2023年4月26日水曜日

0421 警視の慟哭 (講談社文庫)

書 名 「警視の慟哭」
原 題 「GARDEN OF LAMENTATION」2017年
著 者 デボラ・クロンビー    
翻訳者 西田 佳子    
出 版 講談社  2023年3月
文 庫 608ページ
初 読 2023年4月25日
ISBN-10 4065278694
ISBN-13 978-4065278697

 前巻『警視の謀略』(2020年7月)からの続刊です。前巻の「待て!次回」状態でお預け食ってから、実に3年ぶりの刊行です。ストーリー的には、その前々巻?くらい(『警視の挑戦」)から引っ張っているので、関係者が多い上に、記憶がおぼろげで困った。
 シリーズが進むごとに登場人物が増えて、群像劇になってきているのと、ジェマがキンケイドの部下ではなく、自分自身も自分の抱える事件の捜査に当たっている上に、過去の事件も織り交ぜるスタイルなので、ちょっと細かくシーンを割りすぎで、読んでいて忙しない。バラバラに描かれた動線が一気に収束していくのは快感なんだけど。あと、ついに最後までジェマの事件とはクロスしなかったね。

 そんな訳で、今回は、確認の意味も込めて登場人物紹介から初めてみよう。


ダンカン・キンケイド(警視) スコットランドヤードの警視。現在ホルボン署刑事課
ジェマ・ジェイムズ(警部) キンケイドの妻で元部下。現在はブリクストン・ヒル署の警部
デニス・チャイルズ(警視正) ダンカンの元上司。ここしばらく連絡が取れていなかった
トマス・フェイス(警視正) ダンカンの現上司。ホルボン署所属。チャイルズの親友
マーク・ラム(警視正) ノッティングヒル署時代のジェマの元上司
ケリー・ボードマン(警部) マーク・ラムの部下
メロディ・タルボット(巡査部長) ジェマの部下。アイヴァン・タルボット(新聞社主)の一人娘
ダグ・カリン  ダンカンの元部下。足首の骨折がなかなか治らない
ジャスミン・シダナ(警部補)  ホルボン署のダンカンの部下。インド系
ジョージ・スウィーニー  ホルボン署刑事課。ダンカンの部下。勤務態度に問題あり
ニック・キャレリー  テロ対策司令部(SO15)の警部。
アイヴァン・タルボット  〈クロニクル〉を発行している新聞社の社長。チャイルズを知っている?
イブリン・トレント  スコットランドヤードの副警視監
リチャード・ネヴィル 同 副警視監(名前だけ登場)
クライム       同 副警視監(  〃  )
ラシード・カリーム  ダンカンが信頼する、ロイヤルドルトン病院に所属の監察医・法医学者
ケイト・リン  チェルシー・アンド・ウエストミンスター病院所属の監察医・法医学者。ジェマの友人
ダイアン・チャイルズ  デニス・チャイルズの妻
ライアン・マーシュ  前巻で殺害された秘密捜査官(警察官)
レッド  公安の秘密捜査官のハンドラー
アンガス・クレイグ  自宅に放火して拳銃自殺したと見做されている元副警視監。婦人警察官に対する暴行事件の犯人だった
エディ・クレイグ  アンガス・クレイグの妻。焼け落ちた自宅で発見されたが、射殺されていたことが判っている。
ロニー・パブコック  チェシャー州警察の警部。ダンカンの幼なじみで、ダンカンの妹の恋人
シーラ       レッド麾下の公安の秘密捜査官
リン          同
ミッキー        同
ディラン・ウエスト   同
ジム・エヴァンス    同
マーティン・クイン  『警視の陰謀』に登場する環境保護活動家グループのリーダー
リーガン・キーティング  ジェシーの住み込みベビーシッター。モデル。事件の被害者
グウェン・キーティング  リーガンの母
ジーン・アーミテッジ婦人  コーンウォール・ガーデンズ(プライベートガーデン)の管理委員会代表
クライヴ・グレン  コーンウォール・ガーデンズの庭師
ジェシー・キュージック  コーンウォール・ガーデンズに住む10歳の少年。バレエの才能がある
ニータ・キュージック  ジェシーの母親
ベン・スー  コーンウォールガーデンズの住人。息子を庭での事故で亡くした。
ヒューゴー・ゴールド  リーガンの彼氏。モデル
エドワード・ミラー  ニータの広告代理店の顧客。ジン蒸留所の経営者・リーガンの新しい彼氏
メディ・エイシャス  ライアン・マーシュが住んでいたビルの1階の飲食店店主
マッケンジー・ウィリアムズ  ダンカンとジェマの友人。ノッティングヒル在住
ビル・ウィリアムズ  マッケンジーの夫。通販会社経営
アンディ・モナハン  ブレイク中のロック歌手。メロディの恋人
ヘイゼル・キャベンディッシュ  ジェマの元大家で友人。メロディの友人
キット(クリストファー)  ダンカンの連れ子。
トビー  ジェマの連れ子。最近バレエを始めて、打ち込んでいる
シャーロット  ダンカンとジェマの養子。事件で両親を失った

 ところで今回の目玉(?)はコレ。
 キンケイドとデニスが密会したパブ。ホルボン署から程近い《ザ・デューク》。この本の楽しみの一つとして、登場するパブ、建物、通り、すべて現在すること。その気になればGoogleマップでキンケイド達の足取りを追いかけられる。そして、読んでいると、ウイスキーやらビールやら、フィッシュアンドチップスが食べたくなるのが常なんだが、今回は、ダンカンも仲間達も緊張とストレスのあまり食欲が落ちていて、読んでいるこちらもあまり食べ物に心が動かない。
 今作は前々々作の『警視の挑戦』で起こった事件まで遡り、キンケイドとチャイルズの不仲の理由や、デニスの危機、そして警察の暗部が絡み、終始、キンケイドの緊張感が強い。家族を守ること、自分や部下を守ることと正義を追求することは並び立つのか。キンケイドの葛藤と、不安と、怒りがひしひしと伝わってくる。キンケイドが追いかけるライアン・マーシュ関連の事件と、ジェマが追いかけるプライベート・ガーデン内での殺人事件、それぞれに大筋での予想は立ったが、デニス関連でのラストは、ちょっと想像していなかった。そう絡むのか!お前が黒幕か! せっかくキンケイドが追いかけてきたのに、肝心なところをデニスが語っちゃうのはちょっと肩透かしを食らった感じもあったけど、あくまでも脇役っぽいダンカンの立ち位置はそれなりに良かった。
 総じて、3年待った甲斐あり、の一冊でした。

2023年4月21日金曜日

0420 ボレロ <矢代俊一シリーズ19>




読書メーター https://bookmeter.com/reviews/113274539   

Amazonより・・・「みずからもジャズ・ピアニストとして活動していた栗本薫が、音楽への強い思いを込め圧倒的な描写力を駆使して描き出す万里小路俊隆・矢代俊一父子デュオリサイタル。大成功のうちに終わったリサイタルの後のパーティでは矢代俊一グループによる演奏も行われ、評論家の絶賛を浴びつつ終了した。しかし、その翌日、情報屋の野々村からの電話があった。勝又英二も金井恭平も事務所の社長北原も同席しないという条件で話があるというのだ。しかも、会って話すというばかりで内容については一切口にしようとはしないが……矢代俊一シリーズ第19巻。」

 amazonのリード「しかし、その翌日」以降は最後のほんの数ページ。メインはもちろん父子コンサート。・・・・なんだが。

 この巻まるまる、俊一と父の父子コンサートの一部始終。実は、ものすごく楽しみにしていた矢代俊一シリーズ本編19冊目『ボレロ』。だがしかし、期待値を上げすぎて敗北。
 正直なところ・・・・・いや、この巻はさ、たぶん最初から最後までコンサートだろうから、俊一の二股グダグダもあまりないだろうし、人格崩壊した透の出番もあまりないだろうし、音楽シーンだけなら結構読めるのが薫さんだから、久しぶりにいいもん読めるのではないかと、ほのかに(いや大いに)期待していたわけだ。だがしかし、だよ。

 冒頭の当日朝の自宅シーンでの俊一のセリフは、これ誰?ってレベルでイメージ崩壊しているし、(誰、っていうか薫サンご本人にしか思えない。読んでいて「中島梓」の声と絵で脳内再生される。)音楽シーン(演奏)は、すでに何回も読んだことあるような表現の羅列、大トリの『ボレロ』にいたっては、前回の自宅でのボレロ演奏を上回る近親相姦モードで、「やらしい」ってより、ただひたすら気持ち悪い。

 気持ち悪いよ、薫サン。セリフ回しや地の文も、一回でも読み返して推敲する習慣がこの人にあったなら、と、もはや言わずもがなの駄文。書かれたのは2007年初旬。ろくに後ろも振り返らずに書き飛ばしてたんだろうな。この人(薫サン)の晩節に奇跡は起こらかった。そういうことだ。
 なお、コンサート後の打ち上げの矢代俊一グループの余興ジャズ3曲につきましては、良い出来でした。

2023年4月10日月曜日

0419 ドント・ストップ・ザ・ダンス (講談社文庫)

書 名 「ドント・ストップ・ザ・ダンス」 
著 者 柴田 よしき         
出 版 講談社 2016年8月(単行本初版 2009年7月)
文 庫 560ページ
初 読 2023年3月10日
ISBN-10 4062934647
ISBN-13 978-4062934640
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/113021593
 園長探偵ハナちゃんシリーズ、最終作になる5作目。読んでしまうのが名残惜しい。だからって、読了に一ヶ月以上掛かったのは、読み惜しんだからではなく、仕事の超繁忙期と家庭の事情と、体力の都合ゆえ。疲労困憊で、週末毎に実家に通う往復の電車でも、イスに座ったとたんに泥のように寝落ちしてしまう日々で、毎日読めたのは数ページだったから。読み終わったときには冒頭のエピソードは忘れかけている始末だった。
 とは、もっぱらこちらの事情で。

 我らがハナちゃんは借金返済と愛する園の子供達のため、今日もがむしゃらに走るのだ。

 前作は短編連作だったが、こちらはがっつり長編。ハナちゃんの保育園に通う小生意気な5歳児の父は、今現在は売れていない小説家。妻には逃げられ、小説は書けず・売れずで、バイトのダブルワーク、トリプルワークでなんとか日々の糧と息子の保育料を稼いでいる状態。それなのに、何者かに襲われて意識不明の重体となってしまって。他には身よりのない子供を園で世話しつつ、逃げた母親を探し、一方で美味い稼ぎになるはずだった城島からの探偵仕事は、どんどんきな臭くなっていく。ヒットマンの影がちらつくころには、進むも引くもならない窮状に陥るハナちゃん。そして早朝の新宿駅のホームで背中をどつかれて、列車が進行してくるなか、ハナちゃんが宙に舞う!?
・・・・と、なんともテンポもよろしく、これでもか、と窮地の波状攻撃なのは通常運転といえなくもない。聖黒界隈で一番、不遇な男であるハナちゃんは今日も命からがらだ。
 
 それにしても、柴田よしきさんのこの聖黒関連のシリーズは、なぜか私の土地勘のあるエリアが舞台になっていることが多い。この作では東急田園都市線の青葉台駅が登場。最近は月にに数回は行っている。なぜならば、実家詣でのコースだから。駅前のショッピングセンターは東急スクエア。2フロアを占める大型書店はブックファースト。2階の雑貨ショップ併設のカフェは無印良品だ。

 凶悪犯罪と、園児のパパへの暴行事件&家庭内争議、という大型二本立てで進行するのかとおもいきや、事件はさくっと一本にまとまり、大人達が子供時代を過ごした児童養護施設で起こったある事件に行き当たる。前の作品のレビューで児童福祉の知識が寸足らず、などと批判的なことを書いたが、作者の柴田よしきさんが、このテーマに大切に取り組んでいる感じがして、大変失礼だった、とちょっと反省している。

 この作品で、聖黒の練ちゃん登場作品は読み切ったことになる。あとは、もやはネットでも読むことができない『海は灰色』の刊行を待つばかり。今年は柴田よしき氏の作品刊行ラッシュらしいので、そのうちの一冊が『海は灰色』でありますように、と切に願っている。

2023年3月5日日曜日

0418 動乱星系 (創元SF文庫)

書 名 「動乱星系」
原 題 「PROVENABCE」2017年
著 者 アン・レッキー    
翻訳者 赤尾 秀子    
出 版 東京創元社 2018年9月
文 庫 448ページ
初 読 2023年2月19日
ISBN-10 4488758045
ISBN-13 978-4488758042
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/112413918   
 アン・レッキーの『ラドチ戦記』シリーズは私の最愛の一作(ってか三冊だけど)。これはその同じ宇宙の物語で、ブレクの物語と同時並行的に進んでいる。
 “蛮族”プレスジャーによるコンクラーベが開催される、その原因はラドチ圏内の内紛とAIによる独立騒ぎ・・・・ということで、件の独立派AIであるブレクと、“彼女”が率いる二星系暫定共和国は今ごろどうしているんだろう? ブレクは仲間に囲まれて幸せにしているだろうか?
 プレスジャーの言うところの〈価値ある存在〉であることを主張して、自らの存在を示したブレク達に対応するため、プレスジャーはふたたび“コンクラーベ”を招集しており、今回の舞台「フワエ」の星系には、そのコンクラーベに参集するために、異種族ゲックの大使が乗った船が寄港している。

 今作の主人公は、ラドチからみれば辺境の、フワエ星系の人類社会に生きる女の子、イングレイ。今回は、まさに女の子といった形容がぴったりなちょっと破天荒で健気なイングレイが、文字通り、一生懸命頑張るお話である。前作にくらべれば相当に素直な舞台設定ではあるのだが、なかなかどうして、一風変わった世界観に仕上がっていて、これまた一筋縄ではいかない。

 今回登場するゲックは水生生物で、その形容から、『栄光の旗のもとに』に登場するナマズ系のプフェルング人を連想するが、ゲックの支配星系で暮らしているゲック化した人類もいる模様で、その人たちは人体改造でえら呼吸できるようになっているとか。また、ルルルルルは、今回は登場しないが、その形容は、オクテイヴィア・バトラーの『血を分けた子ども』に登場するムカデっぽい異星人を思わせる。ラドチ文明は男女を区別しない文化で人称代名詞が「彼女」しかないのが大きな特徴だったが、こちらフワエの宙域では人類は、男性、女性、無性の三つの性があり、恋愛・結婚ともいずれの組み合わせも可、人称代名詞も3性分用意されている。そして、ストーリーにさりげなく混ざりこむ恋愛感情。ちょっとまて船長!いつの間にそうなった?

 遠未来SFなのに、登場人物が等身大で、かつなんとなく鄙びていて土俗的なのもアン・レッキーらしい特徴。基本的な衣類がルンギで、裸足で歩くことも厭わないだけでなく、床座に近い生活様式。通貨よりも物物交換にちかい経済制度なのも、おもしろい。「遺物」と言われる民族や一族の歴史や由来の証になる物に対する強い思い入れや、モノや記念品や記録に対する、独特の愛着や執着。物の真贋よりも、それが何かを物語り、他者にその物語を主張することができ、自分も周囲も騙せるのであれるかどうかのほうがよほど大事。遠未来の人類が宇宙で根なし草になりつつあり、それゆえ切実にルーツを求めてやまないのだろうか。

 前作のラドチ3部作では、おもいっきりジェンダーに揺さぶりを掛けられたが、今作では物に対する価値観が揺すられる。その一方で、普遍性を持つのが、親子の情。そして、複雑な文化的背景を踏まえてさらりと表現される人間同士、人間×異種族の愛情。最後が船長×ガラルの男同士カップルとイングレイ×トークリスの女同士カップルで締められるのは、なんとも今風。
 全体的には、遠未来SFでありながら、あまりSFっぽくなくて、ちょっとどんくさい成長譚であって、自分の持ち場を心得て、等身大で生きて行くことの尊さや、未来への希望が感じられて、なかなか良い読後感だった。

2023年3月2日木曜日

コミック 囀る鳥は羽ばたかない 8 (H&C Comics ihr HertZシリーズ)

書 名 「囀る鳥は羽ばたかない 8」
著 者 ヨネダコウ        
出 版 大洋図書 2023年3月
単行本 210ページ
初 読 2023年3月2日
ISBN-10 4813033407
ISBN-13 978-4813033400

読書メーター https://bookmeter.com/reviews/112351285   
 表紙の矢代さんも、差し込みイラストの百目鬼と矢代さんの絡みも、美しいです。
 そしていきなり風呂場での絡みからスタート。そういや前巻、そんなところで終わっていたっけ。40歳になってる矢代ですが、百目鬼の目から見て、そのカラダは以前と変わらず美しいようだ。自分の感情とカラダを扱い兼ねる矢代と、力関係は逆転しているものの、そんな矢代をどうしたらいいか判らないままにほぼ体当たりな百目鬼が、不器用すぎて、読んでるこっちもどうしたら良いか判らん。
 このぶきっちょ同士、幸せになれる気がしない。

 そして明かされる矢代の秘密(?)。
 一人でいるところをあの井波に襲われてレイプされた、だと?(おい、七原!テメー何してやがった?何でガードしてねーんだよ!)←と思ったのは私だけではあるまい。
 そして、そのせいで不感症になって勃たなくなった、だと?・・・そんなことで、どうにも自棄ぎみな矢代に、百目鬼は無自覚に揺さぶりをかけ続けるし。なんだか読んでいてハラハラする。ツラい。無表情な絵に少ないセリフで、矢代も百目鬼も、どうも汲み取るべき感情がどこら辺にあるのかがよくわからん。連載ネタバレブログをいくつか読んでいるが、皆さんよくぞあそこまで深読みできるな?!
 桜一家の内紛と、三角の道心会の縄張り荒らしが一本につながって、荒れるのはこれから。次巻が最速でも一年後ってのもツラいね。

2023年2月21日火曜日

0417 MORE THAN YOU KNOW <矢代俊一シリーズ18>


読書メーター https://bookmeter.com/books/20867375   

Amazonより・・・「クラシック音楽界の重鎮である父との父子リサイタルを控えて俊一の焦慮は募るばかりだった。さらに金井恭平との密会や渥美兄弟との会食でさらに彼の運命は行き詰まっていくのだったが……2日間はピアノに触れてはならないと父に厳命された俊一は英二と横浜へ小旅行に行く。そして英二の生まれ育った貧民街を訪れたり、アマチュアのセッションに参加するのだったが、そこで彼は行き場のない運命への光明を見いだすのだった。矢代俊一シリーズ第18巻。」

 相変わらず、amazonのリードが素晴らしい。基本、上記でしっかり要約されています。それ以外の事といえば・・・恭平にヒイヒイ言わされたり、透にあんあん言わされたり、ですかね?
 さて、奇数月の月末に発行されているこのシリーズですが、やや遅れての刊行でした。間に外伝がざくざく発行されているせいかな。外伝は「BL桃色図書室」というレーベルから出ていますが、同人誌価格なのか量が少なくて高いし、内容が晃一視点や渥美センセ視点の本編焼き直しなんで、ほとんど興味が持てないです。(電子書籍の無料お試しページだけ読んでるけど。)
 我ながら、レビューが酷くなってきているのは自覚しているんですが、いちおう、隔月で楽しみにはしてるんですよ。音楽演奏のシーンはそれでもけっこう良いので。特に次巻『ボレロ』は楽しみですね。父との二人リサイタルの巻ですから。さぞかしや聴かせてくれると期待しています。
 
 で、本作、読み始めて最初に目がついてしまったのが「なかなか」、という言葉。「なかなか」というの言葉が全編で31箇所!使われていますよ。薫サンのクセかね。
 なかなか楽しい、なかなか卑猥、なかなかけっこう、なかなかいろいろ、なかなか珍しい・・・・etc.
 べつに良いんですが、さすがに最初の数ページで1ページ一回の割で出てくると、目についてしまって、つい、数えてしまいました。こういうところ、電子媒体ってイヤですよね。すぐ検索出来ちゃうから。
 内容はもう、だらだら・だらだら、ひたすら夏バテででろんとした俊一が恭平のこと、英二のことを引き合いに“自分のこと”を考えつづけます。ここがポイント。結局自分の事なのよ。悲しいのも苦しいのも、全部自分です。愛だの、情だの、文字数だけは沢山、語ってますが、そもそもの出所(薫サン)が浅薄なんで、それ以上に内容を湛えたものになんぞ、なるわけがない。
 もはやこれ小説ではないよね、というのが率直な感想。かろうじて読むに耐えるのは、音楽シーンだけです。

 父とのリサイタルのプレッシャーで精神的に煮詰まった俊一は、ついに父にピアノ練習を禁止されて、気分転換に英二と横浜の一泊旅行に向かいます。英二の育ったスラムを歩き、英二の過去を思い、老舗ライブハウスで若手登龍ライブに飛び入りして、音楽を思い出し、また、英二の音楽性を再確認する。その夜はホテルで二人で過ごして・・・。という部分はそこそこ面白い。だけど、全体的にはホントダメ。

 そういえば、風間さんがついにニューオリ(俊一のプロダクション)に入社して、アシスタント・プロデューサーの名刺を持つようになって、俊一のそばに自分の居場所を発見(!)してなんだか幸せそうになっちゃってるし、透は良と喧嘩して、俊一にエロくちょっかいだししてるし、なんだかなあ、という感じが満載です。
 おまけに「良って結城修二のお稚児さんで有名だったんだよ」と透から驚きの暴露。ここにいたって設定後出し?って、これ『真夜天』の方の話だよね。
 まあ、どっちだろうが、薫サンにとってはどうでもいいことなんだろうと思う。浅薄な人がくどくどと愛を語ったところで所詮は薄っぺらいままだし、“愛を知らなかった自分がついに愛を知った”、とか書いたとしても、結局は薫さんの理解の範疇でしかない。
 それでも、一瞬、俊一に投影してついに自分に気づいたか?と考えたけれど、やっぱり薫サンは薫サンのままだったのだろうな。この辺りの本は、薫サン没後の発表作のはずです。生前いつ頃に書き溜めた原稿なのかは知らないのですが、文体劣化は病気が原因?いや、劣化はもう、随分前に始まっていたのだし。考えても意味ないし、その価値もないかな。ほんとに、『嘘は罪』とか14作目くらいの透ちゃんで止まってくれてればよかったのに。というか、ここまでくると『朝日のあたる家Ⅴ』が、もはや名作に思えてくるからね。自分のレビューを見直してびっくりだよ。

2023年2月18日土曜日

コミック 10DANCE(1)〜(7) (ヤングマガジンコミックス)

★書誌情報は7巻(最新巻)のものです。
書 名 「10DANCE(1)〜(7)」
著 者 井上佐藤        
出 版 講談社(ヤングマガジンコミックス)
コミック 176ページ
初 読 2023年2月11日
ISBN-10 4065300657
ISBN-13 978-4065300657

読書メーター  
 こういう感じの、がっつり骨格が正確に描き込まれた肉体と絵柄がたいへん好みです。ダンス、バレエ、フラメンコ、フィギュアスケートなんかも大好き。競技ダンス、スタンダードの「帝王」杉木信也が目指すのはテンダンス。ラテンの師として、そしてライバルとして選んだのはラテンの日本チャンピオンの鈴木信也。漢字も仮名も一字違い。唯我独尊な杉木に振り回される鈴木だが、杉木の孤高の魂と、鈴木の原初の生命力は、これからどう交わっていくのか。

 スタンダードとラテン、まったくタイプの違う二種類のダンスがある競技ダンスの世界で、スタンダード5種とラテン5種両方とも踊って競う「10ダンス」。ダンス競技のトライアスロン。世界のスタンダード界で、「帝王」といわれながらも常に二位を強いられている杉木はこの10ダンスに挑む。その為のラテンダンスの師として、また競技のライバルとして選んだのは日本でこそラテン・チャンピオンだが、世界ではまったく無名の鈴木。かつて、鈴木のダンスを見て魂を奪われた杉木は、鈴木に10ダンスを教え合うことを申し込む。
 と、至って生真面目なストーリーなんだが、なんといっても最高に面白いのは、ワルツのリードを鈴木に教えるために、杉木がリーダー(男)、鈴木がフォロー(女役)でワルツを踊るシーン♥️
杉:「相手が雌猿でも僕ならプリンセスにできます」「さ、ホールドしてご覧なさい」「プリンセスに変身するのは今からです」
鈴:「なんかバラ見えてきましたあっ💗」
杉:「そうですか 白鳥とお城が見えてきたらまた教えてください(キリッ」
これ大真面目だから。大好きだ♪
 まだまだ、1巻では相思相愛にはほど遠い感じですが、そちらもおいおいかと。
 番外編『紳士はラティーノがお好き』も大変おもしろいです。日本人ダンサーの杉木サンが、ペンギンの群れかカルガモの親みたいに英国紳士をぞろぞろ引き連れているところが、何気にシュール。
 追伸)カバー下。・・・房子さん。アンタ、日本語の不自由な杉木センセイに一体何をおしえとんのや。

 杉木が出場するワールド・チャンピオンシップ(英国・ブラックプール)観戦で、鈴木は、杉木選りすぐりの人々のテーブルに招待される。スタンダード、ラテンのそれぞれの元チャンピオン、現在は振付師、デザイナーetc。これは杉木による、鈴木の世界デビューのための布石。そして、鈴木は決して一位になれない杉木の孤高の闘いを垣間見る。
 世界一位のジュリオと、二位の杉木の因縁もなかなかのものだが、前しか見ない杉木の潔さが武士っぽくて格好よいです。
 深夜、一人で教室から帰る杉木を追いかけた鈴木は、終電後の深夜の都心の公園で、一人でベーシックを踊る杉木を目撃する。「一緒に踊る?」この次のコマの杉木の笑顔が最高です!
 ついでだが、おまけページ。ラテンのフリフリの衣装に真顔で執着する杉木が・・・・・
 あと追伸)カバー下。お母さん。それは誤解です。

 鈴木&田島のスタンダードの方はなんとか様になってきたようだ。しかし杉木のラテンがどうにもきまらない!? いちおう出来ているようなのに、どうにもラテンぽくない。ワルく「ニヤッ」と本人笑ったつもりでも、王子様の微笑みになってしまうみたい。そこで、アキが考え出したのが「演劇方式」。踊りにエロエロのワルい男のセリフを載せてみよう! それでもどうしても杉木がうまく役にはまらない。ついに鈴木が杉木相手にラテン的ワルい男を実演。男役はとことんワルいし、女役はとことんセクシーな鈴木センセイすごいです。それにつられて杉木センセイもワルい男がついに開眼。 かつての黒いドレスの矢上房子。房子が記憶にのこしていないそのステージの暗い思い出を杉木と共有した鈴木は、ついに深夜の地下鉄で熱いキスを交わした。


 勢いでキスしてしまったものの、どちらも心の準備は出来ていない。思い出して悶絶?する鈴木は、自分は真剣&激情一途だけど、杉木はパブリックスクール出身で男同士のキスなんて珍しくもない、向こうにとってはちょっとしたおふざけなんじゃないか・・・と悩むし、杉木の方は、ああ見えて男性性の権化みたいな鈴木に、自分の思いが受け入れられるわけない、と(精神的に)逃げ回る。これって、いわゆる相片思いってやつ。
 ついにあの杉木が「僕はあなたが欲しい」・・・と告白し、お互いにキスを交わすも、そこからがまた難易度が高い。ここまでは良いとして、お前は男と寝れるのか?と。やっぱり男同士は無理なのか。二人の関係は甚だ危うい。そんなとき、ラテン王者アルベルトと知り合い、アルベルトは鈴木に頂上が遙か上にあることを示す。

 鈴木の父は、日本ラテンダンス界の大物で大会運営側。大枚はたいて世界一位のアルベルト、二位のガブリエルを招聘してのジャパンオープンに出場する鈴木が求められているのは「三位」。しかし、父の立場を裏切り世界に切り込む覚悟の鈴木は、ついに全力で大会に臨む。覚醒したとも言える鈴木は、まさに舞踏神そのもの。かつて杉木が見いだし、世界に導きたいと思わせたその姿が、ついに会衆に晒される。突然の雷雨、そして会場建物への落雷で停電し、真っ暗になった建物の中で、観客は鈴木の体から流れ出るリズムと音楽を聴く。
 杉木と鈴木の極めて精神性の強い恋愛と、男同士のままならなさがとことん切ない。


 杉木の膝の痛みがちょっと不穏だ。二週間休息を取るはずが、杉木はつい、鈴木とのレッスンをいれてしまう。
 ラテンの元王者ルーカス・ガルボの紹介で、アメリカの大富豪マックス・マルダーが鈴木の元に(杉木のへ、か?)襲来!
 マックスは杉木を手に入れる代わりに、鈴木のパトロンとなる契約をする。ついに鈴木はスーパーセレブのパトロンを手にし、金にいとめなく、ダンスに邁進することができる環境を手に入れる。
 また、杉木は、鈴木を元スタンダード王者のノーマン・オーウェンに手渡し、自分は手を引く。これからはダンスを教え合う仲ではなく、10ダンスのライバルになる。別離を前にした二人の夜明けのダンスは、透明で美しい。

 鈴木をノーマンに託した杉木は、自らのラテンのレッスンをガブリエルに依頼。ガブリエルは杉木を鈴木に勝たせるために、鈴木の分析に乗り出す。これに協力したのは、偶然にもパブリックスクール時代の杉木の元ルームメイトのマーニー。二人によって解き明かされる鈴木の脅威のダンス。
 杉木を諦めようとしている鈴木と、妹が結婚してしまい喪失感を持て余すノーマンがお互いで喪失を埋めるために、ついに鈴木があっちの世界に。
 杉木のほうは、鈴木を手放した痛手を、マックスに振り回されることで紛らわす。そんな二人が、日本で開催された国際大会でついに再会して・・・・・!いやあ、ここで、次巻は2024年とか、どんな放置プレイよ。連載はヤンマガWEBです。もう、連載おいかけますよ! 続きは1年後とかないわ〜

2023年2月11日土曜日

0416 姑の遺品整理は、迷惑です (双葉文庫) 

書 名 「姑の遺品整理は、迷惑です (双葉文庫)」
著 者 垣谷 美雨    
出 版 双葉社  2022年4月
文 庫 280ページ
初 読 2023年2月11日
ISBN-10 4575525626
ISBN-13 978-4575525625
読書メーター    

     ※あくまでも、私の中では「実用書」の扱いです(笑)
 仕事が忙し過ぎて、心身ともにボロボロ、がっつりした翻訳モノなんかは、脳が疲れてて手が出せないので、とりあえず、こいつを読んでしまおうと思った。
 次のゴールデンウイークには多めに休みを取って、旦那実家の片付けに取り組む覚悟の身としては、何かの参考になるかもしれない。うちの義母はいささか遠方の家を残してこちらの高齢者住宅にこの冬に転居した。独居だったし、さすがに自動車の運転を諦めてほしいお年頃で、いろいろと心配もあり、一人暮らしは無理になりつつあったところ。いろんな意味で良い選択だったし、なによりも本人が満足できているのがとても良い。
 残るはほぼ2世代分のアレコレが収納されている家。(豪邸ではないのだが、ちょっと地方なだけあって、家は広い。)
 ちょっと前に亡くなった義父の形見の意味もこめて、私が持ち出したいのは書斎家具の2点のみ。義母の思いの入ったモノもまだ残っているし、粗略にはしたくないが、きっちり処分はしないといけない。ううむ。何日コースになるのだろうか・・・・
 本のタイトルに恐れを感じるので念のため補足するが、ウチの義母はご健在だし、迷惑だと思ってる訳じゃない。←コレ重要! それにしても、「家じまい」の経験をお持ちの方のお知恵を拝借したいものである。

 で、それにしても、だ。

 読み初めると、主人公の性格にげんなりとする。隣人の生活保護を受けている女性をひと目見て“愛くるしい顔立ちだからか、デブといった感じはなく”、とかいうものの、他人に対してデブという形容がするりと出てくる人なわけだよ、この人は。太った人ではなく、肥満体型の女性でもなく、初対面の女性をデブと脳内で思っちゃう。そして、夕食の支度で野菜をフライパンに“ぶち込む”。もっと綺麗な日本語はたくさんあるのに。

 主人公は、金沢の旧家の裕福な家庭の育ちで、上品に育っているはずなのだ。だけれども、どうにも品がない。そして、そこそこの広さの3Kのアパート一室をまるまる残して急逝した姑を、先に亡くなった実家の母と引き比べ、心の中でぐちぐち、ぐちぐちと文句を言い続けるので、読んでいて辟易した。そのくせ自分のことは“純粋”なんて形容されてまんざらでもない。自分でもそう思っていたりする。あああ、なんというか、自分と同じ世代の中年女性が、世間しらずで幅も奥行きもない、狭い自分だけの世界から、周囲を覗いて自分の尺度でああでもない、こうでもないと、やっていて、本当につまらなかったのだ。
 やがて、姑の遺品を片付けながら、だらしないとおもっていた姑が実は良い人だったことが判ったり、完璧だと思っていた実母は、実は嫁にとっては厳しい姑だったことがわかったりしても、それで、この人の世界が広がるわけではない。うーん、上手くいえないんだけど、凄く身勝手で、尊大というには大げさだけど、最後まで、そこはかとなくイヤな感じがして、抜けなかったのよ。ああ、まあ一言でいって、この作品は私には合わなかった。ということだ。

0415 夜が明けるなら ヘル・オア・ハイウォーター3 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「夜が明けるなら  ヘル オア ハイウォーター (3)」
原 題 「Hell or High Water Book 3 Daylight Again」2014年
著 者 S.E.ジェイクス    
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2017年7月
文 庫 380ページ
初 読 2023年2月9日
ISBN-10 4403560318
ISBN-13 978-4403560316
読書メーター 

 やっと彼らの設定を生かして、アクション小説っぽくなってきた・・・かもしれない。プロフェットの因縁に、トムも手に手を取って躍り込む。
 プロフェットの仲間たち、シールズ時代のチームのメンバー、キリアン、ゲイリーと役者もそろい踏み。そしてランシング、ジョン、サディーク、と敵の顔ぶれもだいたい揃ってきたか、というところ。(ランシングは小物だったけど。)しかし3巻はまだ風呂敷を広げきった、というところ。事態が動くのはこれから。

 そしてなんと、マルとキリアンが“出来ている”。
 また、プロフィットが抱える最大の悪夢がトムに明らかになる。遺伝性の先天性疾患でやがて失明する運命であること、そしてすでに視力の低下が始まっていること。
 喪失の予感がプロフを頑なにし、トムを信じ切れず、また信じるからこそ、トムが自らの意志で自分に縛られることになるのが耐えがたく、とはいえ、一人で暗闇に中に生きることになるのはさらに耐えがたいプロフィット。乗り越えるべき試練はトムの側にも、プロフの側にもある。しかし、それを乗り越えた二人は、これまでより強い絆で結ばれるように。
 キリアンの組織のSB−20ってのが良く判らないが、とにかくキリアンは自らの組織を脱して、プロフを監視し必要があれば殺す側から、プロフを守る側に立つことを選ぶ。なぜなら、事が済んだら自分も口封じに殺されることを察したから。そしてなにより、プロフの人間性に惹かれたから? ついでに、マルに恋したからかも。

 そして、ジョンの裏切りの輪郭が明らかに。この刊は、起承転結でいえば「転」。ことが大きく動くのは次巻だな。トム側の人材資源にキリアン側の手駒と協力が加わって、いよいよジョンを追いつめる計画が動き出す。

 ストーリー的には不満もあるし、消化不良だし、欲求不満もある。
 アクション巨編っぽい打ち出しなのに、やっぱり主眼はロマンスなので、作戦行動やら、航空機や銃器の扱いやら、近接戦闘やらの扱いがちょっとアレレな感じがするし、いくら米国とはいえCIAのエージェントに“弁護士”をぶつけてなにか面白いことが起こるんだろうか、と思ったし。
 マルとキリアンがいきなりアレはなかろう。と思ったし、ワタシが鈍感なのかもしれないけれど、いまいち思わせぶりな会話が理解しきれてなかったりもする。
たとえば、マルはサドなのか?それともマゾなのか?
 マルがサドで、トムがマゾってことなのか?よくわからーん!いや、マルとトムが両方ともマゾなのか。
 でもまあ、このさき、どのように作戦行動して、話を畳むのかは興味があるし、トムとリア(プロフ)が全ての重荷をおろして幸せになる姿も見たいので、第4巻の翻訳発行を待ってます。

2023年2月4日土曜日

0414 不在の痕 ヘル オア ハイウォーター (2) (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「不在の痕  ヘル オア ハイウォーター (2)」
原 題 「Hell or High Water Book 2 LONG TIME GONE」2013年
著 者 S.E.ジェイクス    
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2016年9月
文 庫 421ページ
初 読 2023年2月3日
ISBN-10 4403560288
ISBN-13 978-4403560286
読書メーター 
https://bookmeter.com/books/11105019
 読書メーターではめでたいキリ番1000冊目、基本、過去読了本とマンガは登録しないこちらのブログでは414冊目はこの本にした。
 で、最初にまずワタシは開眼したよ。この本は、シリアスだと思って読んじゃいけなかったんだ!
 冒頭数ページにわたるトムのラブレターは、きゃーっと本を投げるレベルで恥ずかしい。日記を書くことも手紙を書くことも恥ずかしすぎてできないワタシには、これを読むのはもはや羞恥プレイに近い。36のいいオトコが女子高生みたいなメールをイラスト入りで毎日一通、122日! それに絆されるプロフェットもどうかと思うがな! ロマンチストで甘々な二人なのだ。お互いのうなじをなでる描写だけで、もう、とろけるように愛が溢れてる。
 元シールズやら、元海兵隊やら、CIAやらFBIやら、民間軍事会社の傭兵やら、イスラム国家の核開発っぽいお膳立てなんて実にAAっぽいのに。
 ストーリーはミステリー基調なのに。
 中身は、あつあつべたべたのゲイ・ロマンス以外のなにでもなく。
 それなのに、舞台はハリケーン吹き荒れる魔境ルイジアナ(笑)
 バイユーで育ったんだというトムに、某別シリーズのおかげで爆笑の予感しかしないのはどうしてくれようか。

 カトリーヌ以来最大のハリケーン直撃を前に、故郷のルイジアナで避難を拒んで頑なに自宅に居続ける叔母を案ずる思いを、トムはどこにいるかも知れぬプロフ宛てのメールに書き綴る。
 そしてプロフは、来れないはずのトムの代わりに、勝手にルイジアナのトムの叔母宅に手伝いに乗り込むという、謎の行動力を発揮。
 デラ叔母さんの家には70代のロジャーとデイブというゲイカップルが下宿していて、お互いに手を繋いでプロフェットの前に登場。
(トムとプロフの出会い頭の熱々SEXを悠々と鑑賞するロジャーとデイブの会話は実に楽しい。バイユーには老人がよく似合うな。)
 トムとプロフはお互いに相手を近寄らせまいと牽制しつつ、だけど求め求められ、激情にかられたそのSEX描写がとてもきれいだ。

 にしても、ルイジアナで、バイユーで、傭兵で、ゲイで、ガチムチで甘々の肉弾戦だよ。なんともまあ、濃い。濃厚とんこつ背脂多めで、お腹いっぱいでもう二度と頼まなくていいや、と思ったのになぜか一週間後にまた食べたくなってるラーメンみたいだ。

 今作では、ルイジアナのトムの故郷で鉢合わせした二人が、トムの過去にとことん向き合う。虐待され、疎外され、差別されて傷ついたトムが過去に向き合うのをとことん支援するプロフェットは神々しいほど。一方のトムはプロフェットにアリゲーターを素手で捕縛する技を披露し、プロフェットドン引き(笑)。
 トムの生まれ故郷への帰還がもたらした危機は、あまりにもあっさりと終わったけど、まあ、ミステリーメインの作品じゃあないから仕方ない。
 登場人物が、グレイマン級だったり、ザック並みだったりするんで、思わずAA方面の展開を期待しそうになるのをすかっと肩透かしされたりもするけれど。
 とにかく、これはロマンス作品なんだと自分に言い聞かせて読み切る。
 今作は、とにかくプロフェットの優しさが際立ってます。それに、なんとも素敵なプロフの本名や、彼の秘められた仕事や過去が、ついにトムに明かされる。これだけの大風呂敷ってことは、ここまでが序章。あとはいくらでも、何冊でも引っ張れそう。

 ついでに書いておくと、こいつらアメリカ人は緊縛プレイするときもダクトテープだ。
 ダクトテープ万能。