著 者 王谷 晶
出 版 河出書房新社 2023年5月
文 庫 208ページ
初 読 2025年10月19日
ISBN-10 4309419658
ISBN-13 978-4309419657
読書メーター
![]() |
| 母のGHの部屋に飾るために仕立てた造花の花籠です |
6月末 母の認知症の進行を感じる。これまでの、朝夕の決まった時間に冷蔵庫からご飯と惣菜を取り出して食べる、ということが出来なくなって、体重も落ち始めた。
介護日記16 https://koko-yori-mybooks.blogspot.com/2025/06/blog-post_29.html
デイサービスからは、認知症高齢者GHを勧められる。私自身も、選択肢の一つとは思っていた。施設入居するまでの間、介護休暇を取っての同居介護することを念頭に、職場で根回しを始める。
7月初旬 デイサービスと同じ法人さんが運営するグループホームを2カ所見学する。正直、施設内が片付いていないとか、壁の飾り物が雑然としている、とかに目が行き、第一印象はパッとしなかった。しかし、施設長の言葉は的確で、「きちんとケアしてもらえる」という感じを受けた。このGHに入所の申し込みをするが、その時点で、「いつ入れる」かは不明だった。数人待機している状況とのこと。この時点では、毎週末の金〜土の泊まりと、火曜日の日帰り介護を継続。
レンジがついに昇天。
母が使えそうな、単機能レンジ(あたためスタートボタンが壊れたレンジと同じ場所にあるもの!)を購入。母はかなり覚束なかったがなんとか使えるようになった。
介護日記17 https://koko-yori-mybooks.blogspot.com/2025/07/blog-post.html
これまで担当してくれていたケアマネさんが、体調不良で退職し、介護事業所を変更しなければならなくなる。ケアプランの見直しを迫られているなかで、結構な痛手。
7月21日 介護日記18 https://koko-yori-mybooks.blogspot.com/2025/07/blog-post_21.html
7月22日(祝/代休) 実家近くの中学時代からの友人と食事。友人もお母様と2人暮らしで介護をしており、介護情報の共有とか、お互いの介護のアレコレを語り合う。この人間関係にかなり助けられる。
7月25日(金/深夜) 実家の粗大ゴミ出し。壊れたレンジを出すついでに、納戸と化した部屋に溜まっていた壊れたテレビ台やら扇風機やら、コミック用の本棚やら、使っていないインクジェットプリンターやら。母が寝た後の実家に仕事が終わってからそ〜〜〜〜〜っと入り込み、母が寝ている間にそ〜〜〜〜っとまるでドロボウのように、密やかに搬出して、粗大ゴミ指定場所に運ぶ。
介護日記20 https://koko-yori-mybooks.blogspot.com/2025/07/blog-post_27.html
7月29〜30日 母をショートステイ(1回目)に送り出すため、仕事を休んで前日夜から母宅へ。
7月末 職場に8月から介護休暇を取得する旨、正式に申請。(不在中フォローすることになるであろう係のメンバーに感謝)
8月8日 実質的に介護休暇突入。(最初は夏休から)。前日7日の夜に母宅に来たところ「焦げ臭い」案件が発生していた。
介護日記21 https://koko-yori-mybooks.blogspot.com/2025/08/blog-post.html
ボヤを出す前でよかった。ぎりぎりのタイミングで同居介護に踏み切ることができたことに感謝する。
だがしかし、母不在の日中、あまりの静かさに、いっとき鬱る。
介護日記22 https://koko-yori-mybooks.blogspot.com/2025/08/blog-post_14.html
8月11〜12日 ショートステイ(2回目) 12日は職場に出勤。
8月14日(木) 新しい介護事業所のケアマネさんと初回面談。契約。
8月15日(金) 母の咳がだんだん悪化し、看過できなくなったので、内科に通院。誤嚥なども案じたが、結果は上気管支炎。朝昼夕眠前の処方。薬をこれまでの薬袋管理から、お薬ボックス式に変更。
8月16日(土) 精神科(認知症外来)通院同行。GH入所方向であることを伝える。
8月18日(月)ごろ 申し込みをしていたGHが、デイケアで本人面接。入所可の判断となり、9月中の入所の目処が提示される。
8月23日(土) 内科で咳の再診と、入所に向けた健康診断。
8月26〜27日 ショートステイ(3回目) 27日は母から手が離せるので、職場に出勤。打ち合わせなどをこなす。
8月30日(土) 健康診断書と診療情報提供書を内科で受領
9月1日(月) GHの入居予定の部屋の見学、ホーム長との打ち合わせ、持ち込むものの確認など。
介護日記25 https://koko-yori-mybooks.blogspot.com/2025/09/blog-post.html
9月2日(火) 終日在宅勤務で、研修受講
9月3日(水) 日帰りで自宅に帰る。家事やら、家の手入れやら。
9月4日(木) 団地で高齢化/孤独死対策に取り組む母の友人の旦那様が来訪。我が家の介護/見守りについて情報提供する。(見守りカメラや家族の関わり方など)
9月5日(金)頃 精神科に、GH入所が本決まりになったことを電話連絡。次回受診のときに診療情報提供書の発行を依頼する。
9月6日(土) 母を美容院に連れて行って、ヘアカットしてもらう。その帰りに、メガネ屋に寄って、メガネの調整をしてもらう。
9月8日(月) 自分の内科通院
9月9〜20日 この間、母のGHに持ち込む家具、寝具、衣類、日用品の調達。寝具については、マットレスやマットレスパッドをどうするか、など相当に悩む。
室内に造花を持ち込むつもりで、造花の花の種類などについても、かなり悩んだ。
マットレスは購入せず、パラマウントのベッドパッドを購入。シーツは家にあるものを使えないかと思ったが、想像以上に古く、これもパラマウントで介護ベッド用のボックスシーツを購入。羽根枕は昭和西川のネットショップで購入。居室に持ち込むタンス、一人用テーブルなどは、母宅に置いてある飛騨産業の穂高シリーズや、昔、購入したことのある越後民芸家具のタンス(比較的軽くて、扱い安い)などを、メルカリで探して購入。
9月11〜12日 ショートステイ(4回目)。これまでで一番上手くいった。母は落ち着いて工作などにも参加して、終始楽しく過ごせたよう。
GHと相談し、9月26日(金)を入所日に決める。
9月13日(土) 精神科(認知症外来)受診。診療情報提供書を受領。3年間お世話になった先生にご挨拶。
9月17日(水) ケアマネさん来訪。月1回のモニタリング。
とにかく、睡眠ペースを守り、昼夜逆転に注意して、体調・生活面を整える。
9月18日(木) メルカリで購入した家具類が納品。清掃、部分的に修理、ワックス掛けなど施したのち、母に見つからないように、カバーを掛けて隠す。
9月19日(金) アートセッティングデリバリーが、家具と用意の生活用品などの荷物を搬出。
9月23日(祝) GHに部屋のセットアップ・片付け、最後の打ち合わせに出向く。
9月22〜23日 母、ショートステイ(5回目・ラスト) 前回のショートが良かったので期待していたが、ショートステイでは入眠させることができず、完全に昼夜逆転して23日夕方に母が帰宅。ものすごくがっかり_| ̄|○
なにしてくれてんの!とショートステイにはかなり腹がたった。ギンギンで夜を朝だと思っている母をなだめすかして、なんとか夜9時半には入眠させ、朝まで熟睡してくれた。なんとか昼夜逆転をリカバリ。もの凄く疲れた。
9月24日(水) デイケアの連絡帳で、ショートステイの処遇を愚痴る。
9月25日(木) デイケア最終利用日
9月26日(金) 14時にGHホーム長さんが、施設の車でお迎えにきてくれる。午前中に、「お泊まりもできる高齢者の集会所みたいな所」にお部屋を見に行く、と母に説明(2回目)。夜に1人でいるのがアブナイこと、私が一緒に居られないときにお泊まりできる場所であること、家の近くであること、災害の時には、高齢で避難所ってわけにはいかないから、高齢者のお泊まりできるところに避難するんだ、とか虚実ないまぜで母が納得できそうな線でもっともらしい話をする。
認知症の母は、前後の脈絡はもはや関係ない。今・目の前のこの時に不安がないか、不満がないか、楽しいか、が目の前の状況を受け入れられるかどうかの決め手になる。
そう心得て、施設に向かう車中ではとにかく楽しい雰囲気になるように、途切れなく沢山お喋りをして、母も、送迎の職員さんもケラケラ笑わせ、楽しい気分のままGHに到着。さあ行こう、と母の気を逸らさないように、一気にお部屋まで連れて行き、母好みの家具を配置した部屋で、1人掛けの椅子に座った母に「なかなか良いお部屋よね〜」などとお話。ここはどういうところか、前述の話を再度はなして聴かせ、幸い母は、毎日通ったデイサービスとも雰囲気が似通っているからか、さほど違和感もなく、「わたし、ここに来るの2回目かしら?」とか言い出すので、「そう! 初めてじゃないわよね!」と母の話に乗る私。ちょうど3時のおやつの時間で、デイルームに呼んでいただき、他の入所者の皆さんに紹介していただくと、入所者のおばあちゃんのお一人が、「わたくしの夫が、昨日、〇〇さんて方がいらっしゃるって、言ってたんです!」と確信を込めて仰るので、内心(おばあちゃんナイス!)と喝采を送りつつ、「そーなんです。どうぞよろしくお願いしますね〜〜〜」なんていって、母をGHに置いてきたのだった。
正直言って、たぶん最善の状態で母をお任せできたと思う。あとは、職員さんの専門性にお任せする。そう思って、ぐっっっっっったりと疲れて、施設を後にしたのだった。
3月のライオン 18 (ヤングアニマルコミックス)の感想
フェア・プレイ (モノクローム・ロマンス文庫)の感想
フェア・ゲーム (モノクローム・ロマンス文庫)の感想
ヴィンランド・サガ(29) (アフタヌーンKC)の感想
審議官:隠蔽捜査9.5 (新潮文庫 こ 42-62)の感想
ウォルドルフ人形の本の感想
好きだと言って、月まで行って (モノクローム・ロマンス文庫)の感想
フラジャイル(30) (アフタヌーンKC)の感想
幼女戦記 (32) (角川コミックス・エース)の感想
カンツォニエーレ チェーザレ番外編 (モーニング KC)の感想
宇宙兄弟(45) (モーニングKC)の感想
夜を走り抜ける 2 (enigma comics)の感想
夜を走り抜ける 1 (enigma comics)の感想
コーンウォールに死す (ハーパーBOOKS)の感想
スモークブルーの雨のち晴れ 7 (フルールコミックス)の感想![]() |
| 今日の夕ご飯 肉団子、カボチャのそぼろ煮、 きんぴらごぼう、茄子とキュウリと長芋の浅漬け |
| 本文とは全然関係ないけど、祇園きななのきなこかき氷は日本中で一番美味いと思う |
![]() |
| 洗って、ベランダの室外機の上で日光浴(乾燥)今日の天気は良く乾くぞ |
![]() |
| スナップを付け直し、伸びた袖口のゴムを取り替え、細かい綻びも縫い直し |
ガブリエル・アロンについての考察はこちら(年表付きです。)
![]() |
| 『告解』でガブリエルが手がけている 祭壇画 サン・ザッカリア教会 |
1999年。 1,991年1月にガブリエルがウィーンで幼い息子を失ってから9年近くが過ぎていた。シャムロンに逢うのは事件のあとテルアビブで〈オフィス〉の仕事を辞めると伝えた時以来。ガブリエルが隠棲していたのは、イギリス、コーンウォールの海辺のコテージ。かつてはガブリエル専属の支援者(サイアン)だったイシャーウッドとは、本当の画商と絵画修復師の関係となっていた。そんなイシャーウッドからガブリエルの居場所を聞き出して、シャムロンが新たな「復讐」を携えてやってくる。それは、ウィーンでガブリエルの車に爆弾を仕掛け、彼から家族を奪った男への報復だった。
2000年頃? この作中で彼は50歳。スイス在住のある資産家が、ガブリエルに接触を図る。その男が秘匿していたのは、かつてナチスがユダヤ人から略奪しした絵画の数々だった。この絵画を巡り、ナチの残党との死闘が始まる。スイスが未だ隠し持つ、かつてのユダヤ人の財産。ヨーロッパ諸国とナチスとの関係は、歴史の暗部となって未だ各国にわだかまっている。ナチスはユダヤ人の財産を奪った、というアロンに対して、ユダヤ人はパレスチナ人から土地を奪った。動産より不動産の方が罪が重い、と論じるスイス人。ユダヤ人とユダヤ人国家にまつわる問題は一筋縄でいくものではないが、だからといってナチスの罪が薄れるわけではない。それに協力した人間の罪も、である。
2001年冬 ガブリエル51歳になったばかり。ベネツィアのサン・ザッカリア教会で祭壇画の修復を手がけていると、シャムロンからの呼び出しが。かつての盟友がドイツで殺害された。調査を始めると、今度はガブリエルが何者かに追跡される。親友だったベンジャミンが追っていたのは、第二次対戦時のナチスとヴァチカンの関係だった。法王庁とローマ・カトリックの権威を至上とするヴァチカンの秘密組織が、ガブリエルと彼が掴んだ証拠を抹殺しようとする。時を同じくして新教皇は、ユダヤ人との和解のための一歩を踏み出そうとしていた。教皇にも危険が迫り、ガブリエルは新教皇を守るために接触を図る。
時期的には2002年か2003年、またしても冬。雪のちらつくウイーンは、ガブリエルにとっては不吉の象徴。親友であり、戦友のエリ・ラヴォンがウイーンで運営していた戦争犯罪調査事務所が爆破される。スタッフは死亡、エリは重体。ガブリエルは追跡調査を開始するが、すぐに命を狙われることになる。エリが追っていたのは、身分を偽装してオーストリアで社会的にも大成功を収めていた元SS将校。その男の成功の原資となったのはユダヤ人から略奪された資産であり、また、その男はガブリエルの母とも因縁があった。ガブリエルは、ヤド・ヴァシェムに残された母の証言書を読み、初めて母の苦難と向き合うことに。
ガブリエルに関する秘密文書が暴露され、ヴェネツィアにいられなくなったガブリエルはキアラを伴いやむを得ずイスラエルに帰国する。キアラとの生活を準備するが、イギリスの病院に入院させていたリーアが誘拐されて・・・・・。紆余曲折ありキアラが1人でヴェネツィアに去る。
ローマ法王パウロ7世がテロの標的に。ガブリエルが法王を守る。法王の計らい(?)でベネツィアにキアラを訪れ、関係復活。『教皇のスパイ』で触れているエピソードがこれ。
ガブリエルがモスクワに潜入。
サウジアラビアに潜入。サウジ人女性ナディアを救出しようとするが、2人とも砂漠で殺されそうになる。結局ナディアが死に、ガブリエルは重傷。その後サウジ秘密警察に捕らえられ、過酷な尋問を受けて傷を悪化さる。米国CIAの介入で解放されるが、女性の死に責任を感じて深刻なPTSDを患い、イギリス・コーンウォールでキアラとアリに見守られて静養する。このときガブリエルを案じたサラ・バンクロフトの依頼でナディアの肖像画を描き、この絵を契機に精神的に復調するのだが、この絵がMoMA美術館のナディアコレクションの入り口に展示されている。これが、『過去からの密使』の下敷きとなっているエピソード。
2014年春〜秋 ガブリエル64歳。キアラは妊娠中。ガブリエルは、カラビニエリの美術班、フェラーリ将軍の依頼により盗難にあったカラヴァッジョの《キリストの降誕》を探すため、盗難絵画のコレクターを釣る餌として、ゴッホの《ひまわり》を盗み出す。しかし、《ひまわり》の盗品売買の相手を追跡するうち、盗難絵画がシリアの独裁者の隠し財産の形成に利用されていることが分かり、事態は一転する。ガブリエル個人の請負仕事が、オフィスの大プロジェクトに展開。標的はシリアの独裁者の財産である。一連の事件終了後、ゴッホ美術館に盗まれた《ひまわり》が戻ってくるが、なぜか手入れをされて盗難前より状態が良くなっていた、ということだ。
2014年秋〜冬 亡者のゲームの三日後から。
キアラの妊娠後期から出産まで。ガブリエルがロシアの策略で爆弾テロの標的にされる。
怪我の詳細の記載はないが全身打撲くらいはありそう。 一週間程度で復活している。ロシアが手先に利用したのは、英国人暗殺者との因縁も深い、IRA爆弾テロ犯だった。そしてこの男は、ガブリエルの家族を犠牲にしたウイーンの爆弾テロにも深い関わりが。MI6からの請負仕事だった事件が、復讐の色を濃厚に帯び、事態は逼迫する。今回は絵画修復のシーンはないが、事件終了後、出産間近なキアラが待つエルサレムに帰還し、自宅の子供部屋の壁にダニの顔を模した天使の絵を描いて涙ぐむガブリエルの姿が切ない。
2015年4月〜12月 ※2015年のISISの戦闘についてと、気候変動抑制に関する協定(パリ協定 2015年12月12日)が結ばれたことについて言及している。 ISISによるユダヤ人の組織を狙った大規模な爆弾テロがパリで起こり、ガブリエルはISISに潜入させる工作員とするため、フランス系ユダヤ人の女医ナタリーをリクルートする。前半はじっくりとスパイを養成するガブリエル。自分の子供時代のことを明かしながら、ナタリーとの信頼関係を築く。
そして、潜入、テロ計画の始動。標的は、フランス大統領訪米中の合衆国だった。イスラエル、ヨルダン、フランス、イギリス、合衆国それぞれの諜報機関の長たちの協力関係も面白い。 この回でもガブリエルは爆弾テロの現場にいて被害にあう。
2016年2月〜11月 サラディンとの決戦。
上巻冒頭で、エルサレムをイスラエルの首都と認め、「米国大使館」をテルアビブからエルサレムに移設する、 と発言した新しい米大統領の就任の話題があるが、トランプ就任は2017年1月なので、現実とは1年ずれた格好か。
訪問していたフランス秘密情報部のビルが自動車爆弾で爆破される。間の悪い時に間の悪い場所に居合わせるのがガブリエルの得意技。このときの怪我は爆風とがれきの下敷きになって、肋骨数カ所を骨折、腰椎2か所にひび、重度の脳震盪で一週間ほどダウン。だが復讐の炎が痛みをおしてガブリエルを突き動かす。そして、サラディンをおびき出す作戦が始動。サラディンの収入源である麻薬取引をヨーロッパ側で仕切る男を攻略し、サラディンに繋がる細い道をこじ開ける。米国からの横やりを排除しつつ、CIA、MI6、フランス治安総局と協働し、作戦を遂行。このあたりのガブリエルの政治力も見物。さりげなく出てくるウージ・ナヴォトもなかなか渋い。そしてサハラでサラディンを追いつめるが、サラディンは欧米のどこかに潜伏しているテロリストに攻撃を命じた後だった。
2017年1月頃? 前作の爆弾テロの際の負傷の後遺症?で痛む腰をさすりながらのガブリエル登場である。おかげで若作りのガブリエルもだいぶ歳相応に見えてきた。良い記憶のあまりないウィーンでの作戦。例によって陣頭指揮を執っていたが、目の前で亡命させる予定だったロシアのスパイが殺害されてしまう。その上その場にガブリエルが居合わせたことを隠し撮り写真でマスコミにリークされて窮地に立たされる。怒り心頭、恨み骨髄のガブリエルはそこから怒濤の諜報戦に突入するが、判明したのは、宿敵を絡め取ろうとするロシアの策謀が二重三重に張り巡らされていたこと、そしてある伝説の二重スパイの存在だった。
12歳の少女(サウジ皇太子の娘)が誘拐され、その父である皇太子が、敵であるはずのガブリエルに捜索と奪還を依頼する。中東との融和の糸口になれば、という思いと、ただ、何の罪もない少女を助けたいという思いで、捜索に協力するガブリエルだが、目の前で少女は爆殺されてしまう。少女の殺害とその父の失脚の裏にロシアの影を見たガブリエルは、復讐の反撃に出る。
戦いはガブリエルの勝利に終わるが、少女を助けることができなかった悔恨がガブリエルを苦しめる。サウジ皇太子によるカショギ記者謀殺事件をモチーフに、ロシア、イギリスを絡めたシルヴァ風の一流のエスピオナージ 。
2019年11月。長官に就任して以来、腰を負傷して自宅で療養した数日以外は一日も休まず働いていたガブリエルを見かねて、キアラが休暇を手配する。(なんと首相にまで手を回して!)旅行カバンを用意していたキアラに、「出て行くのかい?」と真顔で尋ねるガブリエル! 休暇の行き先はキアラの両親が暮らすヴェネツィア、仕事ひとすじで余暇の過ごし方など知らないガブリエルの為に、修復する絵まで用意する周到ぶり。そこに、ガブリエルの庇護者でもあった教皇パウロ7世崩御のニュースが。この時点で、彼の任期は2年と1ヶ月。
2020年3月〜2021年4月。世界はcovid(新型コロナウイルス)に支配されている。アロン家は人が多く、ロックダウン中のエルサレム市街の自宅から、故郷のイズレエル谷のラマト・ダヴィドに程近いナハラルに仮住まいしてコロナを避けている。双子たちは田舎暮らしで逞しく成長中。ガブリエルは新しく入手したガルフストリームに現金を詰め込み、人工呼吸器や検査薬や、医療用防護衣を世界中で買い付けて、国内の病院に配布。政治家への転身の準備か・・・との世間の噂も。そんな噂は歯牙にもかけず、ガブリエルはオフィスで諜報戦の陣頭指揮も執っている。そんな折、ガブリエルと旧知のイギリス在住のロシア人富豪が毒殺され、ガブリエルはおなじみMI6のケラーと動き出した。
22 【謀略のカンバス】(Portrait of an Unknown Woman 2022年)
2021年12月〜。ガブリエルはついにオフィス長官を引退し、長年にわたる諜報の世界から身を引いた。カラビニエリのフェラーリ将軍の庇護のある古巣ヴェネツィアに家族と居を構え、キアラはティアボロの美術修復会社の経営に参画し、子ども達は地元の小学校に通っている。キアラの配慮の行き届いた落ち着いた生活で長年の疲労や苦悩が少しづつ薄れ、彼が本来の笑顔やユーモアを取り戻しつつあるころ、旧友のイシャーウッドが、ある絵画売買絡みのトラブルに巻き込まれる。穏やかな日常に少々退屈しつつあったガブリエルは、キアラの赦しをえて調査にのりだす。
2022年秋〜。ベネツィアで絵画修復に携わり、悠々自適・・・のはずのガブリエルは、またもフェラーリ将軍の訪問を受け、ある名画の鑑定を依頼される。しかし、有名なゴッホの盗難名画の横には、空の額縁とキャンバスを失った木枠があり。そのサイズから、ガブリエルはその絵が、これも盗まれたフェルメールだと直感する。フェラーリからの依頼を受け、絵画の追跡に乗り出すも、ロシアの暗殺者、南アフリカの核開発、そして宿敵ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチの手先だった男・・・と、話は転がる雪だるまのよう膨らんでいく。