2025年7月6日日曜日

介護日記的な・・・その17 電子レンジも壊れた


 さて、全体的には、前回と同じような内容ではあるのだけど。

 先週、母宅に行ったときに、電子レンジの電源が入らなくなった。
 結構古いものであるので、来るべきときが来たか、という感じではあった。幸い、電源を抜き差ししたり、扉を開け閉めしたり、押したり引いたりしているうちに、接触が回復したのか、また使えるようになった。

 だがしかし、「来るべき時に備えよ」という神の声に感じたりもしたのだ。

 なにしろ、母が今現在できるのは、ガスでお湯を沸かすことと、電子レンジで「チン」することだけ。この二つで、母の自宅での食卓は成立している。
 電子レンジが使えるかどうか、は、母が在宅生活を続けられるかどうか、とほぼ同義なのだ。

 母の在宅介護について、施設入所に舵を切るタイミングとして想定していたいくつかのポイントがある。
① 徘徊が始まり、迷子になる
② コロナやインフルエンザで入院を余儀なくされる、からの退院先としての高齢者施設入所
③ 足の痛みが再発して、ADLが落ち、在宅一人暮らしが困難になる
④ その他、認知機能が落ちて、目が離せなくなる
⑤ 電子レンジが壊れて、自宅での食事が困難になる

 先頃からの、なんだか食事が出来なくなる。なんなら「食事だけ」出来なくなる。というのは若干想定外ではあったが、時同じくして、電子レンジがお亡くなりになる、というのは・・・・やっぱり神様に、真剣に先を考えろ、と言われているのだろうか・・・・・?
(私は無宗教なんだが・・・・)

 とはいえ、特養も、認知症高齢者グループホームも、入りたいと思ってすぐに入れる施設ではない。何事も準備が肝心。ひとまず、えいやっとグループホームの見学に行ってきた。
(炎天下に外出したせいで、帰宅後、かるい熱中症気味。頭痛薬と塩タブレットとポカリで回復。)

 しかし、正直、どうなんだろうなあ、とは思う。

 是非!是非ここに入れてください!! とまでは思わなかった、というのが素直な感想。
 なんというか、全体的に雑然としている。いろんなものが、置いてあったり、壁に貼ってあったり。
 うちの母は片付け魔なので、家の中はそれはもうキレイなのだ。
 母はこの施設で落ち着けるだろうか? それが一番心配だ。

 ただ、スタッフが穏やかで、入所しているおばあちゃん方もみんな落ち着いていて、にこやかだった。多分、人員が充足していて、職員があたふた・イライラしていない。運営が良い証拠だ。いずれにせよ、申し込みしてもすぐに入れる訳ではないので、待機で順番が回ってくるまでに、母の在宅生活がどのように推移するかも、見ていかなければならない。

 で、電子レンジの話に戻るのだが、今週末、突然夕食の支度時に、またウンともスンとも言わなくなった。冷蔵のご飯を温めることができなくなったので、仕方なく、小鍋にいれて少量のお湯で軽く煮る。お粥まではいかず、むしろ湯切りした「湯漬け」っぽい仕上がりになったが、ひとまず温かいご飯にはなった。もはやこれまで、と夕食後に最寄りの家電量販店に購入に走った。単機能レンジで、見かけ(とくに「あたためスタート」ボタンの位置とデザインが、現在使っているものと似ているものを探した。下調べは先週してあったので、あとは決断するだけだった。

 私は車は持っていない。ペーパードライバー歴30年超の大ベテランだ。

 ので、がらがら引っ張る折りたたみキャリーを持って、バス移動。行きは良いが、帰りはレンジの大箱もってバスに乗るんかい?と自問自答しながら、だめなら帰りはタクシーだ!(だがしかし、流しのタクシーが掴まるとは思えない立地。GOアプリは使えるんだろうか・・・? などと思っていたら、バスを降りたと当時にゲリラ豪雨襲来。いったい、なんのお試しなんだか。

 そんなこんなで、苦労して早急に入手した電子レンジを、本日朝、台所に設置。
 幸いにして、母は、扉を開けることは出来た。あたためスタートボタンは、押せるか?・・・・ひとまず声かけすれば押せた。これは何とかなるかもしれない。
 母が一人で使えるかどうかは、これから数日見守る所存。

 電子レンジが壊れたのが、夏で良かったのかもしれない。

 とりあえずレンジであたためなくても、母は冷蔵庫のバナナ、ミカン、パイン、蒸しケーキを食べることができるし、牛乳も温めずに飲める時期ではあるので。ついでに言うなら、日中はデイサービスで、バランスのとれた食事とおやつも頂いているので。

 
 


2025年7月2日水曜日

2025年6月の読書メーター

 引き続き、ル=グウィン月間継続中ではあったものの。『幻影の都市』を読了する前に6月が終わるなり。本命の『西の果ての年代記』3冊と『闇の左手』までは、少なくとも読みたい。だがしかし、ル=グウィンの淡々とした語り口と、どっちかってーと起伏の少ない作風に読み疲れてきたのも事実。なんていうか、とても刺激が少ない。ちょっと、どぎついのに読み慣れすぎちゃったかな?
 さらにル=グウィンと作風が似てるよな、と思って手を出した萩尾望都にハマり、人生何回目かのブーム再来となる。正直ル=グウィンよりも萩尾望都の方がストーリーテラーの才能がある、と思う今日この頃でもある。萩尾望都の作品を探す過程で、ついうっかり秋里和国なんかも発見してしまったり、気にいっていたBLが書籍化されたので再購入したり、そんなことしてるから、Amazonから積極的にBL本を薦められるようになっちゃって、別のBL本に手をだしたり。
 認知症の母は、大人の階段を上りつつあるので、こちらも要注意。読書だけにうつつを抜かすわけにもいかないが、自宅の書棚が溢れたので、段ボール箱4箱ほど、実家に送付。週に3日も実家に通う状況では、正直どちらに本が置いてあっても大差はない。この際、実家に自分用の書き物机と書棚も置こうかと思っている。なんならモニターも。そろそろ、介護テレワークも検討しないと。というか環境整備しないと。

6月の読書メーター
読んだ本の数:23
読んだページ数:7178
ナイス数:968

辺境の惑星 (ハヤカワ文庫SF)辺境の惑星 (ハヤカワ文庫SF)感想
SF小説のカテゴリーなんだけど「空想科学」の「科学」の部分は薄い。遠未来の正に辺境の惑星。植民したものの忘れ去られ、原始共産制社会から中世くらいのどこかの発達段階の現地民族の文化レベルに同化せざるをえなかった入植者と現住民の文化の衝突。そして氷河期レベルの冬の到来で、もう一つの原住民族の民族大移動に蹂躙される危機の中で、原住民と入植者のコロニーが手を結ぼうとするが。内容はほぼfolklore。ル=グウィンのSFはFF=folklore fantasy?fiction?ってカテゴライズの方が合ってるような。
読了日:06月07日 著者:アーシュラ K ル グィン

獅子帝の宦官長〈完全版〉 (エクレアノベルス)獅子帝の宦官長〈完全版〉 (エクレアノベルス)感想
先日、Kindleアンリミで1巻目を、分冊版で2巻目を読んだこのお話。なんと合本して一冊として紙書籍化されたので、入手した。ちょっと本棚に並べておくのが恥ずかしいんだけど、今更恥じらっても仕方あるまいな。エロが濃い官能小説ながら、やっぱりイルハリムが清純で可愛らしい(とはいえ三十路なんだけど)。〇十年前の昔、"やおい”の黎明期を覗き見した身には、このジャンルも成熟したもんだ、と年寄りっぽい感慨を感じる。
読了日:06月27日 著者:ごいち

捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです2捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです2感想
「なろう」ですでに通読済みなので、さくっと読了登録。2巻はノーフォーク農法の取り入れの思案からはじまり、メルフィーナ誘拐からの農奴というなの窮民救済、火鉢の導入と冬支度、セルレイネの寄宿、ソーセージとベーコンとハム製造、そして砂糖の製造着手まで。相変わらずマニアックで面白い。そして美味そうです。ブレないメルフィーナにすこしづつ絆されていく公爵様が個人的には密か(でもない)見所。巻末の参考文献も密かな読みどころ。著者さん、よく勉強してるな〜。
読了日:06月22日 著者:カレヤタミエ

竜王の婚姻 竜の頂と導く者 (下) (エクレアノベルス)竜王の婚姻 竜の頂と導く者 (下) (エクレアノベルス)感想
なるほど、あれほどのボリュームの上巻がアンリミであるわけだ。結構なお値段の下巻である。だけど先が気になり読まずにはいられない。とにかくアレコレあって、物語はどんどん、どんどん破局に向かってなだれていく。最愛の男は絶命し、竜王すら死に瀕し、八方塞がるなかでの唯一の望みとなるのは自分の命のみ。死を選ぶことで、世界の命運は繋ぎ止められるかもしれない。主人公が潔すぎる。ファンタジー世界だからこそ可能な、現代社会が惑う様々な社会問題のごった煮の中で、子供を愛し、人を愛する主人公の芯が物語の背骨になって、この無骨な→
読了日:06月22日 著者:佐伊

竜王の婚姻 黄金の獅子と白銀の狼 (上) (エクレアノベルス)竜王の婚姻 黄金の獅子と白銀の狼 (上) (エクレアノベルス)感想
Kindle版をAmazonにオススメされ、アンリミだったので好奇心でクリックしたのが運の尽き?(いやそれは著者に失礼な!)。よくある異世界BLで竜に嫁した不遇な主人公が溺愛される系だろうとの安易な予測を見事に裏切る、超骨太大河だった。本は厚いは、内容は重いわ、先は気になるわで、ついついの駆け足飛ばし読みになってしまった。(これまた著者に失礼な!)。オメガバースとちょっと似た、惹香嚢という発情期に強烈なフェロモンを発する子宮類似器官を持つ人間と獣人王の婚姻に端を発する物語だが、主人公は全然愛されないまま→
読了日:06月22日 著者:佐伊

青のメソポタミア(2)青のメソポタミア(2)感想
連載当時、ところどころは読んでいたのに、ついに通読できなかった『青のメソポタミア』。ふと思い出して検索したら入手できたのでやっと読了。メソポタミア文明に絡めたSF。星間宇宙船のデザインがちょっと楽しい。武器とかのガジェットはごくあっさり。この将校と感情を持たない補佐官の関係って、こう、SFの定番って感じがするけど、好きなものには違いない。
読了日:06月25日 著者:秋里 和国

青のメソポタミア(1)青のメソポタミア(1)
読了日:06月25日 著者:秋里 和国





TOMOI (1) (プチフラワーコミックス)TOMOI (1) (プチフラワーコミックス)感想
1987年初版。およそ40年ぶりの再読か?『眠れる森の美男』のドクター友井は、年上の男と切ない別れの後、本気の恋をする。そしてその恋人を衝撃的な事件で喪ったあとの、アフガニスタン、野戦病院。『神様。もう死んでも良いですか』 さらりとした描きっぷりだけど、トモイの絶望が哀しい。
読了日:06月22日 著者:秋里 和国

眠れる森の美男 (1) (プチフラワーコミックス)眠れる森の美男 (1) (プチフラワーコミックス)感想
再読。1986年初版。懐かしい。間違いなく初版を読んでいた。日本語の別れの言葉を聞かれて「愛していたよ」と教える。「愛していたよ」「愛していたよ」と言い合って別れる。"アメリカのホモの間で奇病が流行している"という、初期のエイズの噂が日本に入ってきてまださほど時間が経っていない頃の作品でもある。こういう時代が確かにあって、今がある、とやや感慨深くもある。ドーナツの穴は真理。そーいや、この作品であった。
読了日:06月21日 著者:秋里 和国

青い鳥 (プチフラワーコミックス)青い鳥 (プチフラワーコミックス)感想
萩尾望都のバレエパレットロマンシリーズ。全部収獲済みと思っていたが、一冊忘れてた。とは言え再読・再入手だった。バレエシリーズの中ではこれが一番好きかも。踊るという一事に傑出ていても、どこか不器用な踊り手達の恋の舞踏。夢のようなバレエの世界がよく似合う。表紙も美しい。おしゃべりじゃないロブが好きだ(笑)空港でぶっ飛んでくる海賊も好き。この目で目撃したい♪自分に向かってぶっ飛んで来てほしいわけでは断じてない。
読了日:06月21日 著者:萩尾 望都

半神 自選短編作品集 萩尾望都Perfect Selection 9 (フラワーコミックススペシャル)半神 自選短編作品集 萩尾望都Perfect Selection 9 (フラワーコミックススペシャル)感想
『イグアナの娘』を再読したくて入手。萩尾望都自選の短編集だけあって、珠玉の短編揃いである。表題作の『半身』『偽王』『天使の擬態』etc.ほとんどはもともと手元にあった萩尾望都作品集の第二期に収録されているが、この本は紙面が大きく、新鮮な気分で読了。とくに今回は『学校に行くクスリ』がとても良かった。イメージの力がスゴイ。親子関係がしんどい作品が多い。こうやって描きながら、少しずつ昇華させていったんだろうな、モトさん。。。。
読了日:06月10日 著者:萩尾望都









バルバラ異界 (4) (フラワーコミックス)バルバラ異界 (4) (フラワーコミックス)感想
一気に読了。・・・・でも感想書けない。まだ脳が溺れてる。ディディールは『銀の三角』に少し似てる?銀の三角では、結び目が解けて夢として実在したものは消滅してしまったけど、バルバラでは夢が実在に転じた?渡会の人類の過去から未来まで包含する無意識界に響き渡る強い願望と、太古の火星の生命から遺伝子の鎖にのって引き継いだ夢に干渉する力が共鳴して、未来を造り変えた?4巻の途中、話がいったんエズレに収束したときに、あれ?こんな?って思ったけど、その後ラストまでの暴走のような怒濤のような巻き返しが凄かった。傑作だと思う。
読了日:06月15日 著者:萩尾望都

バルバラ異界 (3) (フラワーコミックス)バルバラ異界 (3) (フラワーコミックス)感想
3,4巻一気に読んだので、感想などは4巻とブログの方へ書きました。
読了日:06月15日 著者:萩尾望都




バルバラ異界 (2) (フラワーコミックス)バルバラ異界 (2) (フラワーコミックス)感想
更に人物もエピソードも増え、脳内が大氾濫。北海道の研究所も大洪水。渡会さんがバルバラの世界に受け入れられているのが、なんだかすごい。タカはキリヤなのか? 火星はいったいどのように物語に絡むんだろう。スターレッドも読み返さないと。。。
読了日:06月15日 著者:萩尾望都

バルバラ異界 (1) (フラワーコミックス)バルバラ異界 (1) (フラワーコミックス)感想
文庫本で読もうとして、紙面のあまりの情報量の多さに、小さい本で読むのを断念した。あらためて、Kindle版を入手して読んだが、登録は紙本の方で。(いずれ入手するので!!)登場人物の多さと複雑さで脳が溺れそう。ちょっと最初に戻ってメモ作ります。バルバラというキーワードでつながってくる。出だしがあまりにも幸せなメルヘンだったので、その後のスプラッタがきつい。これから先、どう話がまとまっていくのか、想像もつかない。モトさん、凄い話書いてるな。
読了日:06月14日 著者:萩尾望都

メッセージ (小学館文庫 はA 47)メッセージ (小学館文庫 はA 47)感想
Anywhere But Here シリーズ文庫本2冊目。重〜い『メッセージ』3作でスタートするが、浦島舞ちゃんのお話がなかなか良い。この話はヨハネ視点だったらどうなるんだろう? でも一番心にしっとりくるのは小説家生方さんと洋宇子奥様の話。キャピキャピ(死語?)の大学生より年齢的にも移入し易し。良かったのは『夜の河を渡る』小説家宇佐見先生創作の苦悩。イメージの世界が珠玉。そしてラストのシマウマ母子に心を撃ち抜かれた。モトさんの才能を、改めて見た!
読了日:06月11日 著者:萩尾 望都

山へ行く (小学館文庫 はA 46)山へ行く (小学館文庫 はA 46)感想
小説家の生方さんとその周辺のちょっと日常や常識からズレちゃった、不思議で、哀しかったり妖しかったり、複雑怪奇だったりする人間関係についての短編連作です。『山へ行く』ではなく山へ行けない話。羽が生えた親子のパタパタの話。病気で死んでしまったお母さんが忘れられない息子。幼くして亡くなった実弟が忘れられない兄。口にすることはできなかった感情。別れた好いた男、再婚した男女・・・・残された者にも、幸せになれなかった者にも、それぞれの事情はあって。だけど大切な気持ちや人は忘れなくていい。そんな珠玉の話たち。
読了日:06月01日 著者:萩尾 望都

マージナル (3) (小学館文庫 はA 16)マージナル (3) (小学館文庫 はA 16)感想
都市の社会秩序の破壊を目論む砂漠の男たちはキラ、アシジン、グリンジャを巻き込み、滅亡の時を待つ滅びた都市からの巡礼者、超能力者、やむにやまれず関わった者、自ら飛び込んだもの、それぞれの思惑や人生を複雑に絡めとりつつ、事態は破局に向かう。そしてカタルシス。キラの魂は病んだ地球の魂と呼応して、地球の命の復活の兆しとなる。もう一人のキラはこれから命を育んでいくのか。物語は螺旋を描いて、また砂漠の岩屋に戻った。ナースタースとメイヤードの愛は切なく、アシジンはあくまでも単純で健康的。虚無にはなりきれないグリンジャ。
読了日:06月08日 著者:萩尾 望都

マージナル (2) (小学館文庫 はA 15)マージナル (2) (小学館文庫 はA 15)感想
2300年、地球上の水全てが細菌に汚染されて、"D因子”に感染した女性は不妊となり死に絶えた。抗体はY遺伝子に乗り、男性は抵抗力を獲得して生き延びることが可能になったが、地上に女性はいなくなった。”カンパニー”は地球上にドーム都市”センター”を作り、人口受精により作られた子供を市民に供給する。生みの母の象徴として、各都市に一人の”マザ”が置かれ、かくて地球上には一人の母と大勢の息子というミツバチのような社会が半ば自然発生的に、半ば人工的に誕生した。地球上は壮大な生と進化の実験場と化していた。という
読了日:06月08日 著者:萩尾 望都

マージナル (1) (小学館文庫 はA 14)マージナル (1) (小学館文庫 はA 14)感想
かつて、連載を追いかけ、単行本も持っていたのだけど。今回は文庫で再入手。うん。このSFと砂漠の遊牧民族の感じは、ル=グウィンをさらにクオリティを上げたような感じ。1巻目では、西暦2999年ということは判るが、この地球に何が起こって、一人のマザと短命な男だけの世界になっているのかの謎は明かされず。何しろ、絵が繊細で美しい。最初は真っ白だったキラがだんだん、自我を持っていく感じが良い。
読了日:06月03日 著者:萩尾 望都

2025年6月29日日曜日

介護日記的な・・・その16 母の機能が落ちてきたかもしれない

 急に暑くなったせいか、単に認知症の進行か。

 母がここ数週間、食欲が落ちている・・・・・というか、食事をする能力が落ちてきていると言うべきか。「お腹がすいた」と認知出来なくなってきている(なんだかおかしい。くらいには思ってそう。)とか、時計を見て「食事の時間だ」と判らなくなってきた、という理解力の低下とか、台所に行って食事を温めて食べる、という複雑な行動が出来なくなってきているとか、原因は多分複合的、なようで、でも一言でいえば認知症が進んでいる。
 周囲が辟易するような酷い問題行動がないだけで、だんだん、一人で暮らしていける限界に達してきているのだろう。もともと、2年前には医者には入所を勧められている程度ではあるのだ。

 ここ2,3週間、冷蔵庫のご飯パックの減りがわるいし、買い置きのお惣菜も食べ残しが多くなった。
 そんなで胃も小さくなっているのか、私が一緒に食事するときにも、食べる量が少なめになり、食べ残しをするように。

 認知症が発覚してから、ほぼ丸3年。
 私が通って、母が一人で何とかなる程度に日常生活をフォローすることで、なんとか単身在宅生活を維持してきたが、この夏は転換点になるかもしれない。
 
 7月末にショートステイのお試しを予約しているので、うまくショートを導入できれば、だんだん日数を増やして、特養入所につなげるか。
 しかし、まだADLは自立しているので、認知症グループホームも考えるべきか。
 一度は導入したものの、母の拒否感が強く断念したホームヘルパーを再導入するか。

 現状なら、朝・夕食をきちんと食することができれば、もうすこし現状維持を図れるかもしれない。
 
 介護時短制度を利用して、夕食だけでも毎日・・・・?
 だが、自分の自宅から母宅は、ドアツードアで2時間弱かかる。たとえば、毎日2時間時短をとって、母宅に夕食の世話に通うとして。交通費は、往復で2千円強。4時に職場を出る。6時母宅着。7時までに食事をさせる。自宅に帰るのが夜9時〜10時。現在は週中1回の通いと週末の泊まりで対応しているが、母宅から通勤するにしても、母の朝の時間と合わない。オマケに地獄の通勤ラッシュだ。さらに、交通費だけでも月に5万円くらいかかりそうだ。母宅から通勤をするなら、一時住所も母宅に移して(つまり住み込んで)、通勤手当もらわないと経済が成り立たん。

 思い切って介護休暇を取る。 
 母宅から通勤する。
 時短と、テレワークを活用する。

 だがしかし、私が、自分の自宅を離れたくないんだよな〜。そこが決断の最難関だったりする。

 夫は、母宅に住み込むなら猫を連れて行って、と言う。(もちろん、半分冗談。)
 だが母は猫がキライだったりするし、うちの猫(アビシニアン)は、高齢者に可愛く懐くほど穏やかな性格じゃない。(むしろ猛獣。小型のネコ科の肉食獣に近い。たぶんヤマネコだってもっとかわいげがあるぞ。)

 そんなこんなで、あれこれと頭を悩ましてたら、あちこち痒くなってきた。
 私はストレスは肌にでるクチで。
 
 鼻が痒くなったり、顔が痒くなったり、指に水疱ができたりする。

 身体的疲労よりも、精神的ストレスのほうが影響が出やすいもよう。

 さて、この夏。どうすべかな〜、とまだ思案中。ではあるが、今も今とて、この日曜日の午前中。母は朝食を摂れていない。
 10時に電話をかけて、朝食を食べるように促す。→お返事はよろしいが、食べない。
 10時20分、木村屋のミニ蒸しケーキを電子レンジにいれて「温めスタート」。そして、電子レンジの前から離れた途端に、蒸しケーキのことを忘れた。
 10時40分、台所に行き、電子レンジの中の蒸しケーキに気付き、食す。イマココ。
 

2025年6月22日日曜日

0559・0560 竜王の婚姻 上・下

書 名 「竜王の婚姻 上」
著 者 佐伊       
出 版 ‎ MUGENUP 2024年4月
単行本 544ページ
初 読 2025年6月20日
ISBN-10 4434337041
ISBN-13 978-4434337048
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/128631885 

 Kindle版をAmazonにオススメされ、アンリミだったので好奇心でクリックしたのが運の尽き?(いやそれは著者に失礼だよな!)
 正直、最初は舐めてかかってました。ごめんなさい。
 よくある異世界BLで竜に嫁した不遇な主人公が溺愛される系だろうとの安直な予想を見事に裏切る、超骨太大河ファンタジーだった。なにしろ本は厚い、内容は重い、先は気になるで、ついついの駆け足飛ばし読みになってしまった。(これまた著者に失礼な!)。

 最初はオメガバース?と思ったが、むしろ独自設定。惹香嚢(じゃこうのう)という発情期に強烈なフェロモンを発する子宮類似器官を持つ人々が少数ながらいる世界。世の中を構成するのは人間、獣人、そして惹香嚢持ち。性的には女性、男性、両性、そして男性であっても妊娠できる惹香嚢体。小国(従属国)の惹香嚢体の第四王子が、宗主国の皇帝(実は獣人)に輿入れする事態に端を発する物語だが、主人公は全然愛されないまま話は何年も進むし、竜王と婚姻するのは主人公じゃないし、でどんどん期待を裏切られる展開にぐいぐい引き込まれる。「神山」を頂点とするヒエラルキー社会の硬直化した末期的様相や、獣人に対する差別意識や、神山に対抗するレジスタンスや、奇病の延命法を巡る壮絶な陰謀、意志を奪われた人間、それぞれの人間の立場や苦悩が描かれ、同時に登場人物のキャラが立ち、程良く強くて自立している主人公が苦難に立ち向かい、と実に濃厚で重厚な読み応えたっぷりな大河ファンタジーである。小山田あみ氏のイラストとは、モノクローム・ロマンス文庫の「ヘル オア ハイウォーター」シリーズ以来の再会で、これまた濃厚。主人公の絵柄は自分のイメージとは若干違ったが、じゃあどんな?と言われたら困るかも。

 それにしても、この話、書記官で執政を補佐してるはずのジグルトのやらかしがとにかく酷いんでないかと。主人公のセナへの個人的反感が根底にあるからか、とにかくいろいろと情報をネグって、セナ絡みの必要な情報を皇帝に上げないから、皇帝が見事に後手に回って、非常によろしくないのだ(笑)。だから、この話が進む、といえなくもないけど。最悪なのは出産時に無視放置だ。そうなった王側の事情は番外編で明かされるが、さすがにまずい。全体的にさらりとその主因となったジグルトのしでかしは流されてるけど、本人自覚しているように、これは万死に値するぞ。おかげて、セナと皇帝は関係を深めるチャンスを逸してしまうし、護衛官の白銀狼イザクにセナの気持ちをもってかれちゃう遠因にすらなっている。まあ、この三角関係の捻れは話の核心ではあるので、ジグルトは役目を果たしていると言えなくもないけどね。

書 名 「竜王の婚姻 下」
著 者 佐伊       
出 版 ‎ MUGENUP 2024年4月
単行本 544ページ
初 読 2025年6月20日
ISBN-10 443433705X
ISBN-13 978-4434337055
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/128631885   

 あれほどのボリュームの上巻がアンリミであるわけだ。先が気になり読まずにはいられない。下巻をKindleで読んだあと、やっぱり紙本を手元に置きたい、と上下巻購入したので、結局下巻は2冊分購入したことに(笑)。
 とにかくアレコレあって、物語はどんどん、どんどん破局に向かってなだれていく。鱗病の蔓延、惹香嚢体の命運、最愛の男イザクは絶命し、竜王すら死に瀕し、八方塞がるなかでの唯一の望みとなるのはセナ自身の体のみ。自分の死を選ぶことで、世界の命運は繋ぎ止められるかもしれない。この決断に至る主人公が潔すぎる。ファンタジー世界だからこそ可能な、現代社会が惑う様々な社会問題のごった煮の中で、子供を愛し、人を愛する主人公の芯が物語の背骨になって、この無骨な物語を成立させている。ほんと飛ばし読みで申し訳なかったが、物語の先を読みたい気持ちに字を目が追うスピードが追いつかなかったよ。上下巻をほぼ1日で通読した。そして紙本を入手してみれば、上下巻あわせて厚さは6センチ、ページは2段組のボリュームだった。で、そのあと一週間かけてじっくり読み直した。
 
 番外編の皇帝(上皇)の気持ちが切ない。150年後の竜王の命によって贖われる世界。そういう竜王を育て上げたセナと、竜王の伴侶アスラン、その二人と竜王を、そして二人が世を去ったあとには一人で守り続けたであろう王に祝福を。

0546・0558 捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです(単行本)

書 名 「捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです 1」
著 者 カレヤタミエ
出 版 TOブックス 2025年1月
単行本 352ページ
初 読 2025年2月22日
ISBN-10 4867944211
ISBN-13 978-4867944219
読書メーター
 https://bookmeter.com/reviews/126248779

 「小説家になろう」年間第1位(2024年4月~10月現在)。ついに書籍化! とのこと。
 私は、「小説家になろう」のサイトを徘徊していて、ちょっと気になって読み始めて、あまりに面白いので一気読みした。これだけ面白くて力のある著者さんであれば、それ相応の敬意を表すべき!と思って書籍版も購入。(ちょっと勘違いして(?)、Kindle版もDLした。)

 最近、ぽつぽつとライトノベルを読むようになったが、これは面白い。蘊蓄もなかなかのもの。

 攻略ゲームの中に日本人の女子高生が転生、って設定はあまりにも「なろう系」だし、タイトルも書店の本棚に並んでいたら絶対に他の本と区別がつかないと確信が持てるけど、こういう宝石が埋まってるんだな、あの界隈には!との認識を新たにした。
 侯爵家の令嬢に生まれながら、出生に疑念も持たれて疎まれつつ育ち、結婚年齢に達したとたん公爵家に嫁がされたのに、初対面で「お前を愛するつもりはない」と言い渡される。結婚生活も営むつもりはないから、ほどほどに贅沢して体面を保って勝手に社交でもしながら生活しろ、と夫となった公爵アレクシスに言い放たれるメルフィーナ。そこは絶望するところだが、アレクシスから辺境の領地の領有権をもぎ取り、翌日には領地に向かって出立。荒れた開拓地と貧しい領民を目の当たりにし、持ち前の知識で領地開発と農業改良に乗り出す。
 もちろん、まるで経験のない女子が知識だけで農業はじめて、あまりにもトントン拍子なのは否めないが、メルフィーナの行動力と優しさと、豊富な知識と、内面の深さ、お付きの二人や公爵アレクシス、公爵の護衛騎士のオーギュストなどなど、登場するキャラクターがそれぞれに個性が立っていて、非常に物語を面白くしている。なにしろ、主人公メルフィーナが、公正で真摯で尊い。
 転生ものって、こんなに面白くなるんだ! と目からウロコが落ちた。

 なお、番外編の2本も良し。おちゃらけた見かけのオーギュストが良い味出してるのよね。こういうキャラは大好きだ。(グレイマン・シリーズのザックっぽい。)
 今年中に続刊も出るようなので、(すでに読んでしまってはいるが)楽しみにしている。
 ラノベらしく結構イラストが挿入されているけど、文章そのものにイメージ喚起力があるので、挿絵は自分の中のイメージとぶつかってしまった。もともと、なろうサイト内の作品には挿絵はないので、文書だけで勝負するのも良いのではないかと思う。
 なお、後書きによると、著者のペンネームの「カレヤタミエ」は かれや・たみえでもなく、かれやた・みえ、でもなく「かれやたみえ」なんだそう。読み方ムズいぞ。

 *〜・・・〜**〜・・・〜**〜・・・〜**〜・・・〜**〜・・・〜**〜・・・〜**〜・・・〜*

書 名 「捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです 2」
著 者 カレヤタミエ
出 版 TOブックス 2025年6月
単行本 400ページ
初 読 2025年6月21日
ISBN-10 4867945986
ISBN-13 978-4867945988
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/128632378



「なろう」サイトですでに通読済み。単行本化のお楽しみは、今回はどこまで収録かな?というのと、巻末の付録短編。
 2巻はノーフォーク農法の取り入れの思案からはじまり、メルフィーナ誘拐からの農奴獲得を口実に窮民救済、火鉢の導入と冬支度、メルフィーナが作ったエールは美味く、サウナは極楽。セルレイネの寄宿、ソーセージとベーコンとハム製造、そして砂糖の製造着手まで。相変わらずいちいち記述がマニアックで面白い。そして美味そうです。強いて難癖つけるなら、いくら知識があるとはいえ、実践経験がないのにぶっつけ本番で失敗のないところ、かなあ。でもそこはファンタジーってことで目くじら立てず、楽しもう、という気分に十分になれるだけの説得力はある。
 ブレないメルフィーナにすこしづつ絆されていく公爵様が個人的には密か(でもない)見所。巻末の参考文献も見応えあります。著者さん、よく勉強してるな〜、と思います。




2025年6月15日日曜日

コミック バルバラ異界

書 名 「バルバラ異界」  2007年日本SF大賞受賞
著 者 萩尾 望都
連 載 flowers 2002年9月号~2005年8月号
出 版 小学館  2003年6月〜2005年9月
初 読 2025年6月15日
出 版 2003年6月
ISBN-10  091670415
ISBN-13  978-4091670410
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/128495589 

 フワフワして優しい、ファンタジーSFっぽいテイストで始まったバルバラの世界。しかし、やがてこの世界が青羽という眠り続ける少女の夢の世界であることが判ってくる。
 舞台は心理学的手法の延長のような感じで人の夢の中に入り込む「夢先案内人」や、前世療法など、ちょっと前のSFやサスペンスの流行のテイストなんかを感じさせつつ、不老長寿の研究や、脳内イメージスキャン技術などが出て来て、近未来感を醸す。日本の学制も、高校が寮制の「大学進学校」になっていたり、高速道路は自動誘導システムになっていたりして、近未来の世界観の作り込みが細部まで行き届いている。
 描かれる現実世界は2052年。
 バルバラ界とバルバラの登場人物たち、現実世界の主人公の渡会時夫の関係者、青羽系列の親族関係、青羽周辺の研究者、キリヤの学友たち、もろもろ登場して、頭の中に情報が収まりきらず、アップアップと溺れる感じ。たまらず、とりあえず1、2巻までを再読して人物リストを作成しつつ、物語を再チェックした。一巻目では、物語がどこに向かっていくのかすら、皆目わからない。ただ、導かれるままに、山ほどの疑問を抱えたままヨタヨタ進んでいく感じ。(注:ヨタヨタしているのはストーリーではなく、私の頭!)萩尾望都の大傑作を今、読みつつあるのでは、との予感がひしひしとする。
 1巻目の章立ては以下のとおり。以下、1巻から4巻まで、自分の頭を整理するためにあらすじをまとめる。ネタバレになるので、未読の方はご注意あれ。

その1 世界の中心であるわたし
その2 眠り姫は眠る血とバラの中
その3 講演で剣舞を舞ってはならない
その4 彼の名は絶望 彼女の名は希望
その5 エズラはどこへ消えた?
その6 六本木で会いましょう

【人物】 ※バルバラ人
  青羽(アオバ)      世界の中心であるわたし。ジジからは「よそ者」と誹られている。
  タカ    アオバの従弟。
  パイン   ダイヤの養子。タカの兄弟。アオバの従弟。
  マーちゃん 青羽の母(養母?)
  ダイヤ   マーちゃんの妹。タカの母。 
  千里さん  夢見。夢占い。「夢はね 遠い未来か、遠い過去からのメッセージなんだ」
  雷ジジ   千里さんの祖父。
  ヒナコ   4人養子を取ったが、みんな早逝してしまって悲しんでいる
  ドクター  「ここじゃ なかなか子供が育たんからなァ」
  光合成するおねえさんたち         草木の生えた町の屋根の上で、日光浴。
  秋葉原コスモス      子役俳優。もう30年くらい子役をやっている。
  ※現実世界の人
  渡会時夫        「夢先案内人」(ドイツの〈21世紀ユング研究所所属)を仕事とする。
        キリヤの父。「ベルリンのハンバーグ屋事件」(ベルリンで起こった大量カ
        ニバリズム(食人)事件)の解決で著名になった。ただし、渡会自身はその
        影響で黒髪が白髪に。眠り続ける十条青羽の夢にアクセスすることで、《バ
        ルバラ》に行く。
  大黒先生        渡会の師? 現在は「前世療法」を行っている。火星研究にも詳しいよう。
        もともとは、パーキンソン病の世界的権威。
  北方キリヤ お茶の水山ノ上大学進学校(高校に相当)の生徒。渡会時夫の息子。かつ
        て、孤独心から心の安息地としての《バルバラ》を創作した。火星の夢を見
        て、火星の砂を引き寄せる。
        「世界はぼくを捨てた」「世界はぼくを愛していない」
  北方明美  キリヤの母。渡会の前妻。世羅ヨハネという神父に傾倒している。  
  花園蕾香(ライカ) キリヤの学友。ガールフレンド。アフリカ生まれの神田育ち。両親
        はタンザニアに研究旅行に行っているときに、行方不明になっている。
  風仁    ライカの従弟。秋葉原でバイトしている。
  百田太郎        遠軽(北海道)にある、北海道東中原人間科学研究所の研究者。現実の
        十条青羽の治療に携わる。
  十条青羽  ある凄惨な事件から7年間、東中原研究所で眠り続け、ポルターガイスト
        引き起こしている。幼少時は重篤なアレルギーがあったよう。
  十条茶菜        青羽の母。2024年12月30日、夫の勝一を殺害して、心臓を取り出し、自身も
        自殺。心臓を取り出し、青羽に食べさせた?  
  十条勝一  青羽の父。十条製薬の社長だった。
  十条菜々実 十条茶菜の母。青羽の祖母。菜々実とエズラが離婚したのが2006年。
  エズラ・ストラディ 十条菜々実の前夫で、茶菜の実父。十条製薬の特別研究員だった。
        ドイツと日本のハーフ。菜々実の叔母の静枝と駆け落ちした。晩年は火星研
        究(惑星生物学)を研究していた?
  世羅ヨハネ 神父。世界各地で里親施設を運営。明美はヨハネを「前世の恋人で夫」と信
        じている。ニューヨークで児童施設の〈グリーン・ホーム〉を運営。
  目白秀吉  六本木で〈目白サイコ・クリニック〉を運営。子供の頃の十条青羽と母の茶
        菜がクリニックに通っていた。青羽のポルターガイストで起こった竜巻に巻
        き込まれて死亡。
  目白ましろ 目白秀吉の息子。
  カーラ・シスルバーグ 〈21世紀バルトハウス〉(スイスにある医学研究企業)の職員。


*細胞活性薬《バルバラ》  十条製薬のヒット商品。細胞を活性化させる薬(若返り)の研究。もともとはエズラ・ストラディの研究だった。その薬品名が《バルバラシリーズ》。《バルバラ》は細胞を活性化し、若返らせる合成蛋白質の名前。プリオン蛋白質と同様、胃腸で消化分解されずに人体に取り込まれる。

 夢前案内人を仕事とする渡会時夫は、眠り続ける少女十条青羽の夢を探るために、北海道の研究所に招かれる。時夫が少女の夢に潜ってみると、少女は「バルバラ島」という世界の幸せな夢を見続けていた。しかし、このバルバラ島は渡会の離婚した元妻が引き取った息子であるキリヤが創造した空想の世界だった。
 十条青羽が眠り続けるきっかけになった凄惨な事件の背景を調べるために、時夫は青羽の祖母で十条製薬の会長でもある祖母菜々実に会いにいく。そこで、菜々実の前夫であるエズラの話を聞く。エズラの情報はほとんど見つからないのだが、若い頃の画像があり、その画像を見た時夫は、エズラ博士を画像加工で加齢させると、時夫の元妻の明美が傾倒している世羅ヨハネの顔になることに気付く。世羅ヨハネは、ニューヨークで〈グリーン・ホーム〉という養子縁組のための児童施設を運営していた。
 一方、現世の青羽が時夫の息子であるキリヤの夢の中に現れ、渡会時夫に青羽の夢に干渉させるな、とキリヤに警告する。

出 版 2004年3月
ISBN-10  4091670423
ISBN-13  978-4091670427
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/128498109


その7 きみに肩車してあげた
その8 冷蔵庫の中のわたしを食べて
その9 火星の海で泳いでいた
その10 お父さんお帰りなさい
その11 お誕生日は同じ10月1日
その12 東池袋カササギのパン屋

 バルバラ島は実在するのか。眠っている青羽を目覚めさせたら、バルバラ世界はどうなるのか。もし、青羽の夢の世界が完成したら、現実世界と逆転して、現実が「誰かの夢」の世界になるのか? 
 そして細胞活性剤(若返り薬)の〈バルバラ〉を作ったエズラと、夢の世界バルバラはどのような関係があるのか。そして、青羽の夢とキリヤの関係は?
 時夫は、長年生き別れていたキリヤの父親として、キリヤの助けになりたいと願うが、キリヤは時夫を拒絶。一方、バルバラ世界では、キリヤにも時夫にもよく似た少年タカが、時夫を父と慕う。
 北海道の東中原研究所は、眠る青羽の力で水が湧き水没状態に。事態を打開するために、再度青羽の夢に潜った時夫は、《バルバラ世界》にふたたび温かく迎えられるが、徐々にバルバラの秘密に触れることになる。この夢世界の世界観にもカルバニズムが絡んでいる。
 それは、バルバラ人の不老の秘密はバルバラ人同士の食人にあり、そのバルバラ人の遺体が〈外の世界〉の不老不死の製薬に絡んでいる、という不穏な世界観だった。バルバラで4人目の養子を失って自殺したヒナコの葬儀は、実はヒナコの心臓を食する儀式であり、ヒナコの心臓を夢の中で食べた時夫は、現実世界で心停止した。必至の救命で現実世界に生き戻った時夫は、自分の記憶の中の乳幼児のキリヤのイメージがタカのイメージで上書きされていることを自覚。記憶がバルバラのイメージで改編されているのではないかと不安に駆られる。 
 現実の青羽の自我は、キリヤと一つになることを希求している。
 東京のキリヤの学校に、ニューヨークのグリーン・ホーム出身のパリスが転入してくる。
 キリヤは、ニューヨークで世羅ヨハネが運営していた児童施設〈グリーン・ホーム〉が、里親の依頼により試験管ベビーを作っていたこと、パインとタカがその施設で作られた子供であったことを知る。そして、世羅ヨハネは行方が知れず、〈グリーン・ホーム〉は閉鎖されていた。
 バルバラ世界と現実世界との関係を探る時夫は、バルバラの中の時間が2150年であることを知る。バルバラのマーちゃんは、もともとは東池袋で「カササギのパン屋」という小さなパン屋さんを営んでいたらしい。マーちゃんは、2130年に戦争が起きて人工衛星が落とされて地上に降り注ぎ、マーちゃんの家族も家も皆燃えた、という。また、バルバラの人達は「閉じ込められて血を採られて」いるらしい。もしや、ドイツの研究施設では、火星由来のタンパク質を持つ人々を眠らせ、いわば培養し、血液を採取して細胞活性剤バルボラを製造しているのではないのか?夢の《バルボラ》の人々は、その研究所で眠り続ける人達なのか? キアヌ・リーブス主演の『マトリックス』のような世界観が読んでいる自分の頭をよぎるが、物語はこの点には深入りしなかった。(と思う)

出 版 2004年12月
ISBN-10 4091670431
ISBN-13 978-4091670434

その13 長い長い遺伝子の物語
その14 大人にだってわからない
その15 遠軽への遠い道
その16 ひとつになりましょう
その17 誰もあたなの名前を知らない
その18 はじめてのことだから

 青羽は繰り返しキリヤの夢を訪れ、キリヤは青羽から、火星の生命体について教えられる。火星の生命体は、お互いを食べ合うことで、相手の記憶コードを取り入れることができ、全体で一つの記憶と意識を保持していた。火星の生命は遠い過去に絶滅したが、その生命を構成していたタンパク質は、隕石とともに地球に降り注ぎ、地球の生命の遺伝子の中に深く潜航した。(狂牛病の原因物質のプリオンタンパク質が、消化どころか燃焼も腐敗もせずにその構造を留めることを考えれば、このような発想はアリだと思った。)
 そして、その火星の生命の記憶は遺伝子コードの中に組み込まれ、それを引き継いだ青羽の記憶となっており、その青羽に共鳴するキリヤのなかにも潜在した。
 ひょっとして青羽は、グリーン・ホームの4人の子供のうち、死んだことになっている一人なのでは? と一瞬思ったが、そもそも青羽はエズラの実の孫なのだから、エズラの遺伝子をつまりは記憶を受け継いでいるのだ。そしてその記憶は、心臓の筋肉をある特殊な条件下で摂取することで、活性化されるらしい。

 時夫、キリヤ、菜々実その他は、青羽に会うために北海道に向かう。その途中、女満別の空港で、キリヤが老化した世羅ヨハネを目撃。世羅ヨハネは若返り治療を受けるために搬送されるところだった。

 時夫はキリヤの夢の中で現実の青羽に出会い、青羽が《バルバラ》を作ったいきさつを聞き出す。「わたしは火星の記憶をどうかたちにすればいいのかわからなかったけど、島をみつけてここに作ればいいと思ったわ 未来を」
 伊勢では、キリヤの母明美が、本物のキリヤはアレルギーで死に、「ヨハネが生き返らせてくれた」と衝撃の告白。
 菜々実からは、エズラの存在を抹殺したいきさつが証される。
 ここにいたって、バラバラだった情報が、エズラとエズラの研究に集約されてくる。
 不老不死のバルバラタンパク質、人工授精で、火星遺伝子を受け継いだ試験管ベビーたち。バルバラタンパク質は、有害な代謝物を生成するため、生まれてきた子供たちは、ほとんどが重度の免疫不全や心臓病で死んだが、エズラが世羅ヨハネとなった後も研究は密かにつづけられ、生存に成功した4人の子供たちが、グリーンホームで育てらた。うち一人は死んだキリヤの代わりに明美に与えられ、二人は、3人の女性の老化治療の研究に使用され、パリスだけが生き残った。

出 版 2005年9月
ISBN-10 409167044X
ISBN-13 978-4091670441
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/128508714

その19 ずっとあなたを愛していた
その20 死者からのメッセージ
その21 バルバラ崩壊
その22 花小金井ヒコバエ保育園
その23 ぼくのキリヤをかえしてくれ
その24 遠い過去から遠い明日へ

 女満別の老人病院で若返り治療を受けたアズーレ=エズラ=ヨハネは、最愛の妻だった菜々実と再会し、全ての秘密とデータをキリヤに手渡して亡くなる。ここまでで、大方の秘密が明らかになった、と読者に思わせ、作中の一行もいったん眠り続ける青羽を研究所に残し、なにかが不完全なまま解散の流れになるが、そこからの怒濤の展開が驚異的だった。

 大黒から、本当のキリヤは2歳で死に、グリーン・ホームのタカがキリヤに成り代わったという仮説を聞かされ、真実を突き止めようと渡会は青羽の夢を通じて三度バルバラに潜り込む。しかし、そのバルバラには破局が訪れていた。未来の2150年、地球政府は火星と決裂し、火星人の遺伝子を持つバルバラ人の抹殺が決定された。時夫が訪れたとき、バルバラ島は、政府の攻撃で蹂躙されていた。時夫は生還するが、バルバラは消滅。

 そしてキリヤの突然の事故死。
 キリヤの蘇りを必死で願う時夫の思念と、青羽の未来に干渉する力が最大化されたときに、起こったこと。
 エズラによく似た千里もまた、彼の血筋なのだろうか。もしかしたら、タンザニアの奥地から生還した花園夫婦の子供の子孫が千里なのかもしれない。その結果の起こったことを初めは拒否し、混乱し、徐々に受け入れる時夫の心理描写が、畳みかけるようで凄い。

 時夫は記憶を再体験し、徐々に記憶が置き換わっていくことを自覚する。

 2052年の火星基地では、化石化した生命の痕跡が発見され、火星にいた基地の地球人たちは、何かの感染症を発症し、死んだ人間の心臓を食べるカルバニズムが発生したようだ。おそらく、ここから地球人と火星人の分化がはじまり、80年後の2130年には火星は地球を攻撃。戦争となる。
 その後2150年に和解が成立。その時代のキリヤや青羽は生き残る未来を得る。
 一時は時夫の息子として2052年に存在したキリヤ(タカ)と、2052年に肉体が死んだ青羽の魂も、それぞれ2150年時点で生存し、おそらくは幸せになるであろう未来が構築されただろう。
 2052年、青羽とキリヤが作った現実と2150年のバルバラ島との接点はほどけ、青羽が作りあげたバルボラ島の未来は現実の未来に、2052年の時点から見た『バルバラ異界』は消滅した。

 いずれにせよ、すごい。すごい物語を読んだ。
 アーシュラ・K・ル=グウィンを読んでいる流れで、ル=グウィンと世界観が似ている(と思える)萩尾望都を読んでいたのだけど、正直いって、萩尾望都の方がはるかに才能がある、と思うようになってきた。

2025年6月8日日曜日

コミック マージナル(小学館文庫1〜3)



書 名 「マージナル」 
著 者 萩尾望都
初 出 雑誌「プチフラワー」1985年8月号~1987年10月号に連載    

 どなたかが、この作品をフェミニズムと結び付けていたのを目にした。
 正直、この作品をそういう視点で見たことは、これまでにまったく無かった。
 だって、女、出てこないじゃない。
 地球上でかろうじて女の要素があるのは、XXYの男の子だけ。
 
 しかし、たしかにフェミニズムの視点からすると、逆説的に面白い。なにしろ、女性がいない。
 2300年に突如地球を席巻した細菌汚染。海も川も湖も沼も水という水は汚れ、雑菌、プランクトン、細菌、微生物で赤くメレンゲのように泡立ち、人間は"D因子”に感染し、生殖能力を失った。人類は月や火星に逃れ、女性と大型動物が死に絶えた地上は、自然や生命が甦るかどうか、の壮大な実験場となった。
 人類はD因子に対する免疫を獲得するが、この免疫はY遺伝子にしか乗らないので、女は生き残ることができない。
 そこで、月の人類は、地球に卵子を持ち込み、地上の男達の精子によって受精させ、試験管で培養された子供たちが供給されるシステムを作りあげた。

 700年後。地上は、一人の母(マザ)と大勢の息子達による、ミツバチ型の社会を構築し、だれもその世界の在り方に疑問を持たなくなっている。しかし、マザは老いて衰え、子供の供給が減り、不安と不穏が地上に蔓延していた。

 というところからの物語。
 女性のことを考えるにしても、生殖や次世代の産出を抜きに、女性の在り方を云々することはできない、ってことを具体的が具体的に突きつけられてるところが面白い。色子制や色子宿などの、性欲解消を代替するシステムが出来上がっているのも面白い。
 地球の人口は、女性の提供卵子に支えられているってところもスゴイ。

 ストーリーを動かすのは、マージナル計画を推進するメイヤード。そしてイワンというマッドサイエンティストが創り上げた4人の子供たち(キラ)と、イワンの足跡を追う、もう一人の科学者ゴー博士。この直情で声がデカく、周囲を憚らないKYが、良くも悪くも物語を転がす。ほんとうにゴー博士はうるさいのだけど、えてして現実社会でもこういう人物が事態を推進するんだよな。

 メイヤードとナースタースの愛は切なく、アシジンは単純で健康的。グリンジャは虚無にはなりきれない。アシジンとグリンジャのキラは、死んで病んだ地球に生命の息吹を吹き込むのか。最後に残ったキラは、どちらかの、もしくは二人の子供を産むのだろうか。地上のキラの子供たち、そして、地球の生命はこれからどうなっていくのか。希望を感じさせる物語だった。

0557 辺境の惑星(ハヤカワSF文庫版)

書 名 「辺境の惑星」
原 題 「Planet of Exile」1966年
著 者 アーシュラ・K・ル=グウィン    
翻訳者 脇 明子    
出 版 早川書房 1989年7月
文 庫 215ページ
初 読 2025年6月7日
ISBN-10 4150108315
ISBN-13 978-4150108311
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/128345663

 まず、この「辺境の惑星」の設定が面白い。
 太陽は、竜座のγ(ガンマ)、エルタニン。竜座は(この地球の)北の天空の北極星を半円に取り囲んでいる星座で、エルタニンは北極星からは一番遠くに見える二等星。
 その恒星を太陽とするこの惑星(作中ではこちらも「地球」と呼ばれる。)は二重星で、こちらの地球の月よりも(おそらくは)はるかに大きく、それ故、重力の影響も強い月を持つ。
 月の影響による潮の満ち引きは、毎日15フィートから50フィート、というから満潮と干潮では、4メートルから15メートルの海面高の差を生む。干潮から満潮に向けて海が満ちてくるときには、毎日津波のように潮の壁が押し寄せる。ダイナミック!
 月と惑星がお互いを巡る公転周期は400日。月の満ち欠けは400日をかけてゆっくりと行われる。この二重星が恒星(エルタニン)を一回りする公転周期、つまり1年は60ヶ月=24000日、一日の長さについては言及されていないので、ひとまず地球日を当てはめるとして、四季が巡るのに、地球年では65年ほどかかる計算。(作中では、60年と書かれているので、もしかしたら一日の長さは地球よりも短めなのかもしれない。)
 おそらくだが、それだけ月が大きいとなると、月の公転でこの惑星も振り回されるだろうから、一月400日の間にも相当の寒暖差があるのではなかろうか。そして、60ヶ月(地球年で60年)の惑星の公転周期では、氷河期と温暖期ほどの寒暖差が生まれる。

 そんな惑星にもとから生息するヒューマノイド(ヒルフ)と、後から植民した地球人のコロニーが、冬(=氷河期レベル)の脅威と、その天候の中で生まれる生物の大移動によりもたらされる民族存続の危機に立ち向かう、そんな話。この惑星運行のダイナミズムをまず、世界観として楽しもう。

 この小説は、言うまでもなくSF小説のカテゴリーなんだけど、これまでに読んだル=グウィンのSFすべてに当てはまるが、「空想科学」の「科学」の部分はとても薄め。どちらかというと民俗学、folklore。ル=グウィンが70年代以降の米国を代表するSF作家の一人であることには無論異議はないのだが、個人的には、SFというよりはFF=folklore fantasy?fiction?ってカテゴライズを奉じたくなる。だが、それはさておき、物語は起伏に富み、とくに主人公の一人のロルリーの造形もとても良く、面白く読めた。

 遠未来の辺境の星域の惑星。植民したものの、『ロカノンの世界』でも語られた、敵対する異星文明の侵攻の煽りで惑星に置き去られ、忘れ去られた植民者たち。植民星の先住文明に影響を与えることを禁ずる法律を遵守し、原始共産制社会から中世くらいのどこかの発達段階でしかない先住民族の文化レベルに同化せざるをえなかった入植者と現住民の文化の衝突。そして氷河期レベルの冬の到来で、もう一種の北方の先住民族の暴力的な民族大移動に蹂躙される危機。先住民と入植者のコロニーは生存をかけて手を結ぼうとするものの、異文化の排他や、血族や男の沽券なんかも絡んで一筋縄ではいかない。その物語の中で、渦中の主人公ロルリーが異郷の人々の中で静かに意思の強さと賢さを発揮する様子がとても好ましい。(読んでいないけど)ネイティブアメリカンのイシもそんなだったのだろうか?などと想像。ル=グウィンの原体験に根差した作品なのであろうと感じさせられる。
 
 なお、やっとヒルフの指すところがはっきりした。HILF。ハイリー・インテリジェンス・ライフ・フォーム(高度な知性を有する生命体)の頭文字。実は先に読んだ『ロカノンの世界』にも登場していたが、『最高の知性を有する生命体』とサラリと日本語に翻訳されていたために、おそらくこれだろうな、とは思ったが、確信が持てていなかった。なお、『ロカノンの世界』の第1章は、独立した短編『セムリの首飾り』として、ハヤカワSF文庫の『風の十二方位』に収録されており、こちらの翻訳では「高度な知性を有する生命体」にハイ・インテリジェンス・ライフ・フォームと親切にルビが振ってあった。ちょっとすっきりした。

2025年6月2日月曜日

発表順に並べ直して再掲 ル=グウィン作品一覧(邦訳のみ)

ル=グウィン 作品一覧(邦訳)年代順


1966 ロカノンの世界  サンリオSF文庫/ハヤカワ文庫(別訳)
1966 辺境の惑星       サンリオSF文庫/ハヤカワ文庫
1967 幻影の都市    サンリオSF文庫
/ハヤカワ文庫
1968 影との戦い A Wizard of Earthsea
1969 闇の左手     ハヤカワ文庫(新版)★
1971 こわれた腕環 The Tombs of Atuan
1971 天のろくろ     サンリオSF文庫
/ブッキング(改訂復刊)
1972 さいはての島へ The Farthest Shore
1974 所有せざる人々  ハヤカワ文庫★
1975 風の十二方位   ハヤカワ文庫
-主に初期作品集
1976 世界の合言葉は森/ アオサギの眼 (1978)  ハヤカワ文庫
1976 どこからも彼方にある国 あかね書房★
1976 オルシニア国物語  ハヤカワ文庫★
1979 マラフレナ 上・下    サンリオSF文庫
1979 夜の言葉‐ファンタジー・SF論  岩波同時代ライブラリー
/(改訂)岩波現代文庫
1980 始まりの場所  早川書房「海外SFノヴェルズ」★
1982 コンパス・ローズ    サンリオSF文庫/ちくま文庫
 
1985 オールウェイズ・カミング・ホーム上・下 平凡社
1988 空飛び猫
1989 帰ってきた空飛び猫
1989 世界の果てでダンス   白水社(新装版刊)★
1990 帰還 - 最後の書 Tehanu: The Last Book of Earthsea
1992 「ゲド戦記」を‘生きなおす’  (
”Earthsea Revisioned” オックスフォード大学で
   開かれたChildren’s Literature New Englandの大会で講演)
1994 素晴らしいアレキサンダーと空飛び猫たち
1994 内海の漁師    ハヤカワ文庫★
1995 赦しへの四つの道 早川書房「新ハヤカワ・SF・シリーズ」
1998 文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室  フィルムアート社★
1999 空を駆けるジェーン - 空飛び猫物語
2000 言の葉の樹     ハヤカワ文庫★
2001 ゲド戦記外伝(ドラゴンフライ) Tales from Earthsea 
2001 アースシーの風 The Other Wind
2002 世界の誕生日    ハヤカワ文庫(全8篇)★
2003 なつかしく謎めいて  河出書房新社(連作短編)
2004 ギフト ★
2004 ファンタジーと言葉   岩波書店★
2006 ヴォイス★
2007 パワー★
2008 ラウィーニア 河出書房新社/文庫★
2011 いまファンタジーにできること      河出書房新社
2012 現想と幻実 ル=グウィン短篇選集  青土社(全11篇)★
2017 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて  河出書房新社★
2022 私と言葉たち  河出書房新社★
2025 火明かり ゲド戦記別冊 岩波書店


2025年6月1日日曜日

2025年5月の読書メーター

 鋭意、ル=グウィンのSFに取り組んでいたはずなのだが、結構読み進めるのに手間どった一方で、ル=グウィンの世界観と萩尾望都の世界観って共通するよな、との気づきから、無性に萩尾望都も読みたくなり。
 『11人いる!』『マージナル』『銀の三角』などなど。
 しかし手元にある文庫本サイズは、やはり字も絵も細かくて、読むのがしんどい。
 そこでついに、萩尾望都パーフェクトセレクションに手をだした次第。しかし、読みたかったマージナルは文庫本しか手に入らず。ついでに流れでこれまで手を出しかねていた『残酷な神が支配する』も文庫本で入手(ネット古書店で全巻大人買い)。
 『残酷な・・・』は連載時から読んでいたが、あまりにもリアルな内容なので、刊行当時は入手するのを控えていた。このたびやっと、全巻通しで読んでみよう、という気になった。しかし、内容から少し距離を取るために、こちらはあえてのめり込みにくい文庫本サイズにした。いや、こんな用心が必要な作品もそうないよな。
 さて、5月末に、ゲド戦記の最終刊「火明かり」が刊行された。
 すこし読み始めたが、冒頭のル=グウィンによる序文(『The Books of Earthsea』の序文として書かれたもの。)を読んで、少々げっそりとしている。だがまあ、なにはともあれ読むよ。
半世紀来の付き合いだもの。
 さて、そんなこんなで5月は、ル=グウィンのSF2冊。画集が2冊。コミック新刊2冊。萩尾望都4冊という結果。漫画で水増ししているとはいえ、『トーマの心臓』はハードカバーの文学を読むのと同じくらいのエネルギーを要した。

5月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:2399
ナイス数:513

トーマの心臓2 萩尾望都Perfect Selection 2 (フラワーコミックスペシャル)トーマの心臓2 萩尾望都Perfect Selection 2 (フラワーコミックスペシャル)感想
ユーリの根底にあるのが信仰だという所は自分にはちょっと分かりにくいところ。トーマはなぜあそこまでして?というのもストンとは落ちてこないのだけど。愛するということ、そのためには自らを犠牲にすることも厭わないこと。だけど残された人は、その贈りものを正しく受け取ることができるだろうか。幸いユーリは最後にはきちんと受け止めることができたけど。オスカー、ユーリ、エーリクそれぞれに若い人生に似合わぬ重く辛い経験を背負い、それでも全力で友人を想い、助けようとすることができる。透明で深く澄んだ青い沼をのぞき込んだ気分だ。
読了日:05月31日 著者:萩尾望都

トーマの心臓1 萩尾望都Perfect Selection 1 (フラワーコミックススペシャル)トーマの心臓1 萩尾望都Perfect Selection 1 (フラワーコミックススペシャル)感想
青く、透明で、伶俐で、傷ついていて、優しい。情感がオーバーフローして溺れそうな気分になった。ここから童話のようなファンタジーをそぎ落としていくと『残酷な神が支配する』に到達するのか。久しぶりの再読で、良い感じにストーリーを忘れていて、今更だが『訪問者』がこのオスカーと彼の父の話で、つながっているんだと初めて気付いた。それにしても中高生くらいの寄宿舎って本当に大変。学校が動物園にしか思えない身には、舎監のオスカーとユーリが神がかって見える。
読了日:05月31日 著者:萩尾望都

なのはな (フラワーコミックススペシャル)なのはな (フラワーコミックススペシャル)感想
3.11直後から数週間の心のザワザワには、私も覚えがある。毎日出勤し、だけど仕事が手に着かず、はっと気がついたら年度末になっていて焦った。あの頃、多感な10代だったなほちゃんは、おばあちゃんが帰ってこないことを知っていたが、受け入れきれない。傷ついても身を寄せ合う家族がいるということは、まだ救いがあるようにも思う。だけど、失ったものへの追悼は必要で、そんななほちゃんの心は銀河鉄道に乗っておばあちゃんとのさよならを追体験する。この作品は、モトさんの、心の平静を取り戻すための儀式でもあったよう。
読了日:05月29日 著者:萩尾望都

11人いる! 萩尾望都Perfect Selection 3 (フラワーコミックススペシャル)11人いる! 萩尾望都Perfect Selection 3 (フラワーコミックススペシャル)感想
ル=グウィンのSFからつい脱線、寄り道。11人いる!は最初に読んだのも文庫本。今手元にあるのも文庫本なのだけど、さすがに線の細くて台詞の多いモトさんの作品を小さな画面で読むのは、辛い年頃になってしまった。この萩尾望都自選のセレクションは大型本でとても、とても読みやすかった。それに、やっぱり迫力が違う。そして、やっぱりフロルがかわいい。愛すべきキャラクターだ。大昔、元気者のフロルが第二次性徴を迎えて麗しの乙女になる続編を延々脳内で想像して楽しんだのも、よい思い出。。。
読了日:05月28日 著者:萩尾望都

ロカノンの世界 (ハヤカワ文庫 SF ル 1-5)ロカノンの世界 (ハヤカワ文庫 SF ル 1-5)感想
面白かった。萩尾望都の表紙がとても美しい。物語は、SFと神話世界が融合する独特なファンタジー世界を構築し、萩尾望都のSFと強い親和性を感じた。(というか、萩尾望都が影響を受けたのだと思うけど。)主人公と友人(王/勇者)と従者と矮人というパーティによる未知の世界の踏破は、トールキンにも通じるファンタジーの王道。そこに、ハイニッシュ・ユニバースの人間が光速の壁を越えられないという独自設定が加わり、主人公ロカノンの苦悩と孤独が説得力を持って迫ってくる。主人公の性格が抑制が効いていて、物語に深みを与えていた。
読了日:05月23日 著者:アーシュラ・K・ル・グィン

パウル・クレー作品集 詩と絵画の庭パウル・クレー作品集 詩と絵画の庭感想
クレーの絵をこんなにまとめて見たのは初めてで、もったいないので少しづつ見ている。なぜクレーを手に取ったかというと、萩尾望都のメッシュ スペシャルエディションが書店の店頭に積んであったから。たしかメッシュがクレーの絵を気に入る話がなかったっけ・・・・と連想がつながって。色彩が美しい。クレーってこんなにいろんな作風がある人だったのね。一枚一枚をじっくり見ていたいけど、150ページの『魚の絵』は特に好き。143ページの『野いちご』もどきっとした。119ページ『夢の都市』も。
読了日:05月21日 著者:黒田和士

永山裕子作品集 ひかりの下で永山裕子作品集 ひかりの下で感想
お名前は存じ上げなかったけど、水彩画の画家さんです。美しいものを見たくなって書店にGOして,出会い頭に我が家にお迎えした画集。色が空間に滲むような華、ガラスの質感、花器に張られた水の存在感。現実が幻想に溶け込んでいく瞬間を捉えたような、作品の数々でした。とにかく色が綺麗で。自分もこんな絵が描けるようになれたらよかったのに!とちょっと羨望が湧く。
読了日:05月21日 著者:永山裕子

夜明けの唄 6 (from RED COMICS 072)夜明けの唄 6 (from RED COMICS 072)感想
ミカエルの件が、かなりなし崩し的に悲劇的結末を迎え、南の覡エルヴァの心に大きな傷を残す。アルトは出自の秘密を抱え不安に押しつぶされそうに。そんな二人が身と心を温めあう、南の岬の小さな家の小さな寝床。些細な暮らしが尊い。世界の謎解きはこれから。黒海の正体も今だわからず。
読了日:05月21日 著者:ユノイチカ

10DANCE(8) (ヤンマガKCスペシャル)10DANCE(8) (ヤンマガKCスペシャル)感想
ショックと混乱で棒立ちの杉木ーーー!をWeb連載で読み、その後長らくお預けの苦しみを喫した。コミックスだとそんな場面もするする読めて幸せだ。一体私は何を読まされてるんだ!とあまりのセンスオブワンダーにくらくらする。今回は涙が。ノーマンの滂沱。杉木の宝石のように散るキラキラ涙。もらい泣きして涙。ラスト2ページ目の杉木が別の漫画みたいになってるゾ。愛は人を変えるね〜。手から伝わる想いが画面から溢れてました。いやなんかすごかった。さて、ここから10DANCEにばく進するのか。すでに次巻が待ち遠しい。
読了日:05月21日 著者:井上佐藤

世界の合言葉は森 (ハヤカワ文庫SF)世界の合言葉は森 (ハヤカワ文庫SF)感想
ゲド戦記から評論を経由して、ル=グウィンのSFに着手。この本を最初に手にとったのは偶然。刊行順に読むより行きつ戻りつの方が面白いかと思って。『世界の合い言葉は森』と『アオサギの眼』の中編2本を収録。ハイニッシュ・ユニバースの一冊。読みながら思ったのは、これSFである必要性全然なさそうだな、と。中世とか大航海時代の新大陸とか舞台でも内容的には全然いける。ル=グウィンらしい説教がましさ(笑)と道徳読み物っぽさがあり、私的にはセンスオブワンダーはなかったかな。強いていうならSF寓話。細かくはブログの方に。
読了日:05月13日 著者:アーシュラ K ル グィン

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