原 題 「A Danderous Thing」2007年
著 者 ジョシュ・ラニヨン
翻 訳 者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 (モノクローム・ロマンス文庫) 2013年12月
文 庫 383ページ
初 読 2022年2月16日
ISBN-10 4403560164
ISBN-13 978-4403560163
アドリアンと特別な関係になろうとしたものの、キスしようとしただけで“小学生化”?するジェイク。ホモフォビアを地で行く強面の刑事ジェイク・リオーダンは、自分の性向に直面出来ず、強烈な自己嫌悪で身動きが出来ない模様。ジェイクへの思いを自覚するにつれ、自分もジェイクが嫌悪するホモセクシャルであること、ジェイクとは未来が描けないことをアドリアンは思わざるを得ない。
そして、思わず逃避した先は、懐かしい父方の祖母から相続した牧場だった。しかし、そこで彼を待っていたのは、行方知れずの死体と大麻畑とガラガラヘビ・・・・・・そしてライフルによる狙撃だった?!
ところが、殴られて意識不明になったアドリアンの元に駆けつけたリオーダンは、知人友人だれもいない環境で解放されたか、アドリアンと遂に関係を結ぶに到る。なるほど、ジェイクが長年着込んできた偽装を解くには、ロスを遠く離れる必要があったわけだ。それに心拍の乱れた恋人も。
でもって、この、リオーダンとアドリアンが良いのだ。
リオーダンが頭を殴られて怪我を負ったアドリアンにゆっくりと背中にマッサージを施す。アドリアンの心身を溶かすような穏やかで優しいキス。ジョシュ・ラニヨンの描く恋愛はどうしてこんなに優しく温かいのだろうか。その道の趣味人を喜ばせるための性描写ではない。本物の真剣な恋愛ならばきっとこんななのだろう、と信じさせてくれるような、なんだか羨ましいような・・・・・
そして、作者がミステリーに注ぐ愛も本物。登場するミステリ作品をいちいち全部調べたくなる。
コーネル・ウールリッチの『黒衣の花嫁』。それも初版。この一冊だけでも希少本として価値がある。
ガラス扉を開け、身をのり出した。ミステリだ──棚の端から端まで、ミステリの本が詰まっていた。
ふうっと、長い息をついていた。ペーパーバック、ハードカバー。アガサ・クリスティからレイモンド・チャンドラーまで。古き良き時代の傑作ぞろいだ。ダシール・ハメット、ジョセフィン・テイ、レックス・スタウト、ナイオ・マーシュ──我が愛しのレスリー・フォードの作品も数冊。『宝島』の主人公が海賊の黄金を発見した時だって、今の僕ほど興奮しなかったに違いない。何冊かゴシックロマンスの本も混ざっていたが、祖母は全体としてハードボイルド系に傾倒していたようだった。勿論、ゲイミステリは一冊もない。ゲイの探偵が出てくる一般のミステリは、一九七〇年、ジョゼフ・ハンセンによる『闇に消える』から始まる。ベストセラーリストには縁がなかったにしても、彼のブランドステッターシリーズが後に続く僕らの道標となったのだ。−−−−−−
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