2024年11月10日日曜日

0520 あなたの糧になりたい (ディアプラス文庫)

書 名 「あなたの糧になりたい」
著 者 仁茂田 もに      
出 版 新書館 2024年11月
文 庫 240ページ
初 読 2024年11月10日
ISBN-10 4403526136
ISBN-13 978-4403526138
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/124161855

 比較的最近になってBLを読み出してから、作品を求めてpixivなども読み漁り、オメガバースとかDOM/SUBなんて世界観が生まれていることも知った。最初はこういう「枠組み」に違和感を感じたんだけど、慣れるに従って、考えて見れば、架空の生き物であるドラゴンがいるファンタジー世界なんかも、大勢の創作者や読者で世界観を共有して、素晴らしいファンタジー作品からどうでもいい駄作や、はたまた二次創作まで展開されているわけだから、BLというジャンルでそのような架空の世界観を共有することだってアリだろう、と考えるに至った。
 最初は、♂と♂がSEXするためのただの装置じゃないか、と眇で眺めていたのだが、いったんそういう世界観が構築されると、そこにジェンダーが生まれ、それ故の悩みや葛藤や悲劇も生まれ、つまりは物語が生まれるのだ。物語あるところに、良い小説もまたあるんだな。

 仁茂田もにさんは、そういった良い小説を生み出す作家さんだ、と私が思うおひとりである。たまたまAmazonで偶然作品を知り、もにさんの作品を求めてアルファポリスにも読みに行った。どれもすごく良い。BLってところは共通項だが、それ以外ではキャラクターや時代や設定もさまざまで、それぞれに面白く、読ませて、読んでいるこちらの気持ちも動く。
 で、この作品『あなたの糧になりたい』は、つい最近までアルファポリスで公開されていたので、そちらで一度読了している。
 このお話は、オメガバースBLとしてはちょっと異色だと思った。
 尽くすオメガに溺愛アルファって書けばありがちに聞こえるいが、アルファが売れない画家で、オメガのヒモ(言葉が悪いね。スマン)ってところがすごく新鮮だ。
 喪失の絶望すら絵の糧になることを願う主人公の律の我の強さも異色っちゃあ異色。運命の番を歯牙にもかけないところも面白い。
 絵を通してしかコミュニケート出来ていなかった人間関係が不得手の二人が、お互いを失った長い時間を経て、やっと愛を知り、お互いに向き合うことを学んだ。・・・そして二人は幸せになりました。リアルなような童話のような、普通の恋愛小説と何がちがうっていったら、そりゃ、SEX描写ががっつり入っていることだけど、それはなんか、私にとってはそれほど大きな事じゃないような気がするんだよね。気持ちがリアルかどうか、そこがポイントなんだと思う。何はともあれ、仁茂田もにさんは良いです。他の作品もぜひ、商業化して出版してほしいな。



2024年11月4日月曜日

0518〜19 アルフォンス・ミュシャ展(府中市美術館)で収穫



 文化の日だから、というわけではなく、魂の洗濯の必要性に迫られたので、府中市美術館で開催中の「アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界」展にいって来ました。 
 先日『かわいい江戸絵画』という図録を購入したときに、思ったのですよ。府中市美術館、優れているな、と。きっと、すごく良い、キュレーターさんがいるのだと思う。
 今回のミュシャ展にも、すごく熱量があって、なおかつすっきりと読みやすい、素晴らしい解説が表示されていました。分量的にも丁度良いかな。これ以上のボリュームだと、疲れて集中できなくなりそう。
 知らなかったミュシャの人生についてや、表現のアレコレについてもすこし知識を増やして帰ってきました。
 ミュッシャ後年の大作、スラブ叙事詩はどこに? と思って調べてみたら、2026年にプラハに『スラブ叙事詩』を恒久展示するための施設が建設されるそうです。美術館、というよりも複合施設っぽいデザインのようですが、いつかぜひ見に行けたら、と思います。
 
 かねてから入手したいと思っていた画集2冊も購入。

0518 ミュシャ作品集 増補改訂
書 名 「ミュシャ作品集 増補改訂版」
出 版 東京美術  2022年4月
大型本  21.1 x 1.5 x 29.7 cm 224ページ
初 読 2024年11月4日
ISBN-10  4808712350
ISBN-13  978-4808712358
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/123267240


 とにかく美しいの一言に尽きる。フランスで才能を発揮し、祖国チェコの独立を支持し、チェコスロヴァキア独立後は、祖国で制作活動に従事したミュシャ。展覧会では観ること叶わなかった壮大なスラブ叙事詩も収録されている。






0519 ミュシャ装飾デザイン集 増補改訂版
書 名 「ミュシャ装飾デザイン集 増補改訂版」
出 版 東京美術  2021年12月
大型本  21.1 x 1.5 x 29.7 cm 191ページ
初 読 2024年11月4日
ISBN-10  4808712342
ISBN-13  978-4808712341
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/124052008

 ミュシャは何冊かのデザイン教本も作成しており、それらも収録されている。デフォルメされた植物モチーフのボーダーやフレームも、繊細かつ正確なデッサンから生み出されているのだ、と納得。


0517 赤レンガの御庭番(エージェント)

書 名 「赤レンガの御庭番」
著 者 三木 笙子         
出 版 講談社 2019年2月
文 庫 256ページ
初 読 2024年11月2日
ISBN-10 4065147050
ISBN-13 978-4065147054
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123992103

 9月からこっち、ずっと読んできた三木笙子さんの本は実は既読本だったのだけど、これは初読。とても面白かったです。
 舞台は帝都探偵絵巻と同じころかな?と思える明治後期。
 徳川吉宗の代から続く御庭番の家系出身の義母がいる家に引き取られて育った入江明彦は、アメリカに留学し、勉強はそっちのけで本場の探偵術を身に付けて帰国。血のつながりはないとはいえ子供の頃から可愛がってくれた叔父が税関長を務める横濱で探偵事務所を開く。
 開港以来発展を続ける港湾都市横濱の異国情緒ある風情と、港湾労働者は威勢良く、町に暮らす人々にはすこし首都から離れたのんびりとした港町の気風が漂う空気感が何やら懐かしい。しかし、繁栄あるところには陰もある。港町の裏に跋扈する犯罪組織と、陰のある美しい女もとい青年。そして明彦に従卒のごとくかしづく文弥少年、逗留先のホテルオーナーでお喋りで世話好きな夫人。
 主人公の明彦の性格がとても良い。その育ちからして決して明るいだけではないのだが、どこか突き抜けているところが、これまでに読んだ三木さんの本の主人公達とはひと味違う。軽妙洒脱ながら情に深いが、流されない。明彦と文弥、これまた陰を背負わずにはいられない生い立ちのミツの会話もテンポが良くて楽しい。私が横浜びいきだというのもあるかもしれないが、これまでの作品とはちょっと味わいが違って、楽しく読書した。

第一話 不老不死の霊薬 
 横浜に不老不死の薬を売る者がいる。無論本物であるわけがない。犯罪の気配がするが、その「不老不死薬」の顧客がやんごとなき御婦人方であるらしく、警察沙汰にしたくない。そこで叔父から明彦に仕事が回ってくる。西洋美顔術と横浜で顔と名前の知られた西洋人医師、そして謎の「美女」ミツもからむ。鏡のエピソードなんかはちょっと生煮え感があるような気もしたが、なかなか展開が読めなくておもしろかった。

第二話 皇太子の切手 
 「ブルー・モーリシャス」と言われるコレクター垂涎の稀少切手が貼られた手紙を所持していた外国人夫妻の家が火事になり、「ぶるー・モーリシャス」もろとも失われる。失意の夫妻だが、実は保険金詐欺?
 その裏に見え隠れする、犯罪指南役の結社「灯台」。明かされるミツの出生。切手にまつわる犯罪はわりあい、筋が読みやすかった。ミツとの距離もすこし縮まったかな。

第三話 港の青年 
 「港の青年」と銘打った演劇が横濱の女性達のハートと捉える。今で言う「推し」というか。そこに、演劇のモデルとなった男を捜して横濱にやってきた男の妹が登場。港町は彼女の兄を探す手伝いをしようと、騒然となる。だがしかし、実は演劇の台本は、完全なる創作だった。陰に見え隠れするのは「灯台」の存在。派手な「兄捜し」の真の目的はなにか?

第四話 My Heart Will Go On
 今や「灯台」潰しの尖兵であることが明白になっている明彦の周りが物騒になってくる。文弥は階段から転落して大怪我。ミツも税関長である叔父も、身動きがとれなくなる。ついに「灯台」の首領との一騎打ちを覚悟した明彦であるが、その首領は意外なところにいた・・・・。ここで終わってしまうのは勿体ないキャラ立て、舞台立てだが、こういうところ、三木さんて惜しげがないというか、思い切りがいいというか。

 ここから、キャラクターの関係性を深めていって欲しい、とつい思ってしまうが、そこを余韻にして話が終わるのは、三木笙子さんらしくもある。なんにせよ、私はこのお話、とても好きだった。

2024年11月2日土曜日

2024年10月の読書メーター

 ここに読了登録した本の他に、仁茂田もにさんのKindle本数冊と、アルファポリスで公開されているBL小説を読み漁りました。
 仁茂田もにさん、好きだわ。それぞれの作品毎にキャラが立っていて、ストーリーテラーの才がある。文章が上手い。ネット小説なので、誤字脱字はご愛敬かな。書籍化されるあかつきにはきちんと校正するといいんじゃないかな。これからも追いかけよう。


10月の読書メーター
読んだ本の数:26
読んだページ数:4533
ナイス数:999

水の都 黄金の国水の都 黄金の国感想
舞台は明治期のヴェネツィア。異国情緒溢れる街に住む日本人とその友の、どこか不思議な雰囲気もあるバディもの。三木笙子さんのお話はどれもブロマンスってほど濃くはない。しかし真情に溢れてる。ヴェネツィアという街の成り立ち、ヴェネツィア出身の冒険家マルコポーロが残した伝説。そういったものを絡めながら、真面目に真っ直ぐに、人のために生きてヴェネツィアで死んだ青年清人と、その友人の誠次郎、イタリア人青年ルカの友情をベースに、物語が進む。事件そのものよりも、それに絡む人の心の物語だ。そして著者の思いも零れる。
読了日:10月28日 著者:三木 笙子

金木犀二十四区金木犀二十四区感想
金木犀二十四区、隕石、天狗、山伏そして『靡』(なびき)。不思議ですこし不穏な世界観の中で紡がれるのは、人の優しさや切なさや、静かでたおやかな強さ。金木犀の香りが漂い始めた朝に読み始め、散る前に読み終えることが出来た。読む人によって好みは分かれるかもしれないが、三木笙子さんらしくて、私は好きな一冊。
読了日:10月19日 著者:三木 笙子


怪盗ロータス綺譚怪盗ロータス綺譚感想
手玉に取られる者の側の視点がなかなかに面白い。一番良かったのは、「埋める者 暴く者」。状況をコントロールしているつもりがいつの間にかコントロールされ、のっぴきならない状況に追い込まれるのは、『注文の多い料理店』を読んでいるみたいな面白さだった。そのほかの話もそれぞれに面白い。なにより、省吾が元気で過ごしているのが良い。彼のことは心配してたんだよ。若干の不安や鬱屈はありそうだけど、私の想像以上に蓮とともに、うまくやっているようで安心した。
読了日:10月13日 著者:三木 笙子

Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない2 (アンダルシュノベルズ)
Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない2 (アンダルシュノベルズ)感想
2巻は、アロイスとリリエルの恋模様も絡めつつクライマックスになだれ込んでいく。上巻はユーリス視点だったが、下巻はギルベルト視点で、上巻でユーリス視点で語られた過去の出来事が再演される。この手の創作小説で人物視点をコロコロ変える手法は、安直だなーと思っていたが、ここまで丁寧に描き込むとそれも面白いと思えるんだな、発見した。そうだよね、他人の思惑なんて実際判らないし、人間関係って誤解だらけだよね。となんだか納得感がある。一つも結婚話が来ないのは自分に魅力がないからと思い込んでいたユーリスが絶対に一番の被害者。
読了日:10月25日 著者:仁茂田もに

とびはち作品集 にこげのつどいとびはち作品集 にこげのつどい感想
そしてこれが現代の「カワイイ」だ!ってのは冗談としても、「かわいい江戸絵画」につながるものがあるよな、と思いながら頁をめくる。も、『足軽雀』が最っ高にかわいい。昔、自分も絵を描いていた頃があったので、いまだにこういう素敵な絵を見ると、いいな〜。私も描きたいな〜。とほんの少し思う。今更ではあるが、人生の中でどういう選択枝を選んできたらこういう道に到達できたんだろうかなあ、と、ほんのちょっとうらやましい。まあ、今は鑑賞専門よ!そのうちもう少し時間ができたら、絵の具箱を開けようぞ。
読了日:10月26日 著者:とびはち

かわいい江戸絵画かわいい江戸絵画感想
こんな表紙の本がビニールカバーの中に入ってたら、中が見たくなるじゃないか!世界に誇る日本のKAWAIIの源流は江戸にあり?もともと気恥ずかしい、面はゆいといった意味だった「かわゆし」が現代にも通じる「かわいい」の意になったのは江戸時代頃からとのこと。本の中身は、真面目な日本画と文化史。府中市美術館の特別展で人気を博し売り切れた図録が書籍化されたとのこと。波津彬子さんの「雨柳堂夢噺」に登場する子犬はデフォルメされすぎだよな、と思っていたが、円山応挙が本家なのね!
読了日:10月26日 著者:

配色事典―大正・昭和の色彩ノート (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)配色事典―大正・昭和の色彩ノート (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)感想
昭和8〜9年に刊行された『配色總鑑』が新装・改訂版として復刻されたもの。手軽な文庫本サイズなのに、色彩の組み合わせや色見本がぎっしり。色の和名が美しい。大正・昭和の色彩となっているけど、もちろん現代に通用する。明暗、補色の組み合わせ。大きな面で組み合わせる(例えばセーターとスカート)のも、小物合わせの参考にも。4色配色は、着物、帯、半襟、帯締め、帯揚げの組み合わせにも、大いに参考になる。なにより楽しい!
読了日:10月26日 著者:和田 三造

エドワード・ホッパー作品集エドワード・ホッパー作品集感想
翻訳ミステリー読みなら外せないエドワード・ホッパー。ボッシュの家に、そして殺し屋ケラーさんの家に、飾ってあるのが『夜更かしの人々』ナイトホークス。やっぱり良い。女連れの男に移入するか、少し離れた所に座る独りの男に人生を重ねて観るのか。ケラーさんなら後者、ボッシュはどっちだろう。
読了日:10月18日 著者:江崎聡子

ヴィルヘルム・ハマスホイ 静寂の詩人 (ToBi selection)ヴィルヘルム・ハマスホイ 静寂の詩人 (ToBi selection)感想
ワイエスの画集をAmazonで探していたら、ハマスホイも一緒に紹介されました。確かに白と明暗が基調の作風は似ているかも。しかし、空気感は全然違う。静寂の詩人、とはなるほど、と思うが、しかし、厳しくはない。ほのかな温かみのある室内の空気感。ワイエスよりもむしろ、ハマスホイの方が人間的な温かみを感じる気がするのは、たぶん、ハマスホイの人や物事を見る視線が穏やかで優しいからだろう。ワイエスがそうでないとは言わないけど、ワイエスには独特の厳しさがあるので。
読了日:10月10日 著者:萬屋 健司

アンドリュー・ワイエス作品集アンドリュー・ワイエス作品集感想
前から気になっていたワイエス。モノトーンの風景画の人だと勝手に思っていたが、作品集には自画像を含め人物画が多かった。
読了日:10月08日 著者:高橋 秀治



入江明日香作品集 風のゆくえ 生命の真影入江明日香作品集 風のゆくえ 生命の真影感想
入江明日香さんの一冊目の作品集。先に見た新しいほうの作品集「雷鳴と花」よりもややシンプルな作品が多い。子供をモチーフにした作品多数。すごく全体的にファンタスティックなのにリアル。なのに何故か猫がまんまるで可愛い。いろいろなものを内包して混沌としながら清楚で美しい。
読了日:10月06日 著者:入江 明日香

神業の風景画 ホキ美術館コレクション神業の風景画 ホキ美術館コレクション感想
千葉県にある写実絵画専門のホキ美術館の収蔵品の作品集。写実絵画って本当に写真のように精密・精巧だが、あまりにも写真そのものだと、あえて絵で描く必要があるんだろうか・なんて考えてしまう。なので、私は全体的に「絵」の気配が少し残っている(筆のタッチとか、写真ではあり得ない水流の線とか)が有る方が、安心して鑑賞できるし、観ていて心が落ち着くと思った。
読了日:10月06日 著者:芸術新聞社

吉田博 全木版画集 増補新版 YOSHIDA Hiroshi The Complete Woodblock Prints吉田博 全木版画集 増補新版 YOSHIDA Hiroshi The Complete Woodblock Prints感想
川瀬巴水と同時代の新版画。世界を旅して描かれた雄大な風景にため息がでる。聞けばダイアナ妃もこの作品を愛していたとか。そのうち、現物の展示を見たい。
読了日:10月03日 著者:吉田 博



入江明日香作品集 雷鳴と花入江明日香作品集 雷鳴と花感想
あまりにも美しく、あまりにも婉容、あまりにも繊細。ああ、こんな絵を自分で描くことができたなら。 黒の表紙カバーに手汗が付いてしまったら、と緊張する。今日の仕事のご褒美に。
読了日:10月03日 著者:入江明日香






火の神さまの掃除人ですが、いつの間にか花嫁として溺愛されています(2) (やわらかスピリッツ女子部)火の神さまの掃除人ですが、いつの間にか花嫁として溺愛されています(2) (やわらかスピリッツ女子部)感想
本がなにやら睦みあって、本の子が大量に産出されるってのが(笑) なんとなくバタバタと飛んでいる本の群れに、かつてのMacの伝説のスクリーンセーバー「フライングトースター」を思い出す(笑)
読了日:10月23日 著者:


火の神さまの掃除人ですが、いつの間にか花嫁として溺愛されています(1) (やわらかスピリッツ女子部)火の神さまの掃除人ですが、いつの間にか花嫁として溺愛されています(1) (やわらかスピリッツ女子部)感想
巫(かんなぎ)、継母&連れ子の継子イジメ、捨てられて異界に売り飛ばされて、神だか物の怪だかに食われるつもりが、火の神様にお輿入れ。だがしかし、その火の神様にはなにやら呪いが掛けられていて。和洋折衷、ラノベにありがちなギミックは全部ぶっこんであるし、とっちらかりそうなストーリーを画力で力業でまとめてる♪ 絵が綺麗でテンポもよく、よくある継子イジメネタもそれほど陰惨にはならず、なにしろ火の神のキャラが良い。新宿ブックファーストのPR映像を見て、Amazonを確認したら一巻目は期間限定無料だったので、
読了日:10月23日 著者:

花よりも花の如く 23 (花とゆめコミックス)花よりも花の如く 23 (花とゆめコミックス)感想
(作者も同じこと言っているが)年1回の刊行ペースで、23巻です。息子が成人するのと同じくらいの年月を掛けて、じりじりとケントも成長してきたのか、していないのか!前巻で葉月との破局やら、隆生先生の逝去やら、おおきな動きがありましたが、ついにここまで。やっと道成寺のお舞台の幕が開く。お面の初出だって、一体いつだったか? だが、あのお面を使えるまでにケントもなったってことで。どのような舞台を見せてくれるのでしょうか。楽屋に隆生先生が交じっているのがご愛敬。
読了日:10月15日 著者:成田 美名子

花よりも花の如く 22 (花とゆめコミックス)花よりも花の如く 22 (花とゆめコミックス)感想
いい加減、話が間延びしていたのと、ケントの優柔不断にウンザリしていたので、この巻読むのを飛ばしていた。23巻と会わせて入手したら、隆生先生が!理想的な人生の終いではあるけれど、そりゃ、ケントはショックを受けて当然。話は前後するが、葉月との破局もそりゃ当然。だけど、ずっとはっきりしなかったのは葉月も同じだったんじゃ?と思わないでもない。なにしろ、年1冊の刊行なので、この2人がいつから恋仲だったのかも、ハテ。記憶が・・・・・?
読了日:10月15日 著者:成田 美名子

ヴィンランド・サガ(28) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(28) (アフタヌーンKC)感想
新大陸の先住民の間にいきなり出現した黒死病(ペスト)おそらく、トルフィンの船から集落に入りこんだネズミが持ち込んだのだろう。歴史上の史実とはいえ、辛い現実だ。戦闘に明け暮れた少年の時代を経て、償いを決意したトルフィンの航路の到着地点で、この現実に直面するのは辛い。また、トルフィンが絶対に望まなかったとはいえ、鉄の武器が大陸の先住民にもたらされ、持ち込んだ当人は因果方法の目に遭う。これからどうなるのか、そしてトルフィンはどうするのか。
読了日:10月13日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(27) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(27) (アフタヌーンKC)感想
ネズミって伏線だったのか!フィンランドを出港するときからちょろちょろしていた彼ら。新大陸と旧大陸の出会いでもたらされたものは、新しい食物と伝染病。これらはコロンブス以降の話だと思っていたけど、当然人と物が交われば起こる話。友好したい者と、自分の身を守りたいもの。トルフィンの選ぶ手段はつねに「最初の手段」出港する前にもっと参加者を厳選したほうがよかったのかも・・・・
読了日:10月13日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(26) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(26) (アフタヌーンKC)感想
現地先住民との交流は続くが、先見の力を持つシャーマンは不吉な予感を手放せない。秘術を使って観た未来は、自然破壊、戦争、伝染病、先住民の衰退・・・・一方トルフィン達は初めての麦の収穫を迎え、ヒルドの設計した脱穀機が、仲間達の度肝を抜く。そして、村で初めて収穫した小麦で焼いたパンを手にして感無量なトルフィンに、ついにヒルドは赦しを与えた。
読了日:10月06日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(25) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(25) (アフタヌーンKC)感想
アレコレあって、ギョロもヴィンランド行きに追加。あれこれあって、ついに彼の地(現カナダ沿岸)に到達。ヒルダさん頭良いったって、天動説にひとり辿り付いているとはね。先住民との争いを避けて広い手つかずの土地を求めてさらにカナダ沿岸を南下。どうやらサン・ピエール・ミクロン島と本土の間を抜けて、日本人にもおなじみのかの島に到達。そして、先住民(ネイティブ・アメリカン)との出会いが。
読了日:10月06日 著者:幸村 誠

ヴィンランド・サガ(24) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(24) (アフタヌーンKC)感想
故郷で、ヴィンランドへの移住の準備にかかるトルフィン。新しい土地に決して鉄の武器を持ち込むまいと考えるトルフィンと、武器を手放すことができない男達。そして鉄剣はひそかに持ち込まれる。あの戦争が大好きな大男にそっくりな奴隷、しかも「男の娘」だ。いろいろとブチ込んでくるなあ(笑)。そして、民会で移住団への参加を呼びかけ、だんだん準備が整ってくる。そしてあのシグやんがえらくカラっとした良い漢になって子連れで帰還。
読了日:10月06日 著者:幸村 誠

囀る鳥は羽ばたかない 9 (H&C Comics)囀る鳥は羽ばたかない 9 (H&C Comics)感想
気持ちが沿わないまま、ひたすら矢代の体をむさぼる百目鬼。お前はいったい、どうなりたいんだ〜〜〜!矢代は矢代でどうにも投げやりな感じだし。目も悪くなってるし、もう、いいかげんいろいろなものを投げてしまっていそうで、幸せな終わり方が想像できない。これからどうなっていくことやら。目が離せません。
読了日:10月06日 著者:ヨネダコウ


読書メーター

2024年10月31日木曜日

0516 水の都 黄金の国

書 名 「水の都 黄金の国 」
著 者 三木 笙子        
出 版 講談社 2016年7月
単行本 229ページ
初 読 2016年8月
再 読 2024年10月28日
ISBN-10 4062201518
ISBN-13 978-4062201513
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123818050

舞台は明治期のヴェネツィア。どこか不思議な雰囲気が漂う異国舞台のバディもの。三木笙子さんのお話はどれもブロマンスってほど濃くはない。どこかほんのりしているけど、しかし、真情に溢れてる。
 東北の小藩の、下級武士の家の生まれの誠次郎は、跡取りでもないため、自分の身は自分で立てないとならない立場。時は明治で、学問をして何とか自分の身の立て方を考えようとまずは東京に出る。今身に付けるは語学、と自らの才覚と対人スキルで独学でイタリア語をものにし、ついでにイタリアでの語学教師の職に就く。その仕事は誠次郎より早く世に出て、官費でフランスとイタリアに留学し、ヴェネツィアで病を得て早逝した親友の清人の仕事を引き継ぐものだった。
 誠次郎の親友清人は、ヴェネツィアの人々に信頼され、強い印象を残していた。なかでも、誠次郎の下宿先の青年ルカは「キヨ」に心酔し、亡くなった清人をずっと偲んでいる。
 そんなルカと誠次郎の友情を横軸に、誠次郎のもとに持ち込まれる事件を縦軸に、そして今はなき清人の存在が通奏低音のように響くストーリー。

 なにしろ、誠次郎の性格が良い。もの凄く出来るってわけではないがちゃんと冴えていて、それなりに苦労もしてきて、おごらず、昂ぶらず、周囲の人のことをきちんと考える。地に足のついた誠実さ。ルカは、日本人が想像するイタリア人ぽくなくて(笑)、暗めで寡黙、ちょっと辛辣。今は亡き「キヨ先生」に心酔していて、亡くなった清人の記憶がだんだん遠くなっていくことを悼んでいる。一つ一つの事件は、そんなに大事件ではないが独りで抱えるには重たくて、それを受け止め、受け流していくには、やはり友が必要なのだ。

第1話 黄金の国
 偽金作りの悪党が、金貨の精巧な金型を手に入れて、金貨を作らせるために腕の良い鍛冶屋に目を付けた。しかし、そこで思わぬ事態が起こる。
第2話 水の都の怪人
 ヴェネツィアの町に、金貨をばらまく怪人が出現。街の人々はだんだん、熱狂が高まって行く。ルカと誠次郎が下宿する酒場(バーガロ)の主が大切にする絵に隠された謎。
 ヴェネツィアは何もない潟の上に人間が創った街である。そのためには沢山の杭を海に打ち込み、その上に建物を建てる必要があった。それが清人の心を捉えた。と誠次郎が言う。
「俺はそこに、人間の意志を感じるんだよ。海の上に美しい街を作りあげようとする人の意志を」
 私は、そこに、三木笙子さんの意志を感じる。何もないところに、美しい物語を創ろうとしている人の意志が伝わってくるように思うのだ。
第3話 錬金術師の夢
 小説家が創ろうとしたもの。それは物語ではなく・・・・・
第4話 新地動説
 夫婦でヴェネツィアを訪れていたアメリカ人夫婦。その夫がかき消すように失踪してしまった。・・・・ところからの、誠次郎の推理。
エピローグ
 もし夢が叶わなくても。在りし日の清人。夢が叶わなくとも不幸ではない。その夢はヴェネツィアの一部になるのだから。

2024年10月27日日曜日

0515 配色事典―大正・昭和の色彩ノート (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)

書 名 「配色事典―大正・昭和の色彩ノート (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ)」
著 者 和田 三造     
出 版 青幻舎 2010年7月
文 庫 281ページ
初 読 2024年10月26日
ISBN-10 4861522471
ISBN-13 978-4861522475


裏表紙より引用
『本書の原本となる『配色總鑑』(全六巻)は、昭和八〜九年に掛けて刊行されました。
 編纂された昭和初期は、戦前戦後の混乱期である反面、西洋文化の影響を受け、新しい気風に満ちた時代でした。
 本書には、そのようなモダンで多様化する色彩の時代に、色の重要性にいち早く着目し、現在の色彩研究の礎をつくた和田三造(1883〜1967)によって公安された、348の配色が収められています。
 「配色」という概念が一般に認識されていなかった当時において、具体的な配色パターンが掲載された配色見本集はきわめて珍しいもので『配色總鑑』はそのさきがけとなるものです。
 ・・・・・』
 本の内容については、上記の引用に勝るものなし。後半に色の索引、切り離して活用も可能な色票が付属しているのも、とても実用的で、文庫本サイズで持ち運びが容易なことも合わせ、単なる復刻版でないところが良いと思う。
 たとえば、デザインや印刷関係の営業さんのポケットから使い込んだコレが出て来たら格好良いと思った。

 本の中は、2色、3色、4色の色彩の組み合わせがぎっしり。色見本に記載されている色の和名が美しい。
 大正・昭和の色彩となっているけど、もちろん現代に通用する。明暗、補色の組み合わせ。たとえばファッションだとしたら、大きな面で組み合わせる(例えばセーターとスカート)のも、小物合わせの参考にもなるし、柄の配色の参考にもなりそう。4色配色は、着物、帯、半襟、帯締め、帯揚げの組み合わせにも、大いに参考になる。なにより楽しい!
 洋服は同色系でまとめがちだけど、着物は小物(特に帯締め)は補色で選ぶことが多い。小物以外にも、八掛の色合わせも同色系にするか、補色系にするかですごく印象が変わる。歩いたときにチラチラと見える裾裏に凝るのは、着物の醍醐味。袖口、袂からほんの少し覗く長襦袢の色も、そりゃあ白やごく淡色が定番ではあるが、小紋なんかを着るときには遊び心を覗かせることもできる。だが、これを全部やったら多分NGだろうな。過ぎたるは及ばざるがごとし。娘の七五三以来、着物を着ていないけど、また着たくなった。
 

0513〜14 Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない1,2 (アンダルシュノベルズ)

書 名 「Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない1」
著 者 仁茂田もに        
出 版 アルファポリス 2024年1月
単行本 336ページ
初 読 2024年6月02日
ISBN-10 4434333135
ISBN-13 978-4434333132
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/121069284

 アマゾンでオススメされて、結構長く試し読みできたもので、読んでしまったら先が気になって気になって、まんまとお買い上げ〜。しかも予備知識なしに読み始めたら、1巻最後まで読んだのに未完だったという罠。
 先が気になって仕方がない。
 続きはアルファポリスなるもので読めると知り、アプリをDLし、最後まで読みましたとも。まんまと掴まってしまった。仁茂田もにさん、面白いし、素敵だ。

 表紙のとおりオメガバース。普通に魔法が存在する王国、登場人物の名前は全てドイツ語風。主人公ユーリスはΩ♂。王太子の婚約者になったアデル、婚約破棄されたリリエル、すでに他国に嫁いだ第一王子ヴィルヘルムもすべてΩ♂。オメガバースBLだから仕方ないのだが、男女比が悪すぎる気がするが、そこに突っ込んでも仕方ない。一巻目(というか上巻)は謎も含みも満載。しかしそれよりも、拗れに拗れたユーリスとギルベルトの誤解がいつ解けるのかが気になりすぎた(汗)。描写が丁寧で、読みやすく、キャラが立っていてテンポもよい。

 自分に自信がなく体力に劣るユーリスだが、実は相当優秀。考えてみれば、かつての第一王子の侍従の中でも年長で筆頭格だったわけだし、跡取りの長子として教育され、長年王宮内に起居して奉公し、2回も王太子妃候補の教育係に任じられるのは伊達ではない。自分に向けられるやっかみや羨望に気づいていない箱入り純粋培養は不幸の元だ(笑)。でも箱に入れておきたいギルベルトの気持ちもわからではない。

書 名 「Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない1」
著 者 仁茂田もに        
出 版 アルファポリス 2024年10月
単行本 352ページ
初 読 2024年6月02日
ISBN-10 4434346490
ISBN-13 978-4434346491
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123852190

 2巻(下巻)は、恋愛に関してはダメダメなアロイスとリリエルの恋模様も絡めて、クライマックスになだれ込んでいく。
 上巻がおもにユーリス視点で現在と過去をうまくミックスさせていたが、下巻はギルベルト視点で、上巻でユーリス視点で語られた過去の出来事が再演される。これまで、この手の創作小説で人物視点をコロコロ変える手法は、安直だなーと思っていた。だがしかし、ここまで丁寧に描き込めば、それも面白いと思える。そうだよね、他人の思惑なんて実際判らないし、人間関係って誤解だらけだよね。とすごく納得感がある。
 にしても、それぞれに生真面目で実直で有能なのに、こと恋愛に関しては超おくてで恥ずかしがりで怖がりのカップルが、なんとか恋愛成就してよかった。
 長年にわたり数多の求婚を仕える主に握り潰されていたせいで、自分では一つも結婚話が来ない魅力のないオメガだと思い込んでいたユーリスが憐れだよねえ。

 なお、上記の書誌情報は紙本のものですが、実際はKindle本で読了した。

 アルファポリスで公開されてる番外編もすごく良いので、必読!です。

2024年10月20日日曜日

0512 金木犀二十四区

書 名 「金木犀二十四区」
著 者 三木 笙子        
出 版 角川書店 2012年9月
単行本 265ページ
初 読 2012年9月
再 読 2024年10月20日
ISBN-10 4041102294
ISBN-13 978-4041102299
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123758258   

 『怪盗ロータス』を読み終わって、次はこの本、と手に取った朝、この秋はじめて、朝の空気にかすかに交じるキンモクセイの香りに気付いた。キンモクセイはこの家に住み始めたときに、敷地の角に植えたもので、樹齢は二十数年というところ。隣地境界故に強く剪定せざるをえず、枝をのびのび伸ばさせてやれないのが可哀想なのだが、毎年健気に花を付け、密やかに香りを届けてくれる。今年も花香る秋が来た。この本を読むのにこれ以上の時節はない。
 
 表紙、背表紙とも美男子が描かれているが、作中にはもう一人、佳い男が登場する。この表紙(主人公)と裏表紙(主人公の友人)ともう一人(友人の友人?同僚?)の3人がメインで話は進む。
 舞台となっているのは、現代の日本・東京のパラレルワールド的な都市『首都』。花の名を冠した二十三区の片隅に、地図上にはないが金木犀二十四区と人に称される、時の歩みから置き忘れられたような、古風ゆかしい地区がある。その地は樹齢千年を超える金木犀の大木をご神体とする神社を中心に人々がゆるりとした時の流れの中で生活していて。
 イメージとしては、平成の世の中で、その一角だけは昭和の中頃みたいな感じだろうか。
 『東都』(江戸)、『革命』(明治維新)、『大君』(将軍)など、世界を作り込んでいるのに、一方では「建武の新政」なんて言葉が素で出て来たりして、ちょっと世界観にぎこちなさを感じてしまうのが、少々引っかかってしまうところではある。そこに、隕石、天狗、森林化といういわばファンタジー要素が加わり、あれ、そっち方向に行くのかな、と思いきや、なんとなく失せ物ミステリー(首飾り事件)風味もあるし、でも実は、ちゃんと、人の孤独によりそう優しさの話である、という、なんというか、そう、三木笙子さんの世界そのもののような物語とでもいおうか。
 
 隕石と天狗の話に唐突感はあり、読み手としては、まあそういう設定でいくのならそれに付き合うしか有るまい、という感じはややある。だけど、辛い事があったとしても「毎日の生活に少しずつ溶かしこんで記憶を薄め、やり過ごしていくしかない」「目をつぶるでなく、傷口をさらすでなく、あったことはあったこととして受け止めていく」ことが、どれほど大変なことか。それを、文字通り淡々と行い、自分とも周囲とも向きあっていく主人公・秋の在り方そのものが、この物語なのだと思う。この芯が強いが嫋やかな、まさに野に有る和の花のように目をこらさないとそこにあるのにも気付かないようであるけれど、確かに誰かを勇気づける存在が、この物語に感じるちょっとした引っかかりなど凌駕する。

 ちなみに、舞台は武蔵野湧水地の・・・というからには、三宝寺池や、石神井あたり・・・もっと西に行けば国分寺崖線なんかも思い浮かぶが、地理的には23区の一番西より、練馬区の一角あたりなんだろうな、と思って読む。レモンイエローの電車は西武新宿線、延長されそうでされない地下鉄は丸の内線? 読みながらそう考えはしたけれど、この話にはそういう現実感は不要だな。

2024年 残り2ヶ月と12日 ※特に意味はない。

今年中に読んでしまいたい本。

だいぶ追い詰まって来た。多分、コレ全部は無理だとおもうけど、とりあえず書きだしておく。

本当はもっと、読んでない新刊が沢山あるし、もっと読みたいけど。

多分、これも全部は無理だと思うので、せめて。


🔸三木笙子さんの残り

  1. 金木犀二十四区(読了)
  2. 水の都黄金の国(読了)
  3. 竜の雨降る探偵社
  4. 百年の記憶
  5. クラーク巴里探偵録
  6. 露西亜の時間旅行者
  7. 月世界紳士録
  8. 赤レンガの御庭番(読了
🔸ワニ町
 9.嵐にも負けず

 10.町の悪魔を捕まえろ


🔸マーダーボット・ダイアリー)

 11.システム・クラッシュ


🔸マーク・グルーニー

 12.13.暗殺者の屈辱 上・下

 14.15.暗殺者の回想 上・下

 追加   暗殺者の矜持 上・下

 16.17.アーマード 生還不能 上 ・下


🔸ダグラス・リーマン残り

 18.緋色の勇者

 19.黄土の血戦  栄光の海兵隊 2

 20.紅の軍旗: 栄光の海兵隊3

 21.特攻艇基地を撃破せよ: 栄光の海兵隊

 22.原潜救出

 23.キール港の白い大砲


ちなみに、来年こそは、ボッシュシリーズの未読を読み進めたい。

あと、ドラゴンシリーズ(西洋竜が出てくる本を勝手に命名)とか、とにかくいろいろと読みたいのだ。まあ、自分の「なになにしたい」ほど当てにならないものはないと知っているので、あくまでも今のところなんだが。

2024年10月15日火曜日

0511 怪盗ロータス綺譚

書 名 「怪盗ロータス綺譚」
著 者 三木 笙子        
出 版 東京創元社 2022年11月
単行本 304ページ
初 読 2024年9月30日
ISBN-10 4488028799
ISBN-13  978-4488028794
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/123627668


 表紙がとても素敵です。
 大好きなyokoさんの装画。色もシックで、なんとなく浮世絵の色使いなんかも思わせる和色。
 『怪盗の伴走者』で、ついにロータスこと蓮と行動を共にすることを選択した省吾。2人でしばらく欧州で奇術師とそのマネージャーとして活動していたようですが、このたびしばしの休息のため、日本に帰国し、帝国ホテルに逗留中。とはいえ変装しているので、蓮はともかく省吾はどうも落ち着かない。けっして騒ぎを起こすな、と念を押す省吾に、二つ返事な蓮であるが、しかしこういう男のところには、自分で面倒をおこさなくても、向こうから転がり込んでくるものなのだ。ため息をつきながら現状を容認するしかない省吾である。・・・てか、省吾がきちんと幸せそうに・・・しているな。蓮と一緒にいることがまんざらでもなさそうで、自然体でよろしい。私は君が元気でいてくれたらそれでいいんだ。

グランドホテルの黄金消失 
 日本に帰国して、2人が逗留していたのは帝国ホテル。そこに、金塊を載せた暴走馬車が駆け込んでくる。馬車が壊れて、その日のうちの横浜マルマル銀行東京支店の金庫への持ち込みを断念した持ち主は、目の前のグランドホテルに一晩金塊を持ち込むことに。そしてその翌朝、金塊が消失?!
 困った支配人が、顔なじみの蓮のところに、相談にやってくる。

特等席 
 蓮と省吾が周到に罠と仕掛けを張り巡らして、大がかりな詐欺を企てる話。何が起こるのだろう、と思いながら読んでいて、途中でこれは手玉に取られている方か、と思い至る。騙される側に移入するっていうのは、ちょっと新鮮な体験だった。途中からは誰が蓮で誰が省吾だ?と考えながら読む。それも面白い。

埋める者 暴く者 
 箱根にのんびり温泉に浸かりに行ったはずが、やっぱり事件の解決を持ち込まれる蓮、そして省吾。状況をコントロールしているはずが、だんだん相手に手玉に取られて、だんだんのっぴきならない状況に陥る様子が、『注文の多い料理店』みたいでワクワクする。最初と最後を切なく締めるのも粋。男は最愛の女の墓所を護り続けていたのだな。

すべて当たり籤
 駄菓子屋で子供が喜ぶくじ引きに事件あり。駄菓子屋の店主がトラブルに巻き込まれた、そして現在進行形で何かが狙われている・・・・というところは前話のごとく、先の展開の予想が付かず、推理小説を読むみたいに(ってか、これ推理小説だったか。)みたいにわくわく。だがしかし、そう来たか! それは意外だった。お兄さんはどうしたのよ? 簡単に騙される私は、つくづく推理小説読みじゃあないんだよなあ。と実感。
 
光と影のおむすびころりん
 これはすこし分かりにくかったかな。おむすびころりんの童話のごとく、どんどん縁と偶然がつながって最後にはすごいものに辿り付いたけど。舞台が「縁切り寺」っていうのも逆説的で面白い。

 さて、結論として、省吾は一抹の不安を抱えながらも、蓮とうまくやっているし、とりあえず後悔もしていないよう。もうちょっとだけ、蓮の弱みを観てみたい気がするので、そこは続編があればお願いしたい。