2021年4月18日日曜日

0264 危険な男 (創元推理文庫) —コール&パイク18

書 名 「危険な男」 
原 題 「A Dangerous Man」2020年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 高橋恭美子 
出 版 創元推理文庫 2021年1月 
文庫 480ページ 
ISBN-10 448811508X 
ISBN-13 978-4488115081 
初 読 2021年4月18日
「エルヴィス・コール探偵事務所、いまならひとつ分の料金で手がかりがふたつ。割引料金あり」
「手を貸してくれ」
コールの声が真剣になった。
「なんなりと」

 ジョー・パイク主役ものであっても、C&Pな由縁。パイクに手が必要になればコールが全力を尽くすし、コールに支援が必要であれば、パイクが駆けつける。すでに30年来の友情を「依存しあってる」と言い切っちゃうドレイコよ。それを言っちゃあおしまいじゃないか。あなた、思いっきり株を下げたよね。

 パイクは、酒乱の父親の暴力に晒されて育ち、コールは精神疾患の母に振り回されて、ついには捨てられた心理的虐待の過去を持つ。(公的な児童養護の世話になって育った経歴がハリー・ボッシュと共通するのは、過去にレビューでも触れたところ。)コールとパイクの二人がいかに過去の軛を受け入れ、乗り越えてきたか、については未訳の『L.A. Requiem (1999)』から『The Forgotten Man (2005)』までの翻訳刊行を大いに期待したい。それぞれが欠損をかかえた存在ではあるが、自分の人生で欠けた部分に向き合って、努力と奮闘で乗り越えてきたことが、お互いを信頼し尊敬する由縁。それを依存といわれちゃあね。

 さて、今作では「主役」パイクのエピソード多数。なかでも、彼が国防省のTS/SCI取扱許可証を持っている。というくだりは初耳。国防省の信頼の証し。国防省やCIAの請負仕事を数多くこなしてきた、という過去は、これまで邦訳ではあまり出てこなかった。ちらりとコートランド・ジェントリーを思い出す。大先輩だね♪ やっぱり、ジェントリーはロスでパイクの助力を求めればよかったんじゃないかと・・・・・(脱線)

 さて、本筋にもどろう。
 パイクが銀行に立ち寄ると、偶然にも銀行員の女性が白昼車に連れ込まれて誘拐される場面を目撃してしまう。追跡して難なく彼女、イザベルを救出。
「もう大丈夫だ。いま助けだす」 ああもう、助けてパイク!私も!とおねだりしたい。
 そのイザベルが、再度誘拐され、これは市中の捜査が必要、とみて、パイクはコールに助力を要請。それが冒頭のやり取り。コールの緩急の切り替えに悶える。

 さらに、イザベル救出の際、防弾ベストの上からとは言え、二発撃たれた衝撃で負傷しているパイクの着替えを手伝うコールに更に悶える。
 着替えのTシャツを、どうやったら痛みが少なく袖を通せるか、と思案するパイクの手からTシャツを黙って取り上げ、頭からかぶせて、パイクがゆっくりと腕を通せるよう、シャツを支えるコールは、さすがに気遣い上手である。て、いうか、どこにも語られちゃいないが、『The Forgotten Man』でコールが大怪我を負った後では、パイクの方が何くれとなく世話をしてやったんだろうな、とか妄想して、一人で勝手に悶える。とにかく、大好きなシリーズで、大好きな人達なので、いちいちページを繰る手がとまって妄想タイムが差し挟まり、読むのに時間がかかること甚だしい。
 無防備で敵の屋敷に侵入して銃撃戦で胸を撃たれたり(『モンキーズ・レインコート』)、全身を拳銃とサバイバルナイフで武装した状態で市中で警察に拘束されて、「戦争でもやるつもりか」と言われた(『ぬきさしならない依頼』)、シリーズ初期のころの描写と比べると、パイクの、ではなく著者の進化にもなんだかニヤニヤさせられる。最初の頃は、ベトナム帰還兵の社会不適合者としか思えなかったパイクも、いまでは米国政府の信任も厚い軍事請負人で、オーダーメイドの防弾ベストを常備し、市中では銃の所持に気をつかう立派な社会人に変貌している。戦争帰りの元軍人のイメージも情報量も、ランボーからだいぶ進化した。

 で、まあ今回保護の対象となった女の子二人が、あろうことかメールで居場所を教え合っていたらしい、とか、言語道断だったりするものの、そこはあえてさらりと受け流し、救出のため、連邦保安官やロス市警の刑事と連携しての突入作戦。場所は映画監督ピーター・アラン・ネルソンの別荘。ああ、豪勢な屋敷が殺戮の舞台に・・・・・でも、まあ、コールのやることであれば、ピーターは許してくれるだろう。次の映画のネタにされるかもしれんが。
 パイクとコールの息の合った突入作戦、自然と連邦保安官も主導するパイクの指揮官ぶりも素敵。ストーリにさほどひねりがないのはいつものことで、いいのだ、これはコールとパイクの友情とひととなりを悶え楽しむ本なので。。。。(爆)


2021年4月17日土曜日

ロバート・クレイス作品一覧(4/18更新)


ロバート・クレイス作品一覧 
  (1989年 新潮文庫)  The Monkey's Raincoat (1987)
  (1992年 新潮文庫)  Stalking the Angel (1989) 
  (1994年 扶桑社ミステリー)Lullaby Town (1992) 
  (1996年 扶桑社ミステリー) Free Fall (1993) 
  (2000年 扶桑社ミステリー) Voodoo River (1995) 
  (2000年 扶桑社ミステリー) Sunset Expres (1996) シェイマス賞長編部門受賞 
7 Indigo Slam (1997)        コール&パイク7
8 L.A. Requiem (1999)     コール&パイク8
11 The Last Detective (2003)   コール&パイク9
12 The Forgotten Man (2005)  コール&パイク10
13 The Two-Minute Rule (2006) 
14 天使の護衛(2011年 RHブックス・プラス) 
  The Watchman (2007)   コール&パイク11(ジョー・パイク1)
15 Chasing Darkness (2008) コール&パイク12
16 The First Rule (2010)    コール&パイク13(ジョー・パイク2)
17 The Sentry (2011)         コール&パイク14(ジョー・パイク3)
18  Taken (2012)                コール&パイク15(ジョー・パイク4)
19 容疑者(2014年 創元推理文庫) Suspect (2013)  (スコット&マギー1)
20 約束(2017年 創元推理文庫) The Promise (2015) (スコット&マギー2)コール&パイク16
21 指名手配(2019年 創元推理文庫) The Wanted (2017)   コール&パイク17
22 危険な男(2021年 創元推理文庫) A Dangerous Man(2020)コール&パイク18(ジョー・パイク5)

2021年4月15日木曜日

雑感。

気付いたら、左の手のひらになぜか内出血のあざが出来ていた。
どこにもぶつけた覚えないんだけどな。
やだな〜
こうやって、いきなり脳の血管も切れたりするんだろうか。

最近ストレスが減じて、いきなり血圧が下がったばかりなのにな。
本を全部読み終わるまで、死にたくないものだ。

2021年4月11日日曜日

世界地図

先日、よく行く書店の店先で古地図の復刻版を扱う書店さんが店開きしていた。
書斎の壁に飾ったら雰囲気アップするかも、と思い、世界図を2枚購入。
写真上が、1835年のアンリー作 世界図
写真下が、1587年のオルテリウス作 世界図

上のは、アジアで販売するために造られたんだって。下は大航海時代の後期に入った頃か。ユーラシア大陸西側とアフリカはかなり正確になってきている。日本については、まだジパングって感じだ。夏の海洋冒険モノの読書のお供に。

ちなみに地図より額装の方が高くついた。(^^ゞ

2021年4月6日火曜日

2021年3月の読書メーター


4月1日(木) 今日から新しい職場です。引継ぎにに伺ったらめちゃくちゃ大変そうだったけど、通勤で読書時間は取れそう。
4月2日(金)新職場2日目。こんな時間(23時過ぎ)に職場を出るが、これでも前職場より2時間は早い。それに軌道に乗れば、もっとずっと早く帰れるはず!職場は空が広くて、花壇の花が綺麗で、池があって、近所の人がお昼にレジャーシート引いて子供とランチしてる。もう二度と本社には戻らない、と堅く心に誓う。
4月3日(土) 久しぶりに二度寝して、起きたのは昼の12時近く。久しくしていなかった掃除をしたり、昼間に買い物に出たり、冬物を片付けて春物と入れ替えたり。何気ない日常全てが新鮮。
4月4日(日) 今日は残務整理で前職場へ来ている。すると後任さんも来た。そりゃあ不安だろう。私も前任から引き継いだ3年前は、あまりにも訳が分からず、病んだ。今だから言えるが。上司にわーって何か言われて、脳の表面にざーっと砂嵐のようなサージが流れたとき、これはまずい、と思ったね。昨年はさらにコロナで大変な事に。今は憑き物が落ちたような心境になってる。さて、もう少し頑張る。
4月5日(月) 今日は雨だったので、昼の散歩は出来ず。机上整理と業務の把握。いろいろと大変ではあるが。なんだか落ち着かず、読書に手がつかない。どんなにメンタルヤバくても、読書ができているうちは大丈夫だと思えたこの3年。基本、ストレスは本を買い漁ることで解消。溜まる一方の積ん読がストレスに転じたら、もう生きていけないかも(!)と本気で思った日々よさようなら。(ホントか?)

3月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:2292
ナイス数:656

過去からの密使 (ハーパーBOOKS)過去からの密使 (ハーパーBOOKS)感想
【海外作品読書会】面白かった!先に読んだ最新巻『教皇のスパイ』が原点回帰なら、こちらはまさに現在の“アロン長官”の面目躍如、大活躍の一冊。今回はロシアの某大統領とかつての二重スパイ相手に完全勝利。現実のジャーナリスト殺害事件を上手く絡めて、上等のエスピオナージ+かつての敵との友情+成長物語的な、というそれだけでも垂涎ものの極上品です。前回では苦い敗北を喫し、盟友MI6のグレアム・シーモアやCIAエイドリアンとの友情までボロボロにされたガブリエルだったが、今回の共闘で完全復活したようだ。よかった。
読了日:03月28日 著者:ダニエル シルヴァ
教皇のスパイ (ハーパーBOOKS)教皇のスパイ (ハーパーBOOKS)感想
シリーズ最高峰! ガブリエルシリーズの良いとこ取りです。キアラとのラブラブ、幼い可愛い双子、旧友ドナーティとの探索行、そして諜報と怒り。ローマ教皇パウロ7世が逝去、教皇の死因に疑問を持ったドナーティがベネツィアで家族と休暇中のガブリエルに助力を求める。教皇がガブリエルに渡そうとしていたものはどこに持ち去られたのか。二千年に渡るユダヤ人迫害の運命を定めたマタイの福音書の記述は正しいのか。ユダヤ人問題とキリスト教の罪に深く迫りながら、傑出したエンタメでもありつづけるシリーズに拍手。ラファエルがガブに生き写し。
読了日:03月20日 著者:ダニエル シルヴァ
誤訳も芸のうち―文芸翻訳は一生の仕事足りうるか (柏艪舎文芸シリーズ)誤訳も芸のうち―文芸翻訳は一生の仕事足りうるか (柏艪舎文芸シリーズ)感想
「誤訳」に対する姿勢が私と完全一致していて失笑。言い分は正しい。ほぼ曇りなく正しい。課題は、どれだけ翻訳に対する厳しい姿勢を述べようと、この方のクレジットで出版されている誤訳本の存在は消えてなくならない、ということか。若干自意識が鼻につくところもあり、まさに「文は人なり」だが、これはもちろん私自身にだって当てはまること。「翻訳の技術の中で最も重要なのは、日本語を書く技術だということになり、翻訳者には原著者以上の文章力が要求される」(これは慶応大教授池尾和人氏からの孫引き)まさに、ね。
読了日:03月14日 著者:山本光伸
赤の女 下 (ハーパーBOOKS)赤の女 下 (ハーパーBOOKS)感想
《第176回海外作品読書会》前回までの「テロとの戦い」から一転して、対ロシアの王道エスピオナージ。始めは楽勝かと思われた作戦が実はロシアの手玉に取られていたと分かり、巻き返しを図るが。焦点はMI6の中枢に食い込んだ二重スパイ(モグラ)を狩り出す事。盟友グレアム・シーモアは事の責任を問われて失脚しかねない。MI6とシーモアに腹を立てつつも、友の立場を守るため、ひいてはそれが母国の為になると信じて敢えて煮え湯を飲むガブリエルである。今回はロシアの勝ちなのか。これまで文字通り満身創痍で戦いながら関係を深めてきた
読了日:03月14日 著者:ダニエル シルヴァ
赤の女 上 (ハーパーBOOKS)赤の女 上 (ハーパーBOOKS)感想
上巻だけ読んでから少し間が開いてしまったので、下巻を読む前に再読です。ガブリエルの冷たい怒りに背筋が寒くなるこのセリフ。「なぜその口を閉じておけなかった?なぜわたしを血祭りにあげるようなまねをした?」 こんなセリフをガブリエルに真顔で言われたら震え上がるわ。「もう少し強い酒はどうだね?」「アセトンをロックで」 酒を勧めるシーモアにこの返し。怒ってる、怒ってる〜😱
読了日:03月11日 著者:ダニエル シルヴァ
ねみみにみみずねみみにみみず感想
全編、全力のだじゃれ。にカモフラージュされているけど、翻訳に注ぐ硬派な思いと周囲の同業者さんやお弟子さんへの愛にあふれた、東江さんのお人柄全開のエッセイ集。また、編集された越前敏弥さんの、東江さんへの愛もあふれている。後書きは思わず涙がほろり。翻訳業界の師弟関係も若干見えてきた。東江さんごめんなさい。リアルタイムで売り上げと印税に貢献できなくて。今後もできるだけ新本を買うように心がけます。目指せ、翻訳小説市場拡大!(そして、あのシリーズも、このシリーズも、中抜け未訳本や、続刊未訳の出版を希う。)
読了日:03月06日 著者:東江 一紀

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