2021年1月27日水曜日

0253 死線のサハラ 上  (ハーパーBOOKS)

書 名 「死線のサハラ 上」 
原 題 「House of Spies」2017年 
著 者 ダニエル・シルヴァ 
翻訳者 山本 やよい 
出  版 ハーパーコリンズ・ ジャパン  2018年7月 
初 読 2021年1月26日
文庫  376ページ 
ISBN-10  4596550921 
ISBN-13  978-4596550927

 ガブリエルの〈オフィス〉長官就任から2ヶ月。時は2016年2月、冬の終わりの頃。(だと思われ。)
 米国では、新政権が誕生している。(トランプ政権誕生が2017年1月。おっと、現実世界と1年ズレたか?)
 
 ワシントンに誕生した新政権が、親イスラエルであることを、歓迎すべきかどうか。

 “前大統領との関係は最悪だった。新大統領はワシントンとイスラエルの絆を強めると約束し、さらには、アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移すとまで言っている。そうなれば、アラブとイスラム世界に激しい抗議の炎が燃えあがるだろう。”

 イスラエル国内には、新しい米大統領の強引なイスラエル寄り路線を歓迎する向きもあるが、ガブリエルはそれに対するアラブ世界の反発を警戒している。油断すればアラブの反動の中にイスラエル一国が取り残されることになる。
 新長官となってまだ2ヶ月。決して穏やかとは言えない航路を、ガブリエルは慎重に舵取りしなければならない。毎日深夜になるそんな彼の帰りを、エルサレムのフラットで妻のキアラがカウチで小説を読みながら待っている。

“キアラがカウチの端にすわっていた。開いた本が膝にのっている。ガブリエルは彼女の手からそっと本をとりあげて表紙を見た。イタリア語に翻訳されたアメリカのスパイ小説だった。
「こういうのは現実の人生だけで充分じゃないのかい?」
「小説のほうが現実よりはるかに魅力的だわ」
「主人公はどんな男?」
「良心を備えた殺し屋よ。あなたにちょっと似てるかな」

キアラ、それはもしや“グレイマン”という通り名の殺し屋が出てくる小説ではないか? ガブリエルにちょっと似ているかどうかは置いとくとして。

 そういえば、今回多分これまで読んだ中で初めて、ガブリエル自身の作品が登場した。もっとも美術学校時代に描いた絵のようだけど。母やリーアの作品に交じって、自分が描いた絵も長官室に掛けてあって、なんだか嬉しい。

 前回の作戦でサラディンを取り逃がし、欧州各国ではテロへの恐怖と緊張が続いている。そんな中、次に狙われたのはロンドンの繁華街。千人以上の犠牲を出す同時多発テロが発生する。複数の犯人は逃走もしくは爆死。手がかり皆無な中、ガブリエルは英国、次にフランスに出向き、再度サラディンを捉えるための共闘を持ちかけるが。またしても爆弾テロである。
 今度狙われたのはフランス諜報機関の〈アルファ・チーム〉の本拠地ビル。おりしもガブリエルはそこで、〈アルファ・チーム〉のチーフ、ルソーと作戦協議中だった。3巻連続で爆弾テロに遭遇するガブリエルである。
 今回は肋骨を数カ所折り、腰椎にヒビが入る重傷。本当に怪我が多い人だ。やり過ぎじゃないか、シルヴァ? しかし、復讐心に燃えるガブリエルは痛みに耐えて行動を開始する。
 シリアの独裁者から盗んだ金を豊潤に使い、大規模な偽装作戦を仕掛ける。
 だがしかし、一つ気になるのは、ガブリエルの手駒の少なさ。
 役者はいつもの顔ぶれだ。ナタリーなんて、完全に面が割れているのではないだろうか?エリ・ラヴォンなんて、ガブリエルとは40年来のおしどり夫婦なみ。その他の面々も度々作戦に顔をだしている。ほんとうにこれで目ざとい敵を欺けるのか? ガブリエルの負傷の多さと相まって、若干リアリティに欠けるような気がするのが残念ではある。
 でもまあ、ガブリエルが素敵なので不問に処す。以下下巻へ。

0 件のコメント:

コメントを投稿