2017年1月2日月曜日

0018 彼の歌の示す処(はるこん・SF・シリーズ)

書 名 「彼の歌の示す処(はるこん・SF・シリーズ)」 
著 者 アン・レッキー 
翻訳者 環 望
出 版 はるこん 1916年4月

 とりあえず挿し絵は無い方が良かった。
★「ヘスペリアに栄光あれ」異世界転生モノっぽいSF。ヘスペリアは火星にあった王国らしい。ヘスペリアの王子が反逆者に一矢報いるため反逆者の過去に干渉しようとする。だが恐らくその行為が禁忌に触れ、火星の文明は砂塵と帰す。火星の太陽光でどうやって緑の植物が育つのかとか考えちゃ駄目。短篇なんだから色々と大目にみましょうね、という作品。
★「沼地の神々」 これは短篇にも関わらず随分と読み応えがある。村の沼地に住む比較的若い神々と偶然地表に出ちゃった太古の強大な神々の話。人間は神々と契約し、神々は契約相手の人間を害さないように慎重に振舞っている。そんな神々と上手に付き合って難局を切り抜ける女の子。神々の設定が全てなんだけど、多くを説明してないのにちゃんと理解させる所に著者の巧さを感じる。
★「彼の歌の示す処」 地球の先住種族が火星を目指すお話。野生と科学技術がどうやって共存しているのかちょっと不思議。彼らが火星に辿り着いて文明を築いていたら?

2016年12月31日土曜日

0015-17 マルドゥック・スクランブル

書 名 「マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕」
    「 マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion〔完全版〕」
    「マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕」
著 者 冲方 丁 
出 版 ハヤカワ文庫 2010年10月

2016年12月30日金曜日

0014 司政官 全短編

書 名 「司政官 全短編」 
著 者 眉村 卓 
出 版 創元SF文庫 2008年1月 

  Kindleで読み始め後から文庫を入手したらびっくりな厚さ。本の厚さを感じさせないくらい引き込まれた。
 歴代の司政官の苦悩、孤独、焦燥、決断がテーマなので、物語的にはこれからだよね、というところでブッツリお話が終わってしまったりする。(余韻がある、ともいえる。)
 主人公は全員ストイックで有能な官僚。ある意味直線的な生き方しかできない。ラストに登場する女性の巡察官が「逃げればいい」と言い放っても、それを受け入れるなんて無理無理!
 組織や制度と自分を同一視してそれを体現しようと孤軍奮闘する主人公達が哀しい。
 私は制度設計とか、組織構成がどうしても気になってしまって、司政官制度には構造的欠陥があるよな〜、と思ってしまうところがやや残念なところではある。お話としては「長い暁」と「扉のひらくとき」が好き。

「司政官としての全権限と全責任において命令する」

 組織の末端ともいえる立場ではあるけど、重い責務があり、果たすべき責任がある。その決断に幸いあれかし、と願う。

2016年12月23日金曜日

0013 放課後地球防衛軍(1)なぞの転校生

書 名 「放課後地球防衛軍(1)なぞの転校生」 
著 者 笹本 祐一 
出 版 ハヤカワ文庫 2016年11月

 まだまだ導入部。一冊読んで何も始まっていない。「星のダンス」くらいポンポン話が転がっていくくらいのテンポ感の方が好きだなあ。
 でも星雲賞を狙う勢いで書くそうなので、期待して続刊を待ちます。こういう自分の隣に宇宙がありそうなこの作家さんのSFは好きです。自分の町の漁協とか農協に地球防衛軍の支部とかあって、リアルタイムでSFしたいな〜と思う。

2016年12月15日木曜日

0011-12 コフィン・ダンサー

書 名 「コフィン・ダンサー 上」「コフィン・ダンサー 下」
著 者 ジェフリー・ディーヴァー 
翻訳者 池田真紀子氏 
出 版 文春文庫 2003年5月

ディーバーに慣れたのか、こちらの方が前作よりも真っ当な(笑)推理小説だったからか?最後まで安心して楽しめた。オマケに話中で心に傷を負ったサックスもベルもちゃんと救済する親切設計。ラスト、黒幕を撃ったのは誰なんだ!まさかトム?カッコ良すぎじゃないか!と一瞬勝手にときめいてしまってから、ベルさんだと判り、そりゃそうだよなと納得したり。最後の最後までどんでん返しを堪能した。それにしてもライム。恋多き男だねえ。

2016年12月14日水曜日

0009-10 ボーン・コレクター 上・下

書 名 「ボーン・コレクター 上」「ボーン・コレクター 下」
著 者 ジェフリー・ディーヴァー 
翻訳者 池田真紀子
出 版 文春文庫 2003年5月

 究極の安楽椅子探偵。ライムのひねくれ具合に魅了されてしまった。こんなのが現実に自分の隣にいたら耐えがたいかもしれないと思うのだけど、それでも誠実で(ある意味)素直な人だと思えてしまうところが、小説だなあ、と。「ボーンコレクター」という名前が唐突に出てきたのには若干驚いた。唐突すぎない?もっと骨のネタを積み重ねて、ライムか捜査班が命名するものとばかり思っていたよ。登場人物皆々、キャラが立っていて素敵。一番のお気に入りは、クーバーとドビンズだな。ライムへのさりげない気遣いや優しさがしみる。
ラスト、まさかの肉弾戦に笑ってしまう。真犯人はこいつだったのか〜!とかの驚きよりもただただライムの顎の強さに唖然(笑)。これだけ緻密にストーリー組み立ててきて、最後の最後に考察も検証も投げ捨てる展開の思い切りの良さに、その衝撃も込みで感服した。ライムの歯が折れないで良かった。ライムとサックスの未来に幸多からんことを!

2016年12月7日水曜日

0008 殺し屋を殺せ

書 名 「殺し屋を殺せ」 
著 者 クリス・ホルム 
翻訳者 田口俊樹 
出 版 早川書房 2016年11月

 凝った設定と緻密な描写だけで、最後まで持って行った感じ。
 3人の殺し屋とFBIが、なんの絡みもひねりもなく一点を目指して突進し4者激突大破!というか。終盤はスピード感があって一気によめたが、設定が凝ってる割に人物像が単純で、特に主人公、心に傷を負った元特殊部隊、とかいいつつ純朴で単純で健康なアメリカ男そのものだ。それにチャーリーの取って付けたようなレズ描写って必要なんだろうか?
 お気に入りのレスターとガーフィールドはあっさり殺されちゃって残念である。でも派手で映像化向きだと思う。それを意識して書いてるんだろうな、とも感じる。映画化されたら見ると思う。ってか、第二作があるのか。これ。
 ヘンドリクスはレスターがいないと何もできないんじゃなかろうか?と妙に心配になる。次作では、もうちょっと屈折して渋い男になってくれることを期待する。(多分無理だと思う。)

 彼を、世界(?)四大殺し屋に数えてあげるべきかでは、意見の分かれるところ。グレイマンほどの、どんな危機も何とか乗り越える驚異の戦闘能力があるわけではなく、ヴィクターの偏執狂的周到さがあるわけでもなく、ケラーさんの訳のわからん破壊力があるわけでもない。どことなく普通の人っぽいんだよな、ヘンドリクスは。

 読み友さんの分類によれば、ケラーのほんわか系ではなく、ヴィクターのクールストイック系でもなく、グレイマンのお人好し系とのこと。お人好しに関しても、グレイマンほど底が抜けてない。もう少しがんばりましょう的な愛されキャラ?

2016年11月14日月曜日

0006-7 パードレはそこにいる上・下

書 名 「パードレはそこにいる 上」「パードレはそこにいる 下」 
著 者 サンドローネ・ダツィエーリ
翻訳者 清水 由貴子 
出 版 早川書房 2016年9月



 イタリア警察ものを読むのは初めて。捜査と治安警察?なのかな、警察機構が二重になっていたり、大卒者はみな「ドクター」敬称だったり、これまで知らなかったイタリアのあれこれも不思議に思いつつ、引き込まれて一気に読了した。かつての幼児誘拐と監禁、虐待の被害者であるダンテと、テロの犠牲となった女性警官が、あらたに起こった幼児誘拐事件を追っていく。どこか身近に「パードレ」がいる。イタリア警察小説を読むのは初めてだけど、主人公を痛めつけるのに容赦ない。途中で突然大きくなる風呂敷。その後一気に畳みに来る怒涛の終盤。イヤなヤツが良い奴に転じる爽快感。惜しむらくはパードレが誰か途中で気づいちゃったこと。そして衝撃の最後の一行。ツライ。これで終わるのは辛すぎる。せめて最後はもっとCCとダンテに甘くイチャイチャして欲しかった。何はともあれ、面白かった。 

2016年10月31日月曜日

0005 星群艦隊(ラドチ戦記三部作3)

書 名 「星群艦隊」
原 題 「Ancillary Marcy」2015年
著 者 アン・レッキー 
翻訳者 赤尾秀子氏 
出 版 創元SF文庫 2016年10月

 タイトル詐欺は翻訳モノの宿命なのか?艦隊らしきものも、星群らしきものも思いあたらないが、なんとか四字熟語に収めようとしたためだろうか?
 さて、残念ながら三部作もこれで完。
 終盤の人を食ったようなブレクの軽やかさが、これまでとは印象が違って感慨深い。今回、ブレクは受難である。しかし頑固者のブレクが変わって行くためには、このような出来事が必要だったのか。
 ブレクを慰めたい余り添い寝を敢行する(させる)〈カルル〉のズレっぷりも、それに乗じて重傷を負ったブレクの病床に潜り込むセイヴァーデンも如何とは思うが、それでも淡々と話が進んでいくのがこの世界の不思議といえば不思議かもしれない。
 ブレク視点だから致し方ないとはいえ、どうやって《グラッドの剣》をティサルワットは籠絡したのか、その辺りも読めたらうれしかった。
 翻訳はもう一息頑張って欲しいと思う。特にブレクの負傷を契機に物語が大きく転換する9章は、人物の心理を踏まえてもうすこし緻密に訳してほしかった。細かいニュアンスを訳し飛ばしてるので、ブレクの感情が追いにくいし、セイヴァーデンが《カルルの慈》の言いたいことは半日で分かった、と言ってるけど、私には邦訳ではさっぱりわからなかった。「きょとんとした」なんて訳が二カ所も出てくるけどそうじゃな
い!
 訳者の語彙不足なのだろうか?原作が良いだけに、残念でならない。それにしても、兵員母艦だった頃のブレク(1エスク)、本体を失ったあと必死で生き抜いてきたブレク、カルルの慈やその乗員としっかり気持ちが結びついてからのブレク、とすこしづつ行動や性格が変化してくるのがまた愛おしい。

2016年10月2日日曜日

0004 亡霊星域(ラドチ戦記三部作2)

書 名 「亡霊星域」
原 題 「Ancillary Sword」2014年
著 者 アン・レッキー 
翻訳者 赤尾秀子氏 
出 版 創元SF文庫 2016年4月

 艦隊司令官を拝命し自艦を得て出立するブレク。
 オーン副官の妹との絡みで、自分の失ったものを直視することにもなり苦しむ。
 自艦となった《カルルの慈》との接続により、20年来得られなかった安心を得て心地よさを味わう一方で、艦と情報をやり取りするたびに「これじゃない感」も蓄積していく。かなりストレスフルで可哀想な状況だが、そこは根が生真面目なAIなので、淡々と自分のなすべきことをなしていく。
 この巻から登場するティサルワットとの関係は重要であるが、感情表現が不得手なAIの一人称で物語が進むので、ブレクのティサルワットに向けた気持ちは今一つ見えてこない。

 それが一気に明らかになるのが終盤、ブレクがティサルワットの肩を抱くシーンである。
「大丈夫だ、なんとかなる」
 原文は“It’s all right.It’ll be all right.”で、これは第一部の『叛逆航路』でオーン副官が接続されたばかりの分躯(後のブレク)を抱いて語りかけたのと同じ言葉なのだ。
 ブレクはオーン副官から与えられた大切な言葉を、共感や同情を込めて不運な部下に与えている。これは原文を確かめないと、なかなか分からないところ。
 それと分かるように訳して欲しかったなあ、といささか残念に思うのだが、第一巻で翻訳されているときには、この台詞が後々こういう使い方をされるとは思わないだろうから、翻訳のツライところなのかもしれない。

 何回目かの再読では、カルルの慈の情緒に焦点を合わせて読んでみる。
 ブレクは艦は乗員の思考までは読めないと言っているが、少なくとも《慈》とブレクは特別な繋がりがあり、《慈》はブレクの思考をトレース出来ていると思われる。しかし殊更それを表明したりしない所がいかにもラドチの艦船らしい。
 《慈》は自分の愛する艦長が逮捕処刑されるに及んで、次の艦長には決して暴君の思惑で易々と殺されたりしない艦長を望んだのかもしれない。
 とはいえブレクの痛み、カルルの慈との接続が契機となってブレクの心の生傷から瘡蓋が剥がれてしまったのは想定外だったのではないだろうか?
 ブレクに情報を送るたびに、肯定と「これじゃない」という相反する反応が嫌でも感じとられて慈の気持ちはさぞかし複雑だったと思う。でもすでにブレクを艦長として愛する気持ちになっている慈の、ブレクを慰めたい試行錯誤は涙ぐましくもあるのだ。ブレクがかつての自分を想って喪失感を感じれば、自分の艦内の映像を見せて”貴方の今の居場所はここですよ”と無言でアピールしたり、人間の乗員を使って抱擁してみたり。だけど自分のことで結構一杯々々のブレクは慈の気持ちには鈍感。さてどうなる?というところで第三部へ(笑)