2024年4月15日月曜日

環境整備 その1ーーMacを新調した。

 

 ここ数年来連れ添ってきたiMac late2015。読書メーターを始めた頃には、もう使っていたような気がするから、2016年頃からか? ということはまる8年くらいは使っていたのだから、パソコンにしては長くもったような気もする。昨年だったかのシステムアップデートでついにほぼ動かなくなり、内蔵HDDの遅さが原因とあたりをつけて、起動ディスクを外付けSSDに変え、しばらくはそこそこ走っていたんだが。やはり諸々限界が(私の方に)来て、ついにMacBook airに乗り換えるに至った。職場のWinを持ち帰ったときにモニターを共有したい、とか色々思うところはあった。だがしかし、いざJAPANNEXTの外付けモニターを付けてみると、iMacのディスプレイの美しさには敵わない。やはり捨て難い。しばらくは動画鑑賞用にでもして、置いておくかなあ。。。。

2024年4月12日金曜日

0476 警視庁公安J ブラックチェイン (徳間文庫)


書 名 「警視庁公安J ブラックチェイン 」
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2017年3月
文 庫  551ページ
初 読 2024年4月11日
ISBN-10 4198942145
ISBN-13 978-4198942144
読書メーター

 警視庁公安J。3冊目にして最大の悲劇がJ分室を襲う。・・・と、鈴峯節を真似てみたが、〜にして、という使い方はこっちのほうが正しいような気がするな。ってのはさておき、そう、これは有ってはならない。そんなことって!!と驚愕すること必至の第3巻。無情です。何が起こったのかは、ええ、どうぞ読んで下さい。今作は沢山の死者と自殺者が出るが、純也の「助ける」と「見送る」の境界線が那辺にあるのか、いまいちよくわからない。それと、今回も思ったのは純也はやはり父親似であること。この親子は良く似ている。似ているからこそ相容れないのか。 主人公の存在にどこまで説得力を持たせられるか、が読んでいて興醒めするかしないかの境目。この作品の場合は、かなりの力業だけど、なんとかギリギリ、純也のリアリティを保っている。純也だけでなく、3人の部下や、師団長、その他の脇キャラもうまくキャラ立ちしているのが効いている。さて、《冒頭その1》 ダニエルからの電話、もしくはメール、または手紙。ひょっとしたらモノローグ。私はこういうはた迷惑な男は嫌いだが、純也の師であり、親兄弟にも勝る影響力を持った人間であることは間違いない。まだ終わらないこのシリーズのオーラスで、純也とダニエル・ガロアの対決を見ることになるのかならないのか。気になるところ。
《冒頭その2》 怪しげな中国人組織。名前の読み方を覚えられない自身があるので、とりあえずメモる。 
爺夫 イェフ 
一夫 イーフ 
二夫 アルフ 
三姫 サンジイ 
四夫 フウフ 
五夫 ウーフ 
六夫 リュウフ 
七姫 チージイ 
八夫 バーフ 
九夫 ジョウフ  
 今作は、中国の黒孩子がテーマ。戸籍を持たない闇の子が、どのように遇されてきたのか。中国共産党内の腐敗、人身売買・臓器売買、密漁・密輸、私兵集団、虚実ない交ぜ。これだけのことをやったらさすがに日本国内でも足が付くんじゃ? とくに妙齢の女性の誘拐は、さすがに無理があろう。だが、とにかく今作も面白かったのは間違いない。

 それにしても、純也が分室を出て、晴れて「表の部署」に配属になったり、警視正以上に昇進したりする日がいつか来るのだろうか、などと考えたりして。父親が政治家引退する時がきたら、、、かな? いつまでも日陰に置いておいたら、かえって アブナイ気がするんだけどな。

2024年4月4日木曜日

0475 警視庁公安J マークスマン (徳間文庫)

書 名 「警視庁公安J マークスマン 」 
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2016年5月
文 庫 396ページ
初 読 2024年3月31日
ISBN-10 4198941092
ISBN-13 978-4198941093
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/119912131 

 なんと純也の恋バナで終始した(?)初巻に続く2巻目も、組織の権力闘争の匂いがなんともきな臭いとはいえ、やはり表層は恋バナの風味が。ディズニーランドかよ!
 冒頭明かされる、純也の生い立ちの詳細。母が殺害され、純也が失われた経緯、その後のサウジアラビアの砂漠での、ベドウィンの一族との生活。そして族長の息子に連れられてわずか8歳での湾岸戦争参戦。純也が生活していた多国籍軍(?)キャンプへのイラク軍の攻撃、フランス人傭兵のダニエル・ガロアとの出会い、初めて銃を手にして戦闘。傭兵部隊に連れられて転戦したカンボジアでの矢崎との再会から、冷え切った親子の関係なんかも詳細に明かされて、なるほどなあ、と思う。初巻を読んだときの違和感はある程度は払拭された。
 だがしかし、戦場にいたのは11歳かそこらまでだった純也が、その後も武器操作・戦闘術の手腕を磨いているだけでなく、超一流のスナイパーの腕前もって果たして可能なのか? 体格だって、成長して変わるだろうし、どうやって訓練して、能力を維持したんだ。矢崎のところで鍛錬したっていっても、さすがに難しくないか? と、そのあたりはまあ、ファンタジーってことで不問に処すべきか。
 で、そこはさておき機龍警察、竜崎の隠蔽捜査シリーズに公安Jと読み継いできて、警察組織の内部のアレコレもそれぞれ作者・作品ごとに趣がある。もちろん色々でいいし、パラレルワールドみたいで楽しい。
 今回は「ゼロ」ならぬオーバー・ゼロ「OZ(オズ)」という公安の裏組織が登場。純也の父である小日向和臣総理大臣の暗殺未遂(=公安部長狙撃)、国内に入ったスナイパーの目的、日本各所でぶん回される陸自隊員(笑)など、動きがダイナミックでそこはかなり面白い。それに、矢崎サン。
 一緒に天幕立てて野営って、どれだけ猿を気に入ってるんだ(笑)。この人の行動力と行動パターンもかなり謎で天然で面白い。でも、天幕で寝るのが好きな陸将って、きっと部下に好かれるだろうな、と思う。

 で、さて。
 今作の事件をまとめると、(以下ネタバレ)
① 純也と公安部長に秘密を握られたと思ったヤクザが、蛇頭に二人の暗殺を依頼→第1のシュポ(Supperのハングル読み?)=蛇頭・・・なのに韓国人だってことに違和感はあるな。
②それを知ったダニエルが便乗して、第二のシュポに純也父(小日向首相)の暗殺を指令・・・理由は、純也を手元に取り戻したいと思ったから。
③さらにダニエルは第三のシュポに、作戦全体の攪乱と第二のシュポの監視及び失敗した場合の抹殺指令を与える。理由は、この男の能力を見定め、期待以上の成果をあげれば、仲間に引き込むつもりだったから。

 最初の狙撃で公安部長が負傷したとき、犯人の狙いが総理大臣だったのか、公安部長だったのか、で警察も見解が割れるが、思うに公安部長が標的だったのなら、部長を狙撃ポイントに誘導したエレナは、はっきりと黒。首相が標的で、本当にエレナが1100mの距離の狙撃を察知して首相を庇ったのだとしたら、エレナ自身の射手としての能力も極めて高いはず。・・・それを純也はディナーを賭けたゲームで確かめ、エレナの技倆はそこまででは無い、と判断。ならばエレナが首相を庇う行動をとれたのは、そもそも狙撃を知っていたから・・・なのでやっぱり黒。
 標的がどちらだったとしてもエレナは黒で、かつエレナ以外の狙撃手がいる。おまけに最初に確定されたシュポは体格からして“ハズレ”。ということは少なくとも、エレナ以外にも最低2人の敵がいる。いつものように、はにかんだような微笑を浮かべつつ、縦横に上司と部下と陸自を使い敵に揺さぶりをかけつつ、陰謀の輪郭を照らしだしていく。

 このシリーズは一話ごとに区切りがつくスタイルではなく、今作は〈カフェ〉事件が尾を引き、次作にはそれに加えてオズとの力比べやダニエルとの因縁も捩れていきそうだ。

2024年4月1日月曜日

2024年3月の読書メーター

 『警視庁公安J マークスマン』読書中で3月は終わった。
 年度末のくっそ忙しい時期にしては、小説10冊は頑張ったのではないか。『隠蔽捜査』竜崎シリーズ後半と、箸休め的な異世界転生ライトノベル、そして万を持して(?)公安Jに着手。
 職場のドタバタと、殺人的(いや過労死的)残業と、もろもろ合わせ、よく頑張った私。と自分を誉めてあげるべき? 読書は通勤、休み時間、風呂の中、ベッドの中で。相変わらず読むスピードより積むスピードの方が早いが、これ以上積ん読を増やさないよう、鋭意頑張りたい。


3月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:4008
ナイス数:770

警視庁公安J (徳間文庫)警視庁公安J (徳間文庫)感想
面白かった。 ◯◯にして××。多用されるこの表現が鼻につくったらなかったけど。(笑)多分にキザな文体がウザかったけど(笑)。荒唐無稽ではあるがこのテーマでこのエンタメが書けるのもすごい才能だと思った。その前に読んでいた竜崎シリーズとはまた対極を行く。いやあ小説って面白い。もちろん続刊も行きます。それにしても部下が鳥と犬と猿って、正義の桃太郎なのね。お腰の袋はお金で重そうだわ。
読了日:03月28日 著者:鈴峯紅也

五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました2五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました2感想
つづき♪ 相変わらずのラブラブふわふわ。ときどきホロリ。ちょっと荒事めいたことがあっても、なにしろ主人公王子様が最強チートなので、とくに危なげもなく。イチゴのお菓子が食べたくなる。
読了日:03月24日 著者:須王あや

五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました感想
Kindleアンリミにて。pixivでの拾いもの。有りがちな転生もの?(実際そうなんだけど)、タイトルだけなら、かつ、表紙を見ても普段なら絶対に拾わない系だけど、なにかひかれるものがあったんだな、と。いやなかなか。ほんわか・ふあふあ・ラブラブの年の差婚。絶対に裏切られないと安心して読める心の包帯系です。最近実生活が荒んでるので、こういうのを心が求めてるのかも。めいいっぱい充電しました。たまにはこういうのよいです。
読了日:03月23日 著者:須王あや

帝都争乱 サーベル警視庁(2) (ハルキ文庫 こ 3-51)帝都争乱 サーベル警視庁(2) (ハルキ文庫 こ 3-51)感想
警察小説?には違いないんだが、明治末期である。1905年日露戦争が終結し、日本は講和条約を締結。だがその内容は、誰にとっても満足できるものではなかった。特に一部の大物政治家と多くの民衆にとって。暴動が起き、時の首相桂太郎がやり玉に挙げられ、桂の妾のお鯉にも危険が及ぶ可能性があるため、警視庁第一課の件の面々は部長の直命で警護に出向く。捜査物というより、時代の空気感を読む。会議室が畳敷きで、あぐらで車座、というのが面白い。ラストはしてやられた!という感じで爽快。大陸の広くて乾いた空を思い描いた。
読了日:03月17日 著者:今野 敏

サーベル警視庁 (ハルキ文庫 こ 3-43)サーベル警視庁 (ハルキ文庫 こ 3-43)感想
鳥羽伏見の戦いから38年後の日本・東京。戊辰戦争を戦い抜いたサムライはその後東北に蟄居し、のちに東京に出て警視庁の警官となる。斎藤一改め藤田五郎。すでに警官も退職し、高等女子師範学校(現御茶ノ水女子大)の庶務会計係兼車番。女学生からは「庶務のおじいさん」と慕われる。そんな老人を絡めて、明治の頃の警視庁を舞台とした捜査もの。薩長が幅を利かす政府や軍部、一方で派閥争いに負けたもの、戦争に敗れたものもまた国を思う。ストーリーとしては弱いかな、と思うけど、歴史的関心が喚起される。
読了日:03月14日 著者:今野敏

フラジャイル(27) (アフタヌーンKC)フラジャイル(27) (アフタヌーンKC)感想
あれ・・・っ?もしかしてフラジャイルって、宮崎先生が自立したら完・・・・?そういや、宮崎先生が入門するところから始まったんだもんな?
読了日:03月09日 著者:恵 三朗

探花―隠蔽捜査9―探花―隠蔽捜査9―感想
東京を「海に面している」なんて思ってるようじゃあまだまだよな。と思う元横浜市民。今作でぼんくら八島が初登場。読む前はレビューを見て何があるのかとドキドキしたが、しょせんは竜崎の敵ではない。うまいこと竜崎の手の平の上で転がされてました。歯牙にもかけないとはまさにこのこと。清々しいです。あと、やはり阿久津が気に入ってしまった。もっとデレるのかと思いきや、筋金入りのツンで、なかなかデレない。そこが味わい深い。
読了日:03月06日 著者:今野 敏

一夜:隠蔽捜査10一夜:隠蔽捜査10感想
このシリーズ、ミステリ基調だと途端に失速するような気がする?捜査に絡んでくる小説家の梅林は作者さんなのかな?とも思うが、なんだか中途半端だし、殺人の動機が浅いし、人間の不可解さにもって行くのはちょっとは無理があるんじゃないかと思った。息子のことを相談しちゃう竜崎もどうよ? 捜査員が自分の家族構成などの個人情報を捜査関係者に漏らすのもいただけないし、職務上で得た人間関係にプライべートを相談するのもNGだ。こんなところで個人情報を漏らしていたら、家族の安全は守れない。自分の息子には自分で対応しようよ。
読了日:03月05日 著者:今野 敏

初陣―隠蔽捜査3.5― (新潮文庫)初陣―隠蔽捜査3.5― (新潮文庫)感想
スピンオフ的な短編集1冊目は伊丹目線で。幼馴染みの気になるアイツはブレない軸を持つがゆえに、本人は微動だにせずとも周囲が振り回される。とくに伊丹が勝手に右往左往(笑)するのが面白い。助けるよりは助けられる方が多いようだが、めげないのが伊丹の良いところだ。(笑)愛される三枚目キャラである。そんな伊丹に向けられる同期の竜崎の視線はややキツいが、いじめられた、という過去があっても憎みきれないのが伊丹という男なのだ。面白かった。
読了日:03月03日 著者:今野 敏

審議官: 隠蔽捜査9.5審議官: 隠蔽捜査9.5感想
神奈川県警刑事部の参事官2名。一人はキャリアの能面男阿久津警視正。もう一人は組織犯罪対策本部長を兼ねる平田清彦警視正ノンキャリア。この2人の反目をなんとかせよ、と県警本部長に「特命」された竜崎。竜崎は人間関係など基本意に介さないのだが、決して鈍ではない。人目も気にせず言い合いをしている2人の参事官を冷静に観察をするとこの二人、決して険悪ではないのかもしれない。竜崎の人間関係の考え方には私としても共感するところがある。その他、竜崎の腹芸「審議官」など読みどころ多し。 「俺は、人間関係には興味がないんだ」
読了日:03月03日 著者:今野 敏

清明 (新潮文庫)清明 (新潮文庫)感想
横浜・町田にステージを移し、竜崎神奈川県警刑事部長編?がスタート。中華街の雰囲気、神奈川県町田市と揶揄されたりもする町田の独特な土地柄が良く生かされている。個人的に一番ツボったのは、阿久津審議官(笑)「お戻りをお待ち申し上げております」「お帰りなさい。今日は、これからどうなさいますか?」「本当にごくろうさまでした」これもう、妻のセリフにしか聞こえない(笑)そつがなさ過ぎて最初は竜崎に大いに警戒されていたが、これからの二人のやり取りが楽しみでしょうがない。きっと野間崎理事官以上に楽しませてくれるだろう。
読了日:03月01日 著者:今野 敏

読書メーター

2024年3月27日水曜日

0474 警視庁公安J (徳間文庫)

書 名 「警視庁公安J 」
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2015年12月
文 庫 517ページ
初 読 2024年3月21日
ISBN-10 4198940517
ISBN-13 978-4198940515
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/11979734  

 いくらなんでも芝居がかりすぎてないか、とか文章が気障で気恥ずかしいの一歩手前、とか思わないでもないが、こういう本はファンタジーが入ったフィクションと割切って、入り込んでしまえば無問題なはず! 日本人にあるまじき特異な経歴と身元(曰く「華麗なる一族」)故に警視庁公安で「飼い殺し」司令が出ている「J」こと小日向純也のアクション&アドベンチャー。いたるところで多用される「◯◯にして△△」という表現が鼻につくったらないが、それもこれも作者の個性と思うべし。
 PTSDやPTGの設定も、あんまり純也の個性に現実感を持たせることには成功してないような気がするし、6歳から10歳を戦場でっていうのもどうかと思う。傭兵部隊とは言え、先進国フランスの部隊がそんな子供引き回してていいのか?アリなのか? せめてティーンエイジャーくらいまで戦場で過ごした設定のほうがよかったんじゃあ・・・・とか、色々、いろいろ注文をつけたくなる。だけど、10歳というのは日本に帰国して感動秘話的にマスコミ受けして、かつ家族と再統合をはかることができる年齢としてはギリギリかも。そもそもリアリティを追求している小説じゃないし、そこにこだわっちゃうのは、正しくない。
 で、とにかくいろいろ飲み込んで、とりあえず面白い。ちゃんとエンタメとして成立している。荒唐無稽だしかなり際どいけど。だけど、もろもろ凌駕して、きちんと面白い。日本を舞台にしてここまでスカッっとスケールが大きい小説もあまりない。
 繰り返して言うが、面白いです。
 設定が荒唐無稽な反面、時代背景とか歴史公証的なところ、題材はちょっとアンタッチャブルではあるけれど堅実で、そこがまた面白いと思う。
 女性の描きかたは、どうもいまいち。多分におっさん臭い嗜好を感じる。それに犯人に全部語らせちゃうのも好みではないんだけど。
 でもまあ、面白いし、続きは全部読むでしょ。

 ところで純也の部下が鳥居と犬塚と猿丸・・・・鳥と犬と猿ってコレ桃太郎か? 
 なるほど、腰のきびだんご(純也の私財)で取り込まれて、正義の桃太郎と一緒に鬼退治をする話なのね(笑)
 きび団子ならぬ、大金さえあれば何とかなる。(笑)BMWのクーペが何台壊れようが、帝都(帝国)ホテルのエントランスが大破しようが、ほとんどポケットマネーで公安を運用しようが。『隠蔽捜査』シリーズを踏破した後にこっちを読むと、価値観が真逆で変な笑いがこみ上げてくるよ。いや〜小説って、ホントに何でもできて面白いですねって思います。

登場人物の中では、純也に指を落とされた猿丸さんと、春子お祖母様が好き。

あ、だけとちょっと気になったのは。

それは「公文書偽造」ではなく「有印私文書偽造」ではないだろうか。
あと、金相場は3000円/キロではなく多分/gだと・・・

忘備メモ・純也の部下兼見張り役(元)
 鳥居洋輔(メイさん)
 犬塚健二(シノさん)
 猿丸俊彦(セリさん)

2024年3月18日月曜日

0473 帝都騒乱 サーベル警視庁2(ハルキ文庫)

書 名 「帝都騒乱 サーベル警視庁2」
著 者 今野 敏    
出 版 角川春樹事務所 2022年8月
文 庫 372ページ
初 読 2024年3月17日
ISBN-10 475844505
ISBN-13 978-4758445054

読書メーター   

 辛くも日露戦争に勝利し講和条約を締結するも、その内容は樺太の半分をせしめたのみ、賠償金はなし。戦費をひねり出すための増税に告ぐ増税に耐えてきた国民の怒りに火が付き、東京市内で暴動となる。市民の怨嗟は首相の桂とその妾の「お鯉」に向けられる。警視庁第一部第一課の刑事達は警備に駆り出され、榎坂にある桂の妾宅に詰めることに。
 途中で死体が出て来てちょっと捜査っぽい雰囲気も出てくるが、全体的に時の空気感を読むような感じ。時は第一次桂太郎内閣。山県有朋、伊藤博文との内紛やら、桂と原敬との協力やら、孫文やらを上手く絡めて、歴史のお勉強とはひと味違う、時代の雰囲気を想像する。
 ラストは、小気味良い。してやられたり。日本にとって大陸が広く自由に感じられた時代でもあったのだろうか。

《日本近代史復習》※ニュービジュアル版新詳世界史図説(浜島書店)参照
徳川家慶 1837〜53
 1852 ロシア船下田に来航
 1853 ペリー 浦賀に来航
徳川家定 1853〜58
 1854 日米和親条約(下田・函館の開港)
 1858 日米修好通商条約
徳川家茂 1858〜66
 1858〜59 安政の大獄
 1860 桜田門外の変
 1862 生麦事件             
 1863 薩英戦争
 1864 四カ国連合艦隊 下関砲撃
徳川慶喜 1866〜67 
 1867 大政奉還・王政復古の大号令・明治改元
明治天皇 1867〜1912
 1869 版籍奉還
 1871 廃藩置県
 1872 鉄道開設(新橋—横浜間)
 1873 徴兵令・地租改正
 1874 台湾出兵・天津条約
 1875 樺太・千島交換条約
 1875 江華島事件
 1876 日朝修好条規(江華条約)・朝鮮開国
 1877 西南戦争
 1879 沖縄県設置
 1881 国会開設の詔
 1881 自由党結成
 1882 日本銀行設立
 1883 鹿鳴館開く
 1885 内閣制度開始
 1888 枢密院設置、市制町村制交付
 1889 大日本国帝国憲法公布
 1890 教育勅語
 1893 条約改正交渉開始(陸奥宗光)
 1894 治外法権を撤廃
 1894〜95 日清戦争 1895 下関上や烏
 1895 閔妃暗殺
 1900 立憲政友会結成
 1901 八幡製鉄所創業開始
 1902 日英同盟
 1904〜05 日露戦争
 1904 第一次日韓協定
 1905 ポーツマス条約  ← イマココ
 1906 夏目漱石「坊っちゃん」発表

2024年3月15日金曜日

0472 サーベル警視庁 (ハルキ文庫)

書 名 「サーベル警視庁」
著 者 今野 敏 
出 版 角川春樹事務所 2018年8月
文 庫 375ページ
初 読 2024年3月14日
ISBN-10 4758441928
ISBN-13 978-4758441926
読書メータ— 
https://bookmeter.com/reviews/119528864

 自分が50歳を過ぎて、自分の人生が「半世紀」を超えたと意識したあたりから、やっと30年、50年という年月が自分の中の丈で測れるようになった。自分が小さかったころ、まだ家の電話は重い黒電話だったし、駅の改札には駅員さんがいて、改札ばさみをチャキチャキさせながら紙の切符に斬り込みを入れていた。子供のころ、終戦は遙か昔のことだと思っていたが、自分が生まれたころからたった二十数年前の事だった。
 明治維新(明治元年・1868年)鳥羽伏見の戦いから、翌年の函館までを国を分けて戦い、その後38年で日本は、そして東京はどれだけ変化したのか。それを目の当たりにした人々はどういう人たちだったのか。戦いに勝った側もいれば、負けた側もいる。そしてどちらもそれぞれの「戦後」を生きたのだ。そんなことを考えながらの読書となり、明治38年(1905年)の東京、警視庁を舞台とするこの話、正直ストーリーよりも、歴史的な興味の方が勝ってしまった。
 ちなみに、スマホアプリで「東京時層地図」というたいそう優れた代物がある。明治初期から現代まで、地図をミルクレープのように重ねたもの。その時代時代の東京の街の様子が、現代の位置感覚と合わせて観察できるので、明治〜戦前くらいの東京が舞台の小説など読むときには必携。
 藤田五郎(新撰組の斎藤一)のキャラクターなどは正直、どうだろう?あまりインパクトを感じなかったのだけど、かえって既読の新撰組本や、これまでは手を出していなかった斎藤一や永倉新八の本を読んでみたくなった。
 陸軍の中の長州閥や、警視庁の薩長閥、フランス派とドイツ派の対立、同じ長州閥の中でも主流派と反主流派が暗闘していたり、なるほどなあ、と思って読む。
 作中に登場した「黒猫先生」は言わずとしれた、吾輩の作家だが、そういえばあの猫は、実際には黒猫では無かったらしい。本の挿絵が黒猫だったので、黒猫説が広まったか? もっとも、三毛猫説も誤りらしいぞ。ペルシャの如き黄色混じりの淡灰色に漆黒の斑入りだとか。ちょっとイメージしづらいが、ひょっとしてサバトラ?いや、キジトラか?いや、もしかしたらサビ猫かも。

 

2024年3月8日金曜日

0471 探花―隠蔽捜査9―

書 名 「探花―隠蔽捜査9—」
著 者 今野 敏       
出 版 新潮社  2022年1月
単行本 336ページ
初 読 2024年3月6日
ISBN-10 4103002611
ISBN-13  978-4103002611
読書メーター 

「それにしちゃ、詳しいな」「神奈川県警ですからね」
海に面しているのは、東京も同じだ。だが、たしかに・・・・

「神奈川県警の人間は、皆そんなに船に詳しいのか?」

 東京を「海に面している」なんて思ってるようじゃあ、まだまだよな。と思う元横浜市民/現東京都民(笑)
 竜崎はまだハマっ子の心を知らない。神奈川県民を知らない。(笑)私も神奈川県民全般のことはよく知らんが、横浜市民は、海と港に対する愛とプライドをDNAレベルで刻み込まれているのだ。おまけに仕事のこととなれば、そりゃあ警備艇のスペックにも港の知識にも詳しくなろう。


 タイトル「探花」とは、科挙3位の者のことだとか。国家公務員上級試験を科挙に例えた。竜崎が入庁3位つまり探花、なんと伊丹が2位だそうだ。
 伊丹の上に出たくて東大法学部を出て警察に入ったのに、伊丹の方が成績が上だったのは、ちょっと皮肉な設定だ。
 さて今作がぼんくら八島の初登場作品。読む前は、レビューを見て何があるのかとドキドキしたが、しょせんは竜崎の敵ではなかったね。うまいこと竜崎の手の平の上で転がされた感じです。歯牙にもかけないとはまさにこのこと。清々しい。

 息子の件は、途中でオチに気づくが、案の定でした。

 今回も殺人事件の犯人を追うのだが、遺体発見現場が横須賀港のヴェルニー公園。昨年私が米空母エイブラハム・リンカーンを見に行った所だ。犯人が米軍基地に逃げた可能性や白人だったとの目撃証言も出て、基地司令と捜査協力を取り付けるために、竜崎が交渉に出たり、日米地位協定などの政治的な味付けも面白かった。竜崎はまた、ファンを増やした模様だ。
 犯人を追いかけて、福岡、千葉、東京と捜査範囲も広がり、あちこちの県警本部に協力依頼の電話を入れるのだが、「あの竜崎さんの頼みなら」という反応をされて、いまいち腑に落ちていないのがおかしかった。
 私の中ではツンデレ妻認定されている参事官の阿久津は、もっとデレるのかと思いきや、筋金入りのツンで、なかなかデレない。そこが味わい深いのだが、ラストでついにデレましたね。

 「竜崎部長は、人を大切になさる方ですから」

正直阿久津と竜崎のやりとりが今一番の楽しみです。 
 
 

0468 初陣―隠蔽捜査3.5―(新潮文庫)

書 名 「初陣―隠蔽捜査3.5―」
著 者 今野 敏    
出 版 新潮社 
単行本初版 2010年5月
文庫本初版 2013年1月
文 庫 352ページ
初 読 2024年3月2日
ISBN-10 4101321582
ISBN-13 978-4101321585
読書メーター 


 スピンアウト的な短編集1冊目は伊丹目線で。幼馴染みの気になるアイツはブレない軸を持つがゆえに、本人は微動だにせずとも周囲が振り回される。とくに伊丹が勝手に右往左往(笑)
 助けるよりは助けられる方が多いようだが、めげないのが伊丹の良いところだ。(笑)愛される三枚目キャラ、伊丹。同期の竜崎の視線はややキツいが、そんな竜崎も憎みきれないのが伊丹という男なのだ。
指揮
 福島県警刑事部長を務めた伊丹。次の異動の内示はなんと警視庁刑事部長。これは栄転だ。同期のアイツの異動も気になる。東大法学部出身の由緒正しいキャリアである彼の異動先は出世の王道を行く、警察庁長官官房総務課長。伊丹の後任は、これまた東大法出身のキャリア。いかにも官僚らしい官僚で、現場主義の伊丹とは相容れず。殺人事件の捜査本部を実地で引き継ぎたいのに、相手にされない。異動日を迎えて伊丹は困りきるが、そんな伊丹に竜崎は的確にアドバイスする。
とりあえず山口出身の後任キャリアは敵地福島で苦労しやがれ、と思う。(笑)
初陣
 同期のアイツから電話。内容は最近世間を賑わせている警察の裏金にまつわる不祥事。助けてくれ、との甘言(?)にのせられてつい、裏金作りの実態についてしゃべったはいいが、今度はその情報を忖度なしで竜崎に使われそうな気がして心臓がばくばくする伊丹。外野から一言いわせてもらえば、交通費はともかく、弁当代が自腹なのは当たり前だ。三食食うのは仕事ではない。「公務員ならだれだってやってるんじゃないのか」「たとえば公立の学校でも・・・」いや、やってないよ〜〜ムリムリ。昭和の時代のことは知らんが。
休暇
 俺だって、たまには休暇を取りたい。温泉にだって行きたい。だけど小心なので悪いことをしているようで落ち着かない。それでも一人で温泉に来てやっと寛いでいたところに、大森署管内で殺人事件があった、おまけに大森署長になった同期のアイツが言うことをきかない、との連絡が入り・・・。アイツは都外の温泉に旅行している伊丹に呆れつつも、どうやら絶対に伊丹の休暇の邪魔をすまい、と決意したらしく、捜査本部を作る、という本庁の意向をぶっちして、1時間で事件をスピード解決。超有能であった。
懲戒
 先の選挙にからんで、公職選挙法違反のもみ消し疑惑が。警務部長から部下の処分を丸投げされた伊丹は板挟みになる。当事者の刑事は伊丹とは旧知の男で、善良な家庭人でもあるのだ。どうしても懲戒免職にしなければならないのか。苦しいときの竜崎だのみ。原理原則の大鉈と、少々の温情で竜崎は解決策を示す。
病欠
 朝起きたらインフルエンザだった。どんなに体調が悪くても出勤するし、現場にでるのが美徳と思っている伊丹は、竜崎に呆れられる。殺人事件で第二方面に捜査本部が立ち上がるが、当該の警察署も周辺の署も、インフルエンザの大流行で戦力半減。捜査どころではない。だが、第二方面で唯一無傷な警察署があった。もちろん大森署。竜崎の指示で、予防とインフル対策は万全だった。
冤罪
 冤罪事件が起こった。伊丹は弱り切る。苦しいときはやっぱり竜崎だのみだが、今回はさすがの竜崎にも名案が浮かばないよう。だが、竜崎の最後の助言が伊丹を救う。
試練
 ううむ。私はこの話は嬉しくないな。舞台裏は見なくて良い。と思った。
静観
 大崎署で捜査ミス?心底心配した伊丹は、大崎署に駆けつける。だが当の幼馴染みの堅物男はまったく焦っていない。目先の情報に飛びつき踊らされる周囲の人間と、正しく物事を観察し、動じない竜崎。ラストの飲み会で、いったい竜崎は何を話したんだか(笑)

2024年3月6日水曜日

0470 一夜 ー隠蔽捜査10ー

書 名 「一夜:隠蔽捜査10」
著 者 今野 敏    
出 版 新潮社 
初 版 2024年1月
単行本 344ページ
初 読 2024年3月4日
ISBN-10 4103002638
ISBN-13  978-4103002635
読書メーター 

 なんだかもやもやする。このシリーズ、ミステリ仕立てにしようとすると途端に失速するような気がするんだけど私の偏見かなあ。捜査に絡んでくる小説家の梅林も、どうにも動きが中途半端で、リアリティがないように思える。
 殺人の動機も浅いし、その浅さを人間の不可解さと解くにはちょっと無理があるような・・・・・
 それに、ちょっと著名な作家とお知り合いになったからって、いきなり息子を会わせるのってどうよ? 安直すぎないか? 捜査員が自分の家族構成などの個人情報を犯罪捜査の関係者に漏らすのは危機管理上あり得ないし、職務上で得た人間関係にプライべートを相談するのもNGだ。こんな風に個人情報を漏らしていたら、家族の安全は守れない。
 竜崎がどうの、というよりも今野敏さんの「公務員」のイメージなのだと思うけど、プライベートな家族の問題に対応するために部下を自宅に呼ぶとか、捜査関係者に家族を会わせる、とか細かいところでは、「ちょっと出てくる」といって職場を離脱する、とか、とてもとてもNGだど思うのだけど。
 とりあえず竜崎には、自分の子供のことは自分で真摯に対応せよ!と言いたい。