著 者 仁茂田 もに
出 版 新書館 2024年11月
文 庫 240ページ
初 読 2024年11月10日
ISBN-10 4403526136
ISBN-13 978-4403526138
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/124161855
比較的最近になってBLを読み出してから、作品を求めてpixivなども読み漁り、オメガバースとかDOM/SUBなんて世界観が生まれていることも知った。最初はこういう「枠組み」に違和感を感じたんだけど、慣れるに従って、考えて見れば、架空の生き物であるドラゴンがいるファンタジー世界なんかも、大勢の創作者や読者で世界観を共有して、素晴らしいファンタジー作品からどうでもいい駄作や、はたまた二次創作まで展開されているわけだから、BLというジャンルでそのような架空の世界観を共有することだってアリだろう、と考えるに至った。
最初は、♂と♂がSEXするためのただの装置じゃないか、と眇で眺めていたのだが、いったんそういう世界観が構築されると、そこにジェンダーが生まれ、それ故の悩みや葛藤や悲劇も生まれ、つまりは物語が生まれるのだ。物語あるところに、良い小説もまたあるんだな。
仁茂田もにさんは、そういった良い小説を生み出す作家さんだ、と私が思うおひとりである。たまたまAmazonで偶然作品を知り、もにさんの作品を求めてアルファポリスにも読みに行った。どれもすごく良い。BLってところは共通項だが、それ以外ではキャラクターや時代や設定もさまざまで、それぞれに面白く、読ませて、読んでいるこちらの気持ちも動く。
で、この作品『あなたの糧になりたい』は、つい最近までアルファポリスで公開されていたので、そちらで一度読了している。
このお話は、オメガバースBLとしてはちょっと異色だと思った。
尽くすオメガに溺愛アルファって書けばありがちに聞こえるいが、アルファが売れない画家で、オメガのヒモ(言葉が悪いね。スマン)ってところがすごく新鮮だ。
喪失の絶望すら絵の糧になることを願う主人公の律の我の強さも異色っちゃあ異色。運命の番を歯牙にもかけないところも面白い。
絵を通してしかコミュニケート出来ていなかった人間関係が不得手の二人が、お互いを失った長い時間を経て、やっと愛を知り、お互いに向き合うことを学んだ。・・・そして二人は幸せになりました。リアルなような童話のような、普通の恋愛小説と何がちがうっていったら、そりゃ、SEX描写ががっつり入っていることだけど、それはなんか、私にとってはそれほど大きな事じゃないような気がするんだよね。気持ちがリアルかどうか、そこがポイントなんだと思う。何はともあれ、仁茂田もにさんは良いです。他の作品もぜひ、商業化して出版してほしいな。