが甘酸っぱい。


 よかれと思って、風間と良の話し合いの場を設けたものの、良は猛然と風間を挑発し、煽られて暴走した風間が良の首を絞める。ひた隠しにしてきた破綻が、ついに衆目に晒されることとなり、風間は逮捕、良は入院、そして記者連中に取り囲まれた透はやむなく記者会見に臨むことになり。
 これまでも何度もそういう場で滅多打ちにされてきた透は、そこそこうまく対処したように思えるけど、結局は記者連中に煽られ、中傷されて、記者会見で事態を収拾することはできなかった。そこに接近してきたのが、野々村とも通じているスクープ記者で、この男は朝倉樹三郎の政界汚職事件の調査の突破口を求めていた。透はこの男に朝倉雪子の結婚の真相を教えられ、雪子とつなぎをつけてくれれば、良と透に都合のよいように、記事を出してやる、と。・・・こんなオイシイ伏線を置いたのに、まったく回収に訪れなかった栗本薫は、己の不覚を深く恥じるがよい!(駄洒落ではない。)

 透は、誰かを頼んだり利用したり、ってことがまったく考え及ばないお人好しなんで仕方ないが、この記者会見、野々村に事前に頼んでムラさんの手の者を数人送り込んでもらうだけでだいぶ状況をコントロールできたのになあ、と思うと、残念である。

 透が必死で防波堤になるべく頑張っている一方で、考える時間だけはたくさんあった良も、一人で一生懸命考えました。基本がお姫様体質なので、こうと決めたらそりゃあ頑固。
 透が好きだもん。透はオレのアイドルだったんだもん。もん。もん。って小学生かよ、なワガママっぷりで、プロダクションの社長沢野を翻弄する。沢野の怒りは透に向かい、逃亡して透とSEXすることで頭がいっぱいの良に、もはや透は抵抗できず、やむを得ず良を連れて駆け落ち、愛の逃避行と相成りました。
 だがしかし、日頃出不精な透と、一般社会常識皆無の良の組み合わせ、なので逃避行そのものも地味。結局、巽さんに一度つれてってもらった思い出の横浜のニュー・グランド・ホテルにチェックイン。(いや、ホテル名書いてなかったけど、そうだろ?)そして次の行き先は熱海に行きたい!とな。天下のスターが、熱海に温泉旅行にすら行けなかったのかと思うと、それはそれで哀れである。

 そして透は、良の精神的健康をとりもどすべく、本来の健康な人間の性の営みってやつを、良に取り戻してやりたい、とついにSEXを敢行。というか、一昼夜、やりまくりました。


 個人的には、風間が発狂寸前で透に縋ってきたときに、透が思わず風間に同情して、風間と寝てたりしたら(シモな表現だが抜いてやってたら、さ)、案外風間も憑きものが落ちて収まったりしたんじゃ、と脳内パラレル、というか二次方向の妄想をしたりもしたが、そうなると、後で良、風間、島津、透の恐るべき四角関係が出現するのか、そりゃあムリだな。とか考えたり。

 良のプロダクションの沢野が透に感謝したり、怒ったり。まあ、他人というものは身勝手なもの。トミーのレックス時代のご乱行は、そうとう酷かったんだろうなぁ、と思いつつも、実はレックスの興行を獲るために、プロダクションが陰で透を売ってたりもしただろうと想像する。あの当時のトミーにもっと気配りをしてくれる周囲の人間がいたならば、透はどれほど生きやすかっただろうか、なんてことも考えたり。人生は思うに任せないもの、を地で行く哀れな透ちゃんと、ほとんど動物的な勘と生命力で生き抜くことを欲する良はこれからどうなる、で遂にあとラス1、です。


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