2025年8月24日日曜日

番外 ウォルドルフ人形の本

書 名 「ウォルドルフ人形の本」
著 者 カーリン ニューシュツ (著), 佐々木 奈々子 (翻訳)    
出 版 文化出版局 1986年10月
大型本 87ページ
初 読 2001年頃
ISBN-10 4579103378
ISBN-13 978-4579103379
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/129864514

 第一子を出産した産院のOG会で、「赤ちゃん会」というのがあり、出産日が近かった仲間が月1回の会合で仲良くなって、そのうちのお一人で手芸が得意な友人を講師役に、みんなで赤ちゃんのファーストフレンド・・・・最初に与えるお人形として、「ウォルドルフ人形」を作ったのが、かれこれ25年前だ。

 一体目の男の子の人形は、彼女の懇切丁寧な指導で作成したが、その後、お洋服を作成するために、この本を購入。第二子出産を機に、もう一体(女の子の人形)を作った。

 材料は、当時吉祥寺の東急の裏手にあった「おばあちゃんの玉手箱」という自然派育児ののおもちゃや素材や絵本を取り扱っていたお店で購入。よく覚えていないが、この本もそのお店で買ったかもしれない。
 当時、吉祥寺は、この「おばあちゃんの玉手箱」の他にも、「ニキティキ」などの木のおもちゃのお店などがあって、しょっちゅう通っていたな。あと荻窪には津川雅彦さんの「グランパパ」の店舗があって、こちらも大好きだった。

 さて、このウォルドルフ人形、男の子の方は、息子が人形のお手々をあむあむしゃぶったり、娘が生まれてからは、二体とも娘のおもちゃになっていたが、娘が幼少のころ、なにを思ったか、人形を散髪!・・・・いや、いいんだよ。このお人形は、そういうことしてもOKだ。だが、ちょっと髪の毛長めで優しい雰囲気だった男の子は、丸刈りになっちゃったのだった。(/_;)

 いつか、きちんと髪の毛をもう一度生やしてあげよう、と想い続けて十数年。思い立ってこのお人形用の手紡ぎのウール毛糸を買おう!とお店を探したが、「おばあちゃんの玉手箱」は閉店してなくなっており、しかし代わりに、以前は表参道にあった「クレヨンハウス」が吉祥寺に移転してきていたので、こちらで注文することができた。

 しかし、せっかく毛糸を入手したのにそこで力尽き。
 なかなか、お人形を洗って、痛んだお洋服も修繕して、お人形の虫食いも直して、髪の毛を植えて・・・・・という一連の作業に着手する気力と時間がなく、さらに五年以上は放置。

 ここに至って、いつやるの?今でしょ!! とやっと、やっと、お人形の手入れに着手した。

 昨日、自宅から母の家に、お人形と素材をまるっと持ち込み、今日は朝からお人形をエマール風呂に入れ! お洋服を洗い! しみ抜きし! 干して乾かして、修繕して!
 イマココ。
洗って、ベランダの室外機の上で日光浴(乾燥)今日の天気は良く乾くぞ

スナップを付け直し、伸びた袖口のゴムを取り替え、細かい綻びも縫い直し

 ウォルドルフ人形は、表は綿ジャージー、中綿は羊毛。髪の毛も手紡ぎウールなので、きちんと保管しないと虫に喰われる。この子達も、ムスメが構わなくなってからはずっと放置だったので、何カ所か虫に喰われてしまった。そこも修繕しないと。

 きちんと髪の毛を植え終わったら、また写真をアップするよ。

2025年8月20日水曜日

介護日記的な・・・その24 まさに日記的な。

 介護同居の状況となって、はや2週間。この間、なにをやっていたかというと、ひたすら環境整備と食事の世話。
 これまでの通い介護では、私がいるときは、基本母もいたので、あまり大胆な片付けは出来なかった。しかし、私がまるっと休暇を取っているので、母がデイサービスに行っている間は母宅に私独りになる。で、なにができるかというと、不要品と古いもの処分だ!

 とりあえず、これまではさわれなかった、古くなりすぎた調味料。カビの生えてるみりんとか。 (^_^;) 
 なんか味が変わってるような気がする10年以上前の開封済みの醤油とか、絶対酸化してるだろうと確信できる、使いかけのサラダオイルとか!賞味期限が、’21.〇.〇って表示になてる削り節とか!
 とりあえず、これから私が自分で食事の支度をするために、調味料を一新。
 合わせて、大量にあるタッパウェアも点検。・・・・・なんだか、プラスチックが劣化してベタベタしているし。かと思うと硬化して割れる(崩れる)やつもあるし。とりあえず、捨てる。
 かわりに、パイレックスの保存容器をいくつか購入。
 煮物を作ったり、作ったものを保存できるよう、最低限のものを更新した。

 毎日の食事はこんな感じ。

〈いつかの昼食〉
ご飯、豚の角煮(セブンプレミアム)・ほうれん草添え、厚焼き卵(ヨーカドーの惣菜)、ミ二餡餅、キュウリとミョウガの浅漬け
———ヨーカドーの惣菜のキュウリの漬物は良く食べるくせして、私が漬けたやつは、喰いが悪い。くそ。あとは、ぜんぶお惣菜かレトルトパウチ。

〈いつかの夕食〉
炊き込みご飯。キュウリとミョウガの浅漬け、えびとブロッコリーの塩炒め。
———あまりに食が細いので、せめていろいろな食材を食べてほしくて、ご飯を炊き込みにした。これはお茶碗に盛った分は食べてくれた。あとはそれぞれ、半分くらい残された。

〈昨日の朝食〉
炊き込みご飯。キュウリの浅漬け。厚焼き卵。ポテトサラダ。
———イトーヨーカドーの惣菜(厚焼き卵とポテトサラダ)は比較的良く食べる。なんとなく負けた感がある。
 そのほかにも、焼き鮭とか、それを薄味の出汁醤油に漬けたものとか作ってみたが、だいたい他人が作ったもの(スーパーの味でないもの)は、警戒してあまり食べない。

〈今日の夕食〉
肉じゃがを作った! いろいろと子供返りしているので、味覚も子供向けで良いのではないかと。ミョウガとかキライになってしまったみたいだしな。これは当たりで、とりあえず器に盛った分は食べてくれた。(ちなみに、右の写真は私の側の食事なので、母の方は、おかずの盛りはもっと少なめ)
 肉じゃがは、自宅で作る量の1/4だ。(笑)
 これくらいだと、時間も手間もすごく少なくて楽。
 だがしかし、今日食べない分を保存容器にいれて冷蔵庫にしまっておいたら、しばらくして母がそれを取り出し、「これ、お前が持ってきたの?」と不審顔。この人、人が作ったものは置いておいても自分では食べない。「古くなっていて気持ち悪い」という。
 この3年間、試行錯誤して、結局イトーヨーカドーの惣菜なら食べる、に落ち着いていたのだが、まあ、私が配膳する分には、大丈夫でしょう!(ただし捨てられないようにしないとね。)

 それにしても、あれこれ工夫して料理してみても、「不味い」とか平気で言うし、毎回、ヨーカドーの惣菜に負けるのは、いささか心折れるものがある。(まだ2週間だけど。)ちなみに、味付けは決して不味くないと思うんだよ。
 まあ、認知症相手に闘っても、ましてやヨーカドーの惣菜と闘っても詮無いので、結局食事はヨーカドー頼りに戻りつつある。

2025年8月17日日曜日

0563 好きだと言って、月まで行って (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「好きだと言って、月まで行って」
原 題 「To the MOON and BACK」2023年
著 者 N.R.ウォーカー
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2024年11月
文 庫 400ページ
初 読 2025年8月17日
ISBN-10 4403560598
ISBN-13 978-4403560590
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/129720163


 N.R.ウォーカーは、オーストラリアのゲイロマンス作家さん。初読み。翻訳は安定の冬斗亜紀さん。とても読みやすい。
 主人公の一人、ギデオン(ゲイ/シングルパパ/失恋直後/ヒゲのいい男/高学歴・高収入)の背景とか、もう一人の主人公トビー(ゲイ/イタリア系オーストラリア移民の家系/高学歴のプロのナニー(超有能))の背景とか、オーストラリアのLGBTQの様子とか、育児に関わる社会制度とか、ストーリーの背後にぎっしり詰め込まれているものがあって、これを全部読み解けたらかなり深いな、と思うけど、単純に不器用男2人がモダモダ恋に落ちるロマンスとして、十分に楽しい。
 出だしこそ、ヒゲのタフガイが慣れない子育てでおたおたしている話かと思ったが、この「ヒゲのタフガイ」が思いのほか繊細で、むしろ女性的(っていうか、こういう性格描写の語彙がどうしても性的役割分担を色濃く反映しているのは、なんか良い形容詞がないものか)なのが、ミスマッチで面白い(というか、これをミスマッチと感じる感性がそもそも性差に対する意識が固定化しているよな)というか。
 読んでいると、さりげなく、固定化したジェンダー意識に揺さぶりをかけられているようで、なんか意識の柔軟体操しているみたいで良いよな、と思う。日本の社会でLGBTQが社会権を得たのって、BLもそれなりに大きな役割を果たしていると思うのよね。

 ストーリーは、突然シングルパパになってしまって困惑・疲労困憊している男のところに、超有能な男性ナニーがやってきて、あっというまに生活改善して、あっというまに恋に落ちる、というまあ、ありがちな感じなんだけど、その恋に落ちる過程や、2人の心理描写がとてもとても良い。早くに親を亡くして親の愛情に飢えていたギデオンが、トビーの大家族に心温められながらも、寂しく感じる描写なんかもすごく素敵だ。も〜〜〜あんたたち両思いなんだから、もっとシャッキリしなさい!と言いたくなるが、この、これまで自分が世の中的に慣れ親しんできた男性性とは、性質を異にしたナイーブな優しさ全開の2人に、なんだか未来への希望を感じちゃう。・・・・とちょっと壮大な感じの感想になってしまった。
 あと、雇用関係や雇用契約に対する意識がはっきりしているなあ、と思う。さすが、ジョブ型雇用の欧米社会。権利—義務関係を明確にさせようとする意識がここまで恋愛の足を引っ張るって、日本人的な感覚だとあまりないのでは。そういう意味でも、「もだもだしすぎだ!」とうっかり感じてしまうかもしれないが、きっと当人たちにとっては、そして彼等の文化規範の中では、独立した個人として、とても大切なことなのだ。

 以下は余談だが、先日、子育て仲間だった友人と呑みながら話をしていて、なぜかBLの話になり、友人は「BLは女の子の健全な成長に必要なのよ!」(ちょっと細部はうろ覚え)と力説していて、私もなるほどなあ、と思ったのよ。
 男女の恋愛物語を読んだり見たりしたら、女の子は女性側に移入せざるを得ない。“女性らしい”感じ方、“女性らしい”振る舞い、女性としての性的役割を、作品のを通じてすり込まれる。私はそれが苦手で、恋愛小説はあまり読まないのだけど、BLならば、キャラクターのどちらに移入しても可だし、それこそニュートラルに、若干は客観的に、恋愛を疑似体験できる。なにをどう感じるかを(精神的にも、肉体的にも!)強制されることはない。自己を確立する時期の思春期の女の子にとって、BLは成長のための梯子になり得るのかもしれない。

2025年8月16日土曜日

介護日記的な・・・その23 食欲がないはずなのに、まさかの満腹

 これまで週2回だったのが、毎日・毎食になって、何を母に食べさせるか悩ましい。

 母は、しばらく前から、咳が続いていたが、だんだん胸の奥に絡むような咳になってきたため、せっかく日中動くことができるのだし、と昨日内科に連れて行った。気管支炎とか誤嚥性肺炎なんかも心配していたのだが、診察の結果は「上気道炎」つまりのど風邪。それは良かったのだが、体調が落ちているせいか、食が進まず、今日も、朝食も昼食も残されてしまった。

 それに加えて今日は精神科(認知症外来)の受診もあったので、さすがに疲れたのか、午後にかなりしっかりめに昼寝。昼食も遅めだったし、そのあと昼寝ではお腹もすかないだろうと、夕食時間も遅め設定で買い物にでかけたら。
 なんと、私が買い物に出ている間に、冷蔵庫に置いてあったおまんじゅうを3個、食べられてしまった。

 本人は食べたそばから忘れるから、夕食の時には、「なんだかお腹が空いていないのよね・・・」と食欲がないことをアピール。そりゃそうだろう。小さいとはいえあんこの詰まったまんじゅうを3個食べれば血糖値も上がるし、食事は入らんだろうよ。

 夕食が遅くなってはいけない、という教訓を思い出したよ。そうそう。ちょっと買い物に出るのが遅くなると、その間に小腹が空いて、間食されてしまうのだった。以前もやられたのに、すっかり忘れていた。気を付けなければ。
 
食事の用意ったって、この程度よ

2025年8月14日木曜日

介護日記的な・・・その22  とりあえず、近況報告を。

 6月末頃から、母の認知症が進んできたかな、と思い始め、結局それは気のせいではなく、この三年間、超低空飛行とはいえなんとか維持してきた母の独居も、もはやこれまで、と観念した。(私が)
 
 とにかく、きちんとご飯が食べられないのはダメだ。

 母が独りでいるときに口にするのは、木村屋の蒸しケーキやミカンだけになってしまった。そういえばカットパインも食べたかも。・・・・って、全然食事の足しにはならない。

 体重が少し落ちた。

 言葉が拙くなり、聞く力も読む力もガクンと落ちた。確認行動が酷くなって、寝る前の戸締まりや電源の確認が延々終わらないので(確認したそばから忘れるから、エンドレスになってしまう。)入眠に影響がでてきた。
 極めつけは先日の「焦げ臭い」事案。結局原因不明なんだけど、電子レンジの中も焦げ臭かったので、きっとここで何かがお焦げになったんでしょう。ちなみに先日購入したばかりの、オーブン機能などない、単機能レンジ。あたためスタートしかできないやつ。いったい何をどうチンしたら、お焦げになるんだろう。謎だ。

 初めは、もう一回ホームヘルパーの導入にチャレンジして、朝夕の食事の世話をお任せすることができれば、何とかなるのでは、と思ったのだが、一週間一緒にいてみて、そうではないと気付いた。見守りは常に必要。見守るだけだとしてもだ。

 とうとう、母を一人にできない日がやってきたのだ。

 その日が来てしまえば、案外、決断はすんなりつくものだ。というか選択肢がないので、決断というよりは諦念に近い。しかし、この決断を、私は自分の家族にちゃんと相談したろうか、と思うと反省すべきところがあるなあ。

 職場には介護休暇の取得を相談し申請し、そして周囲に協力を仰ぎ(迷惑をかけ、ともいう)、長期の休暇に入ることとなった。期間は「母が施設に入るまで。」

 グループホームは一ヶ月前に申し込みしてある。しかし、まだ待機順は繰り上がっていない模様だ。あと2ヶ月、3ヶ月で入所できるだろうか。
 
 母はデイサービスには通っているので、母がデイに行っている間は、時間があるといえばある。テレワークとの組み合わせも検討できる。しかし、フルタイム稼働は無理。
 デイに送り出すのが9時半。戻ってくるのが17時。その間に、家事や買い物を済ませる必要もある。自分の自宅は別にあるので、そちらにいる家族も完全放置はできない。実家から職場までは2時間弱かかるので、どう工夫しても通勤は無理。それは早々にあきらめた。なにしろ、やったとしても私の体力が続かないのは明らか。夜間に起こされることもあるので、昼寝も必要になりそう。(だが、してみたら夢見が悪くて閉口した。)

 そんなわけで介護休暇に入った訳だが、盲点が一つあった。母がデイサービスに出かけた後の家の中の静けさがもはや暴力的だった。一日目で早々に私のメンタルが参った。

 なにしろあまりにも静かだったのだ。近隣も静かで、集合住宅なのに近所の人の気配が皆無。なんだか世界中に自分しかいないような気がしてきて、「自分はいったい何をしているんだろう?」となんだか存在の根源が揺らぐような気分になって、ずんずん落ち込んだ。これでは早々に鬱になる。

 かなりの危機感を感じたのだが、そんな私の孤独を慰めてくれるアイテムを思い出したので、急遽入手に走った。
 右の写真のデスクオーナーメントは日本ディスプレイ工業の「amaoto」という製品。光発電で台座に仕込まれた電磁石で重りがゆらゆら、そのゆらゆらに台座の中のハンマーが反応して、これも台座の中に仕込まれたベルを叩く。こん、カラン、ろん、ててん、リン、ろらん。
 実はこの製品、新宿のブックファーストの文具売り場に展示されているのを、8年位前から知っていた。ずーーーと、この店舗に行くたびに、心落ちつく音色に耳を傾けていた。
 ただ、絶対に猫との同居は無理だと思ってたんだよね。入手することはないと思っていた。しかし、母宅に猫はいない! まあ、母がちょっかい出す可能性は大いにあるが・・・・

 かなり値も張るし、結構な買い物だったのだが、しかし、効果は絶大。今も、この「雨音」に慰められながら、この文章を書いている。
 ・・・・ついでにいえば、母はいま、夕食の後の台所の片付け中で、ずーっとエンドレスに独り言を言っている。これは、、、なんだっけ? ああやだ、これは・・・こうですよ。そしてぇ、これは。えい。やあ。よいしょ。よいしょ。ええと、これはどこだっけ。どこですか?  そしたら、そしたら〜、ええと、これか。そしたらこれですか。やんなっちゃうなあ、もう。・・・・・ごしごし、がさごそ、がちゃがちゃ・・・・

 母は、食事の支度はできないけど、食器洗いは辛うじてできる。片付け魔なので、台所の始末もする。(食器は洗い直しが必要な場合が多い。)実況中継的に、ひたすら独り言を言いながら。とにかく、一見とてもキレイに片付けるが、片付け方はめちゃくちゃなので、母が寝てから、全部戸棚を開いて、場所を直すのだけど。でも出来ることはできるだけやらせたいので、母にやってもらっている。
 これすら、最近は食後にやらない時も増えてきた。母が自力で動いているうちが花だよなあ・・・と、寝たきり介護や、下の世話なども想像して、ちょっと遠い目になる。

 あと、おなじ団地内で、同じく実母さんの介護をしている友人と宅飲みした。介護情報の交換は建前で、とにかく話して、飲んで、ストレス発散。これ大事よ?

 左の青いラベルのスパークリングワインは、友人が持ってきてくれたヤツ。花火のラベルが素敵なカヴァ。右は私が自宅から持参したなんと厚岸ウイスキー〈花ぐわし〉。夫が頂いたものを、有り難く頂戴した。
 まあ、介護を大変がっても鬱になるので、今できる楽しいことを探そう。そうしよう。

2025年8月13日水曜日

0562 コーンウォールに死す

書 名 「コーンウォールに死す」 
原 題 「A DEATH IN CORNWALL」2024年
著 者 ダニエル・シルヴァ    
翻訳者 山本 やよい    
出 版 ハーパーコリンズ・ジャパン 2025年6月
文 庫 600ページ
初 読 2025年8月12日
ISBN-10 4596572216
ISBN-13 978-4596572219
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/129618910 

 パレスチナの惨状で、この作品に対していささかの幻滅が伴っていないといったら嘘になる。
 ダニエル・シルヴァも、絶妙なタイミングでガブリエルを引退させたもんだ、と皮肉っぽくなったりもする。
 でも、ガブリエルが魅力的なことには変わりない。
 前作よりも大人しめで、スキャンダルも陰謀も、最近のこのシリーズからしたら、小ぶりではある。だが毎作、ワロージャと戦争するわけにもいくまいよ。それに(何回も書くが)ガブリエルはもはや70台半ばである。これも何回も書いてるが、ボッシュと同い年だからね。
 それにしては、ガブリエルは異様なくらいに頑健である。今回も殴り倒されてボコボコにされてるが、骨折の一つもせずに、ちゃんと生還。まあ、ジャンプヒーロー並みの生命力だよな。(笑)

 そんなこのシリーズも、今作で24作目。ガブリエルは73歳。双子達は8歳。
 娘のアイリーンは環境問題に敏感で、グレダちゃんみたいになりつつある。
 息子でガブリエルに激似のラファエルは、その才能を美術ではなく、数学方面に発揮しており、ガブリエルはラファエルに絵に興味を持ってもらいたいとの切望を隠しもしていない。
 今回は、前作でガブリエルが修復したゴッホが、イギリスのコートールド美術館でお披露目されるあたりからスタート。ガブリエルの携帯に、コーンウォールに住む旧知の人物からの連絡が入る。・・・・・改めて、振り出しに戻って考えれば、正直いって地元の(ローカルな)殺人事件にすぎないことで、ピール青年(元少年)がガブリエルに連絡を入れることが、一番あり得ないんじゃないか、と思わないでもない。この点が今作一番の無理筋。それ以降は、いつも通りのガブリエルである。

 殺されたのは、女性の美術史家。連続殺人の犠牲者に見せかけた殺人の背景に浮かび上がったのが、かつてユダヤ人が所有していたピカソ作の女性の肖像画。その来歴は、ナチス占領下のフランスで起こったユダヤ人の災禍で所有者から違法に詐取されたもの。この絵を発見した良心的な美術史家が惨殺されたことで、ガブリエルが調査に乗り出す。

 巨額絵画を隠れみのにした資金洗浄と絵画のブラックマーケットは、このシリーズで繰り返しテーマになっているもの。おなじみのガブリエルの模造絵画の作成風景も、今作はあっさり目ながら、読者の楽しみの一つ。話はどんどん流転して、結局英国の首相候補の野心とその妻の欲望に帰結し、犯罪行為に犯罪行為で対抗する手段ゆえに、あちこち結果オーライで、犯罪者は真っ当な法の裁きによることなく、社会的リンチの餌食になった。

 まあ、一時ほどの盛り上がりはないにせよ、ガブリエル・アロンのファンとしては、彼がとりあえず元気でいてくれれば、と思う。ガブリエルが不幸になる姿は絶対に見たくない。 もはや、彼の年齢的にも、シリーズ的にも、毎作がボーナストラックみたいなもんなので、今作もその点では十分に満足に値する。・・・・・ていうか、面白かったよ! ちょっと冗長かな、と思わないでもないけど、全部が全部、ガブリエルで満ちてるから、それだけで読む価値アリでした。
 ガブリエルがコーンウォールに三度目の拠点をもつことになったのも良し。地元住民から愛されているのも良し。
 以前のガンワロー岬のヴィラは、惨劇の舞台になっちゃってたからね。

 巻末の著者ノートは必読。ダニエル・シルヴァが作品を通じて言いたいことは、ここに凝縮している。世界の富の不均衡。貧しいものはより貧しく、富めるものは、いっそう富を集積。その金はどこにあって、何をしているのか。世界はどこに向かっているのか。
 世界の歪んで濁った姿がガブリエルを通じてプリズムを通った光のように分光し、人々の目により分かり安く提示されているように感じる。

美術修復師ガブリエル・アロン シリーズ

ガブリエル・アロンについての考察はこちら(年表付きです。)

『告解』でガブリエルが手がけている
祭壇画 サン・ザッカリア教会

1【報復という名の芸術】(The Kill Artist 2000年)
1999年。 1,991年1月にガブリエルがウィーンで幼い息子を失ってから9年近くが過ぎていた。シャムロンに逢うのは事件のあとテルアビブで〈オフィス〉の仕事を辞めると伝えた時以来。ガブリエルが隠棲していたのは、イギリス、コーンウォールの海辺のコテージ。かつてはガブリエル専属の支援者(サイアン)だったイシャーウッドとは、本当の画商と絵画修復師の関係となっていた。そんなイシャーウッドからガブリエルの居場所を聞き出して、シャムロンが新たな「復讐」を携えてやってくる。それは、ウィーンでガブリエルの車に爆弾を仕掛け、彼から家族を奪った男への報復だった。
  
2000年頃? この作中で彼は50歳。スイス在住のある資産家が、ガブリエルに接触を図る。その男が秘匿していたのは、かつてナチスがユダヤ人から略奪しした絵画の数々だった。この絵画を巡り、ナチの残党との死闘が始まる。スイスが未だ隠し持つ、かつてのユダヤ人の財産。ヨーロッパ諸国とナチスとの関係は、歴史の暗部となって未だ各国にわだかまっている。ナチスはユダヤ人の財産を奪った、というアロンに対して、ユダヤ人はパレスチナ人から土地を奪った。動産より不動産の方が罪が重い、と論じるスイス人。ユダヤ人とユダヤ人国家にまつわる問題は一筋縄でいくものではないが、だからといってナチスの罪が薄れるわけではない。それに協力した人間の罪も、である。

2001年冬 ガブリエル51歳になったばかり。ベネツィアのサン・ザッカリア教会で祭壇画の修復を手がけていると、シャムロンからの呼び出しが。かつての盟友がドイツで殺害された。調査を始めると、今度はガブリエルが何者かに追跡される。親友だったベンジャミンが追っていたのは、第二次対戦時のナチスとヴァチカンの関係だった。法王庁とローマ・カトリックの権威を至上とするヴァチカンの秘密組織が、ガブリエルと彼が掴んだ証拠を抹殺しようとする。時を同じくして新教皇は、ユダヤ人との和解のための一歩を踏み出そうとしていた。教皇にも危険が迫り、ガブリエルは新教皇を守るために接触を図る。 
 
『さらば死都ウィーン』で
修復を手がけている祭壇画
サン・ジョヴァンニ・クリソストモ教会
ジョバンニ・ベッリーニ作
『聖クリストフォロス,聖ヒエロニムスと
ツールーズの聖ルイス


時期的には2002年か2003年、またしても冬。雪のちらつくウイーンは、ガブリエルにとっては不吉の象徴。親友であり、戦友のエリ・ラヴォンがウイーンで運営していた戦争犯罪調査事務所が爆破される。スタッフは死亡、エリは重体。ガブリエルは追跡調査を開始するが、すぐに命を狙われることになる。エリが追っていたのは、身分を偽装してオーストリアで社会的にも大成功を収めていた元SS将校。その男の成功の原資となったのはユダヤ人から略奪された資産であり、また、その男はガブリエルの母とも因縁があった。ガブリエルは、ヤド・ヴァシェムに残された母の証言書を読み、初めて母の苦難と向き合うことに。

5(Prince of Fire 2005年)未訳
ガブリエルに関する秘密文書が暴露され、ヴェネツィアにいられなくなったガブリエルはキアラを伴いやむを得ずイスラエルに帰国する。キアラとの生活を準備するが、イギリスの病院に入院させていたリーアが誘拐されて・・・・・。紆余曲折ありキアラが1人でヴェネツィアに去る。
 
6(The Messenger 2006年)未訳
ローマ法王パウロ7世がテロの標的に。ガブリエルが法王を守る。法王の計らい(?)でベネツィアにキアラを訪れ、関係復活。『教皇のスパイ』で触れているエピソードがこれ。
 
7(The Secret Servant 2007年)未訳

8(Moscow Rules 2008年)未訳
ガブリエルがモスクワに潜入。 
 
9(The Defector 2009年)未訳

10(The Rembrandt Affair 2010年)未訳

11(Portrait of a Spy 2011年)未訳
サウジアラビアに潜入。サウジ人女性ナディアを救出しようとするが、2人とも砂漠で殺されそうになる。結局ナディアが死に、ガブリエルは重傷。その後サウジ秘密警察に捕らえられ、過酷な尋問を受けて傷を悪化さる。米国CIAの介入で解放されるが、女性の死に責任を感じて深刻なPTSDを患い、イギリス・コーンウォールでキアラとアリに見守られて静養する。このときガブリエルを案じたサラ・バンクロフトの依頼でナディアの肖像画を描き、この絵を契機に精神的に復調するのだが、この絵がMoMA美術館のナディアコレクションの入り口に展示されている。これが、『過去からの密使』の下敷きとなっているエピソード。
12 (The Fallen Angel 2012年)未訳

13 (The English Girl 2013年)未訳

 2014年春〜秋  ガブリエル64歳。キアラは妊娠中。ガブリエルは、カラビニエリの美術班、フェラーリ将軍の依頼により盗難にあったカラヴァッジョの《キリストの降誕》を探すため、盗難絵画のコレクターを釣る餌として、ゴッホの《ひまわり》を盗み出す。しかし、《ひまわり》の盗品売買の相手を追跡するうち、盗難絵画がシリアの独裁者の隠し財産の形成に利用されていることが分かり、事態は一転する。ガブリエル個人の請負仕事が、オフィスの大プロジェクトに展開。標的はシリアの独裁者の財産である。一連の事件終了後、ゴッホ美術館に盗まれた《ひまわり》が戻ってくるが、なぜか手入れをされて盗難前より状態が良くなっていた、ということだ。 

 2014年秋〜冬  亡者のゲームの三日後から。 
 キアラの妊娠後期から出産まで。ガブリエルがロシアの策略で爆弾テロの標的にされる。
 怪我の詳細の記載はないが全身打撲くらいはありそう。 一週間程度で復活している。ロシアが手先に利用したのは、英国人暗殺者との因縁も深い、IRA爆弾テロ犯だった。そしてこの男は、ガブリエルの家族を犠牲にしたウイーンの爆弾テロにも深い関わりが。MI6からの請負仕事だった事件が、復讐の色を濃厚に帯び、事態は逼迫する。今回は絵画修復のシーンはないが、事件終了後、出産間近なキアラが待つエルサレムに帰還し、自宅の子供部屋の壁にダニの顔を模した天使の絵を描いて涙ぐむガブリエルの姿が切ない。

 2015年4月〜12月 ※2015年のISISの戦闘についてと、気候変動抑制に関する協定(パリ協定 2015年12月12日)が結ばれたことについて言及している。 ISISによるユダヤ人の組織を狙った大規模な爆弾テロがパリで起こり、ガブリエルはISISに潜入させる工作員とするため、フランス系ユダヤ人の女医ナタリーをリクルートする。前半はじっくりとスパイを養成するガブリエル。自分の子供時代のことを明かしながら、ナタリーとの信頼関係を築く。
 そして、潜入、テロ計画の始動。標的は、フランス大統領訪米中の合衆国だった。イスラエル、ヨルダン、フランス、イギリス、合衆国それぞれの諜報機関の長たちの協力関係も面白い。 この回でもガブリエルは爆弾テロの現場にいて被害にあう。 

 2016年2月〜11月 サラディンとの決戦。
 上巻冒頭で、エルサレムをイスラエルの首都と認め、「米国大使館」をテルアビブからエルサレムに移設する、 と発言した新しい米大統領の就任の話題があるが、トランプ就任は2017年1月なので、現実とは1年ずれた格好か。
 訪問していたフランス秘密情報部のビルが自動車爆弾で爆破される。間の悪い時に間の悪い場所に居合わせるのがガブリエルの得意技。このときの怪我は爆風とがれきの下敷きになって、肋骨数カ所を骨折、腰椎2か所にひび、重度の脳震盪で一週間ほどダウン。だが復讐の炎が痛みをおしてガブリエルを突き動かす。そして、サラディンをおびき出す作戦が始動。  
 サラディンの収入源である麻薬取引をヨーロッパ側で仕切る男を攻略し、サラディンに繋がる細い道をこじ開ける。米国からの横やりを排除しつつ、CIA、MI6、フランス治安総局と協働し、作戦を遂行。このあたりのガブリエルの政治力も見物。さりげなく出てくるウージ・ナヴォトもなかなか渋い。そしてサハラでサラディンを追いつめるが、サラディンは欧米のどこかに潜伏しているテロリストに攻撃を命じた後だった。

 2017年1月頃? 前作の爆弾テロの際の負傷の後遺症?で痛む腰をさすりながらのガブリエル登場である。おかげで若作りのガブリエルもだいぶ歳相応に見えてきた。良い記憶のあまりないウィーンでの作戦。例によって陣頭指揮を執っていたが、目の前で亡命させる予定だったロシアのスパイが殺害されてしまう。その上その場にガブリエルが居合わせたことを隠し撮り写真でマスコミにリークされて窮地に立たされる。
 怒り心頭、恨み骨髄のガブリエルはそこから怒濤の諜報戦に突入するが、判明したのは、宿敵を絡め取ろうとするロシアの策謀が二重三重に張り巡らされていたこと、そしてある伝説の二重スパイの存在だった。 

 12歳の少女(サウジ皇太子の娘)が誘拐され、その父である皇太子が、敵であるはずのガブリエルに捜索と奪還を依頼する。中東との融和の糸口になれば、という思いと、ただ、何の罪もない少女を助けたいという思いで、捜索に協力するガブリエルだが、目の前で少女は爆殺されてしまう。少女の殺害とその父の失脚の裏にロシアの影を見たガブリエルは、復讐の反撃に出る。 
 戦いはガブリエルの勝利に終わるが、少女を助けることができなかった悔恨がガブリエルを苦しめる。サウジ皇太子によるカショギ記者謀殺事件をモチーフに、ロシア、イギリスを絡めたシルヴァ風の一流のエスピオナージ 。

2019年11月。長官に就任して以来、腰を負傷して自宅で療養した数日以外は一日も休まず働いていたガブリエルを見かねて、キアラが休暇を手配する。(なんと首相にまで手を回して!)旅行カバンを用意していたキアラに、「出て行くのかい?」と真顔で尋ねるガブリエル! 休暇の行き先はキアラの両親が暮らすヴェネツィア、仕事ひとすじで余暇の過ごし方など知らないガブリエルの為に、修復する絵まで用意する周到ぶり。そこに、ガブリエルの庇護者でもあった教皇パウロ7世崩御のニュースが。この時点で、彼の任期は2年と1ヶ月。 

21【報復のカルテット】(The Cellist 2021年)
 2020年3月〜2021年4月。世界はcovid(新型コロナウイルス)に支配されている。 
 アロン家は人が多く、ロックダウン中のエルサレム市街の自宅から、故郷のイズレエル谷のラマト・ダヴィドに程近いナハラルに仮住まいしてコロナを避けている。双子たちは田舎暮らしで逞しく成長中。ガブリエルは新しく入手したガルフストリームに現金を詰め込み、人工呼吸器や検査薬や、医療用防護衣を世界中で買い付けて、国内の病院に配布。政治家への転身の準備か・・・との世間の噂も。そんな噂は歯牙にもかけず、ガブリエルはオフィスで諜報戦の陣頭指揮も執っている。そんな折、ガブリエルと旧知のイギリス在住のロシア人富豪が毒殺され、ガブリエルはおなじみMI6のケラーと動き出した。

22 【謀略のカンバス】(Portrait of an Unknown Woman 2022年)
 2021年12月〜。ガブリエルはついにオフィス長官を引退し、長年にわたる諜報の世界から身を引いた。カラビニエリのフェラーリ将軍の庇護のある古巣ヴェネツィアに家族と居を構え、キアラはティアボロの美術修復会社の経営に参画し、子ども達は地元の小学校に通っている。キアラの配慮の行き届いた落ち着いた生活で長年の疲労や苦悩が少しづつ薄れ、彼が本来の笑顔やユーモアを取り戻しつつあるころ、旧友のイシャーウッドが、ある絵画売買絡みのトラブルに巻き込まれる。穏やかな日常に少々退屈しつつあったガブリエルは、キアラの赦しをえて調査にのりだす。
 2022年秋〜。ベネツィアで絵画修復に携わり、悠々自適・・・のはずのガブリエルは、またもフェラーリ将軍の訪問を受け、ある名画の鑑定を依頼される。しかし、有名なゴッホの盗難名画の横には、空の額縁とキャンバスを失った木枠があり。そのサイズから、ガブリエルはその絵が、これも盗まれたフェルメールだと直感する。フェラーリからの依頼を受け、絵画の追跡に乗り出すも、ロシアの暗殺者、南アフリカの核開発、そして宿敵ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチの手先だった男・・・と、話は転がる雪だるまのよう膨らんでいく。 

 前作の直後から。2023年1月〜。コーンウォールで「斧男」といわれる連続殺人犯によると思われる殺人事件があり、かつてのティモシー・ピール少年(現在ではデヴォン&コーンウォール警察の刑事部の巡査部長になっている)が捜査に当たることに。ティモシーはある種の直感から、たまたまロンドンに滞在していたガブリエルに連絡を取る。そこから、巨匠絵画のブラックマーケットをめぐる怒濤と流転の展開に。イギリス政界を脅かす陰謀を、ガブリエルが執念で暴く。

ガブリエル・アロン来歴《美術修復師ガブリエル・アロンシリーズ》(2025.8.13更新)


《大天使ガブリエル》

 イスラエルの復讐の天使 ガブリエル・アロン
 ダニエル・シルヴァによる、美術修復師にしてイスラエル諜報機関の暗殺工作員(キドン)であり、やがては諜報機関、内部の人間の呼ぶところの〈オフィス〉の長官となるシリーズの主人公、ドイツ系ユダヤ人。
 画家として非凡な才能があったが、ドイツ語を母語とし複数のヨーロッパ言語に堪能だった彼は暗殺工作員として活動することを半ば強いられ、22歳で最初の暗殺を実行する。その後も極限の中で暗殺を重ね、結果として、絵を描く才能は損なわれてしまう。その後、ベネツィアで絵画修復師として修行を積み、独立後はこれを隠れ蓑にヨーロッパで工作員としての活動を継続することになる。

 容姿の形容は、身長175cmくらいで平均以下、自転車選手のような引き締まった体躯、暗色の髪はこめかみに白髪が交じり、知性を感じさせる広い額、面長の顔、目はアーモンド型で不自然なほど鮮やかな緑の瞳、高い頬骨、木彫りのような鋭い鼻の線、細い顎。ちなみに、私の脳内では、キアヌ・リーブスが近い。目の色以外はぴったりだと思っている。もし映画化されることがあるなら、主演は彼でお願いしたい。(正し、身長差はいかんともしがたいが。)

 犬が嫌い。(キアラに言わせると野生動物全般と相性が最悪らしい。たぶんガブリエルも動物に劣らずワガママだからだろうな。)
 ガブリエルの犬嫌いはスパイ業界では有名な話らしく、部下のミハイルによれば、犬とガブリエルは「ガソリンとライターのように危険な組み合わせ」なんだとか。元々好きではなかったらしいが、『イングリッシュ・アサシン』で逃走中にアルザス犬(=ジャーマン・シェパード)と闘う羽目になり、左腕を噛み砕かれたことがあって、以来、犬族全般に対して極めて険悪な感情を持っていると推察される。

 性格はやや神経質で寡黙で暗い。時間を掛けることも待つことも厭わないが、待たされることはあまり好きではない。待たされてイライラすると物や人に当たりちらすこともあり。情緒に乏しく傲慢で冷酷とは少年期の彼に与えられた評価だが、感情表現があまり豊かでないだけで、内実は愛情深く、恩義に厚い。

「・・・石灰岩の建物と、松の香りと、冬の冷たい風雨を愛している。教会と、巡礼の人々と、安息日に車を運転する彼をどなりつける超正統派ユダヤ教徒を愛している。旧市街の市場でアラブ人の露店の前を通り過ぎるとき、彼らの守護聖人たるテロリストを何人も排除してきたのが彼であることを知っているかのように、みんなが警戒の視線を向けてくるが、そんなアラブ人のことすらガブリエルは愛している。信心深い暮らしを送っているわけではないが、旧市街のユダヤ人地区に入って、嘆きの壁のどっしりした石組みの前に立つのを愛している。パレスチナと広いアラブ世界とのあいだに永続的な平和を確保するため、縄張りをめぐる譲歩を受け入れてはいるが、本音を言うなら、嘆きの壁だけは譲りたくないと思っている。エルサレムの中心部に国境が作られることが二度とあってはならないし、ユダヤ人が自分たちの聖地を訪れる許可を求めねばならないような事態を招くことも、二度とあってはならない。嘆きの壁は現在、イスラエルのものとなっている。この国が存在しなくなる日まで、そうありつづけるだろう。地中海沿岸のこの不安定な一帯で、いくつもの王国や帝国が冬の雨のごとく現れ、消えていった。現代によみがえったイスラエル王国もいずれは消えていくだろう。しかし、自分が生きているかぎり、そうはさせない。」ダニエル・シルヴァ. ブラック・ウィドウ 上  Kindle の位置No.945-957 


 普段はかなり無口で、几帳面で感情の起伏を表に出さないタイプだから、こんな想いを語られるとけっこう胸熱だ。  

以下作中から読み解く彼の来歴
 ※『ブラックウィドウ』を読んで、ガブリエルの生年を上方修正。1950年生まれだ。

◆ ガブリエル・アロンの家族の出身はドイツ、母方はベルリン。父方はミュンヘン。
 母方は一家全員がアウシュビッツに送られ、母のみ生還。母方祖父はヴィクトール・フランケルという名のドイツ印象派の高名な画家であったがアウシュビッツに到着した日に殺害されている。母も才能ある画家で、戦後イスラエルに逃れ、現代イスラエルを代表する抽象画家となったが、心を病み生涯アウシュビッツの記憶に苦しめられた。 父も腕に番号の入れ墨のあるアウシュビッツの生還者だ〔報復という名の芸術〕が、ハーパーブックス以降の巻では、ミュンヘン出身でユダヤ人虐殺が始まるまえにパレスチナに移住した、とされている。作品初期から設定が変わっているのか?それとも戦前のパレスチナへの移住者だが、捕らわれてアウシュビッツに送られるような経緯があったのか? いずれにせよ、ガブリエルは母から芸術家としての才能と、両親からアウシュビッツを生き抜いた強靱で不屈な精神を受け継いだ。
◆ ガブリエルは1950年(の多分冬。11月か12月頃)に、イスラエルのイズレル渓谷にあるラマト・ダヴィドという農業を中心とする入植地で生まれた。〔ブラック・ウィドウ〕
◆    1967年 父が第三次中東戦争(六日間戦争)で死亡。〔ブラック・ウィドウ〕
◆ 1968年 父の死の1年後、母が癌で死亡。〔イングリッシュ・アサシン〕
◆ 兵役(イスラエルのユダヤ教徒は男女とも皆兵。男子は18歳から36ヶ月の兵役を務める。 )ののち、ベツァレル美術学校(ベツァレル美術デザイン学院)に入学。イスラエルの学生は兵役があるため、普通大学に入学した時点で21歳くらいのはずだが、アロンは1972年に暗殺者となったとき20歳、との記載。〔英国のスパイ〕 若干計算が合わない気がしたが、『ブラック・ウィドウ』では「ミュンヘンオリンピックの後、22歳で復讐の天使になった」とのエリ・ラヴォンの言葉があり。そうであれば、1950年生まれで、ハリー・ボッシュと同じ歳(笑)である。これだと、計算があう。というわけで、ざっと年齢を修正。
◆ 在学中に最初の妻、リーアと結婚。
◆ パリに1年留学していた、との記載あり。〔報復という名の芸術〕
 留学、とはいうものの留学生の身分を偽装に利用して暗殺工作を展開するためだった可能性もある。
◆ 1972年のミュンヘンオリンピック事件(ブラックセプテンバー事件)直後の9月、ガブリエルの語学力、兵役時の銃器を扱う才能、偽装に使える画才等を見込んだシャムロンが彼を強引にスカウトし、シャムロン麾下の暗殺工作員(キドン)となる。〔イングリッシュ・アサシン〕 この時22歳。〔ブラック・ウィドウ〕その後3年間にわたって、ブラックセプテンバー事件への報復作戦である「神の怒り作戦」に従事。
◆ ブラックセプテンバー事件の実行犯・関係者12名を暗殺(銃殺もしくは爆殺)して「神の怒り作戦」におけるガブリエルの任務は終了する。ガブリエルはそのうち6名を直接殺害した、とされている。その際、ブラックセプテンバー事件の犠牲になったイスラエル選手団11名の報復として、可能な限り一人につき11発の銃弾を撃ち込んだ。これは、この後もガブリエルの暗殺のスタイルとなっている。
◆暗殺した6人の内のひとりが、マハムンド・アル=ホウラニだった。この男の弟のタリク・アル=ホウラニが、兄を殺された復讐のため後にガブリエルの妻子を爆殺する。〔報復という名の芸術〕
◆ ガブリエルは、3年間作戦に従事したのちイスラエルに帰還し、改めて画家としての活動を再開しようとしたが、キャンバスに向かうと自分が殺した相手の顔がちらついて、絵を描くことができなくなっていた。そこで、シャムロンの了解のもと、ベネツィアの美術修復士のもとに弟子入りし、絵画修復の道に入る。
◆ 1975年〜1977年頃までの3年間、ベネツィアで修行。
  絵画修復師として独り立ちした後は、この身分を隠れみのに、工作員としての活動を継続。
◆    1976年頃には、チューリッヒ在住のパレスチナ人劇作家、アリ・アブデル・ハミディを殺害。〔イングリッシュ・アサシン〕
◆ 1977年頃  シャムロンが修復師修行を終えたガブリエルをイシャーウッドに引き会わせる。
◆ 1988年頃 息子のダニエル・アロン誕生。(ガブリエルはこのとき38歳)
◆ 1988年4月のPLO幹部暗殺事件では、作戦に加わり、暗殺を実行している。
◆ 1991年1月 ウイーンでガブリエルの自動車に仕掛けられた爆弾により息子のダニ(当時2歳半)が死亡、妻リーアは全身大やけどを負い、精神に異常をきたす。〔報復という名の芸術〕
◆ 事件の後、ガブリエルは〈オフィス〉を辞め、イギリスのコーンウォール最南端のガンヴァロー海岸にあるコテージに隠棲。このコテージとアトリエは、こののち長い間彼の心の休息地となるが、『英国のスパイ』では殺戮の舞台となる。
◆ 1998〜1999年頃、イギリス・コーンウォールのヘルフォード川河口、ポート・ナヴァスの近くにあるコテージに移り住む。このコテージの隣家にピール少年が住んでおり、ガブリエルは亡くなった息子ダニエルと同じ歳のピールと交流する。〔報復という名の芸術〕
◆ 1998年頃は「この世界(諜報と暗殺)から遠ざかっていた」と本人の弁。〔英国のスパイ〕この頃はイシャーウッドからの絵画修復の依頼で生計を立て、精神病院に入院していたリーアの治療費を稼いでいた。
◆    1999年頃 シャムロンの要請で〈オフィス〉の現場に復帰。ニューヨークでパレスチナ人テロリスト(タリク・アル=ホウラニ)の銃撃を胸にうけて重傷。〔報復という名の芸術〕
◆ 2001年頃 ナチスによって奪われたユダヤ人が所有していた絵画を巡り、スイスの秘密組織に潜入するも捕らえられて拷問される。なお、この作戦の際、パリで爆弾テロの標的とされ、腕に大怪我もしている。(爆弾テロ1回目)〔イングリッシュアサシン〕
◆ 2001年〜2002年冬 サン・ザッカリア教会の祭壇画(ベッリーニ)の修復。
  盟友ベニがミュンヘンで謀殺される。
  ローマ教皇暗殺犯(ベニを殺した男)をバイクで追跡中転倒し重傷を負う。〔告解〕
◆ 2003年  聖クリストソモ教会の祭壇画(ベッリーニ)の修復。キアラとは恋仲になっている。SS将校であったラデックを捕らえてイスラエルに連行する。〔さらば死都ウィーン〕
【5作目から13作目 未読 ガブリエルがキアラと別れたりくっついたり、ローマ教皇を助けたり、ロシアに潜入して大怪我したり、サウジに潜入して捕まったり、イギリスの首相を助けたりしている。ああ、翻訳読みたい(泣)】
◆    2014年秋  サン・セバスティアーノ教会の祭壇画(ヴェロネーゼ)の修復。
◆ 2014年秋〜12月 英国人の殺し屋ケラーとともに元IRA爆弾テロリストとロシアのスパイを追う。ロンドンで爆弾テロの標的にされて負傷するが、この事件を逆手にとって死亡を装ってテロリストを追撃。
◆    2014年12月 妻キアラとの間に双子誕生。
  女の子をアイリーン(ガブリエルの母の名)、男の子をラファエル(ルネサンスの大画家より)と名付ける。〔ブラック・ウィドウ〕
  カラヴァッジョの祭壇画《キリストの降誕》の修復〔ブラック・ウィドウ〕
◆ 2015年4月〜ISISの爆弾テロ指導者〈サラディン〉を追う。この間、ワシントンで爆弾テロに巻き込まれる。〔ブラック・ウィドウ〕
◆ 2015年の末に 〈オフィス〉長官に就任(65歳)。双子1歳の誕生日。サラディンの追跡を継続。パリのヴォクソール・クロスでまた爆弾テロにあう。〔ブラックウィドウー死線のサハラ〕

◆ 2019年11月 ローマ教皇パウロ7世逝去。双子は4歳で、もうすぐ5歳。ガブリエルは69歳になったところ。ガブリエルの旧友でもあるドナーティが、新教皇に選出される。〔教皇のスパイ〕

◆ 2020年3月 新型コロナの流行。アロン家はナハラルのバンガローに仮住まい。ガブリエルの旧友であるロンドン在住のロシア人富豪が毒殺される。
◆ 2021年1月6日 米国でトランプ支持者による議会議事堂襲撃。 1月20日 大統領就任式の直後にQアノン支持者によるガブリエル暗殺未遂。生死を分ける一週間、さらに2週間の集中治療ののち、ガブリエルはイスラエルに帰国。その後、復帰までにはさらに数ヶ月の静養を要した。〔報復のカルテット〕

◆ 2021年末 オフィス長官辞任。ヴェネティアでついに引退生活に入る。
◆ 2022年春 旧友のイシャーウッドが贋作絵画売買の詐欺に巻き込まれる。1枚の絵の所有者が殺害され、イシャーウッドも狙われるに及んで、ガブリエルが調査に乗り出す。結果、全世界を股に掛けた巨大絵画投資詐欺グループを壊滅に追い込む。〔謀略のカンバス〕
◆ 2022年秋 〈オフィス〉長官引退後、ヴェネティアで絵画修復に励むガブリエルにフェラーリ将軍が巨匠絵画の盗難事件を持ち込む。ガブリエルは調査を請け負うが、それがウクライナ戦争での核使用を目論むロシアの陰謀に繋がり、ガブリエルは再び〈オフィス〉のメンバーを集め諜報戦を指揮することに。〔償いのフェルメール〕
◆ 2023年1月 修復を手がけたゴッホのお披露目の式典のためにイギリス、コートールド美術館を訪れていたガブリエルに旧知のティモシー・ピールから一本の電話が。〈斧男〉と呼ばれた連続殺人犯による殺人に見せかけた美術史家の殺害から、第二次大戦中にフランス在住のユダヤ人から奪われたピカソの作品を知り、事件を追いかけるうちに、ガブリエルはイギリス政界を揺るがす陰謀を暴く。双子は8歳になっている。〔コーンウォールに死す〕

2025年8月6日水曜日

介護日記的な・・・その21 こげくさい。

 本日から、実質的な介護同居スタート。
 まあ、いつかこの日が来るとおもっていたし、実際、穏やかな始まりといって差し支えない。もっと、劇的に大変になる可能性もあった。とはいえ。

 昨日夜(母が寝た後)に母宅にやって来た。
 玄関を入ったとたんに、異臭に気付く。・・・・焦げ臭い。

 ひとまず荷物を置いてから、お焦げの匂いのみなもとを探す。
 まあ、何かを焦がしたんだろうよ。
 そして、きっと、一生懸命原状復帰した。だから、お焦げは影も形もない。匂いとしては、プラスチックやビニール系のイヤな臭いではない。むしろ、紙とか木とか、炭水化物やタンパク質。つまり食べ物だと思われる。
 まあ、電子レンジだろうな。なにかを加熱しすぎて焦がしたか、まさか、ガスでお湯を沸かすときにガスコンロ周りのなにかを燃やしたか?

 だけど、影も形もない。

 ごみ箱の中も確認。ひょっとして燃えかすとか、黒焦げたなにかとか。

 だけど、それらしきものはなく、匂いもしない。

 辛うじて、電子レンジの中は焦げ臭いような。だけど、内部のスス汚れとか、焼損といったものは見当たらず。

 結局は謎なんだけど、依然として、室内のそこはかとないお焦げ臭が、きっとなにかあったはずなのを告げている。

 ・・・・・まあ、つまりは、同居見守りに踏み切ったのは、決して早すぎではなかったということだ。精神科の先生には、そのうち電子レンジで発泡スチロール燃やすようになるから、独居は限界あるよ、とは言われていた。
 正直、発泡スチロールを発火させなかっただけで有り難い。(もっとも、うちの母は、食品トレーのまま食べ物を温める、とか、カップ麺を食べる、という食習慣自体がないので、発泡スチロール製品をレンジに入れる、というシーンはあまりないかもしれない。)

 なにしろ、集合住宅。他家に迷惑がかかる可能性はあってはならない。ボヤなんてもってのほか。こうなると、たまに自分の自宅に掃除やら様子見に一泊程度で帰ろうと思っていたことのほうが、難しくなるかもしれない。それはそれで、困るんだよなあ・・・・と、初日から悩ましい。

2025年8月3日日曜日

2025年7月の読書メーター

 ル=グウィンの『幻影の都市』読了が8月に少し入っちゃったけど、7月読了本があまりにも寂しかったのでちょっとズルして7月31日で読了登録した。6月後半からず〜〜〜〜〜っと読んでいたので良いよね!ということに。 
 ここしばらくル=グウィンを読んできたがここにきて息切れ。
 SFが面白くない(T-T)のだよ。なぜだ! ル=グウィンほどの大御所で、それこそ大御所のファンが沢山いる作家だと、「面白くない」というのもなんだかヘンな勇気が要る。
 うまく言えないのだが、ル=グウィンの作品て、アンドリュー・ワイエスの作品に似ていると思う。私はキリスト教的な厳格さとかは門外漢でよく判らないのだけど、文化的な桎梏というか、苦しさを感じてしまう。たぶん、ル=グウィンが抱えていたジェンダーとも繋がるものなのだと思う。
 と、同時に、最近は読みやすく、感情移入しやすい分かり安い本を好んで読んでいるな、とも思う。自分を甘やかしているせいか、ちょっとむずかしい本を読む努力が出来なくなってきているような。

 母の介護は、新たな局面に入った。
 自分でご飯を食べられないように(ADL的に食べられないのではなく、適切な食べ物を選んで食べることが出来なくなった。つまり、蒸しパンやお菓子やミカンしか食べなくなってしまった。)なったため、朝夕の食事の世話が必要に。それ以外は概ね自立しているので、そばに居てもあまりすることが無かったりするのだけど、なにかと見守りは必要。なにより、本人も不安だと思われる。そんなこんなで、しばらく介護休業を取ることに。これまで全力疾走してきた十数年(?)いやそれ以上。しばしのアイドリングで、自分の人生そのものも見直したいと思う今日この頃。・・・とはいえ、仕事を休んだ途端にガタッと落ちそうな気がしていてヤバい。

7月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:1148
ナイス数:390

幻影の都市 (ハヤカワ文庫SF)幻影の都市 (ハヤカワ文庫SF)感想
びっくりするほど楽しく読めなくて残念至極。ここまで読んだル・グウィンのSF、みな色調が似ているというか、人物が似てるというか、構成も物語の主要部分がグレートジャーニーというか。雄大な風景の描写は素晴らしいのだけど、それ、この話に必要?って感じちゃう。敵のシングが前半、中盤、後半で印象ががらりと変わるのとか、主人公が突然心理戦で優位に立つとか、面白い要素はたくさんあるのだけど、総体的にはつまらなかったな。ずっとル・グウィンを読み進めてきたけど、これ以上読める気がしないので、中断を自分に許すことにする。
読了日:07月31日 著者:アーシュラ K ル グィン

幻影の都市 (1981年) (サンリオSF文庫)幻影の都市 (1981年) (サンリオSF文庫)感想
感想はハヤカワ版の方に
読了日:07月31日 著者:アーシュラ・K.ル=グイン





はなれがたいけものはなれがたいけもの感想
読み友サンのレビューが流れてきて、ちょっと気になったのでAmazonで試し読みからのダウンロード。それなりに面白かった。「愛を知らない」主人公は、自分の行為を「愛」ゆえとは認知しない。これほどの愛情と献身を我が子に注ぎながら、自分は愛してなどいない、なぜなら愛を知らないから、と頑なで。現在全6冊出ているとのことだけど、とりあえず1巻で満足。ル=グウィンの『幻影の都市』が大ストッパーになっているので、他の本が読めると安心する。
読了日:07月27日 著者:八十庭 たづ

チェーザレ 破壊の創造者 特別編 二人の巨匠チェーザレ 破壊の創造者 特別編 二人の巨匠感想
ミケとダ・ヴィンチ。そして総領冬実の筆による、幻のアンギアーリの戦いの絵,そして成年になったチェーザレの肖像。ごく薄い本なのだが、胸がいっぱいになる。
読了日:07月26日 著者:惣領冬実







手ぬいで着物リメイク ゆったり心地よい服 (レディブティックシリーズno.8188)手ぬいで着物リメイク ゆったり心地よい服 (レディブティックシリーズno.8188)感想
Kindleアンリミで内容を確認し、作りたいのがあったので、紙本で入手。手縫い本だけど、実際作るとなったらミシンだな。だけど、そもそも着物って手縫いなのよね。和裁ができる人ならあっという間に縫えるんだろうなあ。(私はそもそも真っ直ぐな縫い目にならない(^^ゞ  この本は、いくつか気に入ったワンピースとジャンパースカートのデザインがあったので、ぜひ、時間ができたら制作したいと思っている。いつ・・・・・になるかは、想定不能。(遠い目)
読了日:07月08日 著者:高橋 恵美子

着物のリメイクを愉しむ 製図集 (レディブティックシリーズno.8543)着物のリメイクを愉しむ 製図集 (レディブティックシリーズno.8543)感想
Kindleアンリミ。製図がたくさん掲載されているのが嬉しい。だが、気に入ったデザインは僅少(これは、どのリメイク本も同じなんだけど)。Kindleだと製図は難しいので、いざ本当に作りたくなったら、紙本を求めようと思う。
読了日:07月08日 


軍人婿さんと大根嫁さん 6 (芳文社コミックス/FUZコミックス)軍人婿さんと大根嫁さん 6 (芳文社コミックス/FUZコミックス)感想
7月一冊目。本日発売。花ちゃんがすこし、人妻なお顔になった。カヨコさんの三角ご夫妻の馴れ初め。カヨコさんは、はっちゃけてるだけのオンナじゃなかった!あのカヨコさんの心を手中にした三角中尉はやはりスゴイと思ったのだった。
読了日:07月02日 著者:コマkoma

読書メーター

2025年7月31日木曜日

0561 幻影の都市(ハヤカワSF文庫版)

書 名 「幻影の都市」
原 題 「CITY OF ILLUSIONS」1967年
著 者 アーシュラ・K・ル=グウィン    
翻訳者 山田 和子    
出 版 早川書房 1990年4月
文 庫 313ページ
初 読 2025年7月31日
ISBN-10 4150108668
ISBN-13 978-4150108663
読書メーター  

  表紙の絵が怖いのだ。白目に見えるんだよね。実際には、猫目の光彩が描き込んであって、金色の目なんだけど、小さな画像になると、金色の濃淡でうっすらと描かれた光彩が見えないのだ。
 あと、なんだかねえ。訳者後書きが死ぬほどつまらない。貴方様のSF論を読みたいわけではないのだ。観念的で、なにか意味のあることが語られてるのかを理解できないのは、私の頭が悪いからなんだろうか? なんというか、70年代の匂いが紛紛とする。「主義」とか「思想」とかの匂いがしてくる。(出版されたのは90年なんだけどね。)まあ、自分自身も文章で語ってしまったりしがちなので、あまり人のことを批判できないとは思うのだけど、ただ訳すだけじゃダメだったのか? 似たようなことは、ル=グウィン自身にも思ったりはする。ただ、書くだけじゃダメだったのか?と。作家なんだから、作品で語ればいいじゃないか。なぜ、解説したがるんだ。 ましてや、翻訳者の思い込みの強い蘊蓄なんて、本当にいらんわ。翻訳の苦労話ならいくらでも読めるのだけど。
 
 まあ、それはさておき。

 ル=グウィンは、どの作品でも主人公が大陸や原生林の中を旅をする。大いなるワンパタなんだ、と思い始めた。ゲドも旅をしたし、これまで読んだ本、『辺境の惑星』を除いて、とりあえず主人公が孤独な旅をする。作品一つ一つの完成度は高いのだと思うのだが、まとめて読んで食傷した。主人公は男にせよ、女にせよ、いつも淡々としている。とても抑制が効いている。大きく乱れない。とてもストイック。なんとなく息苦しい。
 主人公が旅の中で出会う、刻々と様相を変えていく空や、森林、壮大な大自然の描写は素晴らしいと思うのだ。多分・・・・たぶん、単品で読んだほうがいいのだ。たとえ、ハイニッシュ・ユニバースのシリーズであっても。

 このシリーズの中では、どの惑星も「地球」と呼ばれ、どの星の話なのかは読み進めるまでは判らない。時代の前後関係も、しかとは語られない。この作品は、どこか深宇宙の惑星の話か、と思ってよんでいたら、実は文明が衰退した後の地球、しかも北アメリカ大陸の話だった。科学文明が隆興し、宇宙に植民し、星間戦争ののち、衰退する。人々は、残された文明の残滓に縋りながら、近代以前に後退した文化の中で生活している。
 なお、読んでいて、『辺境の惑星』に直接繋がる話なのだと判明する。『辺境の惑星』がその後、どのように発展したのか、様子がわかって感慨深い。このあたりの文化や文明のヴァリエーションの付け方は、さすがだな、と思う。
 その一方で、舞台となる惑星は違えど、似たようなシチュエーションが展開することに飽きてきてしまって、読み進めるのがついに苦痛になってしまった。
 前半はグレートジャーニー、後半は『敵』との心理戦。敵であるシングのイメージが前半、中盤、後半でがらりと変わってくるのは面白いとは思ったのだよな。だけどそこまで。前半の旅が冗長だったので、後半の心理戦に重点を置いていたら、また印象が違ったかもしれない。

2025年7月27日日曜日

介護日記的な・・・その20 部屋の片付け、テレワーク準備、仕事の片付け・・・・が出来るのか!?

 さて。不要品処分のその後である。
 土曜日に、地域の行政サービスで粗大ゴミ出しの予約をしてあったのは前述のとおり。
 結局、壊れた電子レンジ(けっこうデカい)、そこそこのサイズの手作り本棚(昔、手塚治虫全集300冊を納めていた。)、インクジェットプリンター2台、壊れた昭和の扇風機、大型ガラス水槽、AVラック、扉のはずれたテレビ台・・・・を排出。
 母に見とがめられると多分トラブルになるので、深夜、母が寝ている間に、そーっと搬出。母は寝付きが良く、寝ると朝まで起きないことがほとんどなのだが、それにしても(やったことないけど)空き巣に入ったくらいには慎重に、静かに、あくまでも静かに、物置と化している部屋から運び出した。・・・・私一人で。

 結果、ゴミ出しには成功し、翌朝、粗大ゴミはこれまた静かに回収されていった。

 怖れていた母の反応といえば、物置部屋の室内の変化には気付かず。

 以前なら、あら、お前片付けした?くらいの反応はあったと思うのだが、これだけの変化をスルーしちゃうくらいには、認知症が悪化しているのを再確認した。

 そして、同日午前、メルカリで購入した中古の(アンティーク、とも言えるか。)仕事机が届いたので、こちらは私が今使っている寝室兼タンス部屋に搬入。
 別途自宅からクロネコさんに運んでもらっていた23インチのモニターやデスクライトを配置して、在宅ワークが可能な体制を作った。(Wi-Fiの受信状況が極めて悪く、まだテレワーク可能な状態までには至っていない。)

 さて、こちらの変化については、母の反応は、
 1回目(搬入中)「これ、どうしたの?」→「私が運送頼んで自分の家から持ってきてもらったのよ。ここで仕事できるように」
 2回目(設置後)「これ、お前がもって来たの?」→「そうだよ〜。前に、相談したら、『部屋空いてるから、好きにして良いわよ〜』って言ってくれたよ?忘れた?」(これは事実だ)→「忘れたけど、そう言いそうダワね」
 3回目(午後) 「これ、前からウチにあったかしら?」→「(メンドクサイから)あったよ〜」
 4回目(同日午後)「これ、前からこの辺に置いてあったわよね?」→「そうだよ〜」

 結果、机は以前から家にあったこととなり、中古でそこそこ使用感があったことも幸いし、すでにもう20年も家に置いてあったんでは?くらいの馴染みっぷりで、寝室の一角にとっても昭和レトロな空間が完成した。母に受け入れてもらえて良かった。置いた机が、私の想像以上に和室に馴染んで良い雰囲気になったもので、母も気に入ったらしく、これ良いわね〜、と何故か部屋に居座るようになったのはご愛敬。

 物置部屋に置いてあったプリント化粧合板製の本棚を脇に設置し、こちらも自宅から宅急便で運んでもらった、ボッシュシリーズその他の、読みたい本を並べた。ついでに、あの分厚くて重たい筑摩世界文学全集を読むための書見台も持ち込み。

 母の介護にかこつけて、テレワーク準備と言い訳しながら、かねてから欲しかった読書机を買っちゃった背徳感を感じつつ、前日からの、もっといえばその2週間前からのオーバーワークで疲労困憊し、頭痛が治まらない日曜日の夜・・・・。これ、過労で脳血管がぷつっといかないように、ホント注意しないと。

 あとは、8月2週から、無事に介護休暇に入れるのか、(事前相談はしているものの)介護休暇の正式な申請、引継書の作成、母のショートステイのお試し決行、新たなケアマネさんとの契約、ケアプランの見直し、一度は断念したホームヘルパーの再導入を試みるかどうか、現在待機している認知症高齢者グループホーム以外に、もっと良い選択枝は無いのか相談してみること。やることは今だ山積している。
 母は、食事の準備ができないことを除けば、穏やかに落ち着いているし、そこそこ会話でのコミュニケーションも出来るし、週末一緒にすごしていると、施設入所、という選択に迷いが生じる瞬間がある。だけど、一人でご飯は食べれないんだよな〜。やはり独居は限界。これ以上母が体力を落とす前に、やはりなんとかしないといけないのだ。

2025年7月23日水曜日

介護日記的な・・・その19 不要品処分


 直前の書込みで、母は冷蔵庫のポカリを飲めるのか、との疑念を書いたが。
 なんと、飲めたようだ。飲み途中だったペットボトルが一本空いている。やれ、よかった。ポカリのボトルは飲み物として認知されたらしい。とはいえ、脱水状態が改善するほど、きちんと飲めている訳ではない。 

 母宅の電子レンジが壊れた話は、以前にした。
 で、新しい電子レンジを購入したので、古いのは処分しなければならない。

 母宅の、昔私の子供部屋だった部屋は、現在書庫兼納戸・・・というかただの物置になっていて、いろいろと不要品が置いてある。まあ、この部屋があるから、母の生活スペースは片付いている、といえなくもない。

 電子レンジを粗大ゴミに出すにあたって、ついでにこの部屋の不要物と、トランクルームにおいてある不要品も出すことにした。

 電子レンジ、文庫本用の本棚、テレビ台、大昔に父が手作りしたレコードラック兼テレビ台、プリンター2台、壊れた扇風機、大型ガラス水槽など・・・・

 問題は、母に気付かれずに家から搬出することだな。決行は土曜日未明。母が寝ている間に。静かに。あくまでも静かに。

 母は、無くなってしまえば多分忘れてくれる。

 しかし、処分するところを見られると、私のモノを勝手に!と怒るかもしれない。

 そう、母は片付け魔だが、私もそうなのだ。しかも、母は取っておく性向が強いが、私は捨てたがりなのだ。

 毎回、母宅にいって、あーーー、これ捨てたいな、と思うのをガマンするのも結構ストレスで。すこしづつ、いろんな不要品を捨てている。さすがに3年ともなると、いろいろと少しずつ、物置化した部屋の中が片付いてきて、私は嬉しい。今回の粗大ゴミ出しで、だいぶすっきりする予定だ。
 その上で、私の仕事机を搬入の予定。上手くいきますように。

2025年7月21日月曜日

介護日記的な・・・その18 介護とワクワク?

 もうだいぶ前のことになるが、リビングのごみ箱・・・紙くず入れに、大量の固まったトイレットペーパー・・・・なにかに使って、円筒型状のものに詰め込んだあと、引っ張り出して捨ててた・・・・ような半分ほぐれかけたトイレットペーパー屑、を発見して、一体これはなんだろう、と首をかしげたことがあった。で、一昨日その答えが明白になった。

 トイレに置いてある円筒型のサニタリーボックスの中を何の気なしに改めたところ、ぎっしり。何かに使用済みのトイレットペーパーが出て来たのだ。まさにコレ。

 ————あ————つまりだ。
 母は、たぶん、もうだいぶ前から、使用済みトイレットペーパーをトイレに流していなかったのだ。全部、サニタリーボックスに「捨てて」いた。そしてそれが一杯になったので、リビングのごみ箱に空けた、と。

 ネットにお伺いしてみると、認知症あるあるらしい。

 多分、昭和の頃の脆弱な給排水衛生設備で育った世代は、「詰まらせてはいけない」と思うんだろう。

 なんにせよ、謎がほどけて、困惑が残った。
 こうやって、ひそかに「ヘン」なところはじつは沢山あるんだろうな〜。

 母は、もう短期記憶が1分くらいしか保たなくなっている。言葉の理解も覚束なくなってきた。
 それでも大崩れしない、確固とした生活習慣が身についているっていうのは、それはそれで凄いことだと思う。でもこんな感じでいろいろと綻びが、目立ってきた。

 ここ1ヶ月くらいは、自分でご飯を食べるのが難しくなった。咀嚼も嚥下もできるが、冷蔵庫からご飯はともかく、おかずを取り出して食べる、ということができなくなった。冷蔵庫にいれてあるお惣菜を手にとっても、しばし眺めたあと、また冷蔵庫に戻してしまう。
 小鉢にいれて、「食べてください」と付箋を貼って、冷蔵庫に入れておいたが、母は、「いつからここにあるのかしら」「古くなってるし気持ちわるい」とかいって、捨ててしまったりする。

 結果、先週末の受診では、顔色の悪さと脱水気味を指摘され、「糖尿病がなければ、ポカリ飲ませて」との指示を頂いた。
 500mlのペットボトルを2本買って帰って、とりあえずコップ一杯は飲ませたが、冷蔵庫に入っているものを本人が自分で飲む可能性は皆無に近い。

 人の手が入らなければもう、生活の維持は無理だろう。

 8月から介護休暇を取るか、ひとまずテレワークと出勤と介護休暇を織り交ぜるか。
 
 自分の自宅のこともあるから、母の家に行きっぱなしもできない。特養のショートステイも入れて、その間は自宅に戻るにしても・・・・ううむ。

 ひとまずこの際なので、母の家に私の机を入れてモニターも設置し、テレワークができる体制は作ることにした。(お願いだから、いじらないで壊さないで、コード抜かないで、と願う。)

 で・・・・冒頭のタイトルである。

 事態はそれなりに深刻で、私は家庭生活上も、職業生活上も大幅な変更を余儀なくされているのだが、なんだか、単純にワクワクしていたりもする。なんなら、隙間時間にどの本を読もう、なんて本の選定まで始めている。とにかく、10年以上・・・・ずーーーと、それはそれは多忙な職場を渡りあるき、残業上等、なんなら午前様も当たり前な生活を続けてきた。ここに至って、ある意味、母のために止むなく、ではあるにせよ、「仕事を減らす」事態に心の半分くらいがなんだか歓喜しているみたいな気がするのだ。
 残りの半分は、手離さざるを得ない仕事への気がかりとか、仕事を休んでしまって果たして私は復帰できるのか、という不安や、これでもし、戻れずに離職してしまったら自分の老後は果たして成り立つのか、とか、母の介護そのものへの不安とか、母への献身(?)に、自分の欲求を織り交ぜることへの罪悪感とか・・・・(たとえば、母宅で在宅ワークするため、というのを口実に、ずーーーーっと欲しかったデスクを購入しちゃう、とか(爆)
 重くて引きずり歩くのが億劫な掃除機の代わりに、自分の自宅でも使っているスティック型の軽快な掃除機をAmazonでポチる、とか。

 でもまあ、介護は、生活だ。
 滅私奉公である必要はないんじゃないかな。大変なだけでなく楽しいこともあったほうが良いし、私の精神衛生が良いほうが、絶対に母にも良いはずだ。買い物一つでワクワクできるんならそれはそれで・・・・

 そんなわけで、介護生活の新たな局面に、きっと大変なこともあるだろう、という理性の声を頭の隅に掃き寄せて、なんだかワクワクが止まらなくもある。

2025年7月6日日曜日

介護日記的な・・・その17 電子レンジも壊れた


 さて、全体的には、前回と同じような内容ではあるのだけど。

 先週、母宅に行ったときに、電子レンジの電源が入らなくなった。
 結構古いものであるので、来るべきときが来たか、という感じではあった。幸い、電源を抜き差ししたり、扉を開け閉めしたり、押したり引いたりしているうちに、接触が回復したのか、また使えるようになった。

 だがしかし、「来るべき時に備えよ」という神の声に感じたりもしたのだ。

 なにしろ、母が今現在できるのは、ガスでお湯を沸かすことと、電子レンジで「チン」することだけ。この二つで、母の自宅での食卓は成立している。
 電子レンジが使えるかどうか、は、母が在宅生活を続けられるかどうか、とほぼ同義なのだ。

 母の在宅介護について、施設入所に舵を切るタイミングとして想定していたいくつかのポイントがある。
① 徘徊が始まり、迷子になる
② コロナやインフルエンザで入院を余儀なくされる、からの退院先としての高齢者施設入所
③ 足の痛みが再発して、ADLが落ち、在宅一人暮らしが困難になる
④ その他、認知機能が落ちて、目が離せなくなる
⑤ 電子レンジが壊れて、自宅での食事が困難になる

 先頃からの、なんだか食事が出来なくなる。なんなら「食事だけ」出来なくなる。というのは若干想定外ではあったが、時同じくして、電子レンジがお亡くなりになる、というのは・・・・やっぱり神様に、真剣に先を考えろ、と言われているのだろうか・・・・・?
(私は無宗教なんだが・・・・)

 とはいえ、特養も、認知症高齢者グループホームも、入りたいと思ってすぐに入れる施設ではない。何事も準備が肝心。ひとまず、えいやっとグループホームの見学に行ってきた。
(炎天下に外出したせいで、帰宅後、かるい熱中症気味。頭痛薬と塩タブレットとポカリで回復。)

 しかし、正直、どうなんだろうなあ、とは思う。

 是非!是非ここに入れてください!! とまでは思わなかった、というのが素直な感想。
 なんというか、全体的に雑然としている。いろんなものが、置いてあったり、壁に貼ってあったり。
 うちの母は片付け魔なので、家の中はそれはもうキレイなのだ。
 母はこの施設で落ち着けるだろうか? それが一番心配だ。

 ただ、スタッフが穏やかで、入所しているおばあちゃん方もみんな落ち着いていて、にこやかだった。多分、人員が充足していて、職員があたふた・イライラしていない。運営が良い証拠だ。いずれにせよ、申し込みしてもすぐに入れる訳ではないので、待機で順番が回ってくるまでに、母の在宅生活がどのように推移するかも、見ていかなければならない。

 で、電子レンジの話に戻るのだが、今週末、突然夕食の支度時に、またウンともスンとも言わなくなった。冷蔵のご飯を温めることができなくなったので、仕方なく、小鍋にいれて少量のお湯で軽く煮る。お粥まではいかず、むしろ湯切りした「湯漬け」っぽい仕上がりになったが、ひとまず温かいご飯にはなった。もはやこれまで、と夕食後に最寄りの家電量販店に購入に走った。単機能レンジで、見かけ(とくに「あたためスタート」ボタンの位置とデザインが、現在使っているものと似ているものを探した。下調べは先週してあったので、あとは決断するだけだった。

 私は車は持っていない。ペーパードライバー歴30年超の大ベテランだ。

 ので、がらがら引っ張る折りたたみキャリーを持って、バス移動。行きは良いが、帰りはレンジの大箱もってバスに乗るんかい?と自問自答しながら、だめなら帰りはタクシーだ!(だがしかし、流しのタクシーが掴まるとは思えない立地。GOアプリは使えるんだろうか・・・? などと思っていたら、バスを降りたと同時にゲリラ豪雨襲来。いったい、なんのお試しなんだか。

 そんなこんなで、苦労して早急に入手した電子レンジを、本日朝、台所に設置。
 幸いにして、母は、扉を開けることは出来た。あたためスタートボタンは、押せるか?・・・・ひとまず声かけすれば押せた。これは何とかなるかもしれない。
 母が一人で使えるかどうかは、これから数日見守る所存。

 電子レンジが壊れたのが、夏で良かったのかもしれない。

 とりあえずレンジであたためなくても、母は冷蔵庫のバナナ、ミカン、パイン、蒸しケーキを食べることができるし、牛乳も温めずに飲める時期ではあるので。ついでに言うなら、日中はデイサービスで、バランスのとれた食事とおやつも頂いているので。

2025年7月2日水曜日

2025年6月の読書メーター

 引き続き、ル=グウィン月間継続中ではあったものの。『幻影の都市』を読了する前に6月が終わるなり。本命の『西の果ての年代記』3冊と『闇の左手』までは、少なくとも読みたい。だがしかし、ル=グウィンの淡々とした語り口と、どっちかってーと起伏の少ない作風に読み疲れてきたのも事実。なんていうか、とても刺激が少ない。ちょっと、どぎついのに読み慣れすぎちゃったかな?
 さらにル=グウィンと作風が似てるよな、と思って手を出した萩尾望都にハマり、人生何回目かのブーム再来となる。正直ル=グウィンよりも萩尾望都の方がストーリーテラーの才能がある、と思う今日この頃でもある。萩尾望都の作品を探す過程で、ついうっかり秋里和国なんかも発見してしまったり、気にいっていたBLが書籍化されたので再購入したり、そんなことしてるから、Amazonから積極的にBL本を薦められるようになっちゃって、別のBL本に手をだしたり。
 認知症の母は、大人の階段を上りつつあるので、こちらも要注意。読書だけにうつつを抜かすわけにもいかないが、自宅の書棚が溢れたので、段ボール箱4箱ほど、実家に送付。週に3日も実家に通う状況では、正直どちらに本が置いてあっても大差はない。この際、実家に自分用の書き物机と書棚も置こうかと思っている。なんならモニターも。そろそろ、介護テレワークも検討しないと。というか環境整備しないと。

6月の読書メーター
読んだ本の数:23
読んだページ数:7178
ナイス数:968

辺境の惑星 (ハヤカワ文庫SF)辺境の惑星 (ハヤカワ文庫SF)感想
SF小説のカテゴリーなんだけど「空想科学」の「科学」の部分は薄い。遠未来の正に辺境の惑星。植民したものの忘れ去られ、原始共産制社会から中世くらいのどこかの発達段階の現地民族の文化レベルに同化せざるをえなかった入植者と現住民の文化の衝突。そして氷河期レベルの冬の到来で、もう一つの原住民族の民族大移動に蹂躙される危機の中で、原住民と入植者のコロニーが手を結ぼうとするが。内容はほぼfolklore。ル=グウィンのSFはFF=folklore fantasy?fiction?ってカテゴライズの方が合ってるような。
読了日:06月07日 著者:アーシュラ K ル グィン

獅子帝の宦官長〈完全版〉 (エクレアノベルス)獅子帝の宦官長〈完全版〉 (エクレアノベルス)感想
先日、Kindleアンリミで1巻目を、分冊版で2巻目を読んだこのお話。なんと合本して一冊として紙書籍化されたので、入手した。ちょっと本棚に並べておくのが恥ずかしいんだけど、今更恥じらっても仕方あるまいな。エロが濃い官能小説ながら、やっぱりイルハリムが清純で可愛らしい(とはいえ三十路なんだけど)。〇十年前の昔、"やおい”の黎明期を覗き見した身には、このジャンルも成熟したもんだ、と年寄りっぽい感慨を感じる。
読了日:06月27日 著者:ごいち

捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです2捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです2感想
「なろう」ですでに通読済みなので、さくっと読了登録。2巻はノーフォーク農法の取り入れの思案からはじまり、メルフィーナ誘拐からの農奴というなの窮民救済、火鉢の導入と冬支度、セルレイネの寄宿、ソーセージとベーコンとハム製造、そして砂糖の製造着手まで。相変わらずマニアックで面白い。そして美味そうです。ブレないメルフィーナにすこしづつ絆されていく公爵様が個人的には密か(でもない)見所。巻末の参考文献も密かな読みどころ。著者さん、よく勉強してるな〜。
読了日:06月22日 著者:カレヤタミエ

竜王の婚姻 竜の頂と導く者 (下) (エクレアノベルス)竜王の婚姻 竜の頂と導く者 (下) (エクレアノベルス)感想
なるほど、あれほどのボリュームの上巻がアンリミであるわけだ。結構なお値段の下巻である。だけど先が気になり読まずにはいられない。とにかくアレコレあって、物語はどんどん、どんどん破局に向かってなだれていく。最愛の男は絶命し、竜王すら死に瀕し、八方塞がるなかでの唯一の望みとなるのは自分の命のみ。死を選ぶことで、世界の命運は繋ぎ止められるかもしれない。主人公が潔すぎる。ファンタジー世界だからこそ可能な、現代社会が惑う様々な社会問題のごった煮の中で、子供を愛し、人を愛する主人公の芯が物語の背骨になって、この無骨な→
読了日:06月22日 著者:佐伊

竜王の婚姻 黄金の獅子と白銀の狼 (上) (エクレアノベルス)竜王の婚姻 黄金の獅子と白銀の狼 (上) (エクレアノベルス)感想
Kindle版をAmazonにオススメされ、アンリミだったので好奇心でクリックしたのが運の尽き?(いやそれは著者に失礼な!)。よくある異世界BLで竜に嫁した不遇な主人公が溺愛される系だろうとの安易な予測を見事に裏切る、超骨太大河だった。本は厚いは、内容は重いわ、先は気になるわで、ついついの駆け足飛ばし読みになってしまった。(これまた著者に失礼な!)。オメガバースとちょっと似た、惹香嚢という発情期に強烈なフェロモンを発する子宮類似器官を持つ人間と獣人王の婚姻に端を発する物語だが、主人公は全然愛されないまま→
読了日:06月22日 著者:佐伊

青のメソポタミア(2)青のメソポタミア(2)感想
連載当時、ところどころは読んでいたのに、ついに通読できなかった『青のメソポタミア』。ふと思い出して検索したら入手できたのでやっと読了。メソポタミア文明に絡めたSF。星間宇宙船のデザインがちょっと楽しい。武器とかのガジェットはごくあっさり。この将校と感情を持たない補佐官の関係って、こう、SFの定番って感じがするけど、好きなものには違いない。
読了日:06月25日 著者:秋里 和国

青のメソポタミア(1)青のメソポタミア(1)
読了日:06月25日 著者:秋里 和国





TOMOI (1) (プチフラワーコミックス)TOMOI (1) (プチフラワーコミックス)感想
1987年初版。およそ40年ぶりの再読か?『眠れる森の美男』のドクター友井は、年上の男と切ない別れの後、本気の恋をする。そしてその恋人を衝撃的な事件で喪ったあとの、アフガニスタン、野戦病院。『神様。もう死んでも良いですか』 さらりとした描きっぷりだけど、トモイの絶望が哀しい。
読了日:06月22日 著者:秋里 和国

眠れる森の美男 (1) (プチフラワーコミックス)眠れる森の美男 (1) (プチフラワーコミックス)感想
再読。1986年初版。懐かしい。間違いなく初版を読んでいた。日本語の別れの言葉を聞かれて「愛していたよ」と教える。「愛していたよ」「愛していたよ」と言い合って別れる。"アメリカのホモの間で奇病が流行している"という、初期のエイズの噂が日本に入ってきてまださほど時間が経っていない頃の作品でもある。こういう時代が確かにあって、今がある、とやや感慨深くもある。ドーナツの穴は真理。そーいや、この作品であった。
読了日:06月21日 著者:秋里 和国

青い鳥 (プチフラワーコミックス)青い鳥 (プチフラワーコミックス)感想
萩尾望都のバレエパレットロマンシリーズ。全部収獲済みと思っていたが、一冊忘れてた。とは言え再読・再入手だった。バレエシリーズの中ではこれが一番好きかも。踊るという一事に傑出ていても、どこか不器用な踊り手達の恋の舞踏。夢のようなバレエの世界がよく似合う。表紙も美しい。おしゃべりじゃないロブが好きだ(笑)空港でぶっ飛んでくる海賊も好き。この目で目撃したい♪自分に向かってぶっ飛んで来てほしいわけでは断じてない。
読了日:06月21日 著者:萩尾 望都

半神 自選短編作品集 萩尾望都Perfect Selection 9 (フラワーコミックススペシャル)半神 自選短編作品集 萩尾望都Perfect Selection 9 (フラワーコミックススペシャル)感想
『イグアナの娘』を再読したくて入手。萩尾望都自選の短編集だけあって、珠玉の短編揃いである。表題作の『半身』『偽王』『天使の擬態』etc.ほとんどはもともと手元にあった萩尾望都作品集の第二期に収録されているが、この本は紙面が大きく、新鮮な気分で読了。とくに今回は『学校に行くクスリ』がとても良かった。イメージの力がスゴイ。親子関係がしんどい作品が多い。こうやって描きながら、少しずつ昇華させていったんだろうな、モトさん。。。。
読了日:06月10日 著者:萩尾望都









バルバラ異界 (4) (フラワーコミックス)バルバラ異界 (4) (フラワーコミックス)感想
一気に読了。・・・・でも感想書けない。まだ脳が溺れてる。ディディールは『銀の三角』に少し似てる?銀の三角では、結び目が解けて夢として実在したものは消滅してしまったけど、バルバラでは夢が実在に転じた?渡会の人類の過去から未来まで包含する無意識界に響き渡る強い願望と、太古の火星の生命から遺伝子の鎖にのって引き継いだ夢に干渉する力が共鳴して、未来を造り変えた?4巻の途中、話がいったんエズレに収束したときに、あれ?こんな?って思ったけど、その後ラストまでの暴走のような怒濤のような巻き返しが凄かった。傑作だと思う。
読了日:06月15日 著者:萩尾望都

バルバラ異界 (3) (フラワーコミックス)バルバラ異界 (3) (フラワーコミックス)感想
3,4巻一気に読んだので、感想などは4巻とブログの方へ書きました。
読了日:06月15日 著者:萩尾望都




バルバラ異界 (2) (フラワーコミックス)バルバラ異界 (2) (フラワーコミックス)感想
更に人物もエピソードも増え、脳内が大氾濫。北海道の研究所も大洪水。渡会さんがバルバラの世界に受け入れられているのが、なんだかすごい。タカはキリヤなのか? 火星はいったいどのように物語に絡むんだろう。スターレッドも読み返さないと。。。
読了日:06月15日 著者:萩尾望都

バルバラ異界 (1) (フラワーコミックス)バルバラ異界 (1) (フラワーコミックス)感想
文庫本で読もうとして、紙面のあまりの情報量の多さに、小さい本で読むのを断念した。あらためて、Kindle版を入手して読んだが、登録は紙本の方で。(いずれ入手するので!!)登場人物の多さと複雑さで脳が溺れそう。ちょっと最初に戻ってメモ作ります。バルバラというキーワードでつながってくる。出だしがあまりにも幸せなメルヘンだったので、その後のスプラッタがきつい。これから先、どう話がまとまっていくのか、想像もつかない。モトさん、凄い話書いてるな。
読了日:06月14日 著者:萩尾望都

メッセージ (小学館文庫 はA 47)メッセージ (小学館文庫 はA 47)感想
Anywhere But Here シリーズ文庫本2冊目。重〜い『メッセージ』3作でスタートするが、浦島舞ちゃんのお話がなかなか良い。この話はヨハネ視点だったらどうなるんだろう? でも一番心にしっとりくるのは小説家生方さんと洋宇子奥様の話。キャピキャピ(死語?)の大学生より年齢的にも移入し易し。良かったのは『夜の河を渡る』小説家宇佐見先生創作の苦悩。イメージの世界が珠玉。そしてラストのシマウマ母子に心を撃ち抜かれた。モトさんの才能を、改めて見た!
読了日:06月11日 著者:萩尾 望都

山へ行く (小学館文庫 はA 46)山へ行く (小学館文庫 はA 46)感想
小説家の生方さんとその周辺のちょっと日常や常識からズレちゃった、不思議で、哀しかったり妖しかったり、複雑怪奇だったりする人間関係についての短編連作です。『山へ行く』ではなく山へ行けない話。羽が生えた親子のパタパタの話。病気で死んでしまったお母さんが忘れられない息子。幼くして亡くなった実弟が忘れられない兄。口にすることはできなかった感情。別れた好いた男、再婚した男女・・・・残された者にも、幸せになれなかった者にも、それぞれの事情はあって。だけど大切な気持ちや人は忘れなくていい。そんな珠玉の話たち。
読了日:06月01日 著者:萩尾 望都

マージナル (3) (小学館文庫 はA 16)マージナル (3) (小学館文庫 はA 16)感想
都市の社会秩序の破壊を目論む砂漠の男たちはキラ、アシジン、グリンジャを巻き込み、滅亡の時を待つ滅びた都市からの巡礼者、超能力者、やむにやまれず関わった者、自ら飛び込んだもの、それぞれの思惑や人生を複雑に絡めとりつつ、事態は破局に向かう。そしてカタルシス。キラの魂は病んだ地球の魂と呼応して、地球の命の復活の兆しとなる。もう一人のキラはこれから命を育んでいくのか。物語は螺旋を描いて、また砂漠の岩屋に戻った。ナースタースとメイヤードの愛は切なく、アシジンはあくまでも単純で健康的。虚無にはなりきれないグリンジャ。
読了日:06月08日 著者:萩尾 望都

マージナル (2) (小学館文庫 はA 15)マージナル (2) (小学館文庫 はA 15)感想
2300年、地球上の水全てが細菌に汚染されて、"D因子”に感染した女性は不妊となり死に絶えた。抗体はY遺伝子に乗り、男性は抵抗力を獲得して生き延びることが可能になったが、地上に女性はいなくなった。”カンパニー”は地球上にドーム都市”センター”を作り、人口受精により作られた子供を市民に供給する。生みの母の象徴として、各都市に一人の”マザ”が置かれ、かくて地球上には一人の母と大勢の息子というミツバチのような社会が半ば自然発生的に、半ば人工的に誕生した。地球上は壮大な生と進化の実験場と化していた。という
読了日:06月08日 著者:萩尾 望都

マージナル (1) (小学館文庫 はA 14)マージナル (1) (小学館文庫 はA 14)感想
かつて、連載を追いかけ、単行本も持っていたのだけど。今回は文庫で再入手。うん。このSFと砂漠の遊牧民族の感じは、ル=グウィンをさらにクオリティを上げたような感じ。1巻目では、西暦2999年ということは判るが、この地球に何が起こって、一人のマザと短命な男だけの世界になっているのかの謎は明かされず。何しろ、絵が繊細で美しい。最初は真っ白だったキラがだんだん、自我を持っていく感じが良い。
読了日:06月03日 著者:萩尾 望都