原 題 「CITY OF ILLUSIONS」1967年
著 者 アーシュラ・K・ル=グウィン
翻訳者 山田 和子
出 版 早川書房 1990年4月
文 庫 313ページ
初 読 2025年7月31日
ISBN-10 4150108668
ISBN-13 978-4150108663
読書メーター
あと、なんだかねえ。訳者後書きが死ぬほどつまらない。貴方様のSF論を読みたいわけではないのだ。観念的で、なにか意味のあることが語られてるのかを理解できないのは、私の頭が悪いからなんだろうか? なんというか、70年代の匂いが紛紛とする。「主義」とか「思想」とかの匂いがしてくる。(出版されたのは90年なんだけどね。)まあ、自分自身も文章で語ってしまったりしがちなので、あまり人のことを批判できないとは思うのだけど、ただ訳すだけじゃダメだったのか? 似たようなことは、ル=グウィン自身にも思ったりはする。ただ、書くだけじゃダメだったのか?と。作家なんだから、作品で語ればいいじゃないか。なぜ、解説したがるんだ。 ましてや、翻訳者の思い込みの強い蘊蓄なんて、本当にいらんわ。翻訳の苦労話ならいくらでも読めるのだけど。
まあ、それはさておき。
ル=グウィンは、どの作品でも主人公が大陸や原生林の中を旅をする。大いなるワンパタなんだ、と思い始めた。ゲドも旅をしたし、これまで読んだ本、『辺境の惑星』を除いて、とりあえず主人公が孤独な旅をする。作品一つ一つの完成度は高いのだと思うのだが、まとめて読んで食傷した。主人公は男にせよ、女にせよ、いつも淡々としている。とても抑制が効いている。大きく乱れない。とてもストイック。なんとなく息苦しい。
主人公が旅の中で出会う、刻々と様相を変えていく空や、森林、壮大な大自然の描写は素晴らしいと思うのだ。多分・・・・たぶん、単品で読んだほうがいいのだ。たとえ、ハイニッシュ・ユニバースのシリーズであっても。
このシリーズの中では、どの惑星も「地球」と呼ばれ、どの星の話なのかは読み進めるまでは判らない。時代の前後関係も、しかとは語られない。この作品は、どこか深宇宙の惑星の話か、と思ってよんでいたら、実は文明が衰退した後の地球、しかも北アメリカ大陸の話だった。科学文明が隆興し、宇宙に植民し、星間戦争ののち、衰退する。人々は、残された文明の残滓に縋りながら、近代以前に後退した文化の中で生活している。
舞台となる惑星は違えど、似たようなシチュエーションに飽きてきてしまって、読み進めるのがついに苦痛になってしまった。
前半はグレートジャーニー、後半は『敵』との心理戦。敵であるシングのイメージが前半、中盤、後半でがらりと変わってくるのは面白いとは思ったのだよな。だけどそこまで。前半の旅が冗長だったので、後半の心理戦に重点を置いていたら、また印象が違ったかもしれない。